ラビット・アンダーグラウンド 18 話
「(う~んサキュバスハーフの力でこの人たちをどうにかすれば……)」
『なゆか何を考えているの?』
「(せっかくさぁ、血気盛んなんだから上手く使って LavaGarden の被害消耗は避けたいんだよ。この人達も使いようじゃない?)」
『どう使うの? クリムゾン様は排除するつもりだけど』
「(有効活用の仕方……完全に LavaGarden の手足になってもらうのは?)」
『どうかな、クリムゾン様はそこにリソースさかないと思うよ』
「(じゃあ私がこの人達を使うのはどうかな?)」
『なゆかが生城山もみじとホストクラブ PPP を支配するの?』
「(経営とかそういうんじゃないよ。私の為にも LavaGarden のみんなの為にも敵は少ない方がいいじゃん? もし邪魔になったらバイバイすればいいし)」
『クリムゾン様が納得するかな』
「(ホストクラブの売り上げを LavaGarden の上納させればどうかな? 現金のやり取りだと足が付くから LavaGarden の客として思いっきり消費してもらうとかね。ホストが急にさぁ LavaGarden に夢中になったとしてもそんなにおかしい事とは誰も思わないよ)」
『生城山もみじはどうするの?』
「(今まで通りホストにじゃんじゃんお金使ってもらえばいいんじゃない? で、そのお金は巡り巡って LavaGarden に集まるしそれならクリムゾン様も納得するんじゃないかな?)」
なゆかはポポリンと SliME のメッセージでやり取りしてる間、生城山もみじとホスト五人を桜色の光を放つ目でじっと見つめている。
「兎川伊奈さん?」
生城山もみじが満面の笑顔で言った。
「なんでもありません。すばらしい人達ですね」
なゆかはホスト五人をそれぞれ見つめて言った。
「そうでしょう? 彼らのお店も本当に素晴らしくってね、是非行ってね? お金は大丈夫初回は無料だしドリンク券も渡してあげるから」
生城山もみじはカードを渡す。
「あの……オープンカンパニー中なんですけどこれって」
「接待を覚える事も大事なのよ。あと良いお店を知る事も勉強、仕事っていうのは会社の中だけではないないのよ。色んな繋がりがあって活きてくるんだから」
「そうですか(私が LavaGarden のラビットだと知らずにね~)」
『なゆか、クリムゾン様がそのホストクラブのナンバーワンのカイザープリンスを始末したから色々人間関係の調整が必要だね』
「(ミサイルを撃ち込んだ報復で始末されただけじゃ弱いの?)」
『反 LavaGarden を掲げてかなりあおってたみたいだしホストクラブ内にもカイザープリンスに反発する者もいるはずだよ。全員がドンパチ揉めたい訳じゃないからねそういうホストを取り込んでいくのがいいよ』
「(まずは土台作りだね。ラビット軍団の為の)」
『なゆかは新興宗教の教祖とかが一番向いてるのかもね』
「え~……そういうのはちょっと。ラビット軍団はあくまで LavaGarden のファンでラビットのファンでもあるそのくらいの立ち位置でいいよ」
『正しいファンの獲得方法じゃないけど…… LavaGarden の利益になるならクリムゾン様も納得されるかもね』
「(でしょう? 私はサキュバスハーフの力が売りなんだから活かさなきゃ)」
『対象の体を弄らないで行動を操るようにできるのは大きいね。警察も追いようがないし』
「(……やらないけどさ、完全犯罪もできるよねきっと)」
『そうだね』
生城山もみじと五人のトップクラスのホストは既になゆかの事で思考を支配されている。催眠でも洗脳でもなく、自然に魅了され従うようになっている。
それぞれが目の前の兎川伊奈(なゆか)の事を考え行動するようになる。女優やアイドル熱心なファンのように推し活をするようになる。
「生城山さんは……健全なホスト通いをして欲しいです。ホストの皆さんは LavaGarden の良さを知って欲しいですね……あ、私キャストとしてあのお店で出ますよ。ラビットとして!」
『なゆか !? 』
「(大丈夫大丈夫、この人達には口を固くするように言い聞かせるから。それに兎川伊奈がラビット知られたところで藺藤なゆかとしては別に影響ないし)」
「 LavaGarden は本当に良いお店なんですよー。なんか怖い噂とか一部であるみたいですけどそんな事ないですよ? お店に行けばわかります」
なゆかは生城山と五人のホストに近づいて手を握りながらじっと見つめて言った。
「ま、まぁ俺はしってたけどね。カイザープリンスはぶっ潰すとか言ってたけど」
「良いもんは良い、それが真理だ!」
「第二区は盛り上がってなんぼでしょ! 揉めてる場合じゃないって!」
「ドン後路須ファミリーは変なプライドで新参者を認められなかった、だから滅びた。でも俺らは違うこの街はグレーなんだ敵味方白黒つけて喧嘩するだけじゃあ生きていけねえよな!」
あっという間に手の平を返すホスト達。
「兎川伊奈がラビットだって事、ここの六人の秘密ですからね?」
「もちろんですわ」「おう」「男の約束だ」「ぜってー言わねえ」「大丈夫さ」「漏らしても得がねえむしろ損するだから他に言う必要がない」
「それじゃあ皆さん今後とも LavaGarden をよろしくお願いします!」
なゆかは全員の連絡先を得て解散した。
その後オープンカンパニーのスケジュール通り行動し昼過ぎに終了した。
兎川伊奈の姿のままタクシーを拾い LavaGarden に。歌劇団メンバーの控室で変身を解除した。
「ふー……楽しかったけど疲れた」
『お疲れなゆか。報告はポポの方でまとめておくから後で目を通してね。準備が出来たらクリムゾン様に連絡するね』
「ありがと助かる」
ぽぽりんはカバンから飛び出して子犬の姿になって絨毯の床に寝そべった。なゆかは控室の隣の楽屋をのぞいてみる。スワンが鏡の前で座っていた。鏡越しにちらりとなゆかを見た後またじっと自分の姿を見つめている。
「スワン、ごきげんよう」
「ごきげんよう……ラビット」
「あ、名前もう知ってるんですね」
「ええ、 SliME ネットで知りました。これからよろしくお願いします」
「こちらこそよろしく願いします」
「ラビット……以前見かけた時と少し雰囲気変わりましたね。今の方が良いです」
「恐縮です」
「何か用でもありますの?」
「いえ、人の気配がしたので挨拶をと」
「そうでしたか、ではお互い好きに過ごしましょう」
「はい」
スワンはじっと自分の姿を見つめて集中しているようだと考えたなゆかはそっと楽屋に置かれた台本を一冊手に取って控室に戻った。
「前の公演の台本だ……」
『シープの使ってた台本だね』とポポリン。
「あ、ホントだ」
台本の裏にはカラーペンでシープと書かれ中身は物凄い量の書き込みがあった。
「シープって綺麗な字でいっぱい書き込むタイプなんだね。映像で見た姿だとふわふわしてて天然でおっちょこちょいな感じだから意外」
『シープは真面目な子だよ。自分はバカだからこうしないと覚えられないって必死になって他のメンバーに色々聞きながらいつも台本に沢山書き込んでいるよ』
台本を読みながらポポリンの最適化を待つなゆか。
『なゆか、準備できたよ』
ポポリンから送られてくるデータをメガネの内側に写して確認するなゆか。
「凄い流石ポポリン、資料まとめるのも速いね」
『資料自体は 1 分で作れたんだけどポポの体の修復と SliME ネットの更新に少しだけ時間かかったんだ。なゆかがよければクリムゾン様をお呼びするけど』
「うん、お願い」
すぐにクリムゾンが現れた。
「大体の事はわたくしの SliME の来夢から聞いています。ラビット、なぜあなたが生城山もみじと PPP のトップホスト 5 人をサキュバスハーフの力を使い支配したのか聞きたいですわ」
クリムゾンはなゆかを見つめたままゆっくりとソファに腰を下ろしなゆかにも座るように手の仕草で促す。なゆかはそれを見て従い正面に腰を下ろした。
「有効活用が一番の動機ですね。自分に何ができるか考えた時にこれならできるって思いました。自分自身の為でもあります、サキュバスハーフの力を持て余さないで使える機会は逃したくないと思ったのです」
「……なるほど。では PPP の件はラビットに任せますわ」
「えっと任せるというのは……」
「生殺与奪をあなたが握ると言う事。 PPP の連中がわたくしを困らせる事があれば始末します。ラビット、あなたの責任でホスト達が命を落とすことになっても構いませんね?」
「え~……それは責任重大ですね」
「死なせたくなければしっかりと手綱を握っておきなさい。ラビット、無いと思いますが LavaGarden に対して目に余る事態が起こせば、貴女のポポリンを没収し記憶も消させてもらいます」
「え、あ……ま、まぁそうですよね(殺されないだけマシかな)」
「それでも、 PPP のホスト達を支配下に置いて運用しますか? 今ならノーと言えますわよ?」
「うーん……(これはクリムゾンさんが私を試しているのかな? どうなんだろうやるって言えばサポートしてくれそうな気もするしやらないっていえば PPP の人達始末されちゃうのかも。ポポリンどうかな?)」
『これはなゆか考える事だよ』
「(そうだよねぇ……今後 PPP の人達を使うとなれば色々頭を悩ませることも起きるよね。でもノーって言ってしまえば死んじゃう可能性がある。そもそも私が介入しなくてもクリムゾンさんは PPP を潰すつもりでいるかもしれない)」
「考える時間が欲しいかしら?」
「やります! クリムゾンさん! PPP の人達を LavaGarden に貢献させます!」
「ふふ……いいわ。そう言うと思いました。フォックスを貴女のパートナーにしましょう。バディを組んで PPP の連中を上手く使いなさい」
「ありがとうございます」
「こちらこそ感謝してますわ。入ったばかりの貴女がここまで大胆な事をして LavaGarden に尽くしてくれるなんて。自分の利もあるんでしょうけど」
「なんかやれそうだしやっちゃえ~って思ってしまいまして」
「自然に集団を支配下に置いて取り込めるというのは LOKI にもいない才能です。ラビットは将来 LOKI の幹部になるかもしれませんわね」
「そんなとんでもないです」
「第二地区はもうこれで完全に手に入りますわラビットのおかげで随分と楽に早く。それと……次の公演楽しみにしてますわ」
「がんばります!」
***
―――第五地区倉庫街。
狐理子とシャパリュは秘伝書を求め院瀬見の管理する倉庫へ向かい警備隊と戦闘を繰り広げていた。
「警察は来そうにないね」
「アア、院瀬見は公にされたくないものを沢山扱っているからナ! 警察は事後処理だけだ今までもそうだった!」
SliME で通信する二人。
戦闘フレームの 1 機を奪い取った狐理子は乗り込んで警備隊に応戦。シャパリュは広範囲に動き回り爆砕符によって破壊活動を行っている。
「フォックス、戦闘フレームをよこせ自分がそれを操ってやる。オマエは秘伝書を探せ十分奴らを目当ての倉庫から引き離せた」
「わかった、後は任せる」
狐理子は積まれたコンテナの裏で戦闘フレームを乗り捨て目当ての倉庫に向かう。それ見たシャパリュはランドセルから型代を取り出して戦闘フレームに駆け寄ると張り付けた。
「ガガガガガガガ……」
コクピットが閉じ立ち上がる。
「器としては少し物足りないか?」
「ガガガガガガオオオオン……」
コクピットが変形しハッチが獣の顎を思わせる形に変わっていく。
「行け、チャウンドゥラ」
「ガオオオオオオオン!」
「呪(しゅ)を思う存分使わせて貰おうじゃないか。この体の形態をとる事は滅多にないんだから」
緑のロングヘヤーをかきあげるシャパリュ。普段のぬいぐるみのような姿とは違い今はスラリとした背の高い成人女性の姿である。
「で、そろそろ院瀬見の特殊舞台が来るって訳だ」
空中輸送コンテナがシャパリュに向かって飛んでくる。ハッチが開くと身長 2 メートルを優に超えるコート姿の男が飛び出した。全身は灰色で目は濁り鋼のような筋肉をしている。
「生物兵器の類か? 怪人のデータを基に作り上げたか」
シャパリュは背負っているアサルトライフルを連射。目の前の大男は両腕を盾にして平然と受け止めた。
「反応速度、強靭度、どれも怪人並みかそれ以上か」
「ブグゥゥ……」
院瀬見の警備隊は大男の姿を確認すると下がって行った。
「巻き込まれるのを恐れて下がったか。それともこれはデータを取る為の戦闘か?」
「ブアアアッ!」
突如超低空のダッシュを繰り出す大男。シャパリュの足を掴みにかかる。シャパリュは軽く飛び上がり空中回転、尻尾で大男の首の後ろを打ち付けた。
「ブガアアアウ!」
顔面からコンクリートの地面に叩きつけられた大男は破片と血液をまき散らして跳ねた。
「割と本気の打ったのだが頑丈だな」
「グウ~……」
「言葉を発せないのか」
「舐めるな……俺は新世代の院瀬見の戦士。アルファとでも言っておこう。この体、ロケットランチャーにも耐えた、お前の打撃で倒せると思うなよ」
「新世代……? 怪人から何が変わった」
「俺の姿を見て怪人の事を聞くとは……誰に雇われた者だ?」
「質問をしているのはこちらだが?」
「知った所でお前はもう逃げられない。この場で死ぬか回収して実験に使うまで。だが教えておいてやろう、この俺アルファは院瀬見の粋を集めて生み出された究極の戦士達の一人だ、その第一号。戦闘スーツも戦闘フレームも邪魔になる重火器も必要ない。サイバネハッキングによる妨害にも、化学兵器などの毒物にも耐えうるのだ。もはやブラックヴァリーなどというニンジャを雇う必要など無くなったのだ」
「秋馬光鴨と魔女による妖の合作と考えていいのか?」
「ほほう、中々にこの街の裏事情を知っているようだ……ますます生かしてはおけんな」
「(この新世代怪人、回収して置きたいな)」
「で、何だお前は?」アルファはシャパリュを睨みつけながら言った。
「研究者……という立場になるな」
「ふん、どこかの企業の者か……まぁいい捕らえて吐かせるのも楽しそうだ」
アルファは拳を鳴らしながら言った。
続く
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