異能者特務機関:TMI 第 39 話「決戦 2 」
跳ねあがった幻赫は究極進化薬プロスパーストーンの影響で変形していく。全身うろこ状の皮膚に覆われ手足は杭打ちハンマーを思わせる形状に。
「一発一発が大陸弾道弾ミサイルの威力を持つ爆発打撃連打をくらぇえええええい!!」
亡きがらが残るであろうギリギリの威力を計算し仕掛ける。しかし手ごたえは無くアリナの姿は背後にあった。
「なに……!?」
空中でアリナは幻赫の首に手刀を入れ同時に足を払って弓なりに体を反らせる。そして無防備になった鳩尾に肘を打ちそのまま地面の岩盤に叩きつけた。
「(絶技・伏虎……だと!?)」
火柱が上がる。幻赫自らのエネルギーが行き場を失いアリナの打撃で暴発した。
テレポートで回避したアリナ。火柱の中心に倒れたいた幻赫はゆっくりと立ち上がる。
「奥義・屠龍に伏虎か……だが所詮は対人の技。この究極の存在である儂には通じんぞ!」
「「アリナはそうは思ってませんよ杉田幻赫」」
「フン、その状態でのお前と共有している二人、儂を押しているように考えているようだがそれも時間の問題。このまま戦闘が続けば先に音を上げるのはそちらだ」
「「違います、最初の一撃は貴方が考えているほど甘いものでは無かったのですよ。アリナさんが自らの技術を全てつぎ込んで放った打撃。 80% の解放状態でも」」
「あのダメージはもう残っとらん……」
幻赫の鼻から血が滴り落ちてくる。
「まさか……」
幻赫の横にテレポートするアリナ。
反応して爆発拳を放つ幻赫。その拳はアリナに届くことは無く肘から先が消失した。
「!?」
アリナの左手は幻赫の右突きを回し受けで躱した動作をしており、右拳が虹色に輝いているのが見えた。
幻赫には不思議とゆっくりとした動作に見えたが体は動かない。意識だけが加速している。そこでようやく幻赫は自分の消失した右腕が宙に浮いているのが分かった。
アリナの回し受けは手刀で斬撃と化し幻赫の腕を切断していた。痛みは無い、まだ痛みが伝わってきていない。
「どういう事だこれは」
アリナの拳がゆっくりと迫る。
「これは奴らの異能者共有の力か?目の前の虹光の拳は終夜アリナの 100 %なのか?」
幻赫の予想は半分は当たっていた。
この現象はアリナ 100 %解放状態&持てる技術の最高峰を拳に乗せ、三人の異能者共有を合わせた結果起きたものであった。
アリナが放ったのは翻浪勁と言われる技術。それは『拳による突きが来るという感覚を消しいつの間にか体に到達していた』というもの。
幻赫に放った翻浪勁は異次元域にまで昇華到達した一撃。相手の時間感覚を狂わせ『到達した』という結果ありきで目の前の光景が展開されている。
「馬鹿な!なんだこれは!!」
幻赫の見ている光景はすでに過去のものでアリナの全力全開 + 異能者共有の拳は到達している。
「防がねばこの拳は喰らう訳にはいかん」
過去の改変は幻赫には不可能で拳が迫って来るのを察知しながら成す術は無い。
――死
幻赫の頭にその文字が浮かんだ。
「…………」
目の前が真っ白になっていく。アリナの拳はまだ 30cm 程離れている。
***
アイスクラーピウスの格納庫ではブラックヴァリー最強の男・不動了痲と電人 G が戦いを繰り広げていた。
「私の電撃を受け止められるとは」
「術なんだよ。雷を操るなんてのはお手の物でね」
常人では捉えられない高速移動での戦闘。 G は不動了痲の術を警戒し一定距離を保ちながら電撃を使って攻撃を繰り返している。対する了痲はコンバットナイフを片手に電撃を往なしながら時間停止の機を狙っている。
「 G 、お前のデータはみたぜ。あの雷帝を斃したのはいいが割とギリギリだったようだな。お前の活動時間はそれほど長くない、雷帝が短期決戦を仕掛けてきたから勝てたのだ」
「ほう……それで今は時間を稼いでいると?」
「お前も馬鹿じゃない、俺がそうすることを想定して 2 手 3 手用意しているだろう。だからこれは慣れの時間稼ぎだ」
「慣れ……か。面白い、こちらもお前の動きの癖を分析している所だ」
「隙を見せた瞬間、俺は時間停止を使いお前のコアを狙って全弾ぶち込む」
「隙に誘われて動けばお前は私のカウンターを受けることになるな。雷帝を再起不能に追い込んだ超電磁加速パンチが決まるだろう」
「後の先の取り合いか……こういうジリジリした戦いは久しぶりだ」
***
甲板ではヘーラクレースがセレスティアに猛然と接近、暴風のような連打で追いかける。
セレスティアは AI の Adele に半自動回避をさせて自身は戦闘スーツの全身に巡らせたプラズマゲルを異能で加速させる。
「 Adele まともに戦えばこちらもかなりの被害を受けますね」
『この者との戦闘は中止すべきです』
「ええ、じゃあ準備が整ったら退場してもらいましょう」
『ナポレオン、ポセイドン、ソールハンマー準備完了まであと 10 秒』
甲板の装甲をめくりあげながら突進を繰り返して仕掛けるヘーラクレース。セレスティアは上空に完全に逃れることはせずジャンプと滑空を繰り返して回避を続ける。
完全に飛び上がり上空へと逃れることによってアナスタシアやテントに居る転送要員のマイケルを狙われる可能性があった為である。
小ジャンプからセレスティアは胸部リアクターからプラズマ球を出現させ両手で包み込んだ。両手のユピテニウムによる超加速圧縮を始める。
「隙が出来たぞセレスティア!」
「ふ……」
プラズマ球を解除して両手指を向けるセレスティア。十指から閃光が走り一瞬にしてヘーラクレースをハチの巣に変えた。
「何っ!?最初に見せたユピテニウムによる陽電子砲はパフォーマンス……か」
倒れるもすぐに再生を始めるヘーラクレース。
「あなたのような者と正面切って戦うつもりは無いです」
スーツのプラズマゲルとユピテニウムを利用し動きを制限されないように悟られないように溜めを作って陽電子砲を放った。
「私は戦闘者ではないのだから戦術を持って終わらせるだけです Adele 準備は?」
『はいマスター行けます』
「ウオオオオオオオオオオオオオオッ!!」
ヘーラクレースは甲板をめくりあげる勢いでセレスティアに突進をかける。
「ナポレオン!!」
飛び上がったセレスティアの背後から大量の飛翔物が現れた。ロケット型の大きさは 10cm 程度。周囲を覆い尽くすほどの数は飛蝗の大軍を思わせた。
「昆虫の大軍は群集心理を思わせます。だからこそこの兵器の名前はナポレオン」
「こんな物オオオオオオッ!」
こん棒を振り回し大軍を打ち払っていくヘーラクレース。しかし徐々に距離を詰められ覆い尽くされていく。
「脳波コントロールで操作する兵器ですが試験段階で使用者の人格に悪影響が見られた為正式採用されなかったもの。 Adele と演算を共有する私には扱えますがね」
ナポレオンの一つ一つはドリルのように回転しヘーラクレースの体をえぐり取っていく。そして見る見るうちに骨だけの姿に変えた。
「その状態からでも再生するのは承知です」
ナポレオンの大軍はヘーラクレースを巻きこんで甲板から空に投げ捨てる。
「ポセイドン!」
アイスクラーピウスの近くまで来ていた超高速ステルス潜水艦からミサイルが発射された。ヘーラクレースを捉えたミサイルはその場で爆発することなくナポレオンが付いたまま上昇していく。
「…………!」
ナポレオンの攻撃よりも少しずつヘーラクレースの再生速度が勝り肉体を取り戻していく。彼が完全に肉体を時には大気圏を通り抜けようとしていた。
「ソールハンマー」
射角を極限にまで傾けた衛星から放たれた破壊光線はミサイルを爆破させた。爆発の勢いでヘーラクレースは宇宙空間へと向かって飛んで行く。
「(ヌウオオオオ……まさか宇宙空間だと!?)」
太陽風や宇宙線などの有害物質にさらされながらも再生を続け意識を保ち続けるヘーラクレース。
セレスティアは衛星カメラの映像を見ている。
「いつか再生もできなくなるでしょう、その時まで宇宙空間を旅して下さい。さようなら無敵の戦士。もう会うことも無いでしょう」
「(グウウウウアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ)」
ゆっくりと回転しながら徐々に地球から離れていくヘーラクレース。やがて動きを止めそのまま宇宙空間へ。
「あちらもそろそろ決着でしょうか?終夜アリナと幻赫……」
爆発と衝突音、光と水柱があがる小島を見てセレスティアはつぶやいた。
「どちらが勝利するにしても急いでアイスクラーピウスを掌握しなければ」
***
幻赫の体は宙に浮いていた。アリナの拳を受けて吹き飛ばされたのだ。幻赫の感覚では 1cm 飛ぶのに数分かかっている。
「(終夜アリナの拳を喰らってどのくらいの時間が経った!?)」
地面からの距離は数メートル。
現実にはとうの前に大阪にある漢山にまで飛ばされ幻赫の秘密のアジトに墜落し研究員の男一人と実験生物を巻きこんで爆散。死亡している。
「儂はどうなる!?このまま何もできないままなのか!?」
幻赫の感覚では数百日後に漢山に到達。数時間かけて爆散の苦しみを受けながら死ぬことになる。
「アリナ!!」「アリナさん!!」
幻赫に拳を放った後アリナは糸が切れたように倒れた。フローレンスと哿との共有も解除され意識は再び異次元へと閉ざされた。
「すぐにアリナを助けに行かないと!」
「まずはこの部屋から脱出ですね、そうすれば僕のテレポートですぐに……」
突如扉が開いた。そこに立っていたのは左半身を銀色の金属と化した不動了痲であった。
「!?」
「ブラックヴァリーの!」
銃を構えるフローレンスと哿。
「やめときたまえ。無駄だよ、それに自分は……まぁいいか説明は面倒だ。ともかくここから出てアイスクラーピウスを脱出したまえ。甲板に仲間が待ってるぞ」
「……わかりました」
異能力制限室を出る二人。謎の男は二人が去ったのを確認した後、隣の電子ロックを解除して部屋に入る。そこは医療用の治療ポッドが並んでいた。
「チェック終了……いつでも使用可能だよ」
――数分前
実力伯仲の不動了痲と G 、隙を伺いながらの牽制が続く中、突如セレスティアとアナスタシアが現れた。
ほんの一瞬気を反らせた不動了痲に隙が生まれたのを G は見逃さなかった。指を尖らせ加速させた超電磁加速貫手を放つ。
刹那遅れた不動了痲は時間停止と言われている異能を発動。 G の指が胸に突き刺さったところで止めた。
「あぶねぇ時間停止と言っても完全に停止するわけじゃあないからな、 0.001 秒遅かったら心臓まで届いてたぜ」
体を離して特殊弾を装填したマグナムを構える。そして G の核に狙いを定めてトリガーを引く。
「時は動き出す」
背中を大きく破裂させて後方に飛んで行く G 。壁に激突するとそのままパズルのように体が崩れていく。
「反応は無し……だな。さぁてセレスティア博士よぉ、アンタはどっち側なんだい?幻赫に従っているようにも TMI 側に裏切ったようにも見えないが?」
「……」
「……ん?」
話したつもりが声が出ていない事に気が付いた。
「(何だこれは!?)」
自身の左腕が銀色に変化しているのに気が付いた。
『やぁ不動了痲』
G の声がした。
「 G !!テメェどこに……」
『君の中だよ……フフフ指を突き刺した時に君の体内のナノマシンと融合してね意識はそっちに移した。時間停止してくることは想定済みだった。核を撃ち抜かれるのが先かこうやって侵入するのが先か賭けだったがね』
「テメェ術で排除してやる……」
『おっと、既に心臓と左腕は掌握済みさ。下手に排除しようとすると私と心中することになる。私も核を失い君に寄生してる状態、やめて欲しい』
「俺の体を乗っ取るつもりか」
『そのつもりだったが君ほどの異能者を取り込むことはできない雷帝のように廃人にすることもできるがそうすれば私も無事でいられるかどうか……だから半分貰うことにする』
「何っ……」
『君の記憶と私の記憶は融合する。すなわち全く新しい別人へとなるのだ』
「そんなもんになるくらいなら……テメェと心中してやる!」
『まぁ聞け不動了痲、何もお前が消えるわけじゃあない。私は既に雷帝の記憶も取り入れている、雷帝でもなければそれ以前の電人五所川原振之助でもないが私なのだ。この感覚は伝わらないかもしれないが……人生を二人分経験したといえばいいだろうか』
「死ぬか別人になって生きるか……だと」
『既にお前もある意味経験している、幼い頃のお前と今のお前は完全に同じとは言いきれんだろう?様々な経験を積んで今のお前があるのではないのか?』
「つまり俺はお前と雷帝の人生を経験しお前は俺の人生を経験して一つになると」
『そうだ』
「……嫌だね、俺は俺のまま生きて死ぬ」
『そうか、そう言うと思ってた。だが時間は十分稼がせて貰ったよ』
「……!?」
『既に私とナノマシンは脳に到達している。お前の意識はもうすぐ落ちる、覚める事ない眠りにつくのだな。この肉体が滅びる瞬間まで』
「テメェエエエエエエエエエエエエエエエッ!!」
倒れる不動了痲、そこに崩れた G の体が吸い付き左半身を銀色に染めた。そしてゆっくりと立ち上がりセレスティアらに視線を向ける。
「電人 G ……」
兄の敵を目の前にして殺気を向けるアナスタシア。
「おいおい待ってくれ G は死んだ、俺は不動了痲だ。それとあんたらと争うつもりもねぇ。見ての通り重傷でね、 G の部品とナノマシンでなんとか立ってる状態なんだ」
銃を全て地面に置き G は不動了痲に成りすまして言った。
「では捕らえます! TMI から警察に引き渡しますテロリスト不動了痲!!」
「死ぬよりかマシか、どの道この船は浮いてる逃げる場所なんて無い」
G に異能力制限手錠をかけるアナスタシア。セレスティアは G と一瞬目を合わせる。
「アナスタシア、この者は自動操縦の私のスーツに見張らせて先を急ぎましょう」
「え、ええ。急ぐのでしたね」
スーツから出るセレスティアとアナスタシア。自動操縦に切り替え、座らせた不動了痲( G )の前に立たせた。
続く
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