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2007.10.08
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テーマ: いい言葉(573)
カテゴリ: 文学・芸術
ばら色の頬2

バラの四角関係?

頬に宿るバラという表現は、シェークスピアの『』にも出てきます。ライサンダーという若者が恋人のハーミアを心配して尋ねる場面です。

Why is your cheek so pale? How chance the roses there do fade so fast?

なぜ、そんなに青白い顔をしているのです? 頬のバラがどうしてそんなに急に萎れてしまうのですか?

シェークスピアがこうした表現を広めたこともあるのでしょうが、現代英語でも、「バラ色の頬」は慣用句としてよく使われています。

She has roses in her cheeks.(彼女は頬がバラのように赤い=健康である)
Summer brought back the roses to her cheeks.(夏になって彼女の健康は回復した)

この場合、roseはrosesと複数形になります。

ところで、ハーミアはどうして元気がないのでしょうか。


ハーミアは、自分が好きなのはライサンダーであると父親に告げますが、父親は頑として認めようとしません。ディミートリアスという若者と結婚しろと命じます。ディミートリアスもハーミアに恋しています。劇ではそのディミートリアスを愛しているヘレンという女性も出てきます。ヘレンはハーミアの友人です。

ということで、『ヴェローナの二紳士』と同様に、四角関係という男女各二名の相関図が現れますね。しかもハーミアは、『ヴェローナの二紳士』と同様に、究極の二者択一を迫られます。今度はもっとすごいですよ。生きたいか、それとも恋を取って死ぬか、です。

一向に親の言うことを聞かないハーミアに対して、なんと父親はアセンズ市の公爵シーシアスに娘を法によって死刑にするよう訴えたんですね。親に背く娘は死刑にしてもいいという古い法律があるのだそうです。それにしても、実の娘を死刑にしろとは、なんという父親でしょうか。

訴えを受けて公爵のシーシアスは、親が決めた男と結婚するようハーミアを説得します。その際シーシアスは、バラをたとえに使いながら説得するのですが、長くなるのでその部分は明日のブログで紹介することにします。

今日はその前段階として、この『A Midsummer-Night’s Dream(真夏の夜の夢)』というタイトルの訳について、簡単に説明しておきましょう。Midsummerとは真夏とも訳せますが、実は夏至(6月21日ごろ)のことで、8月の真夏のことではないんですね。

ヨーロッパでは昔から、夏至の日の前夜(Midsummer-Night)には妖精たちの力が強まるという言い伝えがあります。だからこの劇にも妖精が出てきて、重要な役割を演じます。英語的には「夏至の前夜の夢」というのが正しい訳になるわけです。

では「真夏の夜の夢」が誤訳かというと、そうではありません。日本人には夏至の日に妖精の力が強まるといわれてもぴんと来ません。むしろ梅雨のじめじめした夜を思い浮かべてしまいます。日本人がそのような目に見えない力に敏感になるのは、6月ではありませんね。そう、祖先の霊を祭る8月のお盆。まさに真夏であるわけです。

翻訳は異質の文化を、わかりやすいように自分たちの文化へ置き直す作業でもありますから、あえて「夏至の前夜の夢」と訳す必要はないわけです。日本文化的には「お盆の夜の夢」でもかまわないことになりますね(ただし、シェークスピアのイメージと、お盆のイメージが合わないので、不採用とさせていただきます)。
(続く)





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最終更新日  2007.10.08 13:48:06
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