2003.08.21
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巨人戦を見に行った。

3塁側内野席のオーロラシート、前から7列目だ。3塁コーチャーズボックス
にいるコーチの背中がよく見える。ジャビッツという、若いチアリーダーたち
が7回の攻撃が始まるまえに踊るイベントがあるのだが、彼女たちの小さい
顔もよく見える。オレは彼女たちの踊りをいつも、非常に楽しみにしている。
小さい顔といえば、スタンドの通路を往復しているビールの売り子も皆一様
に顔が小さい。顔の小ささで採用しているのではないかと思うほど、皆揃っ
て顔が小さい。短パンからは白い素足がむきだされていて、オレは彼女らの

るのかよくわからなくなる。
我々が観戦した日に、巨人が負けた事はない。
熱狂的な巨人ファンというわけではないし、テレビではほとんど野球中継を
見ることはないけれども、他のチームを応援する理由がないことなどから、
巨人を応援している。選手では清原と仁志が好きだ。

「今日も絶対巨人勝ちますから」
と高らかに宣言して会社を後にした。飯田橋の会社から水道橋までは徒歩
10分程度でいける。ただし水道橋からドームの中に入るまで10分以上かかる。
ビールとチキンと枝豆を買って席についた。
ビールを置くホルダーはあるのだが、つまみを置くテーブルがない。
仕方なく食い物を地べたに置いて観戦を始めた。

の出塁を許した。オレはこの林という名前の投手を知らない。選手紹介用
のパンフレットを見ると、2年目20歳と書かれていた。ハタチのぺーぺーが
巨人の勝ち負けを背負って大丈夫なのかよという不安がよぎった。
横浜の4番は、T・ウッズというプロゴルファーと同じ名前の野獣のような容姿
のでかい黒人だった。

ふわふわと弱弱しく上がったフライは外野席スタンドのフェンスぎりぎり内側
に入ってしまった。
1回の表、3対0。
はやくもオレの不敗神話が崩壊の危機にさらされてしまった。

ところがその直後の1回裏。
デッドボールで出塁した高橋を1塁に置いて打順は4番ペタジーニを迎えた。
オレはこのとき、ペタジーニが巨人にいるということを初めて知った。
横浜の先発秦の内角へのストレートをペタジーニのバットは正確に捉えた。
打った直後にそれとわかる打球は、ドームの屋根ぎりぎりを通過しながら、
迷うことなく外野席スタンドへ吸い込まれていった。
ドーム中が歓声と拍手と興奮と熱狂に包まれた。スコアはまだ3対2で、
巨人1点ビハインドの状態ではあったが、このときドームの中の8割の人間は
今日の勝利を確信したのだった。

2回裏、巨人の攻撃。
清水はデッドボールを受け乱闘寸前で怒りをこらえて出塁した。清水の怒り
に動揺したのか横浜は、続く村田によるボテボテの内野ゴロを捕球後、1塁
送球のタイミングでエラーをした。この間にランナーは進塁しノーアウト2,3塁。
ピッチャー林はあえなく三振に倒れるも、打順は先頭に戻り、二岡の初球打ち
である。ライナー性の速い打球はレフトスタンドのポールめがけて伸びた。
スタンド直撃は間違いなかったが、ファールかどうか迷える弾道ではあった。
ドームが揺れたことで、ニ岡の打球がホームランだとわかった。
ホームランが出ると、ドームは独特な揺れ方をする。多くの歓声がこだまして、
竜巻のように渦を巻いて上昇するような感じになるから、一体感のようなもの
もうまれる。
オーロラビジョンにはHOMERUNの文字が躍っていた。
二岡自身は、自分が打ったのがホームランであることを確信していたらしく、
気付くと2塁ベースをゆうゆうと回っているところだった。
3対5。二岡のホームランにより巨人は逆転に成功した。
オレがビールを飲むペースも、急速に速まっていった。

以降、0対0の攻防が続いた。
若干ハタチの2年目投手林は、初回こそ制球に苦しんだものの2回以降は
非常に落ち着いた投球をした。速いストレートとキレのあるスライダーを武器
に横浜マシンガン打線を力強くねじ伏せていた。一方横浜は1回毎に投手を
ころころと変えていった。めまぐるしく変わる投手の球筋に巨人打線は翻弄
されていた。
横浜の攻撃になるとオレは、用を足すためと一服するために席を離れること
が多い。ドーム内に立ち並ぶ売店を散策していると、選手グッズが売られて
いる店を発見した。急に、Tシャツとかメガホンとかそういった記念になるもの
が欲しくなった。居間に飾りたいわけでも、街で着て歩きたいというわけでも
ないが、そういえばジャイアンツを象徴する商品を持っていないということに
気付いて、ふと店の前に立ち止まってしまった。
結局選んだのはメガホンでもTシャツでもなく、サインボールとリストバンド
だった。我ながら、この選択はちょっとセンスがいいかもしれないとも思った。
サインや刺繍の背番号は、もちろん清原選手のものである。

意気揚揚とスタンドに戻って、買ってきた清原グッズを嫁に見せると案の定、
「なにまたそんなもん買ってきて、いらないよ」といわれた。負けずにオレは、
「いいんだよ。これは清原への投資だよ。」と答えたりしたのだった。
その直後である。
5番清原の打席が回ってきた。
オレはまだ彼のホームランを生で見たことはなかった。
太い腕、厚みのある身体、太い回転軸、圧倒的な存在感、王者の風格。
清原は、打者としての最高の資質や威厳やそういったものを全て持っている。
横浜の投手は清原が放つオーラに萎縮してしまっているようにも見えた。
弱々しく投げ込まれたカーブはキャッチャーミットに収まることなく、清原の
黒いバットにジャストミートした。
客が立ち上がり、ドーム中が熱狂の渦に巻き込まれたのは、清原の天高く
上がった打球が、ライトスタンドへ吸い込まれる前だった。
力強く、しかし硬い表情でダイヤモンドを1周している王者清原に、他のどの
シーンよりも熱い歓声が贈られて、なかなか止まなかった。
オレが買ったサインボールに込めた祈りが、彼に通じたのかもしれなかった。





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最終更新日  2003.08.22 19:31:38
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