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2007.11.13
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テーマ: いい言葉(573)
カテゴリ: 文学・芸術
喜劇のバラ9(ウィンザーの陽気な女房たち
バラ園

シェイクスピアの「喜劇のバラ」も今日が最後。その最後に私が選んだのは『ウィンザーの陽気な女房たち』です。この作品はシェイクスピアが書いた喜劇の中でも傑作であるとされています。ただし、バラは一箇所だけ。物語の主流とはほとんど関係のない場面で、ウェールズ人の牧師エヴァンズが歌う詩の中で出てきます。

ひょんなことから医者のキーズと決闘することになったエヴァンズが、決闘前の緊張を紛らわすために歌うんですね。

To shallow rivers, to whose falls
Melodious birds sing madrigals;
There will we make our peds of roses,
And a thousand fragrant posies.

川の浅瀬へ、その流れに向かって、
美しい声の鳥が恋歌をさえずる
そこで私たちは、バラの花壇と


1行目のfalls(滝)は「落差」という意味から流れと訳しました。2行目のmadrigalsは恋歌を歌った叙情短詩のこと。三行目のpedsはbeds(花壇)の間違いです。実はエヴァンズ牧師はものすごく訛っているんですね。だからbedsがpedsになってしまいます。最初に登場した時から、発音の違いから、トンチンカンなことばかり言っています。さらに、うろ覚えで歌っているためか、オリジナルな歌とは微妙に違っています。オリジナルは次のようになっています。

By shallow rivers, to whose falls
Melodious birds sing madrigals.
And I will make thee beds of roses,
And a thousand fragrant posies;

一行目は「川の浅瀬へ」ではなく「川の浅瀬のそば」になっています。三行目は「私たちが花壇を作る」ではなく「私があなたのために花壇を作る」が正しいんですね。まあ、あとは大体同じですね。

この詩はクリストファ・マーロウの『情熱的な羊飼いの恋の歌』の一節です。マーロウはエリザベス朝演劇の基礎を築いた劇作家の一人。シェイクスピアと同年(1564年)の生まれですが、シェイクスピアよりも若くして人気作家となり、シェイクスピアが劇作を始めた年(1593年)に死んでいます。この「偶然の一致」と、語彙や用語の使い方が似ているなどの理由から、マーロウは実は死んでおらず、何か理由があってシェイクスピアと名前を変えなければならなかったのだ、という説もあるんですね。

確かにマーロウの最期には、謎があります。1593年5月30日、マーロウはロンドン近郊の居酒屋で起きた喧嘩に巻き込まれてナイフが刺さり、不慮の死を遂げたとされています。当局はこれを単なる事故(過失)として処理しましたが、どうやら今では、謀殺だったのではないかとの見方が有力になっているそうです。

なぜ、マーロウの口を封じなければならなかったか。それが謎なんですね。政治活動や諜報活動にかかわっていたため、殺されたのかもしれません。無神論者のグループとのかかわりから殺されたとの見方もあるようです。

しかし、シェイクスピア=マーロウ説を唱える人たちは、居酒屋でのマーロウの死は偽装であったと信じています。無神論者の嫌疑をかけられたマーロウが偽装喧嘩殺人事件をでっち上げ、自分が死んだことにして当局の追及を逃れ、シェイクスピアという別人に成りすまして、創作活動を続けたというんですね。

もっとも、シェイクスピア別人説はほかにもあり、その候補として哲学者のフランシス・ベーコン、第17代オックスフォード伯エドワード・ド・ヴィア、外交官ヘンリー・ネヴィルらの名前が挙げられています。複数作家説もありますね。



ところで、ウェールズ訛りの愛すべき牧師エヴァンズの運命ですが、それは喜劇ですから、決闘で死ぬなんてはずはありませんね。物語の最後まで、cheeseをseese、butterをputterと発音するなど、その訛りを武器にして、喜劇を盛り上げておりました。





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最終更新日  2007.11.13 08:36:05
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