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武松が選ばれ、大物好漢(?)が続くのかと思えば、次に登場したのは“小温侯”呂方でした。呂方の颯爽とした武者ぶりを引き立たせるためか、今回の背景はかなりシンプル、共演者には“天使”が選ばれました。天使は一体、なにを祈っているのでしょう……。
2007年02月28日
風を起こし雨を呼び、霧に跨がり雲に乗る、眼光鋭く、狂熱あり──。反骨の士として登場、その存在は徐々に神秘性を帯びてゆきます。俗世からの逸脱を志す彼でしたが、妖術使いといえども、輪廻の外に生きることかなわず、五雷天心の奥義を伝授された“入雲龍”は、梁山泊の危機を救うべく、再び修羅へと舞い降りるのです。『絵巻水滸伝(第2巻)』より『入雲龍 公孫勝』 絵と文★正子公也*『絵詞』は1996年に描いた水滸伝人物画約20点に添えられた、正子公也の文章を当時のまま、掲載しました。(初出;光栄刊「水滸伝」好漢ファイル)
2007年02月27日
北宋の都、東京開封は中国六大古都のひとつに数えられ、今でも有数の観光地です。しかし、北宋時代の城市は度重なる黄河の氾濫のため泥土に埋まり、その遺跡はほとんど残っていません。五台山からやって来た魯智深と林冲が出会った相国寺も、いま見ることができるのは清の時代に再建されたものです。もちろん境内の縁日もなく、緑の多い、たいへん静かなお寺になっています。しかし、「大相国寺」と刻まれた立派な門に、往年の賑やかな雰囲気を感じ取ることができるのではないでしょうか。(写真撮影、森下翠)
2007年02月26日
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凛々しき顔立ち、眼色涼しく、日・月二振りの刀を自在に操り、扈家荘の"おひいさま"、華麗に登場、その名は扈三娘、ひと呼んで"一丈青"。打倒梁山泊の野望に燃える、"祝"一族。地の利に勝る祝家荘に、梁山泊軍は思わぬ苦戦を強いられるーー『絵巻水滸伝・第6巻~祝家荘風雲』が本日、発売となりました。★B5版、全256ページ、オールカラー「主要人物紹介」「絵巻水滸伝地図」付き 絵巻水滸伝(6)「取り扱い書店一覧」
2007年02月25日
「薪売りだよ。見りゃ分かるだろう」 若者は道に転がった薪を拾った。精悍な顔だちで、鼻の頭には横一文字の傷がある。「見ねえ顔だな」「そうかい? なら、今日から覚えておいてくれ」絵巻水滸伝(第5巻)(第三十九回 病関索より
2007年02月24日
「──いいわ」 李俊を見上げ、慧鳳は微笑んだ。「その時は、あたしがついて行くから」 潯陽江の金銀の波だけが、その言葉を聞いていた。絵巻水滸伝(第5巻)(第三十六回 迷竜より)
2007年02月23日
「船が、飛んだ……」 穆春は目を瞠った。「あいつは──竜ぢゃ」 穆弘が、呻いた。「本物の、竜ぢゃ……!!」絵巻水滸伝(第5巻)(第三十五回 闘船より)
2007年02月22日
3月25日(日)午後2時より、「歴史書房 時代屋」さんの茶屋にて、正子公也サイン会が開催されることになりました!サイン予約券は100枚用意されるとのこと、詳細は時代屋さんのHPおよびこちらで順次お知らせしていきます。どうぞお楽しみに! 時代屋さんのイベント情報『正子公也サイン会』★時代屋さんのHP
2007年02月21日
2001年は寅年というわけではなかったのですが、選ばれたのは“行者”武松でした。武松は人喰い虎と戦うのに夢中ですが、おばあさんは「こんなところで、なにをしているの?」とでも言いたそうです。
2007年02月20日
「ところが、俺は裏切りをするし、嘘もつくんだ」 絵巻水滸伝(第2巻)第十六回 智取生辰綱より、"赤髪鬼"劉唐~正子公也 撰
2007年02月19日
戦国絵巻・携帯クリーナーは、現時点では、時代屋(神田小川町)さんだけでの販売となっています。(もののふさんの展示会「10 pieces exhibition / もののふ」では展示のみとなっております)準備が整いしだい、もののふさんのHPでも販売していただく予定ですが、「早く欲しい!」という方は、どうぞ時代屋さんでお求めください。「正子公也フェア」開催中!★時代屋さんのHP「もののふ」さんのサイト
2007年02月18日
(四) 裘知県の裁判は、誰もが毒気を抜かれたようで、うやむやに終わってしまった。屋敷に戻った知県は、後日あらためて若様を招き、感謝の意を表した。奥方の体調はよく、子供も順調に育っているという。「小鶯子も──」 裘知県は、まるで娘を嫁に出した父親のような顔をして言った。「きっと、次は我が家の本当の子供に生まれ変わるにちがいない」「それは無理だよ。人形だもの」 裘知県の感傷など興味なさげに、若様は涼しい顔で酒を飲んでいる。知県は納得できない様子でなお言った。「そうでしょうか」「そうさ」「しかし」「あの子は、きっと鶯に生まれ変わるよ」 若様は、酒を運んできた奥方に声をかけた。 小鶯子が言ったという。“春になったら、お庭の木に飛んでいきます。そして、お二人にご挨拶いたします。お元気ですか。私の弟はすこやかでしょうか。毎年、春が来るたびに、お二人は庭のあずまやに座り、わたしの声を聞いてください”「本当さ。そう言っていた」 若様は笑った。 *** 初冬、裘知県の家に待望の男子が生まれた。 次の春、月橋巷の裘家の梅には、たくさんの鶯が飛んできた。鶯たちは美しい声で一春を囀って過ごし、夏が来るころ、どこかへとまた飛び去って行った。 鶯は何羽もいて、どれが“小鶯子”かは、さすがの若様にも分からなかった。 完新年快楽!恭賀發財!
2007年02月18日
(三)『知県閣下が不義の子を殺して捨てた』 そんな剣呑な噂を若様が耳にしたのは、屋敷を訪ねた数日後のことだった。 奥方が赤子の亡霊を見て乱心したという噂におひれがついて、そんな話になったものらしい。追い払われた道士たちが、声高に喧伝したのかもしれない。噂はやがておおいに広がり、ついに州知事の耳まで入った。融通のきかない裘知県には敵も少なからずおり、それらの者が道士たちの言葉や、裘家の元使用人などの証言をつけ、事件をまことしやかに注進したのだ。そうなれば、知州も放っておけない。裘知県のもとに捕縛の兵がつかわされた。 知県は捕らえられ、州の役所へ送られた。 やがて裁判となり、知県は知州の前に引き出された。証人として奥方も侍女につきそわれて出廷した。堅物でとおった裘知県の犯罪に、見物人が大勢つめかけていた。その中には、施の若様の姿もあった。「白状するなら今のうちだぞ。お前が赤子の死体を捨てるのを見たという者もいるのだ」「ばかばかしい!! わたしには妻の腹におります子供のほかは、子はありません」 頑として無罪を主張する裘知県に、知州閣下も困り果てた。実際、告発と証言はあるが、物証がない。 肝心の奥方は、しくしくと泣きつづけている。知州がなにを尋ねても、言葉もなく泣くばかり。裘家になにか“事件”があったことは、間違いない。「しかたない、打て」 知州の命に、殺威棒を掲げた屈強な刑吏が進み出た。裘知県は青ざめた。多く打たれれば死ぬ者もある。しかし、裘知県は恐怖に屈せず、あくまでも冤罪だと譲らなかった。「打つならば、打っていただこう」 ぴしり。と、空気が鋭く鳴って、知県の背中に棒が当たった。 奥方が、はっとした顔で若様を振り向いた。 若様はそしらぬ顔をした。 もう一発。さすがの裘知県もうっと唸った。 奥方は、縋るような眼で若様をみつめた。 若様は、しかたないなという顔で扇子をしまい、見物人の人垣の中から歩みでた。「許してやるの?」 若様は奥方の傍らに歩み寄り、顔を覗き込んでそう聞いた。「もう、許してやるのかい?」 奥方は、とまどいがちに若様の顔を見上げた。その顔はまるで大人のようでなく、幼い子供のようだった。奥方の頬にぽろぽろと涙がこぼれた。若様は、その頭をぽんぽんと撫で、立ち上がった。「もう、いいってさ」 若様は知州閣下に向かって言った。「もう打つのはよしてやってよ」「そなた、施典獄の息子ではないか」「おひさしぶり」「また──何か見たのか」 知州は刑吏を下がらせた。 そこへ、ひとりの老婆が下役に付き添われておずおずと姿を現した。裘家に仕える奥方の老乳母だ。若様は老婆を前へ呼び寄せた。「やあ、連れてきたか」 老婆は胸に赤い布包みを抱いていた。「この子に、なにか御用でしょうか」 布の中には、まるまると太った赤ん坊が包まれていた。思いがけない展開に、見物人たちがどよめいた。「知県が捨てた子供の死体か」 知州閣下も身を乗り出した。「まさか」 若様は赤ん坊を受け取ると、知州の机の上に置いた。 それは、ほんものの赤ん坊そっくりの、ふるびた陶器の人形だった。赤いはらがけをして、にこにこ笑って座っている。その右足は欠けてなくなっていた。 若様は老婆に尋ねた。「お前は、これをどうしたの?」「はい、旦那様から壊れたので捨てるように言われましたが、なにやら捨てかねて残しておいたのでございます」 裘夫妻の、鍾愛していた人形だという。 夫妻には結婚してずっと子供がなかった。薬を飲んだり、寺に願掛けをしても益はなかった。離縁や側女をおくことを勧める人が大勢いたが、知県は相手にしなかった。子供など縁だと思っていたし、できなければ養子をとればいいからだ。しかし、夫人はひどく気に病んで、しばしば寝付くようになってしまった。そこで知県は、夫人を慰めるため、廟会でたまたまみつけた人形を子供がわりに買い与えた。「名前までつけて可愛がっていたものを、本当のお子ができたとたん、壊れたからと捨ててしまうのは哀れと思って取りおきました。罪になりますでしょうか?」「いいや、たいへんな忠義者さ」 若様は裘知県に眼を向けた。「幽鬼なんかいない、と言っただろ?」「まさか……」「そうさ。あんたは、この子を殺して、捨てたのさ」「そんな、たかが人形が」 読書人である裘知県には、捨てられた人形がそれを恨んで、奥方について悲憤を訴えているのだなど、とうてい信じられるはずはなかった。「ばかばかしい、ばかばかしい」「なら、この場で床に投げて割ってしまいなよ」 若様は壊れた人形を裘知県に向かって投げた。 知県は思わず腕を延ばし、胸に人形を受け止めた。ひんやりとした滑らかな感触と、曇りのない愛らしい笑顔が、知県の記憶を呼び起こした。十年という月日。はじめは、ちょっとした思いつきだったのに、夫人は人形をひどく気に入り、わが子のように可愛がった。湯浴みさせ、着物をきせかけ、食膳を並べ、ともに寝るほどだった。知県もそれにつきあった。ばかばかしいと思いながら、いつしか日常の一部になった。 しかし、奥方が懐妊したと分かってすぐ、人形の足が欠けた。知県は何も考えず、人形を捨てさせた。翌日、それを知った奥方は、何か言いたそうだったが、黙っていた。まもなく、奥方の病がはじまった。 裘知県は悟った。 自分はやはり、なにかを殺し、捨てたのだろう。 若様は、悄然とする知県に尋ねた。「“この子”の名前は?」「小鶯子──」 言葉とともに、奥方の顔がほころんだ。輝くような、幸せな笑顔だった。「小鶯子!」 その瞬間、人形は知県の腕の中で粉々に砕け散った。 軽い風が起こった。 なにか小さなものが、ざわめく人々の頭上を駆け抜け、開け放した扉からすべりでたような気配があった。 見送る若様の頭巾のすそを、風は、涼やかに揺らしていった。続く(全四回)
2007年02月17日
(二) 薄暗い部屋の寝台に、奥方は静かに眠っていた。空気は冷たく、濃い薬草の匂いがした。屋敷の中には人気があるのに、ここだけは、ひっそりとした静寂に包まれていた。 しかし、床や壁には喧騒の名残がある。奥方が投げて割った陶器のかけらや、かしいだ家具、それを打ちつけたらしい壁の穴……寝台にかかった紗もびりびりに引き裂かれ、老人のひげのようになっていた。それが風もないのにゆらゆら揺れる。 たしかに、幽鬼がいそうな雰囲気だ。「何か、見えましたかな?」 部屋に入った若様に、知県は尋ねた。若様はくるりと顔を巡らして、「いや、見えないな」 と軽く答えた。「確かに?」 知県は後ろに控える家僕たちに聞かせるように、かさねて聞いた。「本当に、なにもおりませんな」「本当さ。幽霊なんか、いやしない」 若様はふんと小さく鼻をならした。その目が、薄い闇のなかで金色に光った。「聞いたか、みな。やはり幽鬼などというものは……ばかばかしい……」 裘知県が言いかけた時、ふいに奥方の狂乱が始まった。 寝台の垂れ布を引きちぎり、奥方は布団の中から獣のように飛び出してきた。おそろしいす速さだった。卓に体当たりしてそれを壊すと、そのまま床の上を転げ回って、声を放って泣きだした。「奥や、奥や、しっかりしなさい。気を確かに……」 知県が慌てて駆け寄り呼びかけると、奥方はいっそう激しく泣きじゃくる。まるで赤ん坊がひきつけを起こしたようだ。床の上をいざりながら、奥方はわんわんと泣き続けていた。「よしなさい、腹の子に悪い……いたい!!」 奥方の爪が知県の顔に傷をつけた。知県はしゃにむに縋りついてくる妻をつきはなすこともできず、ただうろたえているばかりだ。 若様は、そんな様子を壁によりかかったまま、だまって見ていた。 奥方の狂乱は、四半時も続いただろうか。使用人たちは幽鬼を恐れて逃げてしまった。あとに残っているのは、知県と奥方、若様と、奥方の実家からついてきた老いた乳母だけだった。 知県が冠も服もぼろぼろになった頃、若様はようやく声をかけた。「ねぇ」 奥方も疲れたのか、床に上にぺたりと座り、なにか子供をあやすような仕種をはじめていた。とぎれとぎれの呟きは、子守歌らしい。老乳母が奥方を寝台へ連れていった。子守歌は続いている。 若様は、呆然と妻を眺めている知県に尋ねた。「奥方は、どうして人形なんか抱いているんだろう?」「人形? 人形など、ないでしょう」 裘知県は考えもせずに否定した。 ただ、奥方を介抱している老乳母が、けげんな顔で若様を見ただけだった。続く(全四回)
2007年02月17日
(一) 孟州牢城の施典獄の若様は、人には見えぬものが見える。 そんな噂があった。 あながち、根も葉もない風聞──とは、言えない。 たとえばこうだ。 若様の父上が預かっている牢城には、日々、数多くの囚人が送られてくる。若様は幼児の頃より、彼らの罪状を見ただけでぴたりと当てた。聞くと、人を殺した者には、その背後に灰色の影が、人を傷つけた者には、その者の身の上に血が見えるという。無罪の者には、むろん、なにも見えない。父親の典獄殿は正義の人であったので、息子の不思議な力によって囚人の冤罪を晴らしてやることもある……。 噂である。 とはいえ、実際、若様の眸はひどく色が薄らいでおり、闇の中ではほのかに金色に光って見える。その光を目の当たりにすれば、人はさもありなんと納得せずにはいられない。そして、後ろ暗い者ならば逃げ、そうでないものは、いつか冤罪を受けるようなことあれば、きっと若様が助けてくれる、と、頼もしく思うのだった。 もっとも、若様自身はそんな噂を意に介しもせず、ぶらぶらと悠々自適な毎日を送っていた。 ある時、若様は客の訪問を受けた。昨年に赴任してきたばかりの苓水県の知県で、姓を裘(きゅう)という。良く言えば清廉潔癖、悪く言えば融通がきかない堅物、という評判の人物だ。 その堅物が、「頼む」 と、ひどく切羽詰まった様子で言った。 夏の盛りの夕方で、空気は煮えたように暑かった。「ぜひとも、若様のお力を貸していただきたい」 若様の父親ほどの年頃で、知県という軽くはない地位にいる人である。それが、無官の若様にそう言って頭をさげたのだから、よほど困っているのだろう。しかし、当の若様は興味もなさそうな顔で、ぱたぱたと扇を使っている。「一体、どうしたのさ」 金色の目の若様は、誰に対しても、そんな気安い話しぶりをした。息子ほどの年頃の若様にそんな話し方をされて、知県はややむっとしたようだった。それをぐっと我慢して、実は、と、知県閣下は次第を語った。話によると、裘知県は都の人だが、たまたま赴任してきた孟州の地が気に入り、この正月に月橋巷の古い屋敷を買い求めたのだという。苓水県は孟州のすぐ隣の県である。「若様も御存知でしょう。西域で戦死された尹(いん)将軍の旧宅です。長いこと空き家だったので、いささか手を入れました。しかし、住み心地は悪くない。それに、どういうわけだか、引っ越すなり十年もできなかった子供ができて」「そりゃおめでとう」「そのとたん、妻の気がふれました」「へえ」「ばかばかしい話で、一日中、寝台にこもって泣いている。時には怒ってものを投げたりもする」「浮気がばれたな」「まさか。私は蓄妾などという風潮には反対だし、妓楼などにも出入りはしない。それなのに、それはすさまじい有り様で、手の施しようがない。そのうえ、噂を耳にした知人たちが、祟りではないかと道士などを連れてくるのです」「方角でも悪いのかい。北が低いのはよくないらいしよ」「私は風水も道士も信じてはおりません」 裘知県は背筋を伸ばし、きっぱりと言い切った。「君子は怪力乱神を語らずと云いますからな。しかし、知人や隣人、家人や役所の下役などが次々と道士や僧侶を連れてきて、それらがまた、口を揃えて言う。由緒ある屋敷に手を入れたため、住み着いていた幽鬼がたたりをしているなどと。それも、ばかばかしい、赤子の幽鬼がいるらしい」「きたな」 若様は眉を寄せた。 このごろ、そんな相談が多くて困る、と若様は苦い顔をした。「僕は、坊主でも道士でも呪い師でもないからね、幽鬼を追い払うなんてできないよ」「私も幽鬼など信じません」 ばかばかしい、と知県は何度も繰り返した。どうやら、それが口癖らしい。「その証拠に、それらの道士、僧侶めらがどんな祈祷や法要を行っても、まるで効果があがらなかった。それどころか、幽鬼と聞いて妻の病状は悪くなる一方だ」 辟易した知県は道士たちを叩き出したが、もとより医者も薬も役にたたず、藁にもすがりたい気持ちで来たという。「家僕どもも怯えているし、ここは若様に、幽鬼などいない──と、証言していただきたいのです」 裘知県は部下に命じて、ずらりと贈り物を並べさせた。「妻はおそらく妊婦にある気鬱のやまい。そのうえ新しい屋敷になじめずに、幽鬼などを心でつくりだすのに違いない。とはいえ、このままでは妻の身も腹の子も案じられてならぬので、若様に頼むのです。評判の若様が幽鬼などいないと太鼓判をおしてくれれば、誰もが納得するでしょうからな」 並べられた盆の上には、絹、綾、錦から最新流行の靴や頭巾、佩玉などがきらきらと輝いている。若様が並外れた洒落者というのは、街ではそうとうの評判だ。 若様は贈り物をちらりと見た。 そろそろ秋用の衣装を拵えたいと思っていたところではある。しかし、典獄殿は若様が浪費しすぎると、小遣いを減らしてしまった。若様は心の中の算盤をぱちぱちとはじいてみた。「ふうん。なら、ちょっと行って見てみようか」「おお、助けていただけるか」「勘違いをしては、困るね」 若様は伊達者だ。贈り物に目がくらんで助けるというのは、伊達ではない。若様はぱちりと扇を閉じて、涼しく言った。「面白そうだから、見に行くだけさ」続く(全四回)
2007年02月17日
水滸伝でお正月──といえば、現在の旧正月、春節とも呼ばれる陰暦の新年のことです。この時には、みな必ず故郷に戻り、家族とともに過ごす習わしです。現在でも、中国や韓国ではこの旧正月のほうを盛大にお祝いします。危険だからと禁止されている所も多いようですが、爆竹を鳴らしたり、餃子などのごちそうを食べたり、“お年玉(圧歳銭)”の習慣もちゃんとあります。日本人にとっては、二度お正月を楽しめるようで、ちょっと得な感じがしますね。今年の春節は二月十八日。例年ですと、この頃から本当に暖かくなり、日ごとに春めいてくるのですが、今年は暖冬のため、あまりその実感がありません。※春節記念として、外伝の短期集中連載を行う予定です。
2007年02月17日
「いいか、天地に背かれ、自分さえ信じられない時にでも、この、魯智深だけは信じろ。いいな」 絵巻水滸伝(第1巻)第十回 風雪山神廟より、"花和尚"魯智深~森下翠 撰
2007年02月16日
東京神田小川町の歴史専門書店『時代屋』さんに「正子公也コーナー」を作っていただきました!『絵巻水滸伝』を中心に、三国志パズルや戦国携帯クリーナーなどのグッズ、画集や正子公也が表紙を描いた三好徹『興亡三国志』(集英社文庫)、伴野 朗『呉・三国志 長江燃ゆ』(集英社文庫)、金庸武侠小説シリーズ(徳間文庫)も揃っています。また書店に併設されている喫茶室・茶屋には、お茶を飲みながら閲覧できるよう『絵巻水滸伝』第1巻と画集2点『梁山豪傑壱百零八』・『百花三国志』を置いていただいています。ぜひお出かけ下さい! 時代屋さんのHP★
2007年02月15日
今月25日、『絵巻水滸伝・第6巻 祝家荘風雲』が発売されます。美貌の女剣士・扈三娘が華麗に登場、誰よりも強くありたいと願う彼女の前には、どんな運命が待ちうけているのでしょうか。 『絵巻水滸伝 第6巻 祝家荘風雲』勝って、私は自由になるの──天然の美貌、海棠の花──うるわしき“一丈青”扈三娘、梁山泊に戦いを挑む!2月25日発売予定B5版 オールカラー256ページ 定価3,500円(税抜)
2007年02月14日
もののふさんとのコラボレーション、「正子公也の『戦国絵巻』シリーズ・第一弾」として、先日お知らせした戦国武将をモチーフとした携帯クリーナーが完成しました!ちいさな面積に10種のイラストが鮮明に再現されています。「もののふ」さんのサイト
2007年02月13日
たくさんのご訪問ありがとうございます。20時8分に2万ヒットを記録しました。見事2万アクセス目を踏まれたのは、花栄ファンのtomoeさんです。おめでとうございます!記念画像リクエストは花栄の妹、花宝燕です。宝燕は6巻にも登場しますので、どうぞお楽しみに! 今回、惜しくも逃した方は、次の3万アクセスを狙ってくださいね。
2007年02月12日
今年も多くのご訪問ありがとうございます!お蔭様で早くも20000ヒット目前となりました。つきましては、20000ヒットを記念して、再び★記念画像・リクエスト企画★を行います。20000アクセスを踏まれた方に、記念画像をリクエストしていただきます。見事20000ヒット目を獲得された方は、なるべく早く「メッセージを送る」から、ご希望の人物(できれば女性が良いのですが、男性でも構いません)と、リクエスト者として公表可能なハンドルネームをご連絡ください。なお、1時間を経過してもご連絡がなかった場合は、この権利は無効となりますのでご注意ください。みなさん、どうぞ右上のカウンターにご注目下さい! ※予想※20000ヒットは12日夜~13日朝あたりに出そうな気配です!
2007年02月12日
『絵巻水滸伝』が東京新聞の読書欄に掲載されました(林冲のイラスト入りです!)。ご購読されている方は、どうぞ見てみてください。※中日新聞にも掲載されたようです。
2007年02月11日
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『絵巻水滸伝』は駒田信二先生の全訳本を底本にしています。これは唯一の120回本の完訳です。省略されることの多い詩の部分も丁寧に訳され、セリフ回しもたいへん趣があります。森下がこれを読んだのは、およそ20年前。今は絶版となった井上洋介氏の表紙の講談社文庫版です。本はもうだいぶ傷んでしまいましたが、水滸伝の魅力は今も昔も変わりません。変わったことがあるとすれば、昔はよく分からなかった詩の部分の面白さに気づいたことでしょうか。語句も味わい深く、好漢たちの姿が生き 生きと見えるようです。実は、森下は駒田先生に一度だけお会いしたことがあります。といっても、駒田先生の小説を原作にしたお芝居を見に行った時に、ゲストとしていらしているのをお見かけしただけなのですが…。雨の降る寒い日で、会場も暗かったのですが、背の高い、飄々とした、いかにも「文士」という印象のお姿をよく覚えています。 その時は、こんな形でお世話になるとは思ってもいませんでしたので、サインを頂いておけばよかった…と、ちょっと後悔しています。『絵巻水滸伝』は、物語・人物ともに「いかに原典を変えないか」を意識して書かれています。絵巻と原典、どちらを先に読んでも、なるべく印象が同じであってほしいのです。絵巻を読んで原典を読めば、原典がもっと面白く感じる…そんなふうだと一番いいと思っています。絵巻ファンのみなさんは、原典ファンでもあると思いますが、もしも、まだ原典を読んだことがないという方がいたら、ぜひいつか読んでみてください。(文責・森下翠)水滸伝(1)(ちくま文庫 全八巻) (講談社文庫 絶版)
2007年02月11日
『今古傳奇』表紙シリーズ第三弾! 中国側が誰を次に選ぶのか、だんだん楽しみになってきました。そして、3冊目…選ばれたのは、やはり意外な好漢・‘鉄笛仙’馬麟でした。物語中でも、なかなか活躍の場がない馬麟ですが、爽やかな草原を背景に 早くも登場となりました。子猫は驚いていますが、駱駝氏は自慢そうです。
2007年02月10日
★オンライン書店のアマゾンで『絵巻水滸伝』の中身検索が始まりました。1~5巻の内容を数ページ見ることができます。中がどんなふうになっているのか、まだご覧になっていない方は、ぜひ覗いてみて下さい。当ブログでも、以前に何度か「中見せ」を掲載しています。こちらもどうぞ。★『絵巻水滸伝』中見せ!~part1★★『絵巻水滸伝』中見せ!~part2★★『絵巻水滸伝』中見せ!~part3★ なお、『絵巻水滸伝』の取り扱い書店も少しずつですが増えています。取り扱い書店一覧は随時更新されていますので、お近くの書店があるかどうか、どうぞ一度ご覧下さい。★『絵巻水滸伝』取り扱い書店一覧★
2007年02月09日
「わしにいとまごいして、どこへいくというのだ」廬俊義の問いに燕青は答えます。「やはりあなたさまのおそばに」燕青はいずこともなく去ってゆきました。旅立ちの朝、草原にひとり、燕青は風に向かって立っています。見つめるその向こうに、いったい何があるのでしょうか。 遠くで雁がなきました。 絵と文★正子公也*『絵詞』は1996年に描いた水滸伝人物画約20点に添えられた、正子公也の文章を当時のまま、掲載しました。(初出;光栄刊「水滸伝」好漢ファイル)
2007年02月08日
「どうぞ」 逆光の中、呉用は白羽扇で波の彼方を示した。「ようこそ──梁山泊へ」 夕焼けに染まる水平線には、沈んでいく夕日を背景に梁山の峰がはっきりと浮かびあがっていた。絵巻水滸伝(第4巻)(第三十三回 風濤より)
2007年02月07日
「──あれは……!!」 人々は、息を飲んだ。 落雷を、誰もが見たと思った。その熱と光を、確かに感じた。 咆哮と共に組み上げた材木が崩れ落ち、瓦礫の上を、巨大な蹄が踏みしめた。「化け物だ……!!」絵巻水滸伝(第4巻)(第三十回 霹靂火より)
2007年02月06日
「小父様、お待ちしていましたわ」 花宝燕が進み出て、よく通る声で挨拶した。花栄によく似た端正な顔、真っ直ぐに上げた姿には、少年のような颯爽とした雰囲気がある。絵巻水滸伝(第4巻)(第二十八回 清風山より)
2007年02月05日
長安に男児有り二十にして心すでに朽ちたり楞伽 案前に堆(うずたか)く楚辞 肘後に繋(かか)る人生 窮拙有り日暮 聊(いささか)か酒を飲む祇今(ただいま) 道すでに塞(ふさ)がる何ぞ必ずしも白首を須(ま)たん (※訳は陳瞬臣『中国詩人伝』より。祇の字は、実際には氏の下に横棒あり)“鉄叫子”楽和が愛唱する李賀の詩(「陳商に贈る」)の冒頭部です。李賀は“鬼才”と呼ばれた唐代の詩人です(791~817)。鬼才の“鬼”とは幽鬼のこと──李白が“天才”と呼ばれ、天上の才を持っていたのであれば、彼は人ならぬ冥府の才を持って生まれたのです。“鬼才”の名にふさわしく、李賀は人の想像力の限界を凌駕した絢爛たる光輝と、冥府から吹く昏い陰風のごとき頽廃を、幻想的なひとつの世界に歌い上げました。 才気に溢れ、伝統にとらわれないその詩文は難解でありながら人々を引きつけましたが、同時に、彼の不遜な性格は容易に他人とは相いれないものでした。 李賀は失意のうちに生涯を送り、ふと病んで亡くなります。 まだ二十七歳という若さでした。しかし、彼の孤高の魂は、二十という若さで、既に朽ち果てていたのです。 死にのぞんで、李賀は見守る人々に言いました。「天帝が白玉楼をお作りになり、その記念の文章を作るために私に迎えの使者をお遣わしになりました」 行かねばならない──と李賀は泣き、ほどなく息を引き取った……と伝えられています。 最後まで幻想の世界に生きようとしたのか、それとも、幻想の世界もまた、彼の魂を慰めてくれることはできなかったのでしょうか。 楽和もまた、幽明の境を歩くような若者です。彼のもとにも、いつか天上からの使者が訪れるのかもしれません。(「第76・77回 元宵」他)
2007年02月04日
凛々しき顔立ち、目色涼しく眉に力あり。日・月二振りの刀を自在に操り、扈家荘の‘おひいさま’は華麗に登場、名だたる豪傑相手に堂々と渡り合います。投降後は集団に埋没して光なく、ただ戦場においてのみ呼吸を許されます。春の陽が虹色に陽炎となり、ものいわぬ佳人は籠から放たれた蝶のように、魔法の燐粉をふりまきます。 絵と文★正子公也*『絵詞』は1996年に描いた水滸伝人物画約20点に添えられた、正子公也の文章を当時のまま、掲載しました。(初出;光栄刊「水滸伝」好漢ファイル)
2007年02月03日
『今古傳奇』表紙シリーズ第二弾!中国の編集部が楊志の次に選んだのは、母大虫・顧大嫂でした。ただ問題は「足」。中国では伝統的に女性が素足を見せるのはタブーなのです。「どうにかなりませんか」と頼まれましたが…靴を履かせるわけにもいかず、これはどうにもなりませんでした。そのせいかどうか、背景は素敵なリゾート海岸になりました。海水浴なら、はだしにならないわけにはいきません。「顧ばば、虎に乗って海へ」というところでしょうか。
2007年02月02日
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昨年1月、愛蔵復刻版『絵巻水滸伝 梁山豪傑壱百零八』とともに、正子公也が描く三国志の画集が同時刊行されました。「見よ!あの者、人にあらず鬼神なり」15年の集大成!絵巻作家 正子公也が贈る壮大なる歴史絵巻!!AB判/オールカラー/120ページ/定価3200円(税別)四色+ニス塗りの五色刷印刷、ポスター4種(2枚両面)付本文は二部構成、第一部は蜀、魏、呉、それぞれの武将を描いた「蜀志・魏志・呉志列伝」、第二部は物語の臨場感あふれる「三国志絵巻」。(英訳併記)これまで出された画集には未収録のイラストの他、新作描き下ろしや、幻の画集『龍闘野』掲載作など初期作品の加筆修正版も多数収められました。三国志ファンのみならず、ぜひ手にとってご覧ください! ★『百花三国志』★
2007年02月01日
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