2004.07.10
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7月10日、アボルダージュ~接舷攻撃~という舞台を観に武道館へ行った。
「KANSAI SUPER SHOW」として山本寛斎制作総指揮のイベントだ。

「アボルダージュ」とは、「接舷攻撃」のフランス語で、日本で最初の海戦といわれれる宮古湾海戦で行われた作戦名称でもある。
大政奉還や五か条のご誓文などにより、300年つづいた徳川幕府は失墜し、朝廷中心の新政権が樹立された。抵抗する残存勢力としての旧幕府軍。対、新政府軍の戦闘は、江戸から流山、甲府などを経、やがて東北を北上してゆくことになる。宮古湾海戦の舞台である宮古湾は、現在の岩手県宮古市にある。
「接舷攻撃」とは、船の「舷」つまり「へり」どうしをくっつけて、そこからゲリラ部隊がへりを飛び越えて浸入し、相手方船内の水夫を殺戮し、敵艦もろとも強奪せしめよう、という作戦である。

宮古島海戦には旧幕府軍として新撰組の土方歳三も参加した。
「戊辰戦争」と呼ばれるこの一連の戦闘群は、やがて函館五稜郭において、旧幕府軍の降伏、つまり土方側の敗北、という結末をもって終結する。
このころの新撰組には、かつての隆盛はない。
「鳥羽伏見の戦い」という頂上決戦にもやぶれ、近藤勇は処刑され、沖田某は肺結核で死んだ。「生き残り組」としての、土方歳三率いる新撰組残党は、自分たちの死に場所を探すためだけに、半狂乱になりながら泥沼のような戦いを繰り広げ、そして散っていった。



司馬氏は土方歳三を、新撰組としての落日が始まったところから、つまり敗戦を繰り返しながら函館を目指していた頃が、彼の本領発揮だったという観測で話を書いている。
新撰組はかつての隆盛を失い、近藤や沖田といった仲間も失い、土方だけが生き残っている。一番死ぬべきだった自分だけが生きていて、逆に取り残されているようだ。そう思った時点で土方は死を覚悟した。死を「受け入れた」といってもいい。

死ぬことが恐くない男は、どんな無茶なことでもできる。
「燃えよ剣」の土方歳三をみて、オレはそんなことを思った。
話はそれるが、たけしの映画が好きでほとんど観ている。
よくよく考えてみると、たけしの映画に出てくる主人公はみな、「生」への執着がない。いつも「死」を受け入れられる体勢になっている。だから暴力的だし、限りなく強い。「BROTHER」なんかは、たぶん新撰組の話がもとになっていると思っていて、かの映画でたけしが演じた主役は、土方歳三をモデルにしたに違いない。そういえば、大島渚の「御法度」で土方役をやっていたのもビートたけしだったような気がする。
おそらくたけしは、いつ自分が死んでもいいと思っていて、だからこそ土方歳三の生き方に共鳴もする。死とか失敗とかそういうことを恐れないから、いい映画が作れる。

このことは、「死への恐怖がない男」ほど、いい仕事ができる、というふうに言い替えられるかもしれない。宮古湾海戦における土方隊は、さぞいい仕事をしたのだろうと思う。
そのときの作戦、「アボルダージュ」をモチーフにした舞台を観にいった。





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最終更新日  2004.07.10 22:57:22
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