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魚屋の水槽の中で、大きな魚が小さな魚に向かって偉そうに言う。「今を一生懸命に生きることだ。君はまだ若いのだから。若いときの努力は必ず報われる。今、努力しなければ将来必ず後悔する。」 そのとき、魚屋の手がずんと水の中に入ってきて、小さな魚はするりとその手を逃れたが、大きな魚は捕まって引き上げられていく。 小さな魚は、大きな魚が言ったことがとても貴重な意見であったような気がして、大きな魚がいなくなって広々とした水槽を力のある限り思いっきり泳いでみた。 体力を使い切って、息を切らして佇んでいると、今を必死に生きるという意味が少しわかったような気がした。少し休んでから、再び全力で泳ぎ、さらに、力を溜めて何度も水中から飛び上がった。躍動する筋肉が気持ちよく、こんな風に体を鍛えた努力が将来報われるに違いないと思った。 水がはねて、魚がまだ水槽の中にいることに気づいた魚屋は、もう一度、水槽の中に手を入れて小さい魚を捕まえた。「こんなに小さくては売り物にはならん。」と魚屋はいまいましそうにつぶやくと、そのとき路上にいた猫の方にその魚を放り投げた。#130
Jan 31, 2010
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通信販売で「人生を多少変える靴」と名づけられている靴を手に入れた。 どういう靴かと思って、履く前にその靴を手にとって見てみると、左足のかかとの靴底が斜めに削られている。履いてみると、やはりひどく歩きづらい。 その靴を履いて外に出ると、足元が気になってしばしば下を見ていたせいであろう、500円玉を拾った。確かに「人生を多少変える靴」なのかもしれない。#127
Jan 23, 2010
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少しお金がかかりますが、感動を、それも飛び切り大きな感動をあげましょう。例えば、オリンピックで金メダルを取ったときとか、ノーベル医学賞を受賞したときと言った、それこそ何億人にひとりしか味わえない感動をあなたは手に入れることができるのです。 現代のコンピュータ技術と脳医学を融合させて開発した私のシステムを使えばそれができるのです。 まず、自分が何十年もそのために努力を重ね、苦労してきたという記憶をあなたの脳に注入します。これが第一ステップです。要するに苦労が大きければ大きいほど、感動が大きくなるという原理です。 次のステップは周囲の人々の賞賛、羨望のまなざしの創造です。新聞や雑誌の取材、テレビ出演、街を歩くと取り囲む人々、そういった環境が、自分は他人のできないことをやったという感動を持続させます。その環境のイメージを脳に伝送します。 あなたの望む感動、売れっ子の歌手になりたい、それもいいでしょう、私の開発したシステムでこの二つのステップを行えばあなたもその感動を味わえるのです。 もう努力なんか必要ありません。自分の素質なんか関係ありません。本当にそうなったときとまったく同じ感動が得られるのです。 ただ、問題なのはその感動からさめて現実に、現実のみすぼらしい自分に戻ってからのことです。一部の人はあまりにその落差が大きいので、ショックで精神的な病になって立ち直れない人々もいます。 そこで私は新サービスを開発しました。オリンピックで金メダルをとって、観客の拍手が鳴り響き、その感動の絶頂に達したままで現実に戻らないようにしました。この感動があなたの人生の最後まで続くのです。と言いますか、感動が最高潮に達したときにあなたの息を止めさせていただくというわけですが。 いかがなものでしょうか。多少、お金がかかりますが、惨めでつらい人生を送るよりも感動に浸る方がよろしくありませんか。もし興味がありましたら私に連絡をください。今ならお安くしておきます。#125
Jan 17, 2010
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私はこうもり男であって、バットマンではない。映画に出るほどにかっこよくはないし、悪人と戦うわけでもない。私は目を閉じていても障害物を避けて歩ける。どうも脳から超音波が出て、それが物体にあたって跳ね返ってくるのを知覚できるようである。そういう意味で私はこうもりと同じ能力を有している。しかし、それが活かせる場合がほとんどない。夜、周囲が真っ暗でも、私はこの特殊な能力を用いて障害物を察知できる。だが、私の住む大都会に真の闇はない。肉眼で十分なのである。それどころか、夜、この能力で障害物を感じ、それに気をとられて、足元の石ころに足をすくわれてしまうことすらある。ただ、この能力のおかげで、毎年、夏になると臨海学校などで行われる、目隠しをするすいか割ではいつも周囲から一目置かれていた。これが私の能力を活かした唯一の晴れ舞台であった。#124
Jan 10, 2010
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義母から私に手編みのセーターが送られてきた。思ったとおり、そのセーターを着て妻と口論をすると、セーターが縮み始め、呼吸ができないほどに私の胸を締め付けてくる。義母は何もかも見通していたのにちがいない。手編みのセーターの一編みごとに、霊力を織り込んである。そのセーターを脱げばよいのかと思ったが、妻と口論するとそのセーターが箪笥の引き出しから私の顔をめがけて飛んでくる。しかし、感謝しなければいけないのも事実で、これを着ていると外がどれほど寒くても、その寒さが苦にならない。その上、年末にマンションのベランダの外に出て掃除をしていて、5階から落ちてしまったときに、その下に生えていた木の枝にセーターがひっかかり私が地面に激突するのを救ってくれたのである。この事件で義母の霊力も力尽きたらしく、それ以来、そのセーターは妻と口論をしても私を締め付けることはなくなった。ただ、これを着ていれば寒くならないのは相変わらずで、私はぽかぽかと気持ちがよくなるせいか、妻との口論も少なくなった。#123
Jan 3, 2010
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