2017年07月23日
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カテゴリ: Classical Music



皆様、朗報です!
先日大阪で上演されたバーンスタイン「ミサ」を鑑賞された、「名古屋のおやじ」さんが感想というか?学術的論文というか?すばらしい原稿をいただきましたので、ご許可を得まして掲載させていただきます!誠にありがとうございます!!
なにとぞよろしくお願いいたします。

***
≪公演概要≫

第55回大阪国際フェスティバル2017
大阪フィルハーモニー交響楽団創立70周年記念特別企画

バーンスタイン「ミサ」


[14日]19:00開演
[15日]14:00開演

フェスティバルホール(大阪)

総監督/指揮/演出:井上道義
ミュージック・パートナー:佐渡裕

美術:倉重光則
照明:足立恒
振付:堀内充

[キャスト]
司祭:大山大輔 ほか ソリスト16名

大山大輔

小林沙羅
鷲尾麻衣
森山京子
藤木大地
古橋郷平

村上公太
加耒徹
久保和範
与那城敬
ジョン・ハオ


合唱:
大阪フィルハーモニー合唱団(合唱指導:福島章恭)
ボーイソプラノおよび児童合唱団(公募によるオーディション)

以下転載。

***

 先日、国内では23年ぶりという、バーンスタインの『ミサ』を鑑賞してきました。自作自演盤を含む幾つかの音源を聴いたことはありましたが、実演に接するのは初めてでした。実は、15日には豊田でコープランドの交響曲の3番ほかをデトロイトのオケ(自動車繋がり?)が演奏することになっていて、そちらも聴きたかったのですが、演奏機会の少なさの点から、結局「大阪遠征」を選択しました。コープランドはバーンスタインにとって特別な作曲家だったらしくて、例の「ヤング・ピープルズ・コンサート」で積極的に紹介していたんですよね。二人はエスニシティ、政治信条、そしてセクシュアリティの点でも共通するところがありました。

 なにやら捉えどころのない「ごった煮」のような作品というのが、音源のみを聴いていた時の『ミサ』に対する私の印象。しかし、「歌手、演奏家、ダンサーのための劇場用作品」というサブタイトルどおりに、舞台上演された今回の公演は、「ごった煮」という印象を変えるものではなかったにせよ、予想を超える大きなインパクトをもっていました。あの作品が、その本領を発揮するためには、あきらかに劇場空間が必要です。

 『ミサ』はワシントンDCのジョン・F・ケネディ・センターのこけら落としという特別な機会のために制作されたわけですが、今回初めて実演に接し、本作が大人数の多彩な出演者を必要とする特別な作品、したがって上演機会が限られる、まさに「フェスティヴァル」向きの作品(今回は大阪国際フェスティヴァルの一環の上演)であることを実感しました。また、「祝典」のために書かれた作品だけれども、『ミサ』がお祝いムードの内容になっておらず、アメリカへの批判を含んだものになっている(当時のニクソン大統領は初演を欠席)のは、音楽の世界での活動のみならず、様々な社会運動に関わったバーンスタインらしいとも思いました。

 今回の上演では、主役の司祭にバーンスタイン本人を重ねるという演出がなされていました。ところどころ司祭が指揮をするような身振りをするところがあったのですが、独特の腰の振り方とか、バーンスタインの指揮ぶり思わせるものになっていました。そのバーンスタインの実演には、1回だけ接したことがあります。「伝説的」という言葉と共に語られることの多い、1985年9月に行われた名演の誉れ高いイスラエルフィルとのマーラーの交響曲の9番。会場はNHKホールでした。演奏と空気の非常な「重さ」(湿度がとても高い日でした)、そして幾度となく繰り返された答礼の最後に、バーンスタインがマント(記憶が間違っていなければ、裏地は赤)を燕尾服の上に羽織って舞台上に現れたことを覚えています。そして、その姿を見て、ふと、彼は「劇場の人」なんだと、思ったことも。

 初めて『ミサ』を耳にした時に、ロックとキリスト教を組み合わせた舞台作品ということもあり、同じ年に初演された『ジーザス・クライスト・スーパースター』みたいな作品だなあと思いました。後者の方が1か月ほど後の初演ですが、舞台制作に先立ってまずレコードが作られ、その大成功のちに舞台が制作されたという経緯があるので、バーンスタインはおそらく『ジーザス』の音楽は知っていたように思います(このミュージカルの制作については、『燃えあがるロックオペラ―「ジーザス・クライスト・スーパースター」の創造』なる本を昔読んだことがあります)。

 『ミサ』と『ジーザス』との影響関係は推測にすぎないのですが、『ミサ』の初演よりも数か月前にオフ・ブロードウェイでオープンした同傾向のミュージカルを、今回会場でいただいたプログラムには一言も言及がないけれども、バーンスタインは実際に見て知っていました。『ゴッドスペル』という作品です。歌詞の担当はスティーヴン・シュウォルツ(彼の最も有名な作品は『ウィッキド』かな)。彼は『ミサ』でも、バーンスタインと一緒に英語の歌詞を書いていますが、なぜ、彼がこの作品に参加しているのか。それは、シュウォルツのエージェントを当時していたのが、バーンスタインの妹のシャーリー(この兄妹はとても仲が良かった)で、『ミサ』の制作に行き詰っていた兄を『ゴッドスペル』の舞台に連れて行き、この作品を楽しんだバーンスタインが彼の協力を望んだからです(我ながら変なことを知っていますね)。『ミサ』はとてもミュージカル的な作品ですが、その制作過程でブロードウェイそして、その当時のトレンドとも密接な繋がりがあったわけです。

 多くのソリスト、コーラス、オケ、ロックとブルースのバンド、おまけにマーチングバンド等々の大編成。これをまとめるのは容易なことではなく、今回の演奏にキズがなかったと言えばウソになります。しかし、それをまとめようとする指揮の井上さんの強い意志はヒシヒシと伝わってきました。ストリートコーラスを担当したソリストはとても豪華でしたが、彼らの舞台を見て、キリ・テ・カナワやカレーラスなどのオペラ歌手を起用して作られた『ウエストサイド』の自作自演盤を思い出してしまいました。作品が求めるものと、そのパフォーマンス(歌詞の扱い、歌いぶり、そしてダンス等)の間に、ちょっと距離(人によって、大小の差はもちろんあります)を感じたのです。彼らのパフォーマンスが高水準のものであったことは、間違いなく確かなのだけれども。この手のジャンル越境型の作品の上演は、本当にむずかしい。2日間連続で、司祭役を務められた大山さん。体力や声の面で大変だったと思いますが(ところどころ、声のコントロールに苦労なさっていたようでした)、役柄にコミットした熱演。特にその終盤の歌、そして演技は感銘深いものでした。「聖体分割式」と題された16曲は、今回の大山さんの迫真の演唱を拝見して、バリトンによる一種の「狂乱の場」なのだと思いました。そして、ボーイソプラノの込山君へは最大級の賛辞を捧げたい。光輝に満ちた彼のパフォーマンスを体験できたことは本当に幸せでした。彼の舞台を鑑賞できただけでも、大阪に足を延ばした価値があったと思います。

 会場で3月のN響の『ウエストサイド』の公演のチラシをもらいました。どのような公演になるのでしょうか。

(転載終わり)





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最終更新日  2017年07月23日 21時24分44秒


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