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2007.10.10
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テーマ: いい言葉(573)
カテゴリ: 文学・芸術
バラと異常気象

仲たがい?

結末はハッピーエンドであることをばらしてしまった『真夏の夜の夢』ですが、もう一箇所、バラにまつわる面白い台詞が出てきます。人間の世界では、ハーミアをめぐる結婚問題が顕在化しますが、妖精の世界では養子の扱いをめぐり妖精の王オーベロンと女王タイターニアが仲違いをしているんですね。

タイターニアはオーベロンにこんなことを言います。

The seasons alter; hoary-headed frosts
Fall in the fresh lap of the crimson rose,
And on old Hiems’ thin and icy crown
An odorous chaplet of sweet summer buds
Is, as in mockery, set.

hoary-headedは「白髪頭の」という形容詞。二行目lapは「ひざ」とか「すそ」といった意味ですが、この場合は「重なり合っている部分」、つまり花弁のことですね。三行目のHiems(注:ヒエムスと発音します)は、ラテン語で「冬」(大文字なので、擬人化されています)の意味。その形容詞がhibernus(ヒベルヌス)。フランス語の冬(hiver)の語源になっています。old Hiemsで「長く居座った冬将軍」というようなニュアンスでしょうか。crownは王冠というよりは、thin crownで髪の毛の薄くなった頭頂部でしょう。4行目chapletは花輪、首輪。in mockeryは「あざけるように」「馬鹿にしたように」という意味です。

訳は次のようになります。


そして冬将軍の冷たく、はげた頭の上に、かわいらしい夏のつぼみの香ばしい花の冠が、
まるで馬鹿にしたように載せられるのだ。

真っ赤なバラの上に載った白い霜と、禿げた頭の上に載せられた花の冠のイメージが鮮明に浮かび上がります。しかし、きれいなイメージだなと感心している場合ではありません。夏に霜が降り、厳冬期にバラのつぼみが咲き始めるんですから。この気候の異変はただ事ではありません。また、現代人の私たちにとっても、他人事ではありませんね。

なぜ、このような異常気象が起きてしまったのか。妖精の女王タイターニアはこう言います。

And this same progeny of evils comes
From our debate, from our dissension;
We are their parents and original.


「こうした悪い現象が続くのは、すべて私たちの口論、仲違いのせい。私たちが(異常気象の)親であり、原因なのよ」

実はこの前段階として、タイターニアは「風が吹けば桶屋が儲かる」的な説明をしているのですが、それは省略します。ここで特記すべきなのは、妖精界の出来事が現実界の出来事に大きな影響を与えているという思想と、ちょっとした諍いが大きな問題を引き起こしてしまうという発想ではないか、と思います。

目に見えない世界(妖精の世界や心の世界)と目に見える世界が連動しているという考えは、現在のスピリチュアリズムに通じるものがありますね。また、心の諍(いさか)というちょっとした変動が気候の異常を引き起こしているという考えは、「バタフライ効果」という現代のカオス理論を髣髴とさせて面白いです。

この『真夏の夜の夢』が書かれたとされる1595~96年のイギリスは、2年続けて大雨に見舞われたとの記録が残っているそうです。人々はその異常気象の原因を、妖精たちの諍(いさか)いのせいにしたのでしょうか。あるいは人々の心の乱れが、本当に気象にも悪影響を及ぼしたのか。


(続く)





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最終更新日  2007.10.10 13:12:15
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