あむ日よむ日あくる日

あむ日よむ日あくる日

PR

プロフィール

天然風

天然風

カレンダー

コメント新着

天然風 @ Re[1]:道に拾う(07/17) りぃー子さんへ なかなかスムーズにお返…
天然風 @ Re[1]:トライアングルモチーフバッグ完成(07/19) りぃー子さんへ お返事に気づかずすみま…
りぃー子 @ Re:トライアングルモチーフバッグ完成(07/19) わー!素敵なバッグです。 しかも、重みが…
りぃー子 @ Re:道に拾う(07/17) こんにちは、モグラの子、今まで二度ほど…
天然風 @ Re[1]:旧朝倉家住宅(02/20) 富久道義さんへ いつもありがとうございま…

キーワードサーチ

▼キーワード検索

2024.02.06
XML
テーマ: 読書(8288)
カテゴリ: 本日読了
2024/02/06/火曜日/積雪15センチ





〈DATA〉
出版社 学習研究社
有吉佐和子 瀬戸内晴美  集

昭和45年9月1日  初版発行
昭和49年1月20日  13版発行

「現代日本の文学」49 全50巻


私的読書メーター 〉〈
学研『現代日本の文学』全集49で読む。昨年12月に英国人女性による伊藤野枝をテーマにした音楽会を自由学園で見聞した。アナーキスト、新しい女、大正、くらいの像しか結ばなかった野枝に関心をもち本作を読んだ。本作は2部構成。前段は野枝を取り上げる動機や取材の事実など。後段は野枝の短く激しい生涯を知り得る限りの事実を重ねながら野枝という人間に肉薄していく筆力には、瀬戸内自身が幼い児を置いて出奔した苦い思いが重く映り込んでいる。女は自らの人生を選び生きることができるのか。社会構造と霊と肉の狭間で。古く新しい。〉


こういう全集が4年で13版を重ねた戦後25年を経た昭和という時代を思わずにはいられない。


そんな時代に我を生きた瀬戸内さんは大正に生を受け平成に得度して令和に彼岸に渡られた。

敗戦前後を北京で暮らしていたのである。その時出会った夫の生徒と出奔。そのことがなければ小説家になることはなかった、という。

小説に登場する伊藤野枝、神近市子、平塚らいちょう、三者三様に欲しいものへの直ざいな、持て余すようなエネルギッシュさで、当に  原始女性は太陽であった  の青鞜発刊のノロシそのものだ。

小説に登場する男性三名、 辻潤 大杉栄 もらいちょうの若いツバメ 奥村某 も装飾音に過ぎない印象で描かれる。主旋律を奏でるのは女たち。


このような伝記小説の草分けは、森鴎外の 『渋江抽斎』 が挙げられるだろうか。文学史的にそんな指摘があるかどうかは知らないが。

タイトルにある渋江抽斎よりもそのお内儀の五十、イオ?だっけが圧倒的に魅力的な描写だ。

ところで先日鴎外の短編について心惹かれた文章に出会った。「サフラン」であったか。

鴎外は小さな頃から部屋に籠り勉強ばかりをした。同い年の男の子と塗れて遊んだ記憶もない。コト=知識ばかりを詰め込み、モノ=経験を知らぬカタワになった、という述懐。

そのように自分を観察できるのは科学的な態度で流石、鴎外なのだ。

さて、伊藤野枝である。
この人生は凄まじい。

伊藤野枝が文学的才知や閃きを得ていたか、というと瀬戸内晴美自身の評価もまるで低い。

しかし彼女が28歳で暗殺されるまでに三人の男、その内の二人は学識も文学の素養も思想も凡夫の遥か先を生きた二人の男と惚れたら命掛け、の道行で七人の子を産み落としたのだ。

これって本当に途方もない!

男と常に恋愛中にありながら常に懐妊していたということなんだから。恐るべし明治の女。

この辺の野枝の心理や擬態の描写がどこか突き放すようでいて実は作者と螺旋を描くような濃密さがあり、抜き足ならぬ。

彼女をして 子宮小説 と言わせた所以か。


そしてそんな風評は十代そこらの私には何かべとつく感じがして避けてきたなあ。

幸田文とか有吉佐和子なんかが面白いと思った。

貧血気味の私なんぞは、著者含めこんな女たちの爪の垢でも煎じて飲めば死んで惜しくない恋愛が訪れたのかもねー。

女子校時代の同窓の女の子の顔を思い浮かべると、そんな恋愛能力高い人は既にその予感をたっぷり含んだ水気というか色があったなあ。


一方で、辻との最初の息子の人生の終わり方はやはり辻同様、悲しさが募る。
私は男より子、であるなぁ。













お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2024.02.06 17:30:50
コメントを書く
[本日読了] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x

© Rakuten Group, Inc.
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: