2004.11.13
XML
カテゴリ: カテゴリ未分類
つなみ嬢の表情や肉体はほとんど溶解してしまうかというほど不安定になっていて、座る場所も使う皿もコップもほとんど誰のものかわからないような状態だった。うっちゃんもとのさまも「あついの」といって上着を脱ぎ、11月だというのに肩をあらわにして男の視線を釘付けた。スケベ椅子がオレのわき腹をつまみ、トレーニング不足と不摂生をとがめた。オレはリレー方式で反対側にいた猫さんのわき腹をつまんでその肉付きの度合いを確かめるふりをして「最近腹ヤバいのよ」といわれセクハラをしたつもりになって大喜びしていると、スケベ椅子が手を伸ばし、わき腹でもつまむような気軽さで猫さんの乳を数回揉んだ。揉まれた猫さんは動じず「最近トレーニングしてないからね」などと奇妙な言い訳をするだけだった。このリスクテイクな椅子のパフォーマンスと猫さんのありえない対応に全員が衝撃を受けた。オレはつなみ嬢に「この人たちが東京を象徴してるわけじゃないからね」と言い訳をしたくなった。
副主将がやってきた。どういうわけか大きな風呂敷包をかかえたままやってきた。家を飛び出してきたようなあわてぶりだった。連絡のとれなかった副主将は、着付教室から直行してきたのだった。
とのさまは短いスカートの切れ上がったスリットから白い足を惜しげもなくさらけ出しあまねく男を誘惑せしめている。輪坊はなぜ自分がここにいるのかわからないような顔をして常に一番端の席で琥珀色の飲み物を揺らしていた。輪坊と椅子はそろって革パンを履いている。下着はいつも着けていない。
ニット帽のmimiはルーズなファッションを得意としているが、連れのうっちゃんはエレガント系だ。この宴会、集まってみると20代はmimiとうっちゃんしかいなかった。しかし若さは年齢によるものではない。自分がもう若くないと思っている人間は、ここにはひとりもいなかった。

「あたし一回ビリヤードやってみたいのよね、やったことないからさ」
とのさまが昼、我々にそう打ち明けていた。オレは事前に、あらゆるパターンの2次会を想定していて、カラオケ・居酒屋・バー・ボーリング・ダーツ・ビリヤード等、いくつもの店の連絡先をケータイに納めていた。他の客のニーズに会うかどうか心配したが「ビリヤード」と打診すると全員が従った。とのさまの命令には誰も逆らわないのだった。
店を出て風にあたった。
輪坊とスケベ椅子の革パン2人組と別れた。何もしなくても、また1年後ぐらいに会うことになるだろうと思われた。
地下への階段を降りて「バグース」に入った。

全員の飲み物が揃う前に、どういうわけか頼道氏はダーツ機にコインを入れ、一人でゲームをし始めた。
猫さんが床にぺたんと座った。それを皮切りに椅子に座れない奴は床に座った。狭くて暗い個室の中で、初対面を含む酔った男女は思い思いのスタイルで酒を楽しんだ。

猫さんとゲームをした。「スリーオーワン」という名前のゲームで、持ち点301を減らして行くゲームだ。残り32のとき賭けをした。これを獲ったら乳を揉める。200倍ぐらい集中して、投げた。するとオレの矢は、16のダブルに突き刺さった!
「ワンフォーオール・オールフォーワン」というどこかの企業のスローガンがある。
一人は全てのために、全ては一人のために、というような意味だ。この場でこの語が適切かどうかはわからない。しかしこの夜十数名は、つなみ嬢たった一人のためにここに集まった。そしてひとりひとりのパーソナリティーは、この場のほとんど全員に影響を与えていた。

ビリヤードのテーブルが一つだけ空いたという。
猫さんやとのさまとともにビリヤード台へ移行した。
並行して、つなみ嬢とダーツゲームをした。果たしてオレ、また乳を揉めるかどうか。

朝から奇妙な感じにとらわれていた。つなみ嬢ともとのさまとも、初めて会ったのに初めて会ったような気がしなかった。緊張もせずリラックスして話をすることができたし、一日中一緒にいても気を使うようなことはまるでなかった。それは相手が女性だからという要因があるのは多分に否めないが、頼道氏にしろ課長にしろ、最初からどういうわけか妙な連帯感があって、場に不自然さは感じられなかった。
web日記という、方向としては完全に一方通行的な手段を用いて自己表現している人々が集まるということに結果的になったが、顔ぶれだけ見るとこの集団には、傾向も法則も一貫性も共通性も皆無で、見事なほどにてんでバラバラだった。
しかし、日記を書くこと、書き続けること、自分をさらけ出すこと、世界中にメッセージを送り続けること、自分を表現し続けること。これらにかかるエネルギーは果てしなく甚大だ。ここに集まったバラバラな人間たちは、体内に限りないエネルギーを保有しているという点において共通している。そしてそのありあまるエネルギーの使い道を模索するきっかけが、つなみ嬢によって与えられた。

今夜はとりわけ、最強のエネルギーを惜しげもなく発揮するつなみ嬢に引き寄せられる格好になったが、まだまだ使い足りない。

mimiとのゲームも終わった時点で、かなりの時間が経過していると思われたが、うっちゃんがやってきて、「ビリヤード、まだ終わらないの」と困惑した表情でつぶやいた。
その言葉は、終わらない夜の始まりを予感させた。

(おしまい)





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2004.11.13 19:10:13
コメント(2) | コメントを書く


■コメント

お名前
タイトル
メッセージ
画像認証
上の画像で表示されている数字を入力して下さい。


利用規約 に同意してコメントを
※コメントに関するよくある質問は、 こちら をご確認ください。


みんなが  
つなみ嬢  さん
集まってくれたことは、本当に嬉しかった
どことなくいちお私も少しは緊張していたのよ
正直、帰りたくなかったし。まだまだ一緒にいたかった
そう思える仲間に出会えた事に感謝しつつ、
次はいつ東京に行くか、考えている次第であります (2004.11.15 09:05:19)

何回もよんだけど。。。  
その「あまねく云々」のとのさまは、ワタクシのことですかいな。。。?
(笑うんだけど。。。)

いい集まりだったね。本当に。

(2004.11.15 22:56:43)

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

PR

プロフィール

中村不思議

中村不思議

コメント新着

こすりつけ最高@ Re:スタバのシステム(12/19) アンサンは子供かw ワラタ
matt@ EOtreObDxV abL0Th <small> <a href="http://www.FyL…
julian@ pPCuopGUcaf RqblVS <small> <a href="http://www.FyL…
julian@ oswFaiYJFq fna2qr <small> <a href="http://www.FyL…
julian@ ckbcLNACqEX uhcs84 <small> <a href="http://www.FyL…

バックナンバー

2025.11
2025.10
2025.09
2025.08
2025.07

キーワードサーチ

▼キーワード検索


© Rakuten Group, Inc.
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: