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これって、全くの偶然でした。日曜の午後、何気なく近日公開ロードショーのリストを眺めていたら、『夕凪の街 桜の国』に出会ったのです。予備知識は皆無でしたが、タイトルを一目見ただけで、素晴らしい作品の予感がありました。映画の解説はオフィシャルサイトを御覧戴くとして、今回は原作を読んだ直後の感想を書きたいと思います。この作品は、漫画家こうの史代さんが2003年から4年に発表された三部作(『夕凪の街』『桜の国(一)』『桜の国(二)』)であり、原爆をベースとして、戦後と現代を生きる二人の女性を主人公に、庶民のささやかな幸福と、それを奪い去る歴史の奔流、そして家族の強い絆が描かれています。この作品に少しでも早く接したくて、日曜にアマゾンで注文し、つい先程届きました。早速読み始めましたが、感動で涙が止まりませんでした。『夕凪の街』の主人公「皆実(みなみ)」は原爆で父と姉、妹を亡くし、生き残った母親と広島市内の焼跡のバラックに住んでいます。昭和30年という時代、僕はまだ幼稚園前でしたが、戦争の爪跡はまだ生々しく残っているのでした。彼女は勤務先の誠実な同僚、打越豊から求愛されるのですが、被爆しながらも生き残った負い目から、受け入れることが出来ませんでした。「そっちではない。おまえの住む世界はそっちではない」という多くの死者の声が、「幸せ」を掴もうとする皆実の行く手を阻むのです。結局、皆実は自分の背負っているもの全てを打越に語り、愛を受け入れるのですが、その束の間、皆実は後遺症で倒れ、若い命を閉じるのでした。昭和20年8月6日の広島市内、「エノラ・ゲイ号」から投下された原爆は、爆心地を中心に多くの人々を飲み込み、阿鼻叫喚の地獄図を呼び起こしました。生き残った人達は、一緒にいた家族や友人を、半ば見殺しにせざるを得ない状況の中で、結果的に自分は助かったのでしょう。毎年、夏になると原爆特集が放映されますが、被爆された方々も高齢になられ、最近になって漸く「生き残った苦しさ」について、思い口を開かれるようになりました。「自分は生きて、幸せになって良いのだろうか」という呵責の念に、皆実もまた苛まれていたのです。本の表紙は、夕凪の中を退勤中の皆実が、脱いだ靴を手に持って、裸足で川岸を歩いているシーンですが、これは戦後の貧しい生活の中で、大切な靴の踵が磨り減らないためだったのです。ただ、夕空を見上げる皆実の表情が明るく、この作品の底流にある温かさと優しさを感じ、救われました。『桜の国』は、皆実の姪である「七波(ななみ)」が主人公であり、その父旭は皆実の弟で、水戸に疎開していて無事だったのです。旭は幼時に被爆した京花と結ばれ、七波と弟の凪生を授かるのですが、京花は早死します。そして、定年を迎えた旭は、度々黙って広島を訪れ、不審に思った七波は広島に父を追うのですが、姉皆実の知己を訪ねる父旭を通して、自分のルーツと家族の絆を感じるのでした。後編では感動的なシーンがあります。東京に出てきた旭と京花が、近所の片山橋(中野通りに架けられた陸橋)に佇み、眼下の桜並木に微笑を浮かべつつ見入っています。そして、バックには七波の言葉が流れています。「母からいつか聞いたのかも知れない けれど こんな風景をわたしは知っていた 生れる前 そう あの時わたしはふたりを見ていた そして確かに このふたりを選んで 生れてこようと きめたのだ」庶民の、本当にささやかな幸せと、その根底にある「家族の絆」、そして不意に訪れる死。被爆者という運命を背負った家族にとって、それはとりわけ切実なものであり、だからこそ、ささやかな幸せと「絆」の素晴らしさが、際立って感じられるのでしょう。この片山橋、桜の季節に訪れてみたくなりました。この本ですが、今度帰ったら、真っ先に娘に差し出そうと思います。彼女も5年生になり、少しずつ少女から女性へと、成長のプロセスを歩み始めました。ロードショーは7/28(土)からスタートしますので、映画もぜひ家族全員で観たいと思います。僕はきっと、涙でグショグショの「ハンカチ王子」になるだろうな。
June 19, 2007
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日曜の午後、TVでは「ハンカチ王子」の好投を観ながら、「星の王子さま」のことを書いて参ります。前回の「予告編」で御紹介したとおり、今回は ETV特集選 「星の王子さまと私」を観ての感想を中心に、この作品と自分との関わりを書いてみましょう。お恥ずかしい話ですが、僕にとって「星の王子さま」という言葉を初めて耳にしたのは、高校時代のお笑い番組「笑点」でした。確か、三遊亭円楽師匠が「星の王子さま」と言い出したので、これは「オフザケ」なんだろうと勝手に思い込んでいたのです。何せ、カール・ブッセの名作「山のあなた」でさえ、「山のあな、あな、あな」と茶化していた番組ですから。その頃、定期テストで国語の解答に「星の王子さま」を言及した級友がおり、生徒からの信望が篤かった先生が、サンテグジュペリと他の作品について、彼の答案にサラリと講評を書かれておりました。無知だった僕は、試験の答案に「笑点」の話を書いた級友と、それにきちんとコメントを付けた先生に対して、いささか違和感を感じた次第です。その後、暫く経ってから、僕は漸く「星の王子さま」なるものが、サンテグジュペリという作家によって書かれた「真面目な」作品であると初めて知りました。と言って、全編を読んだ訳でもなく、恐らく書店でパラパラと斜め読みしただけです。第一印象として、稚拙な挿絵(実は作者の手描き)と子供向けの文体がやたら目立ち、それ以上読み進む気にはなりませんでした。その代わり、サンテグジュペリの生き方には興味をそそられ、伝記も読みました。一言でいえば、子供の頃の純真さを持ち続け、自分に忠実に生きた人なのです。飛行機が実用化されて間もないあの当時、貴族階級に属する人物が自ら飛行士という職業を選択したこと自体、「普通じゃない」ことですから。僕が漸く全編を読んだのは、ほんの数年前、息子の夏休みの読書課題として選んだ中の一冊であり、これを機会に自分も読んでみるか、という流れでした。読み進む中で、表面的な記述の奥に作者の色々なメッセージが盛り込まれ、これは童話などではなく、大人の読む本なのだと悟りました。そして、サンテグジュペリの人生に対する予備知識なしには、とても十分な理解など無理だと思いました。さて、いよいよ番組の感想に入りますが、サンテグジュペリの著作権が失効したことで、昨年から今年に掛けて、日本国内でも合計17種類の新訳「星の王子さま」が100万部出版されたそうです。それらの多くは、大人向けの作品として位置づけられ、文体も「である」調に改められているようです。原題は"Le Petit Prince"(ル・プチ・プランス)であり、これは「小さな王子」が直訳ですが、「星の王子さま」はオリジナル翻訳者の内藤濯(あろう)氏の考案だそうです。今回の新訳の中には「小さな王子」として改題されたものもありました。その中で、「辛酸なめ子さん」という漫画家・エセイストの「新訳・星の王子さま」では、挿絵も現代風になっており、彼女独自の解釈が紹介されていました。彼女曰く、「この作品は現代社会への警鐘ではないでしょうか。数字しか関心のないビジネスマンや、挫折したアル中の人、更には純粋だから手練手管の女性(バラ)に翻弄されそうな王子さまを通して、世の中には罠があるよ、と訴え掛けているのだと思います」ということでしたが、これはいささか飛躍が過ぎるように思いました。何れにせよ、最初から大人向けの作品として位置付けられていたら、この作品への理解も、また評価も大分変わっていたことでしょう。 以下、次号へ。
June 17, 2007
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つい、今し方までNHK教育テレビで、 ETV特集選 「星の王子さまと私」を観ていました。先週来、「篤姫さん」という方がBBSに投稿して下さり、サンテグジュペリに関してやりとりした経緯もあって思わず観入りましたが、素晴らしい内容でした。今日はもう遅いので書けませんが、これから何回かに分けて我が「星の王子さまと私」を書いてみます。以下に、この番組の触りを引用しましょう。NHK教育 22:00 ETV特集選 「星の王子さまと私」名作を読み解く鍵▽100万部翻訳ブーム▽池沢夏樹・柳田邦男・中村吉右衛門が語る▽心にしみる珠玉の言葉▽アニメで動く王子さま▽朗読・平田満・鈴木杏▽サハラ砂漠からパリへ作者と妻の愛の軌跡をたどる。それから、「星の王子さま」と、「アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ」についてはWikipediaのページにリンクさせて戴いております。それでは、本編は追々書いて参ります。
June 10, 2007
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