未完成のブログ

未完成のブログ

Jan 6, 2022
XML
カテゴリ: オリジナル

VAMPIREEYE130 「碁盤の目町攻略作戦」

 数秒後錐もみを描いて晴明神社に墜落する神名 L 咲夜。

「がはっ……こんな……理解出来ない……」

 うつ伏せに倒れたグレイビーストの体は縮み殆ど咲夜の姿に戻っていた。

「こ、ここまでです……もう勝負はついた」

 二郎はよろよろと歩み寄ってバックル刀を突きつける。

「何を……私は死なない限り……あがき続けますよ」

 体を起こすことすら出来ない状態で咲夜は睨みつけて言い放つ。

「……貴女を殺すだけが解決方法じゃない」

 刀耶、イグネイシャスも飛んで晴明神社に入って来る。

「囲むぞ、逃がすものか!!」「二郎君、止めを!!」

「……」

 二郎はバックル刀を構えたまま動かない。目の前にはほぼ人間に戻った咲夜の姿。両手足は獣、尻尾は生えているが凶悪な獣の姿ではなかった。ボロボロになった咲夜を見て止めを刺す気は無かった。

「私を捕らえるつもりですか?やめておいた方がいいですよ、ここで止めをさしなさい」

「それはしない、グレイマンは他にも何人もいるのでしょう?それなら……」

「フフフ……情報を引き出そうっていう訳ですか?まぁ知った所でどうにもできないですよ。人間はもう終わりなんですから」

「違う……グレイマン達と争うだけが解決方法じゃないはず、だから……」

 二郎は義手の記録を知った。連合と対立した世界、華月らと対立した世界、両方と上手くいかなかった世界……。

 それならグレイマン達と対決するだけが選択肢ではないのでは?と考えた。

「アハハハハハ……話し合いで解決できるとでも?人類と【グレイ】の交渉は随分と前に決裂してるのです。合衆国のエリア 51 での事調べるといいですよ……」

 ゆっくりと体を起こす咲夜、口からドリルめいた角が出てきた。

「危ない!」

 刀耶が二郎に飛びつく。次の瞬間それは発射され夜空に消えていった。残されたのは咲夜の形をした灰色の硬直した骸。

「あ……」

「死んだか……?」

「体温は感じないね、心臓も動いてない……死んだと考えて良さそうだ」

 咲夜の骸は風にさらされて崩れていく。同時に暗黒大結界も解除された。

「そんな……」

「最後の力を振り絞って道連れを狙ったのか」

「ともかく……これで碁盤の目町突入の障害は排除できたって訳だな。急いで都メタルに戻ろうぜ!俺たちの代わりに頑張ってる恭一、河上さん、水元さんと代わらなきゃ」

「あ、ああ……そうだね刀耶君……」

「グレイビーストが死んじまったの気にしてるのか?仕方ねえよ、二郎がとどめさしたわけじゃない。奴は最後に力を振り絞ってお前を殺そうとして力尽きたんだ」

「うん……」

「俺はちょっと休みがてらここで見張りをしているよ。二人は帰って攻略の続き頼む、気を付けて帰れよ」

 イグネイシャスは腰を下ろして言った。

「わかった、イグネイシャスさんも気を付けて」

 二郎は刀耶の背中の飛行ユニットに掴まる。二人は都メタルに向かって飛んだ。

「さて……調査の為に灰を回収……と」

 吸い込み式の金属カプセルに咲夜の灰を詰める。ポーチにしまった後イグネイシャスは携帯をかける。

「……もしもし亀ちゃん?大丈夫?体調は??」

『頭にかかってたモヤみたいなのは消えたけど……他はあんまり何も変わらないです』

 電話の相手はモスグレイパワーの亀姫。以前調査中に出会い少し戦闘になり圧倒したイグネイシャスが保護していた。彼女は灰色の軍勢になってしまったことを後悔していた。

『あの……咲夜さまは?』

「消滅したよ……グレイマンの事はまだよくわかってないからハッキリとは言えないんだけど……多分亡くなってる」

『多分……ですか』

「気になるかい?」

『だってモスグレイパワーが私に残ったままなんです』

「そっか……何か変化はあったかい?」

『気分は凄くよくなりました……意味も無く不安になってイライラしてたのが嘘のようになくなって……イグネイシャスさんはもうすぐ戻って来るんですか?』

「あとちょっとだけ仕事が残ってるんだ。それが終わったらそっちに戻るさ」

―都メタル

 戻った二郎と刀耶は疲労で膝から崩れ落ちてしまった。

「二郎くん!」

「トーヤ!」

 吹雪が駆け寄る。リティーシャはナイトケースハートに作業を任せ刀耶に駆け寄る。

 数名のスタッフと勝田は四人を囲むように様子を見ている。

「ちょっと疲れただけだよ。少し休めばすぐに回復するさ」

「そうそう、ちょっと休憩いれたら大丈夫だ。大した怪我はしてないし」

 二郎は義手、刀耶はナイトケースの回復力により擦り傷、打撲、骨折に内蔵損傷は既に回復。崩れ落ちたのは治療の為にエネルギーを使い体力の限界を迎えていたからである。

「二郎くん医務室に行きましょう、来海さんの薬を飲んで横になるといいわ」

「トーヤ、すぐにナイトケースジャックを用意しますね。私の魔力を充填したジャックを装着すればすぐに元気になりますよ」

 都メタルと吹雪に肩を貸してもらい医務室に向かう。ソファで寝そべる刀耶の体には、リティーシャのケースからカード状金属片が無数に飛び出て張り付いていった。

 二郎と刀耶の様子を見つめる黒谷。

「グレイビースト撃破、華月様はこれで碁盤の目町攻略に全力を注げるというもの」

「……黒谷、まずは二郎と刀耶を労ってやれ。ただの人間二人と異能者があのような強大な獣を打ち破ったのだ」

「仰せのままに。まさかこのような展開になるとは予想だにできませんでした」

「我もだ。あのタイミングで長門顕彰を始末出来て、消耗が予想されるグレイビーストを直接対峙することなく討伐。我らの力は温存できた。何者かの未来視によって扇動されてる錯覚を覚えるが……」

 華月は勝田を見つめる。

「かかかかづたん!?どうされました?」

「何でも無い、感心しておるだけよ。お前と二郎にな」

「そ、そうですか」

「華月様?」

 黒谷が華月と勝田、二郎を見て訝しげに首をかしげる。

「我は仲間に恵まれたと思っただけだ」

 華月はエクレシアに付いた雪名とその関係者、当時の自分の仲間の事について考える。

「あの当時、我に付いたのは若く未熟な世代であった。力を持っていた連中は雪名を推しエクレシアに取り入った。母上に付いていた勢力がそのまま雪名に付いた形だ」

「そうでしたね……旧体制派の者達は保守派の雪名様に付かれた。華月様は当時の新世代に人気がありましたね。私もその一人です」

 突如シェルターに警報が鳴り響いた。

「何事だ?」

 華月が構える。

「都メタルの周囲を灰色の軍勢が囲んでいます……!!」

 水元がモニターを表示させて叫んだ。

「グレイビーストを始末したというのに……」

「出れる者は迎撃に当たれ!」 

「街の灰色の軍勢も次々と妖を取り込み数を増やしているようです!!」

「グレイビーストめ……死んだあとまで!」

「街が壊れる……このままじゃ作戦成功しても街が壊滅状態になってしまう!!」

「落ち着け水元!僕たちがしっかりしなきゃ!!ヒントは必ずあるはずだよ!!」

 勝田は水元の肩を掴んで言った。

「ハルの言う通りです。クルミ、少し休憩してくればどうです?」

 刀耶の処置を終えたリティーシャが言った。

「グレイビーストを撃破したにもかかわらず灰色の軍勢は増え続けている。斃せばすべて元に戻ると言った幻想はもう捨てましょう。ではどうするか?私たちがグレイビーストに対抗できたのは何故ですか?」

「分析して……対抗策を練ったからです……」

「そうです。あなたも優秀な頭脳を持つ者ならば何をすべきか解ったでしょう?」

「……ええ、少し休憩してきます 10 分ほど」

 立ち上がって部屋を出ていく水元。

「こんな状況だし彼女の気持ちは分かるけどね……それでリティーシャ、何か良い案でも?」

「おや、ハルともあろうものが気が付かないのです?グレイビーストの灰色の軍勢は呪(しゅ)なのです。ならばその呪を成立させているものを破壊もしくは解除すればいいのです」

「というと……グレイビーストが自ら放った配下の数体を始末すればいいと?」

「はい。それなりに人数が居て厄介ですがそこを抑えれば増える事はないでしょう。時間との勝負になります、こうしているうちにも屍人の数を増やし続けていますから」

「でもウチの戦力はもうこれ以上出せないよ……碁盤の目町攻略もグレイビーストの邪魔で少し遅れているんだギリギリ限界の状態で踏ん張ってるんだからね」

「うーん確かに……ジロウとトーヤには動けるようになり次第攻略に戻ってもらわないとこのままではあと 3 分持たせるのが限界です」

 顔をしかめてうなだれる勝田とリティーシャ。

「勝田、センジョーに連絡しろ。グレイビーストの撃破と灰色の軍勢対策の内容でな」

 華月が言った。

「はい!かづたん!!」

「すでに迎撃に向かっている茉白、谷川組、霞、須原、吉良組にも伝えておけ」

「はい!!」

***

 医務室のベッドに寝かされる二郎。吹雪は横に座り不安な表情を浮かべる。

「そんな悲しそうな顔しなくても大丈夫だよ吹雪さん」

「でも……あんな怪物相手に戦ってこんなボロボロに……わたしは何もできなかった」

「いいんだ。吹雪さんにしかできない事あるだろうしあの場面は俺だっただけさ」

「どうして二郎君はそんなに戦えるの?少し前までこんなのとは無縁の生活してたのに」

「俺も自分で驚いているよ。元々思い込んだら突っ走る性格だし……分からない事は怖いけど知れば必要以上に怖がる必要も無いしね。できると分かってる事をしないのは何かもどかしいんだ。そう考えて動いてるうちにこうなったのかもね」

 疲労で全身が重い。二郎は首だけを吹雪に向けて話す。

「……わたしは二郎君に何をしてあげられるだろう。わたしの家の事にこんなに巻き込んでしまって……」

「『好き』でやってるんだから気にしないで」

「え?」

 言葉に想いを込める二郎。恭一との約束、男の約束で抜け駆けはしない。だから今はこんな言い方でしか言えない。

「やりたくてやってるんだよ」

「そう……」

 吹雪は二郎と恭一がただのお節介で協力してくれているとは考えていない。でもそれは今は彼らに向き合えない。自分を取り巻く問題を解決してからと決めている。器用では無いのだからいくつもの事に気持ちを入れれない。やるからには全力というのが自分の信念だった。姉の霄のようにあれもこれも頑張れない、妹の霞のように要領よく立ちまわれない。優柔不断でブレ易くすぐに影響を受ける。だから剣にも迷いがあった。自己肯定の低さが原因だと解っていても母・雪名と比べてしまい自身が持てなかった。

「(迷って悩んでばかりだけど……)」

 剣に関しては記憶の楼で目指すべき道を決めれた。まずはそこから、そしてそれを生かして道を切り開く。自分は何者で何が出来るのか。その支柱、背骨が定まってようやく白峰吹雪は歩きはじめるのだと考える。

 白峰静燕とのやり取りで決闘の話に出てきた二人の剣士。長太刀の剣士よりもその対戦相手、勝つための手段を考え最大限の努力をした剣士に吹雪は心を惹かれた。巨大な木剣も二刀流も並の者には使いこなせない。ゆえに幻想、理論のみで不可能と言われてきた。その剣士は誰よりも勝つための鍛錬した。理想を目指す剣ではなく勝利を掴むための剣。吹雪は父や母と重ねて理想を目指すのではなく、自分にできる最大の努力をして勝つための力を身に着けると決めた。

 吹雪は立ち上がる。太刀を握りしめて。

「どこ行くの?吹雪さん」

「碁盤の目町攻略作戦に戻るわ。二郎くんたちが戻って来るまで少しでも進めておく」

「……わかった、すぐに俺と刀耶君も行くから」

「ええ」

 作戦室に戻って来る吹雪、すぐにゴーグルと装備を着け VR 空間に飛び込む。

 恭一と河上が待ってましたとアバターの手を振っている。

「待ってたよ吹雪ちゃん!」「ふぃー……そろそろヤバかったんだよね」

「わたしが前に出て敵性プログラムを相手するから二人はサポートして」

「おう!」「あいよ!」

 吹雪は飛び出すと魔力を自分の周囲 3m を球状に展開する。

「 GUUUUUUUUU !!」

 飛び込んでくる敵性プログラム。吹雪の魔力に触れると同時に凍結。それを太刀で切り裂く。白木の針を取り出して放つ。吹雪の周りを衛星めいて浮遊。近づいてくる敵に向かって冷凍光線を撃つ自動迎撃の姿勢。

「(超低温をぶつけるだけじゃなく、瞬時に敵を凍結させなければ)」

  太刀の間合いに入った対象を凍結させる剣。太刀によって凍らせるのではなく、間合いに入った時点で魔力による凍結を行う。その時間は 0.5 秒。吹雪にとってその 0.5 秒は長い。

 それを補うために白木の針での冷凍光線。これによって間合いに入った時には 0.3 秒で凍結。相手に反撃の思考も与えずに太刀で粉砕。しかしこれは対象となる相手同時に 5 人が限度であった。

「(ならどうする……)」

 吹雪の身体能力をもってすれば同時に 5 人迎撃できれば敵性プログラムが何人来ようと迎撃は可能。

「(わたしが当主になれなくてもいい、姉さんや霞、家族、大切な人たちを守れる力があればそれでいい)」

 当主になれなかった白峰家の者は分家に入る。当主の力を伝承できなかった白峰家の者は徐々に力を失い 100 年ほどで寿命を終える。血を吸えば力を維持できるが寿命を延ばすことは出来ない。

「(……絶対に大切なものを奪わせない)」

 静かに息を吐き、 360 度に気を張り巡らせながら吹雪はこれまでの戦闘スタイル、戦術を思い返す。記憶の楼での事を思い返す。

「ガルルルルルルル……」

 ジリジリと迫って来る敵性プログラム達、その中に明らかに気配の違う者が居た。エクレシア側から迎撃に VR 空間に飛び込んで来た陰陽師、名は八馬立人。剣術をベースに陰陽弾を撃ちだす銃を使いこなす戦闘に特化した団員。アバターの右腕は刃、左腕は銃口、顔は耳の長い犬の牙を剝いている。吹雪を睨みつけ左腕の銃口を構える。

続く






お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  Jan 6, 2022 06:57:52 PM コメントを書く
[オリジナル] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

PR

×

Free Space

Profile

長月(ながつき)

長月(ながつき)

Calendar

Archives

Oct , 2026
Sep , 2026
Aug , 2026
Jul , 2026
Jun , 2026
May , 2026
Apr , 2026
Mar , 2026
Feb , 2026
Jan , 2026

Comments

長月(ながつき) @ Re[1]:Fallout:NewVegas 第1話2話「目覚め」(11/19) Keyさんへ ありがとうございますがんばり…
久 遠@ Re:FalloutNewvegas121話「ストレンジトランスミッション!」(07/20) やほーい(=゚ω゚)ノ 何周遅れか分からないけ…
長月(ながつき) @ Re[1]:近況(12/30) あけましておめでとうございます。 今年も…
久 遠@ Re:近況(12/30) あけましておめでとうございます。 今年…
長月(ながつき) @ Re[1]:FalloutNewvegas103話「Vault22」(07/09) こちらもFO4までに終わらせるつもりです!…
くおん@ Re:FalloutNewvegas103話「Vault22」(07/09) やあ( ´ ▽ ` )ノ EDーEとの意思疎通方法、…

Favorite Blog

まだ登録されていません

Keyword Search

▼キーワード検索


© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: