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2023.07.29
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テーマ: 読書(8291)
カテゴリ: 本日読了
2023/07/29/日曜日/カッコーの声がこだまする


↓たまにはこんな環境下で読みたい。



〈DATA〉 光文社古典新訳文庫
著者 フォークナー
訳者  黒原敏行



2018年5月20日  初版第1刷 発行 


〈私的読書メーター〉〈 引き込まれ読んだ。アメリカ南部の悲劇を描くと同時にその土地の持つ肥沃さが培った向光性とでも呼びたくなる無垢な希望が始まりと終わりに円環している。宗教を持たない私にはとても宗教的な作品と受容された。ネガティブキリスト存在とも言えるクリスマスの、己とは何者か?の切実な問いが来した、飲まず食わずの荒野の彷徨、肉体と精神に及ぼす描写はただならぬ迫真を持ち殆ど求道僧のようだ。また、血族の物語の中に囚われ生きた元牧師を告解へ至らしめる赤子の取り上げ。印象的な道の表出を誘うような信仰告白の響きは八月の残光の如く微かに。〉


作品中に現れる印象的な道の描写

もう一度確かめたくて読み直す。

それは
この文庫本の482頁にある。

伏線は476頁。保安官と自警団がいよいよクリスマスに迫る場面。

今まさに夜が明けようとする。…吸い込む空気は泉の水のようだ。…怒りや絶望とはまったく無縁な静かな寂寥とひとつになっていくように感じる。『俺が欲しかったのはこれだけだ』


そして冷たいまだ暗い泉に顔を映し髭を剃る。

『地面の畝のところをたどるほうが楽だが、そうはせず、まっすぐに歩く。短い距離をへて道路に行きあたると、その脇に座り込む。静かに現れ、静かに消えていく、静かな道路だ。白っぽい土埃の上には細い車輪の跡がまばらに残り、ほかには馬やラバの蹄の跡、所々に人間の足跡。』

静かに現れ静かに消える静かな道路!

メキシコの人がいう カミーノ 
日本のひとがいう 神の



これはやがて、 コーマック・マッカーシー『THE ROAD』 に続くのだろうか。

この読書の元、この島国では父親が娘への歪んだ愛情と自覚することを拒絶するような、新しい事件と古い事件が蘇った。

『八月の光』


この娘にはきっと母親がいない。なぜなら男親はどんなに娘が可愛くても赦せないことをしたら追い出すが、女親はどんなに娘が赦せないようなことをしてもやっぱり可愛くて一緒に暮らすからだ。


さすれば、フォークナーは、巷間賑わす日本の2つの事件を見て、この国に父親という構えの欠落を発見するだろう。

そして、およそ独立したもの同士の契約ができる交渉相手では無い、と考え、恐喝に至るのは実に簡単なことだろう。

物語中、私がもっとも人間的に止揚されていくと思えるハイタワーが、クリスマスなる人物について憐れむ述懐、

どんな場合でも、人を殺すことは正当化されるものじゃない。みんなの命を守るために働くことを誓った公務員ならなおのこと、人の命をとってはいけない。それがどういうにんげんであれ、…


警察庁長官よ、聞きなさい。法と規則と人間性に基づいて。あなたはフォークナーが嫌いかもしれないが。


旧約聖書と、本書の登場人物、そしてフォークナー自身の血脈、アメリカの分断の歴史なども読み解けば、いよいよ興味と好奇心の募る読書だ。







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最終更新日  2023.07.29 12:08:22
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