マジックザメイカー 13話「魔女と魔法少女2」
―冥珂が去ってから数日後。
「ねぇ晴凛知ってる?鵜蔵池の近くで半魚人が出るんだって!?」
晴凛のクラスメイトの一文字 和美は弁当のから揚げをぱくつきながら言った。
「ぎょぎょっ!?」
晴凛はペットボトルのお茶を吹き出しそうになった。
「何それおかしー!」
晴凛は半魚人に覚えがあった。昨夜その半魚人を始末したところだった。
「集団夢遊病だっけ?それと半魚人が関係あるとかないとか?鵜蔵池に飛び込んだ人もいたって話だし」
「へぇ~そう……そうなんだ」
「あれ?こういう話題に食いつくのが晴凛なのに今回のは興味なし!?」
「そういうわけじゃないんだけど……ちょっと頭の中で情報整理してるんだ」
「ふーん」
―前日の夜
晴凛はアマトからの知らせを受け漢山の裏にある鵜蔵池を調べることにした。
「半魚人?」
『半魚人っす。妙な音波を感知したから気になって』
アマトはオウム姿のまま晴凛の肩に乗りつぶやく。
「それは藤邑って魔女もどきの影響なの?」
『どうかなぁ……ダークパワーが溜まりやすい環境ではあるんすけどねーこの池。宇宙人たちとやりあったモノの影響もあるんじゃないかなぁ』
「半魚人をどうするの?」
『そりゃあ始末しなきゃ。半魚人の音波の影響は出始めてるっすからねぇ。晴凛くらいの年の女子が特に』
「始末!?良い半魚人はいない?」
『いるっすよ。人間だって良いのと悪いのいるっしょ?鵜蔵池のは悪いのっす、女子を呼び寄せて贄にしようってんだからさ』
「え!」
『鵜蔵池をちょっと調べたんだけど海水になってたっす。何かのきっかけで鵜蔵池はどこかの海と繋がってしまったのかな……そこから這い出てきた半魚人は悪い方だった。アマチャンのこれまでの経験と知識からの判断っすね』
「その悪い半魚人は贄って何をするの……?」
『子供を作るんすよ。奴らは繁殖できないから人間を攫って産ませるんす』
「げぇ~……」
『その半魚人は母体を食い破って卵の殻から出るよう生まれてくるから贄になった女子は死ぬね。半魚人に海岸とか海の上で攫われることはちょくちょくあるんだけど、こんな風に陸にくることはまずないっす。半魚人は始末して鵜蔵池を元に戻さないとね晴凛』
「ひぃ~気持ち悪い……怖い」
『まだ被害者は出てないうちに解決するっすよ』
「そ、そうだね……行こう!」
「レッツマジックメイク!」の掛け声でゴシックパンクな魔法少女に変身した晴凛は軽い動きで家々の屋根を飛び鵜蔵池を目指す。
「ほうきに乗れたらなぁ」
『鈍くさいっすねぇ……ほうきとダークパワーを連動させて飛ぶイメージすればいいだけのことなのに』
「冥珂さんみたいにスイスイ飛べないって!ロケットみたいに飛び出して壁に当たりそうになったし!!クーちゃん聞こえてる?アドバイスない?」
『戦車に乗れよ。戦に行く乗り物はそれしかねえだろ』
腰に下げたリボルバーからクー・ホリンはめんどくさそうに答えた。
「聞いた私がバカだった……あ、そだ冥珂さんで思い出したスフィンクスと合体した時みたいにアマちゃんと合体すれば飛べるのでは?」
『無理っすね。アマチャンとダークパワー同調させないとできないっす。二人三脚みたいなものっすよ?スフィンクスは上手い事晴凛と同調したみたいだけどアマチャンそんな器用なことはできないっす、むしろ晴凛が合わせろー』
「えぇ~……」
『まぁ今は飛ぶことよりも半魚人と戦いになった時の事を心配するっすよ』
「……毒とか吐いたりするのかな?」
『どうかな、地域によって違うし何とも言えないけど飛び道具は持ってるはずっすね。それが毒だったり鱗だったり音波砲だったりするけど』
「じゃ、じゃあバリアーとか張れないとダメだね冥珂さんみたいに」
『いや、冥珂のやったバリアーとか結界魔法系の高等魔術っすよ?晴凛にはまだまだ無理』
「ガーン……じゃあどうすれば?」
「盾を用意するっすよ。自分に相性のいい物質はもう何となくわかってるっしょ?」
「金属かな」
『そう、それを使って盾を作るっす。アマチャンがサポートするから晴凛はイメージを固めて。あそこにある粗大ごみから金属を拝借すればいいっす』
「ゴミを使う魔法少女って……なんか嫌だなぁ」
『上達すれば水銀を持ち歩いて自由自在に操ってスタイリッシュに戦うなんてことも可能になるっすよ』
「それかっこいいね!」
『今の晴凛で扱えて持ち運びに邪魔にならないって考えると……ワイヤーとか』
「じゃあホームセンターに寄ってく?あと 1 時間くらいなら開いてるし」
『それは次でいいっすよ。練習もしないで実戦は無理。まずはゴミで盾を作ってみるっす』
「は~い」
住宅街の横を流れる用水路の脇に放置された粗大ごみの前に降り立つ晴凛。周囲を確認しながら自転車や冷蔵庫、電子レンジなどを物色する。
「色々あるけどこれをどうすれば?」
『盾をイメージしてステッキを向けてみ』
晴凛は円形の盾をイメージして電子レンジにステッキを向ける。アマトはダークパワーの流れをサポートして電子レンジを包み込む。徐々に変形していく電子レンジ。
「お、おおお!?」
『ダメこんな盾じゃ……これじゃあ鍋の蓋っすよ』
「これじゃ使えない?」
『一撃で粉砕されるっす。もっとちゃんとした盾のイメージを強烈に頭に描いて!』
「ちゃんとした盾……よくわかんないけどスフィンクスの鎧みたいなのかなぁ」
横にあった自転車が電子レンジ(鍋の蓋盾)に吸い付けられる。溶けたかのように自転車は融合し、今度は銀色の厚みのある円形の盾に変形した。
『ま、こんなもんっすね。これでなんとか防具はできましたな~。魔法少女の衣装は強力な防具っすけどダメージの限界を超えると解除されるっすからね今の晴凛には盾は必須』
「武器は……クーちゃんがいれば大丈夫だよね?」
『正直晴凛が持っていいレベルの武器じゃないっすね。冥珂くらいの魔女でもなんとか釣り合うくらいっすよクー・ホリンのガエ・ボルガなんて』
『戦闘になったらオレにまかせろ。安心しろ、お前の体が壊れない程度に暴れてやる』
「え?クーちゃんはサポートしてくれるだけでいいんだけど?体貸すの怖いし……」
『……まぁいいさ、マズいと思ったら強制的に体使うからな?』
「うん、その時はお願い」
盾を持ち、建物の屋根、電柱を飛び鵜蔵池に到着する晴凛。
鵜蔵池は直径 200 メートルほどの大きさで釣りスポットしては地元ではそこそこ人気があり昼間はそれなりの人が訪れる。池の周りは整備されてない為雨降りの後はぬかるみがひどく子供は近寄らないように言われている。普段は発生しない霧があたりを包み込み水は黒く淀んでいた。
晴凛はアマトとクー・ホリンの指示に従って池には近づかずに盾とステッキを構える。
「半魚人……飛び出してくるのかな」
『気配はバリバリ感じるっすね』
『めんどくせぇ、池に一発ぶっ放して開戦の狼煙をあげろ』
「えぇ~……冥珂さんならどうするかな?」
『 14 のアートとか使って池の水を凍らせたり持ち上げたりするかも』
「私にはどっちも無理そうだぁ……」
『こういう時、水の中に入るのは絶対にダメだからね。だったらできることは』
「池の中から出させる?」
『クー・ホリンの力を借りますか~ダークパワーの調整はアマチャンがするっすよ』
腰のリボルバーを抜く晴凛。赤黒い光を放ち強烈な力が晴凛に流れ込む。
『池の上めがけて一発撃て』
「うんわかったクーちゃん」
リボルバーのトリガーに指をかけて引いていく晴凛。リボルバーの銃口から赤黒い槍の穂先が出現する。
「やぁああっ!」
晴凛の気合の声と共に放たれるガエ・ボルガの弾丸。螺旋の光帯を引きながら飛び、池の上で停止。光を増幅させそこから 30 もの弾丸を池に向かって放った。
放たれた弾丸は一つ一つが池の中に潜む者を狙い突き刺さり更に体内で 30 の弾丸に分かれて貫きながら次の獲物を狙う。
「GYAAAAAAAAAAAA!!」
ガエ・ボルガから逃れ池から飛び出す半魚人。魚類の顔をした人型の体、深い青の体色、目は瞼がなく開かれたままであった。
「うわあっ!出たぁ!!」
『ち、 1 匹外したか。晴凛、落ち着いて盾を構えてステッキに持ち替えろ、ガエ・ボルガはお前じゃ連発できねぇ』
「わかったクーちゃん」
「WIIIIIIIINWIIIIIIIN!!」
長い舌を垂らしうめき声をあげる半魚人。晴凛は一瞬めまいがするも持ち直した。
『あの音を聞いちゃ駄目っすよ。アマチャンの力で音波の影響を調整して緩和したんすけどくらい続けるのは危険っす』
『奴の目を見るな、全体を見るように胸のあたりに視線を置け。姿勢を崩さないようにゆっくり下がれ』
「はぁはぁはぁはぁ……(まだ何もしてないのにすごく疲れる……)」
「DAAAAAAAAAAAAAAA!!」
カエルを思わせる跳躍をする半魚人、晴凛は目を瞑り盾を前に突き出す。
『ちっ!』
クー・ホリンは晴凛の体を動かし盾で半魚人を横にはじく。
『怖いだろうが目を離すな、無茶をしろとは言わねぇ。戦え、できないなら逃げろ。その場で固まるのはやめろ、いいな?オレとアマトが手伝ってやる』
「うううう……怖い怖いよう、だけど……頑張る!」
泣きながら晴凛はステッキを前に突き出し意識を集中する。
「ファイヤー!」
「GUAAAAAAAAAAAAA!!」
ソフトボール大の火球が半魚人の胸に命中する。火球はそのまま半魚人の全身に燃え広がっていく。
「GYAAAAGYAAAAAAAAAAAA!!」
転げまわる半魚人、晴凛は大きくジャンプして離れる。
「やった当たった!」
ステッキに搭載された火の魔術と魔法少女のダークパワーを連動させて発動させた晴凛。
『お、うまく発動したっすね。調整して命中させたのはアマチャンの力っすけど』
『まだだ油断するな!止めにもう一発撃ちこんでおけ』
転げまわる半魚人は火を消し立ち上がる。
「GYAGYAGYAGYAGYAGYAGYAGYAGYAGYA!」
上を向いて叫ぶ半魚人、すると池の奥の林から大きな影が飛び出した。
「DAAAAAAAAAAAG!」
「ひいいいっ!でかいのが来たー!!」
5 メートルはある半魚人は巨体を揺らしながら晴凛に近づく。
『落ち着くっすよ晴凛!』
「うあああああ!ファイヤー!!」
ファイヤーボールを撃つ晴凛、巨大半魚人の肩に命中するも火は燃え広がらずに消える。
『あれが何だろうがナマモノならガエ・ボルガを叩き込めば死ぬ!!』
『やっぱり悪い半魚人は一筋縄ではいかないっすね……』
『御託は良いんだよアマト!今は目の前の敵を殺すことに集中しやがれ!!』
『それもそうっすな!じゃあ行くっすよ晴凛!』
晴凛のポーチから戦車のカードが飛び出す。アマトがそれを口にくわえると銀色のアサルトライフルに変形した。
『アマチャンアサルトスペシャルを使うっす!』
『撃て晴凛!』
「うああああああああああっ!!」
光弾が連続発射され巨大半魚人の胸に命中、動きを止める。
『晴凛、落ち着いてアマチャンとこの晴凛の戦車のカードを頭の中で合体させてすごく強い大砲のイメージをするっす!』
「うああああああ……そんな急に言われても!」
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