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2023.12.23
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京都で舞台を観てからすでに30余日が過ぎた。
その間未知の3人の女性と会話した。新規の飲食店7軒ほど利用した。決算、納付、歳末新年事務仕事を終えた。
週末立て続けに離れた街で暮らす子ども夫婦が泊まりに来た。山小屋の冬仕舞いをして、数冊の本を読み、セーターを仕上げルームシューズを編んだ。初試みの野沢菜漬けはカビを出してしまった。その間にも折に触れレイディマクベスを意識に甦らせた。


東京公演の抽選が全て外れた中、自嘲気味に京都公演を申し込んだら一つだけ当選してしまった、という。

11月16日の夜の公演
京都滞在23時間で、紅葉も見ず。

甚だ印象深く忘れ難い公演となった。舞台そのものに加え舞台を観に行く、という行為そのものにおいても。

なんといっても、 アダム・クーパー  に舞台で再会できる喜び。併せて 天海祐希 が共演という信じられない贅沢な千載一遇。

天海祐希さんはアダム・クーパーの大ファンだとか。彼女にとってもこの舞台はドリームカムツルー


思い起こせば、昨年2月の 雨に唄えば

コロナ禍の大規模規制の艱難辛苦を潜り抜けて、満を辞しての華やかな喜びに満ちた舞台、の筈が。

スタッフに感染者が出てしばらくお預けの中、泣いていいのか、笑うべきか。

私たちは舞台を観た。
2年間味わうことができなかったそれを。

観客は全員マスク、拍手は立つこともなく、粛々と退席する運びではあったけど、想像もつかないリスクを取って舞台で躍動した アダム・クーパー


そして何とまあ、今回は日本語で演じられる舞台に彼が立つというのだ。とてつもないリスクをまたもや。一体どんな舞台になるのか。

オファーを受け入れたアダムの勇気をアマミ・ユウキの膨大なセリフが鼓舞する。

現実と芝居が撚り合わさり、歴史と時代が撚りあわさる。或いは男性性と女性性、支配と被支配、子どもと大人。肉体と精神、知恵とさかしま、嘘と誠。鳴り止まぬ戦禍の背景だけが太古からの魔女の声のように、人の心の荒野に吠え続ける。


一際印象的なレイディとマクベスの腕だけのDNA様のダンス。

それが見る者をして過去も未来も、この今という時間の中でねじれねじれて、原作では仄めかされるだけの、存在しない二人の子どもが、娘として立ち現れる。



吉川愛


母レイディは初め白いパフスリーブの付いた黒いロングドレス。そのパフがいつの間にか取れて、現れる娘の白い、愛らしいワンピース。


原作では王の正しき後継をエンパワメントする侯爵マクダフが、弾丸ならぬダンカン王の縁戚で、女性で、レイディの友人役、というねじれねじれた設定の白黒ドレスで現れる。

鈴木保奈美


原作では逡巡するマクベスを腰抜けと叱咤し、王殺しを遂行させるレイディは、結局その猛々しいパーソナリティを女の肉体が持ち堪えられない生理として表現されているように思うが。

舞台のレイディは子どもを出産することで戦場に明け暮れた無敵の肉体が働かなくなり、城=木枠の東屋か鳥籠のような舞台設置の内に留まる暮らしとなっている。

そんな彼女はマクベスをそそのかし、ダンカン王を亡き者としてマクベスを王に据える。

しかし戦争に明け暮れたマクベスの心はすでに壊れて、王として屹立することができない。

歯噛みしながら臣下の不審を取り繕うレイディは、マクベスに弾を撃つ。

唯一自分を慰めてくれた父であるマクベスの喪失を前にして、娘はレイディと同じことをレイディに果たしてしまう。


始終、鳥籠の外部にいた娘はこの時、鳥籠の内の人に変化する。

マクダフはすかさず、転げ落ちている王冠を娘に被せるも、娘はそれを払いのける。マクダフはそれを拾い上げ、再び娘の頭に王冠は座る。

と同時に鳥籠の中に更に小さな檻が天井から落ちて彼女は捉えられる。

彼女は叫ぶ。 どうする!




あなたはどうする?
そんな問いを残して舞台の幕が降りる。

ああ、なんて暗いテーマなんだろう。なんて暗い時代だろう。しかしこの舞台を作り上げるために海を超えて言語を超えて、一座は想像も及ばない努力を重ねただろう。

コミュニケーションギャップを超える試み、それこそ芝居の原点で、見せるものとその舞台裏も捻り合わせの一芝居、ご覧じろう、という心意気。感ず。





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最終更新日  2023.12.23 10:20:56
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