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何百メートルも下と言っても、ちゃんとふわふわのマットが敷いてありますから安心してください。そのマットが恐ろしく小さく見えるかもしれません。でも、人間のジャンプ力を考えると、飛び降りたときにそのマット以外のところに落ちることは、まずありません。風が考慮してあるかって?その質問は、本来、飛び降りる前にするべきだったのです。でも、心配ご無用です。台風の時ぐらいの強い風なら話は別ですが、今日ぐらいの肌に気持ちのよい風ならまったく問題ありません。さあ、体を大の字に大きく開いて、風を体で思いっきり受けてください。落下する速度を多少遅くすることができるかもしれません。地面に到達するまでの時間を少しでも長く伸ばせるかもしれません。この一瞬なのです、あなたに感じてほしかったのは。あなたがこんな高さから飛び降りて、本当に助かるかどうか、そんなことは気にする必要はありません。あなたの意識はまもなく失われていきます。あなたが、再び意識を取り戻すか否かより、あなたが、今、全力で落下に対して立ち向かっていることが大切なのです。所詮、人は今の一瞬にしか生きていないのですから。
Jan 27, 2008
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父が子供に「あなたには無限の可能性がある」と語りかけると子供は父からすごい力をもらったような気になって父を尊敬の眼差しで見つめることもあっただろう。そんな時から30年も40年も経って自分にあきらめてその本当の意味がわかるようになると人々は再び子供に語りかける「あなたには無限の可能性がある」と。しかし、数少ない人々は信じている。古代ローマにも明治時代にも生命の尽きるその瞬間が迫っている時でさえ「わたしにはまだ無限の可能性がある」と呟いた老人がいたことを。
Jan 20, 2008
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彼女は無罪なのである。 ほんの少し前までは、あれほど一緒の時を過ごしたいと思っていたというのに、ひとつの歯車が何かの拍子に壊れてしまったのか、もうその想いは彼女にはない。彼女が悪かったわけでも、彼氏が悪かったわけでもない。 以前は愛していた人、そして、今はそばにいるだけで彼女をいらいらさせる人が、彼女のすぐ目の前で交通事故に遭遇したのである。彼が彼女を自宅まで送る途中で、彼女が車の往来が激しい道を横切ろうとして飛び出し、一瞬ためらった後に彼が追随して、事故が起きた。二人の思いは一緒ではないことが、こんな形で証明された。 ひき逃げした車がスピードを緩めることもなく遠ざかっていくのを、あたかもテレビのワンシーンを見るように、彼女は叫び声を上げるわけでもなく呆然と眺めていた。 救急車を呼ばなければいけないと思ったけれども、あいにく彼女は携帯を家に置き忘れていた。しかし、後数分歩けば、家に着く。 家のドアを開けるまでは、急いで救急車を呼ばなければと気がせいていたが、家の中に一歩足を踏み込みドアを後ろ手に閉めて、外と閉ざされた空間ができると、彼女には今しがた起きた事故が現実のものではなく、単なる自分の妄想のように思われた。 清潔好きの彼女らしく何もかもがきちんと整理、整頓され、落ち着きが保たれた部屋が急速に彼女を変化させた。 キッチンの流しに水を張って置かれている洗面器に、昼間買ってきた花が浸かっている。その中途半端な状態が唯一部屋の秩序を乱しているように見えた。この花を活けて部屋の秩序を回復させることが最優先の課題であるに違いない。彼女はそう思った。 彼女は洗面器の水の中に静かに横たわる花の茎の端をはさみで斜めに切断した。切断する本当に最初の1秒にも満たない時間、彼女ははさみを握る右手に少し大きな力を加えなければならなかったが、その時、大きな動物の血管を断ち切るような気持ち悪さを感じた。
Jan 14, 2008
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言葉が螺旋の軌跡を描いてきりきりとあなたの心の分厚い肉に食い込んでいけばよいと思った。追い詰めてさらに追い詰めてわたしへの復讐を誓うほどにあなたを苦しめたいと思った。口汚くののしってあなたの心を傷つけた女がいたと覚えていてほしいと思った。
Jan 6, 2008
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