VAMPIREEYE85 「凪子と我們」
―思念体達のつぶやき
『灰色鳥人間……あんな敵はこれまで我々の道(ルート)で見たことがない』
『あの敵の出現によって大きく変わったというのか?』
『変わっているといえば……吹雪の力がこれまでで一番強い気がする』
『何が原因だろうか?』
『どうする?二郎に何か言わなければならない事はあるか?』
『連合と協力関係を築かなければ』
『……となれば、今の所は奥寺舞子くらいしかきっかけはないな』
『簡単なように見えてアレは扱いにくいぞ。吹雪との不仲があるからな』
『誰か間に立って仲介してくれる者が居れば……』
『白峰華月らに相談してみるか?それとも父親の紫蓮か?』
『白峰雪名に会って話が出来れば一番早いと思うのだが……今の所碁盤の目町に二郎が入る手段はない』
『……』
思念体らは唸りながら沈黙する。
『そういえば……母親の凪子に相談したことはなかったな?母方の実家は奈良で変わった家じゃなかったか?』
『地主で古物商やら鑑定士やら宮大工やら道場やら……だな、それがどうした?』
『二郎は知らなかっただけで両親は碁盤の目町の事や白峰家の事はそれなりに詳しいだろう、両方に相談してみるのもありだと思うが』
『まずは身近な所からか。やってみるか』
『うむ』
***
朝、二郎は目を覚ますと紫蓮に電話をかけていた。夢で黒い男が『碁盤の目町、白峰雪名、妖怪連合、両親と話せ』と繰り返し語りかけて来た為気になっていたのである。
「もしもし親父、今大丈夫?」
『ああ、大丈夫だ二郎。昨夜蓮也からも電話があった、元気にしているようだな。こんな時に任務で東京に行ってすまない。それで何か用か?』
「説明しにくいんだけど……碁盤の目町、白峰の雪名さん?妖怪連合ってう~ん…とにかく知りたいんだ」
『何が知りたいのか今の説明で分からんが……碁盤の目町の中央塔に白峰雪名が居るのは吹雪から聞いて無かったのか?』
「えっとそれは聞いた」
『そうか。では妖怪連合というのは教会も仮にそう呼んでいる団体だ。白峰家が力を失い教会に属する者たちが増えていく中、教会に反対する妖怪側の者たちが立ち上げたとされている。何をしているという訳でもないが強力な力を持った者が集まっているから教会は警戒しているといった所だ。父さん的には連合とは適度な距離を保って良い関係を築きたいんだが教会幹部は服従させるの一点張りでな……父さんは教会歴が長いからな、今更妖怪連合の者とまともに話はさせてもらえないんだ、もどかしい』
「誰なら連合と話できると思う?白峰雪名さん?」
『どうしたんだ二郎?妖怪連合と何かあったのか?』
「別に何もないんだけど……ちゃんと話をしなきゃ駄目だって強く感じるんだ。奥寺の事とかあったし」
『……妖怪連合と教会の話合いはするべきだと凪子もずっと言ってたな』
「母さんが?」
『今更二郎に何も隠す必要なんてないが……凪子、母さんはただの作家じゃないんだ。あっちの実家の仕事があって手伝いの為に家を空ける事が度々あるのさ。蓮也とお前が小さい頃はよく奈良の諸田家に預けていたものだ。覚えているか?』
「うん、奈良の諸田のじいちゃんばあちゃんの家はよく行ってたね」
『妖怪などの闇の住人と上手く付き合う方法を聞くなら凪子の方が得意だ。諸田家はそういった者たちとも共生している家だからな。この後電話してみたらどうだ?』
「そうだね……話してみる。ところで親父はいつ戻って来るの?」
『前回ほど長くはならんさ。東京での任務は頼れる現地の協力者が出来たからな、早くて 1 週間で戻れる。そろそろ切るぞじゃあな』
電話が切れる。二郎は時計を見る登校までまだ時間があるのを確認して母親の凪子に電話をかける。
「出るかな……母さん忙しいと出ないしなぁ……」
20 回ほどコールを続け切ろうとした時ようやく繋がった。
『二郎!?』
「そうだよ」
『何々?どうしたの??右腕が痛いの??違う??めずらしいじゃない何か困ったことがあったの? 神月沙夜 ちゃんに色々家の事頼んじゃってるけどそれの事?はは~ん……お母さんが恋しくて電話? 』
「ちがうよ」
『そっか~~~~~あ、そうそう昨日の夜蓮也からも電話があってね。あの子が学校しばらく行かないって言ってきてビックリした!二郎の右腕が事故で無くなった時もビックリしたけど!ビックリしたと言えば昨日実家の近くの移動販売に来てたお兄さんに 20 代に見えるって言われちゃっていくら何でもそんなってお世辞でも……』
早口で話し出す凪子。
「ちょっと母さん!」
『はい!なんでしょう?』
「いつ帰ってこれる?」
『う~~~~~~~~~ん……無理すれば半日ならそっちに戻れるけど完全に帰れるのは夏休み入った頃かなぁ?学校の事で何かあるの?お父さんは無理だって?』
「学校の事じゃないよ。妖怪連合の事で相談があるんだ」
『なんですと!!二郎がそんなワードを口にするなんて……!!いやまぁ蓮也も昨日そんな事ちょっと言ってたけどね。相談て何?』
「妖怪連合と話をしたいんだ。ちゃんと話をして教会となんとか争わないようにならないかなって」
『それね~~~~~~~~……お母さんも昔は頑張ってそういう活動やってたんだけど教会の人間でもないのにでしゃばるな~って大天狗長門組とか陰陽師団に邪魔されたりしてあんまり……当時は貴船神社の舌(ぜつ)家のぜっちゃんとか鬼の 大熊我們 (がもん)僧侶とかと交流があったんだよ?ぜっちゃんは海外に行ってしまって音信不通だし残っている舌家との交流は今は無いかな。 大熊我們 僧侶は……京都にいるかもね、あの人携帯持ってないし足で探すしかないかな~~~~? 』
「舌家に 大熊我們 僧侶……かぁ。ところで母さんは白峰家とどういう交流あったの?碁盤の目町って行った事ある? 」
『白峰家はあんまり交流ないかな~~お父さんの仕事関係の人達って感じだし一度お屋敷に行った程度かな?碁盤の目町は行った事ないねー入らせてもらえないし』
「わかったありがとう、とりあえず 大熊我們 僧侶という人を探してみるよ 」
『うんうん!私の名前を出したら話聞いてくれるよきっと。あ、二郎ごめんもう電話切らなきゃじゃあまたねバイバイ』
通話が切れる。二郎は忘れないように携帯と机のノートに聞いたことをメモする。
【妖怪連合との話、 大熊我們 僧侶、諸田凪子=母さんの名前 】
思念体たちはまた相談を始める。
『 大熊我們 ……奴は確か酒呑童子の配下の熊童子ではなかったか? 』
『凪子の若い頃は…… 16 年以上前は酒呑童子はまだ 大熊我們 を 配下にしていないか?』
『そういえば……別の道では華月が成体で復活してすぐに 大熊我們 を殺していたな……今回は華月復活は早く幼い…… 大熊我們 はまだ生きているだろう』
『沖田に続きまた死ぬはずだった者が鍵となるのか』
『気をつけよう、逆に死ぬべき者も出てくるかもしれん』
―明命館学園
クラスの友人と昼食をとった二郎。携帯のメッセージに気が付いた。席を立って廊下に出る窓側の人がいない場所で確認する。
『天龍寺の事知ってる?』
奥寺舞子からであった。
「天龍寺近くの嵐山公園で騒ぎがあったのは知ってる(教会の任務の事は言わない方が良いか)」
メッセージを送り返すとすぐに返事が送られてくる。
『変なの見たんじゃない?私は昨日植物園の近くに居たんだけどそこで変なの見た。天龍寺の事は友達から聞いた。また何かあったら知らせる』
「植物園でも……ん?そうだ!!」
二郎は大熊我們の事を奥寺舞子に念のために聞いてみる事にした。
『鬼のオオクマガモン?何?探してるの?』
「母親の古い知り合いだけど今どこにいるか知りたくて」
『探してもいいけどあの女には絶対内緒だからね。それとマスドのドーナツ忘れないでね』
「(奥寺は吹雪さんの事めちゃくちゃ嫌ってるなぁ)」
―放課後、校長室
「失礼します」
「やぁ来たね木城二郎君!」
「待ってたぞ二郎」
背筋を伸ばし手を後ろにして満面の笑みの沖田、華月は校長の席に座っているが不自然に低かった。
「あひぃ…あひひぃ……」
「椅子が声を漏らすな。汗をかき過ぎだ」
華月が座っていたのは四つん這いになって全身汗だくになりながらよだれを垂らしている校長だった。
「場所を借りてるのでな。何か欲しいものがあるかと聞いたところ我を舐め回すように見て股間に血液を集まらせていたのでこうしてやった。今の幼い姿の我に欲情する変態男よ」
「は、はぁ……」
二郎は気まずそうに校長から目を反らす。
「邪魔だ退け校長」
腰を上げた華月は校長を軽く蹴って転がす。
「あひひぃ~華月ちゃんもっとシて頂戴っ!!」
転がって華月の足元であおけになり犬のようなポーズをとる校長。
「パンツみ、見え……」
「それ以上口を開くな」
華月は顔を踏みつける。跳ねるように反応した校長、襟をつまみ股間を蹴り上げてソファの上に飛ばした。
「あぎゃひぃん!」
「見苦しいものを見せたな。さぁ二郎、今日の分の生気を沖田から受け取って精製してくれ」
沖田から受け取ったエネルギーを凝縮させる二郎。
「おお、前回よりもスムーズにできましたね木城二郎君!私は嬉しい!!」
「うまくやれました……これを華月さんに」
二郎は赤く輝く光の玉を華月に渡した。
「よし……今日の分も美味だな」
二郎は華月の表情が昨日よりも大人びてるように見えた。
「変化に気が付いたか二郎?我は徐々に成体へと戻っておる。黒谷はこの幼体姿はあまり好かんようだ。成長していく過程を見れるのだから我慢しろと言っておいたがな。ここの校長のような趣味は無いのだそうだ」
「そういえば黒谷さんは?」
「あやつは昼間行動はできん。我の血が入ってるとはいえ半分西欧の吸血鬼なのでな。隠れ家で待っておるのだ。共にいる時間が長い沖田に嫉妬しておったわ。成体になるまでのたった 1 カ月の事だというのに」
「そうだったのですか」
「話は変わるが二郎、昨日の教会の任務の事を話してくれないか?」
「は、はい」
二郎は嵐山公園で起きた事を話した。
「妙な連中……関係あるかまだ解らんが蓮也と霄も遭遇したと聞いた。二郎、今日はこれからどうするのだ?吹雪らと教会の任務か?」
「いえ、連絡があるまでは何も……だから人探しをしようかと」
「ほう、人探し」
「母の古い知り合いなんです。京都にいないかもしれませんが」
「あてはあるのか?」
「いえ全然……とりあえず昔居たとされる場所で聞き込みです」
「そうか……なら 河上起央 に聞いてみるか?奴は新聞社の社主だ。何か得られるかもしれんぞ、話を通してやるが 」
吸血鬼メンバーの一人【 河上起央 】は平安新聞社の社主である。オールバックで色着き眼鏡をかけている。豊富な知識を持っている。
「え?いいんですか??」
「かまわん、二郎も今や我の身内だ。教会に諜報活動などさせて危険を負わせているのだこれくらい協力してやる。沖田、電話を」
「はい、華月様」
華月の口添えでアポを取った二郎は平安新聞社に向かう。タクシーは佐久間タクシーの車両が用意された。
「(なんかすごいなぁ……でも昔の白峰家ってもっと凄かったんだろうな)」
タクシーに乗り込む二郎。運転手が「平安新聞社でよろしいですね?」と聞いてきたので「はい」と答えた。
―平安新聞社
ビルの受付で名前を言うと最上階へ案内される。
「何か緊張するな……面接ってこんな感じなんだろうか」
3回ノックすると中からどうぞと声がした。二郎はゆっくりと扉を開ける。
「やぁ木城二郎君、話は聞いているよ。そこにかけたまえ」
長髪を後ろでくくった真っ黒なスーツの中年の男、河上起央が立ちあがって言った。手にはファイルを持っている。
「君が来る前に少し資料をあさっていたんだよ。大熊我們という男についてのね。大したものは出てこなかったけど2年前の祇園祭の新聞記事に名前が出てた」
「は、はい」
「山鉾巡行の記事だ。先頭を歩いてるのが大熊我們。すぐ後ろが祇園祭山鉾巡行会の会長・菊山操次郎。この菊山氏なら連絡を取れるよ」
「はい」
「固いねぇ木城二郎君。リラックスだよ、女王の前でもそんなに緊張していなかっただろう?」
「女王……華月さんの事ですね」
「そうだ、あの方は僕が見てきたどんな芸能人女優よりも美しい。個人的にグッズ化をすすめているんだ。勝田君に協力してもらってね」
「はぁ……」
「おっと、今は女王のすばらしさを語る時じゃなかったな……大熊我們の捜索だね。早速菊山氏に電話しよう」
電話をかける河上起央、菊山操次郎はあっさりと大熊我們の所在を答えた。
「大北山松鴎山町にいるんだと。ただ定住している住み家は無いらしくて町内を探さなくてはならないね、どうする今から行くかい?僕は大丈夫だけど」
「俺も……大丈夫です」
二郎は吹雪と恭一に用事で大北山松鴎山町に行くとだけ送った。
河上起央の4輪駆動車に二郎は乗り込む。車は大北山松鴎山町へと向かって走り出す。
「木城二郎君は高校卒業後どうするの?やっぱり大学かい?」
「一応はそう考えています。技術者になりたくて……」
「そっか、新聞社で働くのも面白いぞ?機会があったらインターンシップに参加してよ」
「考えておきます」
続く
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