2004.06.01
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100個ぐらいのパーツをつなぎ合わせて一つにしたものを「ジョブ」と呼ぶ。それらを5本同時に動くようにしなければならない。それが今週水曜までに課せられたオレの仕事だった。
当初は、CPUの負荷やバックアップのタイミングなどを考慮し、ジョブ同士が必ず排他的に稼動するように設計し、構築した。
テスト用のマシンでは、SQLが働いている間のCPU稼働率はほぼ100%を示していたし、DBバックアップは1ジョブにつき1ギガバイトの容量が必要で、例えばデータ作成中にバックアップをとっても意味がないことなどから、5本同時稼動はどう考えてもありえないと思われていた。
ところが新しく導入されたサーバーにはCPUが2基搭載されており、その性能も体感速度にして約3倍の向上が認められた。
新方式で日次バックアップをとる案が採用され、独自に行う必要な無くなったかわりに、我々のこの5ジョブが稼動する際に必要な時間の割り当ては「2時間」となった。
5つのジョブを1本のライン上に並べる「直列方式」では、実測合計1時間40分という結果が出ていた。しかしなにかのトラブルやハプニングによって稼動時間が延長されることを見越してスケジュールを設定しなければならないから、それぞれのジョブが確実に終わっているであろう見積もり時間で計算しなければ意味がない。その場合、2時間は軽くオーバーしてしまうのだった。
そこで急きょ、CPUの高い性能に依存した、「並行稼動」案が浮上したのだった。

わざと並行に稼動しないように、ジョブ間の排他コントロールをしていた当初の設計内容を完全に解体し、ばらばらに分解された限りあるパーツ群を再構築し始めた。
5本同時に動いてもお互いに何も干渉し合わない。これは例えば1台のテレビを家族全員で共有していた「一家に一台」という時代から「一人一台」の時代への変遷と同じようなエネルギーを必要とする。あるいは5人の家族が別々の家へ移り住むことにも似ているかもしれない。どういうことかというと、コストもストレスも5倍になり非常に不経済だということだし、分担していた役割を一人で全てこなさなければならなくなるということだ。

比較対象としての「家族」と「個人」、どちらに軍配があがるか、という図り方でオレはいつもモノを見ていて、それはてんびん座のO型だからかもしれないがそんなことはどうでもいい。
システムとしての「家族」であることのメリットは、5人が違う家で暮らすのと一つの家で暮らすのを比べた場合歴然としていて、効率化・情報の共有・役割分散などの面において強い。
一方「個人」は、「全て一人でやらなければいけないから生活のためのスキルが上がる」とか、「全ての情報を蓄積しておく必要があるので、多様な知識や教養が身につく」などといった逆説としてしかメリットを挙げることができない。
ただしこれはあくまでも「システム」としての「家族」と「個人」の対比だ。

生まれてから思春期にさしかかるまでの10数年間は、無条件に親の方針に従って人は生きる。それから親を疎ましく感じるようになり、その代わりに恋人や友人や仲間との連携を高めてゆく。この時点で「家族」は一度捨てられる。親の人格を他と比較したり、単なる親ではなく人間として尊敬できるかどうかで見られる判断材料が揃い始める時期でもある。情報が蓄積し、判断力が備わった思春期の子どもは、自己の中の「家族」という概念を再考するために、「解体」する。
やがて子どもは大人になり、結婚して自分が中心になって切り回すことができる新しい「家族」を再構築することになる。しかしこの頃になると、解体したまま放置していたはずの、親を中心とした「家族」も、大人になった子どもの中でいつのまにか再構築されている。

解体・再構築を繰り返して鍛えぬかれた個人のラインは実はお互いに干渉しあいたい。しかしいくつも並行しているラインの中で、干渉が過ぎると混線してしまうことになる。だからお互いに完全に独立している状態が一番安全なのだが、それだとコストがかかる。
このジレンマを解決するために、オレがシステムに施した細工は、共通の話題(データ)や思い出(ログ)など一部情報を共有し、その情報を参照したり更新したりするときには、必要以上に干渉しない、という取り決めだった。
つまり5人家族を一旦分散させ、完全に独立させるのではなく、共有部分に接続するときだけ、デリケートな手続きを踏ませるといったことで、マンションのエレベータを共有することにも似ていなくもない。





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最終更新日  2004.06.04 18:17:50
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