未完成のブログ

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Apr 16, 2016
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カテゴリ: MirageKnightCase
MKC1話[ナイト]

赤茶髪に奇抜な柄のシャツ、18歳の宗像刀耶は今日も大学の授業をサボり秋馬原のゲームセンターで格闘ゲームに興じていた。
平日正午前の時間、客は刀耶を含む常連が殆どである。

「あーめんどくせぇ…」

刀耶は缶コーヒーを飲み干して両替機の横にあるゴミ箱に缶を投げ捨てながら呟いた。刀耶のプレイしている格闘ゲーム[ハイパーキングファイター]はインターネットで繋がっており世界中のプレイヤーと対戦することが可能。プレイヤーはバイザーを付け仮想現実の世界で分身となるアバターを操り対戦する。アバターは両手レバーとフットペダルで操作する。刀耶は東京秋馬原店の代表プレイヤーとして全国的に有名であった。最近その刀耶に事あるごとに絡んでくるプレイヤーがいる。そのアバターを見つけた為、刀耶は面倒だとつぶやいたのだった。

「またコイツかよ…」

[ハイパーキングファイター]は武器有り武器なし混合の三つのモードがある。刀耶が得意としていたのは武器有りのモードで、西洋剣のロングソードを使用していた。刀耶に絡んでくるプレイヤーは投網三叉槍を使用している。ロングソードはクセがなく初心者から上級者まで幅広く使われており、投網三叉槍は扱いが難しく戦法がいやらしいために人気は低い。
刀耶のアバターの名前は【トーヤ】。対戦相手は【アラクニド】。

「いつものようにボコってやるか」



「網が使えなきゃ大した事ねえし、網だって外せば隙だらけだしな」

と、刀耶は言うが実際投網三叉槍のキャラが弱いわけではない。槍の攻撃で相手の足が止まれば網を放ち動けなくなったところでコンボを決めることができる。投網投げを放つタイミングの見切りとコンボのタイミングがシビアな為に使いこなすのが難しいだけである。

刀耶とアラクニドの攻防は続き、ついにアラクニドは一度も網を投げれないまま敗北した。
刀耶はただの一度も攻撃をガードせず、全て弾きと回避で三叉槍をさばいた。並のプレイヤーには到底真似のできない勝利の仕方であった。

「もう読めてんだよ」

その後刀耶はアバターをログアウトさせゲームセンターを後にした。

「はぁ…大学はつまんねーしめんどせぇ…このまま2年終わって3年になって就活して4年で卒論書いて卒業して就職して…はぁ~つまんね~」

刀耶は退屈から抜け出せると思って東京の大学に入学した。秋馬原に部屋を借りたのは賑やかで若者が多く、最先端の機器、メディアを取り揃えた街だからという理由であった。最初はそれなりに刺激的だった。しかし1年が経ち慣れ、同じことの繰り返しに嫌気が差してきていた。

「就職したら同じことの繰り返しを40年以上か…耐えられねー…かと言って実家に戻って家業継ぐのもめんどくせぇし…」

『コンニチハ、本日も、アキバハラは綺麗デス』

ドラム缶型の清掃ロボットが刀耶の横を走っていった。



刀耶は昼食を買いにファーストフード店【マスド】に入った。週に3回は来ている。

「いらっしゃいませー!メニューはお決まりでしょうかー?」

黒髪ボブカットの店員が笑顔で言った。

「ポーク照り焼きバーガーとミルクMサイズで持ち帰りで」

「ありがとうございます、お会計は480円になります。ポーク照り1、ミルクM1入りマース!」



「さて…と、昼からどうすっかな…バイトまで時間あるし」

刀耶はマスドの紙袋からミルクを取り出してストローを刺す。口をつけて飲もうとするとどこからか声が聞こえてきた。

「もし、そこの男の人、ミルクを恵んではくれませんか?」

「は!?どこだ??誰だ?俺の事??」

「そうです、そこの変な柄のシャツを着たあなたです。右後ろを見てください」

変なシャツと言われて少しむっときた刀耶は険しい表情で右後ろに振り向いた。そこには…白いフードにガスマスク、股下まであるピンクのジャージ、こげ茶色のレギンス、赤いスニーカー、に白手袋の人物が路地に立っていた。体型から女性だと分かる。

「………」

「何をじっと見ているのです?早くミルクをください。私が死んでも良いのですか?」

「は?…え!?………なんだよお前…変なのにはかかわらないでおこう」

刀耶は妙な格好の人物から視線を外し歩き出す。

「待って!この格好には理由があるのです!!とにかくミルクをください!!」

大きな声で呼び止めるガスマスク。

「いや何でだよ?何で見ず知らずの変な奴にあげなきゃなんねーの?」

「助けを求めている女性を置いて行くのですか?それでも男ですか!?」

「あのさぁ…交番に行けば?そんな風にしてるとヤバい奴らにさらわれても知らねーぞ?」

「それは無理です。お礼は必ずしますのでとりあえずそのミルクをください!!もう倒れそうです!ほら、倒れました!!」

ガスマスクは芝居がかった大げさな動作で倒れこむ。あらかじめ用意してあったのか綺麗に畳まれたブルーシートの上に大の字になった。

「…じゃあな」

「ストップ!!止まらないとあなたにひどい目にあわされたと叫びまくりますよ?」

「はぁ!?何言ってんのお前…」

頭にきた刀耶は一発叩いてやろうとガスマスクに近づく。

「こんなものかぶりやがって!路地の影にチンピラでも隠れてるか?」

マスクを外そうと手を伸ばしたその時、ガスマスクは寝たままの姿勢で飛び上がり刀耶の頭に飛び乗った。

「気安く触れようとしないでください!なんと無礼な!!」

「なにっ!?」

「ミルクは頂きますね」

刀耶の頭から飛び降りるガスマスク。

「あっ!?」

刀耶のミルクはガスマスクの手の中にあった。

「てめぇ…やるとは言ってないぞ!」

「ぷはー!落ち着いた!!もうこのミルクの所有権は私に移りました返しませんよ?」

マスクのフィルター部分にストローを差し込みミルクを吸うガスマスク。まるでミルクを吸えるようにカスタマイズされたかのような構造である。

「手持ちのお金がなくなりましてね。いつも送られてくるはずのミルクは手違いで3日後になってしまいまして途方に暮れていたのですよ」

「知らねーよ!もうそのミルクやるよ!!」

「申し遅れました、私、リティーシャ・ヴァン・ヴァスベルゲと言います」

「ん?」

「この恩は忘れません、それでは失礼しますさようなら」

「おい!!」

一礼すると路地の奥に猛然と走り消えていくリティーシャ。刀耶は呆然として見るしか無かった。

「なんだありゃ…」

刀耶はアパートの部屋に戻りポーク照り焼きにかぶりつく。ミルクを失った為、水道水で我慢した。秋馬原の水道水は日本名水に数えられるほどで臭さは微塵も感じない。

「ミルク泥棒って…意味分かんねー」

刀耶はまたリティーシャに会えたら面白いかもしれないと考えながらバーガーを腹におさめ畳の上に仰向けに寝転がった。

携帯電話のアラームで目が覚めた刀耶。気づかないうちに昼寝をしてしまっていた。時刻は16:00。

「ふあ~あ…そろそろバイトの時間か…」

刀耶は軽く歯を磨き部屋を出てアルバイト先の骨董品店に向かう。老婆一人で経営している骨董店・溝口堂。たまたま店の前で勧誘を受けてなんとなく引き受けたのであった。

「あのばあちゃんに誘われてなければマスドでバイトしてただろうな…でもまぁばあちゃん所は楽だし珍しいもん売りに来る客いたりするしやめれねーよな」

秋馬原の中心から一本外れた細い道に並んでいる雑居ビルの一階に溝口堂はある。店はさほど繁盛はしてないが溝口堂の老婆はビルのオーナーでもあった。

「刀耶ちゃん」

小奇麗な品の良い老婆がハリのある声で言った。溝口タエ。溝口堂のオーナーである。

「ばあちゃん」

「あたしはこれから買い物に行ってくるからお店よろしくね」

「ああ、任せとけって」

刀耶は店に入ると溝口堂の半纏を着てレジに座る。客は30分に一人ほどなのでその他の時間は店に置いてある古い漫画本を読んで過ごしている。

「あ、いらっしゃい」

客の気配を感じた刀耶は顔を上げる。目の前に帽子を目深にかぶったグレイスーツに紫ネクタイの中年男が立っていた。

「タエさんは出ているのかね?」

「あ、はい。用事ならお聞きしておきますが?」

「そうか、ならまた来るよ」

「そうですか、すんません」

スーツの男は静かにそのまま出て行った。30分ほどして溝口タエが帰ってきた。

「ばあちゃん、さっきスーツのお客さんがばあちゃんに会いに来たよ?」

「ほう、どんな客だい?」

「グレイのスーツに…紫のネクタイをしたオジサン…かな」

「ああ~…それはウチの常連だよ。そっかそっか、来るなら連絡してくれりゃあええものをなぁ…」

「ふ~ん…」

気にもせず刀耶はそのまま終業時間の21時まで過ごした。溝口タエに夕食を誘われて奥の部屋で食べてから店を後にした。アパートに戻ると部屋の前に人が座っている。

「ん~?誰だ?」

ピンクジャージの白いフード、こげ茶色のレギンスに赤いスニーカーのゆるくウェーブのかかった金髪少女が座っていた。刀耶に気づき立ち上がる。

「遅いですよ!!」

「は!?………あ、昼間のミルク泥棒のリティーシャなんたらかんたら!?」

「リティーシャ・ヴァン・ヴァスベルゲです!!泥棒とはなんですか!!」

「何の用?」

「礼をすると言ったでしょう?だから来ました」

腰に手を当て胸を張るリティーシャ。

「つーか…なんで俺の家知ってんの?」

「そりゃあ…ね。ところで家の中に入りませんか?招いてくださいよ」

「質問に答えない!?部屋に入る気かよ…」

「ダメですか?どうしてですか?見られるとまずいものでも置いてるのですか?」

「答えないくせに質問はするのか!?まぁ…別に入ってもいいけど」

リティーシャの容姿は想像していたものを上回っていた。目の前の少女は人形のように目鼻立ちが整っている。不思議と刀耶は部屋に入れることを承諾した。

「宗像刀耶というのですね」

「ああ、うん」

「ではトーヤと呼びます」

「馴れ馴れしいな」

「トーヤ。部屋に招き入れたと言って性的な展開は期待しないでくださいね。そういう気はありませんし襲いかかってきても絶対に逃げますから」

「期待してねーよ!」

刀耶が鍵を開けるとずかすかと入り込むリティーシャ。あわてて靴を脱ぐ。

「失礼、玄関がどこまでかわからなかったので。しかし何の面白みもない部屋ですね」

「失礼な発言はわざとなのか?」

「まぁとりあえず座ってください、渡したいものがあるので」

そう言うとリティーシャはどこからともなく取り出した青く輝く金属のアタッシュケースとブレスレットを取り出しちゃぶ台の上に置いた。

「なんだよ!?いきなり…どこから出したんだ…」

「このカバンとブレスレットを差し上げます。10億円の価値はありますよ」

「は!?」

「ブレスレット着けましょう、はい!かっこいい!!困った時はブレスレットのダイヤ印を押せばいいですからね?じゃあこれで失礼します」

強引に青銀色に輝くブレスレットを刀耶の左腕に取り付けるリティーシャ。

「ちょ待てよ!?全然わかんねーから!!」

「それではまた」

リティーシャは頭を下げるとすぐに部屋を出て行ってしまった。

「なんなんだよ…」

刀耶は空きっぱなしの玄関の扉を閉め鍵をかけ、ちゃぶ台の前に腰を下ろす。

「ブレスレットとアタッシュケース…まさかこのアタッシュケースに爆弾とか仕掛けられてねーよな?」

刀耶はアタッシュケースに耳を近づける。音は何も聞こえない。

「うーん…どうするかこれ…警察に持っていって開けてもらうか?このブレスレットもキラキラしすぎてなぁ…あれ?外せねぇ!?どうやって外すんだこれ」

刀耶は無理やり手から抜こうとするも継ぎ目すら見当たらない。

「くっそー…取れねぇ…はぁ最悪だ…」

「最悪じゃないですよトーヤ!」

「うおおおおっ!?」

窓からリティーシャが覗いていた。

「大丈夫ですよカバンも大事にしてください。ブレスレットは私が外せますし」

「今外せよ!」

「安全ですので安心して休んでくださいそれでは今度こそ失礼します」

「だから話聞けって!!」

窓を開けてリティーシャが隠れていないかを確認する刀耶。

「…何が目的なのかさっぱりわからん。変なのと知り合いになっちまったな」

―翌日
昼頃に目覚めた刀耶はマスドに向かう。この日は刀耶お気に入りの店員下柳景織子(しもやなぎきょうこ)が入っていたので店内で食べることにした。

「(あ~やっぱりきょんちゃん可愛いな~癒されるわ~)」

刀耶は勝手に景織子にニックネームをつけていた。

「お待たせしました~27番のお客様ポーク照り焼きバーガーとミルクです」

刀耶の座っているテーブルに運ぶと笑顔でトレーを置いた。

「ありがとう」

刀耶は笑顔で答える。窓から大通りの人々を眺めながらポーク照り焼きにかぶりつき、ミルクを口に運ぶ。リティーシャのブレスレットに視線を移し昨晩の事を思い出していた。

「(ばあちゃんにこのブレスレット見せるかな。何か知ってるかも知れねーし…)」

「オイコラアアアアアアアアアアッ!!ナメとんのかいイイイイイイイイイッ!!」

突如店内に怒号が響き渡った。人々の視線が声の主に向けられる。筋骨隆々のタンクトップスキンヘッドの男が景織子に顔を近づけていた。景織子は恐怖に震えている。

「きょんちゃんが…!」

「お客様は神様やろうがあああああああああああああっ!!」

「すみませんすみません…」

「神様がそんな謝罪で満足するかコラアアアアアアアアアアッ!!」

スキンヘッドの男は景織子を引き寄せ大きな胸を鷲掴みにした。

「いやああああ…」

「嫌じゃねえだろがあああああああああああああ!!」

刀耶はそれを見て頭に血が上った。

「やめろ!!その手を離せ!!」

「なんだこのガキいいいいいいいい!ブチころすぞこらああああああああああっ!」

男はそう叫ぶとズボンのポケットから拳銃を取り出し刀耶に向けた。

「なっ!?」

「おもちゃだと思うか?本物だぜ?試してみるかコラ?」

スキンヘッドの男はレジに向けて引き金を引いた。乾いた爆発音が鳴り、レジの奥で通報しようとしていた男性店員の肩を銃弾が貫いた。

「ギャハハハハハハハ!!動くんじゃねえぞテメーら!!動いたやつから撃つぞコラ!」

景織子のブラウスを乱暴にひっぱり下着をあらわにするスキンヘッド。

「きゃああああああああ」

「ギャハハハハハハー!!」

「やめろおおおおおおおお!!!!」

刀耶はスキンヘッド男に殴りかかる。右拳がスキンヘッド男の顎を捉えた。

「ああああん?なんだその雑魚パンチは??パンチってのはなああ、こうやんだよおお!」

スキンヘッド男の丸太のように太い腕から左フックが繰り出された。刀耶のこめかみに命中、半回転してテーブルに突っ伏す。

「が…は…」

「ついでに死んどくか?」

拳銃をむけるスキンヘッド。

「(くっそお…きょんちゃんがピンチだってのに情けねぇ…ハイパーキングファイターならこんなやつに負けねえのに…)」

体を起こす刀耶、とっさに左手で拳銃を横から払った、銃弾は後方のガラスに命中、大きな音を立てて散らばった。

「お??やるじゃねえかガキ、俺のパンチをくらって起き上がってくるとはな。だがいつまでもつかなあああ?」

刀耶は反射神経には自信があった。スキンヘッド男のフックも僅かに身を反らしてダメージを軽減していた。

「今のうちに誰か通報を!!」

「呼びたきゃ呼んでみろ!!この中のだれかに弾をプレゼントするだけだぜコラあ!!」

「そんな事させねー!!」

刀耶は拳銃を持った男の右手を掴んだ。

「離せよガキ!!オラ!オラオラ!!」

男は左拳、膝でしがみつく刀耶に打撃を加える。

「て、店員さん今のうちに逃げて…」

刀耶は景織子にそう言った。戸惑いながら涙を浮かべた景織子はレジの方へ走っていく。

「ギャハハハハハ!!ガキが一人で立ち向かってるのに誰も加勢しねーとはなあああああ!?お前ら雑魚はよおおおお!!!」

スキンヘッド男の猛攻撃を受け刀耶の意識は遠のいていく。

「(やべぇ…もう…ダメかも知れねぇ…でもきょんちゃんが無事で良かった…)」

「粘りやがるなこのガキ。よーし、それなら本当の暴力ってのを体験させてやる!!!あの世で自慢してこいやああ!!!オオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」

爆発めいた男の叫び。人々はあまりの声に硬直する。

「よーく見とけよコラアアアアッ!!」

男の筋肉は更に盛り上がり、皮膚は徐々に緑色に変色、牙が伸び、額から一本の角が生えてくる。

「これが俺が手に入れた力だ!!誰にも止められねーぞおおおおおおお!!」

男は拳銃を自らに向け引き金を何度も引く。銃弾は頭、胸の皮膚を貫くことなく留まり、ゆっくりと地面に落ちた。

「ギャハハハハハハハ!!!見ろ!!!俺は無敵だああああああああ!!!!さあ、警察でもなんでも呼んで来い!!」

刀耶のシャツのえりを掴む男。抱え上げ、ボールのように投げ放つ。刀耶の体はカウンターの上を滑りレジをなぎ倒し壁に激突した。

「………」

「見ろ!!このパワー!!!さぁ次は誰を飛ばしてやろうか??さっきの巨乳店員、出てこい!!素っ裸にひん剥いて投げ捨ててやる!!!」

「…や、めろ…」

刀耶は声を搾り出すので精一杯だった。立ち上がる力は既に無い。

「止めてみろよヒーロー!!あああああああん!?」

男は大股で景織子に近づいていく。恐怖に怯え体を震わせている。

「(畜生…体が動かねえ…ヒーロー…ヒーローか…女の子も守れないで何がヒーロー…)」

刀耶の目に左腕のブレスレットが映る。

「(リティーシャ…今頃あいつ何してるんだろうな…)」

刀耶は感覚のなくなりつつある右手でブレスレットに触れる。菱形のくぼみが指に触れた。

「(そういえば困った時にこの印を押せとか言ってたな…携帯電話か何かの機能が付いてるのだろうか…)」

刀耶は薄れつつある意識の中、右手の親指で菱形のくぼみを押した。スキンヘッド男が景織子に掴みかかろうとしていた。

「ギャハハハハハハー!!剥いてやるぞおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

「いやあ…」

男が景織子に手をかけようとした瞬間、割れた窓から青い光を放つ金属片が飛来し、男の腕に命中。景織子から離れさせた。

「何だァ!?」

次々と飛来する金属片。男の体を打っていく。

「鬱陶しいぞコラアア!!!誰だ!!!誰がやった?ケーサツかああああ!?」

その後金属片は全て一箇所に向かって飛んでいく。刀耶の体に向かって飛んでいく。そして次々と張り付き、倒れていた体を起こし、鎧の如く変形していく。最後に飛来した金属片はヘルメット状になり刀耶にかぶさった。その姿は西洋の騎士を思わせた。

「なん…だ?」

『やっとスイッチを押しましたかトーヤ』

「その声…リティーシャか…」

ヘルメットの中で声がする。

『随分とやられましたね。目の前のあの男を見れば納得です、さぁ反撃しましょう』

「何がなんだかさっぱり…」

『説明は後です!まずは目の前の緑男を倒すのです!!』

メルメットからの情報が刀耶の目の前に表示される。それはまるで[ハイパーキングファイター]の画面であった。

『ヒーリングファクター!』

リティーシャが叫ぶと青銀の鎧騎士となった刀耶の体が黄色い光に包まれた。

「痛みが消えていく…」

『これでもう大丈夫です!さぁ、やるのです!!』

「良くわからないけどとりあえずあいつを倒す!」

刀耶は床を踏みしめる、たった一歩でスキンヘッド男の前まで接近した。

「ギャハハハハハ!!変身ヒーローってか!?コラアアア!!!」

右ストレートを放つ男。刀耶は左手で弾き、右ボディブローを叩き込む。男は体を曲げ、後方の柱に激突した。

「何だこの力!!」

『一気に仕留めましょう!!』

「いや、でも殺しちゃ不味いだろう」

『大丈夫ですって!あの状態でミンチになっても元の姿に戻るだけですから!!』

ゆっくりと立ち上がる男。

「やってくれるじゃねえかああああああああ!!バラバラにしてやるぞコラアア!!!」

男の手に骨を固めて造形したかのような棍棒が現れた。それを上段に振りかぶり叩きつけた。

「おっと…棍棒は触れずに回避するのが一番」

[ハイパーキングファイター]で棍棒のプレイヤーを相手に対戦したことを思い出す。

「オラオラオラー!!」

猛然と棍棒を振り回す男。刀耶は回避に専念する。

「くっそ、素手では分が悪すぎる!リティーシャ、何か武器は無いのか!?」

『どれでも好きなのを選んでください』

刀耶の目の前に武器の一覧が表示される。それは[ハイパーキングファイター]で使用できるものと同じであった。

「じゃあロングソードで頼む!」

『了解!』

背中から飛び出した金属片がロングソードの形に変形、刀耶の右手に収まる。男の棍棒の攻撃をロングソードで受け流すように弾いていく。

「何だコラアアアアア!!!」

「くらえっ!!」

切り上げの一撃で男の左手に斬撃を加え切り返しに胴に叩き込む。男は体を大きく仰け反らせ割れた窓から道路に飛び出した。

『良いですよトーヤ!』

「グルアアアアアアアアアッ!!」

飛び上がる男、刀耶は一歩下がり棍棒を外し、踏み込んできた左足のつま先、続いて顎、脇の下にロングソードで斬撃を叩き込む。動きの止まった男にひねりを加えた渾身の突きを放つ。

「ギイイイイヤアアアアアアアアアアッ!!!」

深々と男の胸に突き刺さるロングソード。青い血をまき散らしながらうつ伏せに倒れた。

『やりましたね!!』

「あ、ああ…本当に殺してないんだよな?」

『見てれば分かりますよ』

男の体が突如爆発四散。飛び散った肉片は光り輝き集まっていく。光が消えたあとにはやせ細ったスキンヘッドの男が全裸で倒れていた。

『ね?大丈夫でしょう?』

「あ、ああ………ところでリティーシャ、警察のサイレンが聞こえてくるんだがどうしたらいい?」

『逃げましょう。色々厄介なことになりますので』

「だよな」

『短時間なら飛べますのでナビに従って飛んで来てください』

「分かった」

背中と足の裏からジェット噴射で飛ぶ。ナビに従いたどり着いたのは刀耶のアルバイト先の溝口堂の裏にある、増築に増築を重ね魔窟と呼ばれている雑居ビルの屋上であった。

『中に入ってきてください』

「ああ…」

扉を開け階段を下り、薄暗く日の光の差し込まない廊下を進んで行く。重々しい金属扉の前でナビの目的地の表示は0mの表示を示していた。

『どうぞ』

「入るぞ…」

中に入るとガスマスクを外したリティーシャが高級事務椅子に座っていた。部屋は窓一つなく、パソコンや電子機器で埋め尽くされ数十台のモニターが並んでいた。

「ようこそトーヤ。そしてご苦労さまでした、これからもよろしくお願いします!」

「は!?どういうことだよちゃんと説明しろよ!これどうやって外すんだ!?」

「10億円の価値はあるでしょう?だって10億円かかってますから!」

「おい…」

「トーヤ、まだミルク届かないので買ってきてください」

「はぁ…?」

「ミルク買ってこないと外し方教えませんよ?」

「めんどくせぇ~…」

続く





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Last updated  Apr 23, 2016 08:24:00 PM
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長月(ながつき) @ Re[1]:Fallout:NewVegas 第1話2話「目覚め」(11/19) Keyさんへ ありがとうございますがんばり…
久 遠@ Re:FalloutNewvegas121話「ストレンジトランスミッション!」(07/20) やほーい(=゚ω゚)ノ 何周遅れか分からないけ…
長月(ながつき) @ Re[1]:近況(12/30) あけましておめでとうございます。 今年も…
久 遠@ Re:近況(12/30) あけましておめでとうございます。 今年…
長月(ながつき) @ Re[1]:FalloutNewvegas103話「Vault22」(07/09) こちらもFO4までに終わらせるつもりです!…
くおん@ Re:FalloutNewvegas103話「Vault22」(07/09) やあ( ´ ▽ ` )ノ EDーEとの意思疎通方法、…

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