ReviveTheGunSword 灰蘇の剣銃 34 「覚醒と対面」
9 体の大城が一斉に柄留に襲い掛かる。仰向けに地面すれすれまで倒れこみながら回避、棒を使って跳ね起きる。
「ヤァ!」
棒で突く柄留。大城の喉に命中するも霞のように消える。そして次の瞬間柄留の側頭部に強い打撃が入った。
「セエエエイ!」
殴られて体勢を崩す柄留にステッキをあてがい首を極めながら投げに持っていく大城。柄留は自ら投げの方向に飛んで両手受け身、そのまま頭を下げた反動で大城の顎を海老蹴りで撃ち抜いた。
「見事!ボーリング玉を粉砕するこのステッキの一撃を受けて動くとは!!」
「痛ったぁ……」
大城の分身は 9 体に戻っていた。柄留は頭から血を流しながら立ち上がる。
「セセセセセィイイイ!」
前方 5 体のステッキを弾く柄留。後方から足、腰、肩、脳天の一撃を空中で回避。着地を狙われ腹部に突きを受ける。
「うぐっ……」
「頑丈ですねぇ……鉄骨も貫くこの一撃を喰らって生きてるとは。貴方と吾輩の速さはほぼ互角、手数で勝る方が有利というもの貴女に勝ち目はありません」
「(同じ DMC 幹部でも蟻アイより遥かに強い……あの分身を何とか打ち破らないと)」
「セエエエエエエイ!」
全方向からの攻撃が柄留に仕掛けられる。棒を振り柄留は左手を広げグレイブラスターを出現させる。マシンガンのように連続発射した弾丸で大城を下がらせた。
「ほほう……銃を出しますか。それなら吾輩も」
9 体の分身は同時に上着から銃を取り出す。そして一斉に構えて柄留に撃つ。
「――」
柄留に放たれた弾丸は全て意思を持ったかのように軌道を変え大城の分身を撃ち抜いた。
「何だと!?」
「グレイキャリバーに弾丸は当たらない」
「意味が分からない」
「解らなくて良い。グレイキャリバーはそういう存在。全ての銃弾はグレイキャリバーが支配可能なのだ」
柄留の左目だけがオレンジ色の光を放っている。
「弾着……」
空に向かって撃った弾丸は無数に分かれ柄留に降り注ぎ光に包まれる。
「交代だ……ここからはグレイキャリバーが相手する。何体でも出てくるがいい」
柄留に流れ込んでいた白魔女ミレーヌと棒の権ちゃんの意識は薄れデモンズエッジ・スキャバードは解除される。代わりに蒐魅とグレイキャリバーの意識が流れてくる。
光の中から現れたのは銀と灰色のモザイク模様の全身スーツの柄留。
「姿を変えた所で、銃が効かない程度では吾輩の有利は変わらない!!数で有利!弾が効かないのはこちらも同じ事!!」
「バカが!」
グレイブラスターから放たれる連射。毎秒 100 発の膨大な弾丸が大城に襲い掛かる。
「!?」
「分身なんて意味がなかったな」
一瞬の内に分身を全て撃ち抜く柄留。
「単体の決戦では剣の白魔女がほんの僅かに上だが多数相手はグレイキャリバーのが有利……さぁどうする?更に数を増やすか単体で挑んでくるか」
柄留は自分で言葉を発しているのが不思議だった。考えるよりも先に言葉が出る、蒐魅とグレイキャリバーの言葉が。
「増やしすぎたのがいけなかった…… 3 体に絞り全力で行かせてもらう!!」
「なるほど……それがお前の最適解。ならばこちらも……」
グレイキャリバーのアーマーがはじけ部分的に残る。柄留の顔があらわになり右目は青く左目はオレンジに輝いている。
「デモンズ・エッジスキャバード……薄緑膝丸!」
「セエエエエエエイ!!」
三体の大城のステッキが襲い掛かる。秒間 100 発の弾丸を浴びせかけ迎え撃つ柄留。弾丸をくらいながらダメージをものともせずに間合いに入る大城。
「セイイ!」「はっ!」
側転宙返りをしながらステッキを薄緑膝丸で打ち払い螺旋回転、大城の全身に弾丸、目と鼻と喉を狙った斬撃を放つ柄留。
「ムッ……」
2 体の分身は消え残る 1 体は斬撃を防御で何とかしのぎ浅い傷、致命傷を逃れた。
「片手に太刀と銃ってのは中々扱いが難しいね……」
空中にグレイブラスターを放り左足で受け止める。キャリバーの装甲ブーツに吸い付くグレイブラスター。
「今ので吾輩を仕留められなかったのは痛かったのでは?頭部と腹部のダメージはかなりあるようですねぇ」
「このくらいどうって事ないよ……お前こそハチの巣になりながら細切れになれー!」
飛び上がる柄留、左足のグレイブラスターから弾丸が連続発射。そのまま高速回転を始め弾丸と薄緑膝丸の連続攻撃。
「まだ速くなるだと!?」
連続突きで対抗する大城。柄留は撒き撃って衛星のように体の周りを飛ぶ弾丸を踏み台にして空中回避、大城の全身に弾丸と斬撃を叩き込む。
「グアアアアアアアアア……!!」
「名付けて八艘飛び大旋風!……そして撃ち込んだ弾丸は爆裂する!」
「こんな……バカナァアアアアアアアアアアアッ!!」
大城は砕け散って肉片と化した。
「やったぁ……でも頭とお腹めちゃくちゃ痛い……和音君どこかな」
ふらつきながら柄留は和音の開けた中央塔の大穴に向かう。
***
壁に空いた大穴の外が岩盤に変わった原因について和音は調べていた。すると回廊の壁の一部が扉となって中から人影が出てきた。
「お前はここで足止めさせてもらう」
和音の前に現れたのは蛇を思わせる顔に肉食獣の腕、脚部は猛禽類の、腰から生えているのは蠍の尾の男
「その見た目……ここにきて合成の怪人か」
「四度の改造手術に耐えられたのは俺一人…… DMC 幹部最強のこの力思い知るがいい」
「いいのか?この建物が耐えられないのでは?」
「周囲は岩盤で覆われている核爆弾級の衝撃でもないかぎり平気だ。ああ、だが天井はそうもいかんか気を付けよう」
「随分と余裕なんだな。 DMC らしく名乗ったらどうなんだ?」
「ふ、ではそうさせてもらおうか。俺は鵡州(むしゅう)フミト。 DMC 最高幹部にして頭脳であり武力においても最強の存在。俺は幼いころからトップだった勉強においてもスポーツにおいても」
「それがどうして DMC の最高幹部などをやっている」
「俺にとって人間社会など窮屈で仕方が無いのだ。もっと高位の存在であるべきなのだ」
「人間社会でトップに行く前に怪人化か。窮屈だという前にこの国で一番の企業・神名にでも入れば良かっただろう?」
それを聞いた鵡州の目つきが変わった。
「だまれカスが!!何が神名だエリートだ!!この俺を認めないあんな奴らなど只の勘違い集団!!俺の優秀さを存分に発揮できるのは DMC 、院瀬見、オータムホースシティ!」
鵡州のビジネススーツが破れ合成生物の全身があらわになる。
「つまらない会話はここで終わりだ」
「ああ」
飛び掛かる鵡州、肉食獣の爪と猛禽類の足爪、蠍の尾で攻撃を仕掛ける。和音はそれらの攻撃を見切って下がりながら回避。
「ほう、反応速度は良いようだな。そして判断力も警戒心も強い……」
鵡州の爪が和音の Y シャツを掠める。煙を上げあっという間に腐食して袖口が崩れ落ちた。爪、足爪、尾の全てから紫色の液体が滴っている。
「この腐敗毒はまだ世に知られていない物質……治療方法は無いぞ」
「つまらない会話は終わったんじゃなかったか?」
和音は掌を上にして挑発の手招きをする。
「腐って死ね!」
飛び上がる鵡州、だが次の瞬間和音の龍の息吹が空中で炸裂し吹き飛ばされた。大の字になって岩盤壁に叩きつけられる。
「そのカッとなりやすい性格がダメなんじゃないのか?」
「だ、だまれ……」
即座に体を起こす鵡州、血の唾を吐き捨てて和音を睨みつける。
「頭を冷やすには丁度いい攻撃だった……もうお前をカスなどと思わん。全力で対処する」
大きくしゃがんで手を床に突く鵡州、ジグザグにステップを踏んで和音に接近。爪のジャブ、毒を飛ばしながらの牽制攻撃。和音は上半身を動かして回避、鵡州は足爪の毒飛ばしローキックと上から尾の毒飛ばし突きを同時に放って攻撃。ローキックの毒は和音のズボンの裾を掠め尾は床に突き刺さって破片を飛び散らせた。
「シュラアアアア……」
和音を深追いしない鵡州。また大砲のような龍の息吹をくらう事を警戒して構える。
「王が警戒されるのも解る……お前のような存在並の DMC 怪人では相手にならん。この俺の攻撃に対してもまだ余裕があるようだ……根賀が斃されたのも無理はない」
「あの冷凍象怪人か……アレは少し厄介だったな」
「DMC最大の敵はお前だ……間違いない。ここで潰さなければならない危険な存在だ」
大きく口を開き息を吸い込む鵡州、和音は龍のオーラを拡張してバリアをつくる。
「全てを崩壊させる腐敗毒ブレスだ!!」
鵡州から紫色の息が放たれる。煙のように広がり回廊を覆っていく。
「もっとお前の力を引き出して分析したかったがこれ以上は危険と判断した。必殺の攻撃で仕留めさせてもらう」
「オレもお前を少し侮っていた。だがこうすれば腐敗毒などオレには届かない」
和音の全身を一回り大きく包み込む青白い龍のオーラ。触れた腐敗毒を消滅させながら鵡州に近づいていく。
「……そうか、根賀が敗北した理由はそれか。ならば直接腐敗毒を叩き込む必要があるようだな」
鵡州の全身を紫色の腐敗毒の力が包み込む。
「シャアアアアアア!!」
接近戦を仕掛けると和音はそれに応じる。爪、足爪、尾の攻撃は上下左右あらゆる方向から和音を襲う。
「ヌウウウウ……」
格闘技にも自信があった鵡州は和音の動きを見て焦った。最初は回避していた和音、今は全て見切って受け流し、弾き、防御している。爪、足爪、尾の先端には一切触れずに攻撃している鵡州の手足尾に逆にダメージが蓄積されていってる。
「(なぜカウンターを入れてこない?余裕を見せつける為か?いや、そんな感じではない……戦いの中で練習をしているのか?殺し合いの中で?)」
ラッシュを止める鵡州、今度は和音から仕掛ける。
「(なんだ……奴の攻撃は……)」
攻撃に合わせて爪と毒を食らわせるつもりだった鵡州、いつの間にか灼熱の打撃が胸に 3 発叩き込まれていた。
「グ……(何だ、反応できん……)」
和音の手足は動いて無い。動いたのは龍のオーラであり鵡州が意識していなかった為見えていない。
「ヌオオオオ!!」
打撃のラッシュを受ける鵡州、和音の動きとは別に大量の攻撃が襲って来る。和音の拳の連続攻撃が来たかと思えば全く違う角度から龍のオーラでの攻撃が当たる。
「ガハ……これは体に纏った力を……体の動きとは別に操っているのか」
「お前のおかげでオレはまた自分の力の使い方を覚えたぞ」
和音は太さ 3 メートル程の龍のオーラ尾で鵡州を打つ。弾丸めいて岩盤壁に叩きつけられた鵡州は毒液と血を飛び散らせて床にずり落ちた。
「ドラ……ゴン……」
鵡州の目に映るのは東洋の龍に近い姿のオーラの和音。
「そうだな……ドラゴン。オレはまだ【龍】に至っていない、その呼び名でいいのかもな」
「ククククク……最強の敵が…… DMC の象徴と似ているとは何とも皮肉」
全身の骨を砕かれ満身創痍の鵡州は笑いながら言った。
「トキナガ(時田麻村)様こそ DMC の象徴レヴィアタンの化身……あの姿あの力は圧倒的」
大量の血を吐いて意識を失う鵡州。それを見た和音は小さくため息をついた。
「レヴィアタンを名乗る怪人王か……」
天井を見上げる和音。携帯が鳴った。
「病院から……」
『諸田和音さんのお電話で間違いないでしょうか?』
「はい」
『担当医の神谷壊袁です。亜瑠さんが目を覚まされました』
頑なに苗字を名乗らなかった壊袁が名乗った。理由は神名に間違われるのを避けるためと彼の親友が神名で更に同じ医師という理由であったがその事は和音は知らない。
「そうですか、今すぐに向かいたいところですが立て込んでまして……用事が済み次第向かいます」
『わかりました、ご両親には既に連絡しています。亜瑠さんの事について詳しい話は病院に来られた際に致します、それでは失礼します』
突然の連絡に驚いた和音。
「遂に亜瑠が目を覚ましたか……」
和音は信じていた。亜瑠は必ず目を覚ますと。嬉しいというよりも安心した自分の妹は思っていたとおりの者だと。
和音は回廊の途中にある扉を開けて階段のある部屋を見つけた。そこから螺旋階段を上に登る。途中また地震が起きた。警戒しながら上の階層の扉を開けると。
「あ、和音君!!」
柄留が立っていた。頭から血を流し腹部は内出血している。
「なんとか無事のようだな。傷は痛むのか?」
「痛いけど動けるよ。また敵が出てきても大丈夫」
「無理はするな、オレがなんとかしてやる」
「えぇ~……ボクだって和音君の役に立ちたいよー。でも足を引っぱるのは嫌だなー」
「……柄留、亜瑠が目を覚ましたぞ。病院から連絡があった」
「えー!!マジでー!!よかったねー!!!」
「ああ、とっとと DMC を潰して亜瑠に会いに行くぞ」
「うん!会いに行こう!!」
再び地震が起きた。警戒する和音と柄留、天井が開いてエレベーターシャフトが現れる。
エレベーターに乗って現れたのは――時田麻村と妻の樹玲。
「見ていたぞ貴様らの暴れっぷりを。男はドラゴン、女は白魔女とグレイマンの力を持っているな」
時田麻村は両手を組ながら大きく響く声で言った。
「お前らだけか?魔女とやらはどこに隠れている」
「知らぬ。あの魔女は DMC ではない、協力者ではあるがな。ゆえに一々行動を把握しておらん」
「お前たちを潰した後で探すとしよう」「そだねー!」
「ハハハハハハハハハハ!」「ホホホホホホホホホ!」
時田麻村、樹玲の姿が変わっていく。麻村は黒と金の鎧を纏い大きな角が生えた悪魔めいた姿に、樹玲は白と金の鎧を纏った細身の悪魔の姿に。
続く
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