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2026年10月01日
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「立志編 -8:それは俺達のプロジェクト-X」から続く


プロジェクトチーム のベクトルは一つにまとまっている。目指すべきものは一つだ。
しかしその実現の前に越えなければならない山があった。それは会社幹部、特に自分の部署の本部長の合意をえる事。

技術畑を歩んできたこの本部長は、生産の事も品質の事も十分分かっていた。それ故、新製品の第一の目標は品質の安定であり、それには機器としての S/N比 の向上を求めていた。それは間違いではない事は俺も納得する。
しかしこの製品ではそこが究極の目標ではない、と信じていた。俺の目標はある意味S/N比と二律背反の関係にあるものだ。その目標を極めれば、ある程度S/N比は犠牲になる。だからこそ、そのバランスの最適解を求めるために 理論シミュレーション を行ってきたのだ。

これは一度、本部長と膝を詰めて話し合わなければならない。プロジェクトリーダーと共に本部長と長い議論が始まる。常務も務めている本部長に空いた時間など無かったはずだ。しかし俺達と話すうちに事の重要性を理解してくれたのか、後のスケジュールを開けて丸半日をこの議論に割いてくれた。それだけでも彼の真摯さが伝わると思う。




しかしそれをひっくり返さなければならない。俺の掲げた目標地がどんな意味を持つのか、どれ程の波及効果を生むのか。丁寧にねばり強く論理的に。もちろん俺が3年を掛けて行ってきた理論解析についても説明し、理解を得た。リーダーもそこかしこで助け船を出してくれて議論は深まった。そして
「 分かった。その目標でやってみろ 」

3時間を超えるサシの議論の末、本部長の了承を得た。まだ係長になったばかりの若手によく付き合ってくれたと思う。よく対等な議論に応じてくれたと思う。地位をカサに掛けて
「黙れ、若造!」
と言い出す役員も山ほどいた時代だ。俺は良い上司に恵まれたと思うよ。
何よりこの議論は勝ち負けとか面子とか自分の利益とかとは無縁の、
「 次の10年でこの新製品が会社を、そして世の中をどう変えていくか 」
についての議論だった。国会の醜い答弁とも、テレビ討論の俺が俺がの言い争いとも、裁判での自分の利益だけを求める議論とも違っていた。
清々しかった。






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最終更新日  2026年10月01日 00時00分07秒 コメントを書く
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