DHHU その 33
ケン、茉白&谷川に続きダンジョンに飛び込んだ冬華に突然襲い掛かって来る虫羽を生やした怪人。左手のプラズマショットガンで粉砕して落とした。
「これがダンジョン……」
中央に円錐状の巨大な建物。それを囲む塀、地面はあちこち燃えている。
「気温 50 度……この環境では人間は長く活動できない。勇者ケンと茉白、谷川先生は?」
***
――冬華突入前。
不死鳥の剣士に乗っているケンはミスリルの鎧を装着し円錐状の建物を囲む塀の上に着地した。
「建物の入口はどこだ……」
周囲を見渡すケン、目の前の巨大な円錐建物の他は燃えている荒野があるだけで何も無い。上空は黒い靄が広がりハッキリと見えない。
「谷川先生に茉白さん、冬華さんは?」
塀を登って来る気配を感じたケンはゼクスミニアドを装備して下を覗き込む。 4 本腕の怪人が縦割れの口を広げて威嚇するのが見えた。
「タァー!」
ゼクスミニアドで頭を貫き落下させる。落下した後に塀の下側からゾロゾロと怪人が這い出して来た。
「ゲゲゲゲ!」「グゲゲゲゲ!」
這い上がって来る怪人の群れ、ケンは不死鳥の剣士の炎の範囲攻撃で焼き払う。
「ゲゲゲゲ!」「グゲゲゲゲ!」次々と塀から湧いて出る怪人。
「クソ!きりがない、入口を見つけなきゃ駄目だ」
不死鳥の剣士に乗り中央の円錐建物に向かって飛ぶケン。窓や扉らしいものは一切見当たらない。
「壁に穴を開けないと駄目な感じかな」
「グゲゲゲゲゲゲー!」
壁から染み出すように現れる先程とは様子の違う怪人。真邪王がコピーした大蝦蟇・周防美古都の怪人であった、十字槍を持っている。
「くっ!」
斜面で足の踏ん張りがきかないケン、咄嗟に攻撃をガードしたが体勢を崩して下に滑っていく。
「ゲゲゲゲー! 来たな勇者ァ! このダンジョンは簡単に攻略出来ねえぞ? 俺の呪力と真邪王の力を振り絞って作った最終ダンジョン魔王城だぁ !! 」
「ジンガ!」
「今頃真邪王の奴は邪体を狙ってシーア財団の保管庫を襲っているだろうよ。邪体を手に入れ覚醒魔王となれば東京全域をダンジョンに変えてやるこの国は呪いの【凶】国となるのだ!」
「そんな事をして何になる!」
「馬鹿な人間どもが呪力を持つ怪人に入れ替わる。呪い呪われ呪力の強いものが上に立つ新しい秩序が生まれる。混沌のパワーは魔王の俺に活力をくれる!真邪王の世界征服も進むのだ」
「成り立たないそんな事!」
「そうかな? 今はまだ獣のような呪力怪人だがやがて理性を持って落ち着けば以前と同じような生活に戻る。しかし中身は完全に別の存在それだけだ」
舌を伸ばす大蝦蟇ジンガ、不死鳥の剣士の盾がケンを守る。
「不死鳥の剣士、炎の薙ぎ払いだ!」
扇状の放たれる炎、大蝦蟇ジンガは大きく口を広げて炎を飲み込んだ。
「なんだと !? 」
「残念! この大蝦蟇は飲み込めると確信したものは全て飲み込めるのだ。チョイとでも無理だと感じたらできないがこの俺のメンタルなら元の大蝦蟇よりも多くのものが飲み込めるって訳よ」
十字槍がケンを襲う。不死鳥の剣士が剣で払う。
「その召喚カード、優秀な剣士、中々の物だが――」
建物の壁から飛び出した翼竜がジンガを掴む。
「本当に手足のように使いこなせてるか? 所詮は自分で生み出したカードではない」
翼竜に掴まれたジンガは空中から槍で攻撃。盾で弾く不死鳥の剣士。
「黙れ!」
「借り物の力で俺に勝とうなどと思い上がり……叩き潰してやるぜ」
円錐建物の一部がクレーター上に変形、その中央に穴が開く。ジンガは翼竜に運ばれ穴に飛び込んでいく。
「待て!」
不死鳥の剣士に乗ったケンはジンガを追い穴に飛び込む。
「ギャハハハハ! 釣られやがった! これでテメェは仲間と分断された! 次に来た人形と眼鏡のおっさんは別の場所でぶっ殺してやんゼ!」
***
円錐建物の頂点から侵入した茉白と谷川。暗いトンネルを進む二人。
「怪人だらけだな」
谷川は襲い掛かって来る怪人をマニュピュレーターで貫きながら言った。
「渋谷の取り込まれた人間の数を考えると膨大な敵を相手にするかもしれません」
茉白は壁から現れた怪人を肘のチェーンソーで切り裂いた。
「ふむ……幸いこの者達の血は使える。私は吸血鬼だから補充しながら長期戦はいける。茉白のメンテナンスもな」
「はい先生。先生のお力で『作成』された部品であれば茉白は万全の性能を発揮できます」
谷川は血で無機物を作成できる。更にそれを他の無機物に組み込むことで自在に操ることや性能を向上させることができる。
「平時では中々思う存分に使う事が出来ない私の能力だが……このダンジョンであれば気にせずに解放できる」
「そうです。先生、思う存分に力を解放してください。茉白はそんな先生をより一層愛します」
ジンガの誤算はこの二人であった。戦闘能力だけで茉白と谷川は閉じ込めておけばいいと思い込んだ。一番の強敵と見た冬華と勇者ケンを引き離し残りはどうにでもなると考えてしまった。真邪王も茉白と谷川についてはノーマークであった。
狭いトンネルの中で数で押し切るつもりだったジンガ、茉白と谷川は焦ることなくペースを保ちながら怪人を処理して自らの備蓄へと変えていく。谷川の脳内で思い描いた茉白の新パーツが次々と形となっていく。
二人の足元に広がる血の海は保管庫でありいつでも取り出せる状態にあり、茉白と谷川は新パーツを試しながら怪人を処理してそれを材料へと変える。
ジンガは呪力の源であるダンジョン内の人間(怪人)が想像を絶する速さで減っている事に気が付かない。ジンガの最大容量の 10 倍の呪力を確保したつもりであった。勇者ケンと冬華、残りの二人を始末するのに使いきれないと考えていた。真邪王が邪体をあと一つでも手に入れれば勝ちは確定、それまでの時間稼ぎに過ぎないと。
***
冬華は円錐建物の周囲を飛び建物全体のスキャンを終えていた。人格分裂させた並列思考に処理をまかせて冬華は周囲を警戒する。
「建物の中に大きな反応……中央に勇者ケンらしき反応、上部に茉白と谷川克政先生の反応を確認……」
冬華は勇者ケンに合流することが先決だと判断。ケンの反応がある高さに合わせ円錐建物に接近する。
「さて……壊して入るしかなさそうですね」
突如壁から無数の手が伸び冬華を掴みにかかる。射出していたビットが反応しフォースフィールドを展開して防いだ。
「私を中に入れるつもりはないと」
「ギャハハ! テメェを中に入れて壊されちゃあ敵わんからな!」
壁から飛び出したジンガの操る真邪王コピー体。冷気を纏い氷の太刀を持っている。
「来いよ!」
円錐建物を囲む塀の上に立つコピー体。
「その魔力……白峰吹雪をコピーしたのですね」
「そうだ! お前と同じ一族だ! 俺様の天才的センスと呪力にこのコピー体、負ける気がしねえな!」
「丁度良かった、雪名の子供たちとは全力で仕合ってみたかったのです」
「ギャハハハ、負けたら自殺もんの恥ずかしい台詞吐くじゃねえかまぁいい、テメェはここでスクラップにしてやるから安心しろ」
ジンガを追い塀に着地する冬華。
「吹雪の真似で何処までできるか確認します」
冬華のビットは不規則な動きで吹雪コピージンガを囲む。ビットからプラズマが放たれる。
「おっとぉ!」
ビットの前に氷の鏡を出現させてプラズマを防ぐ。 6 機のビットのランダムプラズマ攻撃にあわせ氷の鏡を出現させる。
「なるほど、ビットによるランダム攻撃、並みの相手はこれで何も出来ずに敗北だな」
「ではこれは」
冬華はビットに向かって右手のプラズマ砲を撃つ。乱反射したプラズマが全方位で吹雪コピージンガに襲い掛かる。氷の盾で防ぎきれないプラズマ弾が体に降り注いだ。
「ぐあああっ……」
さらに追撃を加える冬華。しかしジンガは体からダイアモンドダストを放ちビットを蹴散らせた。
「いてぇだろうがよ……やりやがったな……だが俺もコイツの能力の使い方を理解したぞ……」
ダイアモンドダストはジンガの周囲 2 メートルを浮遊。
「触れるもの全てを凍結させる冷気のエネルギー……この能力には更に上の段階があるな……」
「そこまでお前が吹雪の力を引き出せるでしょうか」
「なんだぁ? 俺を試してやがるのか?」
「(あのモードになった吹雪は通常 5 分が限界……それがのジンガと言う者に適応されるとは限らない従って時間切れを待つわけにはいかない)」
吹雪のダイアモンドダストモードは攻防一体の彼女の能力の奥義ともいえるものであったが 5 分程度しか持続できず、移動する事に向いていない。
「(あのモードを正面から潰せなければ勝てない。それには質量が必要。あれを打ち破る方法は防ぎきれない大質量の攻撃しかない)」
マシンガン、電撃等のエネルギー、魔術の連続攻撃程度ではダイアモンドダストモードは破れない。例えば大型トラックをぶつけるような大質量の攻撃が必要。
「(こちらは自在に飛行できるアドバンテージがある。考える時間がある。吹雪のあのモードは本来必殺の一撃を入れるための前準備。あのように展開して長く敵に見せるものではないはず)」
ジンガは短期決戦の為にすぐに最大能力を出したが、本人の吹雪はダイアモンドダストモードは決着をつける為の最終手段であり出せば終わるようにする。長々と展開し敵に策を練らせて逃亡させたり対応させ無い為である。
「(逆にありがたい。吹雪のダイアモンドダストモードはデータでしか知らない。こうしてじっくりと見せてもらうのは良い経験になる)」
冬華は宙で停止、体内の V ドライブを高回転で起動させる。
「(お母様の覚醒状態ハンドキャノンの威力まで……出力をあげる。直径 100m が吹き飛ぶ威力ならダイアモンドダストモードを貫けるはず)」
『一撃では吹雪には届かない』
並列人格が冬華の思考に割って入る。
「邪魔をしないで、貴女は周囲のスキャンを続けなさい」
『スキャンした結果あのダイアモンドダストモードは破った時に爆発して威力を軽減させる可能性が高いと出たので進言を。なので二連射を推奨します』
「なるほど、では二連射分のチャージを始めます」
ジンガは翼竜を呼び寄せる。
「なんだなんだ?打つ手がなくて逃げたのか?じゃあ……」
ダイアモンドダストモードを解除し翼竜に捕まるジンガ。冬華はビットを放つ。幾何学模様めいた軌道で飛行する冬華に対しジンガは緩やかなカーブを描く飛行しかできない。
「ちぃ! 当たらねぇ!」
吹雪の氷弾に呪力を込めて連続発射するジンガ、当たれば凍結と呪いの二重効果で対象を蝕むが冬華には当たらない。
冬華はビットからのプラズマ弾を発射、氷の盾で防御するジンガ。全方位からの攻撃は防ぎきれず翼竜に命中する。
「空中戦を挑んだのが間違いでしたね」「黙れ!」
ジンガはダンジョンに捕らえられた人々から 1000 人分の生命力を消費して一気に呪力を放出。墜落した翼竜を捨て呪力の推進で冬華を追いかける。
「ギャハハハハハー! 10 万人程度の人間を取り込んでいるこのダンジョン内では俺様はやりたい放題! 真邪王の力を借りるまでもねえんだよぉー !! 」
ジンガは U ターンを決めダンジョン中央にそびえたつ巨大な円錐建物の頂点に立つ。
「テメェの相手は後でしてやる。先に勇者をぶっ殺す。お前は何もできずに彷徨ってな!」
「消えた…… !? 」『ジンガの反応、円錐建物の中央に移動しました』
スキャンデータを確認する冬華。
「建物の一番下……不自然な空間がある。ここの壁が一番薄いか」『破壊可能と推測』
エネルギーチャージで溜まったプラズマブラスターを放ち壁を破壊する。冬華は円錐建物の最下層から中に侵入した。
***
「なんて雑なダンジョンなんだ」
ケンはファランクスを自分の周囲に展開しながら円錐建物の中トンネル状の通路を進む。壁から染み出すように現れる怪人はどれも並の人間に毛が生えた程度の脅威で容易く倒すことが出来た。
「ただただ巨大なダンジョン……なにかこのダンジョンにした意味はあるはずだ。今頃真邪王はジンガの体の代わりになりえる適合者の肉体を使い財団の保管庫を襲っていると考えられる……そっちは財団とユウに任せるしかない……」
ケンは怪人を倒しながら考える。
「保管庫から邪体を盗られたらどうなる? 真邪王はジンガと合流してダンジョンの拡張を始める? それはこのダンジョンからか?」
円錐建物が揺れ始める。震度 3 程度の揺れを感じるケン。
「なんだ?」
建物内にいるケンは気が付かない。円錐建物は地中で広がり全体的にせり上がり徐々に巨大化している事を。
渋谷の外に溢れだした巨大怪人が人々を取り込みダンジョンにエネルギーを供給している状態であった。
――ダンジョン中央の玉座に座るジンガ。横には先ほどまで乗り移っていた吹雪のコピー体。ジンガは想定よりもダンジョンの拡張が遅れている事に気が付いた。
「おかしい……勇者どもが怪人を処理しても残骸はダンジョンが吸収する永久機関のはずだ……誰がエネルギーを横取りしてやがる?」
ジンガは呪符を取り出して床に投げつける。
「面倒だが……調べるか」
床から肉塊がせり上がりセンジョーの鬼である夜叉童子の姿に変わる。
「貴重なコピー体だがまぁまだストックはある、とっておきのもな。とりあえずはこの夜叉童子を向かわせるか」
――茉白と谷川は怪人を倒し血を吸収し続けパーツを作りストックの部品を確保し続けていた。
「先生、茉白たちの行動に敵は気付いたようです」「ふむ、流石にそろそろ気付くか」
茉白たちの目の前に夜叉童子のコピー体が染み出してくる。
「……これまでとは違いますね」「ここからが本番という事か、さぁ十分にストックしたものを使おうじゃないか」
「ジャッ!」
夜叉童子コピー体が鎖分銅を放つ。茉白と谷川はシールドパーツを構える。
「 !? 」「む……」
鎖分銅は茉白と谷川のシールドパーツに命中。一投で二人を攻撃していた。
続く
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