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7月15日現在の全国の年齢別PCR陽性者数と死者数のグラフはこんな感じ。(東洋経済オンラインより)20代、30代の陽性者がここまで増えたのも、ターゲットを無症状〜軽症の若者に絞ってきているからだが、死者がほとんどいない。特に30才未満の死者数は1名のみで、糖尿病を患っていた力士だけである。高齢者及び糖尿病などの基礎疾患がある人にとっては危険なウィルスとは言えるが、80才以上の感染者でも70%以上は死んでいない。「いやいくら少なくても死亡者がいるのだからかなり危険なウィルスだ」と考える人も多い。しかしこのグラフから、緊急事態宣言を再び出して経済活動をストップさせてまで感染ゼロを目指す必要があるようには思えない。人は経済的苦境によっても死ぬ。一律に自粛するより、高齢者などのハイリスクグループをどう守るか?という視点で予防策を考えるべきだろう。ハイリスクグループを守るために若者まで経済活動を止めてしまっては、倒産や失業などで生活できない人が増えて経済的苦境から自殺に追いやられる人が増えるのは目に見えている。ひいては福祉にもお金が回らなくなるだろう。「再度緊急事態宣言を出すべき」と」考えている人が半数以上いるが、冷静になって考えるべきじゃないだろうか。1匹のゴキブリを退治するために家ごと燃やしてしまうようなものである。
2020.07.21
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東京は特にPCR検査数が7月に入ってから激増してる。PCR陽性者数が200を超えたとか騒いでいるが、要するに検査数が増加したことをいっているの同じ事なのである。泉美木蘭さんのブログにわかりやすいグラフが載せられている。3月から7月上旬までの東京でのPCR検査数(緑)と陽性者数(赤)が同じスケールで描かれている。第一波といわれるピークの4月上旬の検査数と比べると、7月に入ってからの検査数は約10倍になっている。だから感染者が増えたというより、検査件数が増えたために多くの無症状感染者を掘り起こしているというのが現状と考えるべきだろう。マスコミは単に赤い部分だけ見て大騒ぎしており、ワイドショーではやたらと危機を煽っている。一方死亡者数を見てみると、6月以降は激減し、7月に入ってからはほとんど死者がいないことに気づく。重症者数も激減しており、7月19日の段階でわずか12名だ。もちろん感染がわかって死亡するまでにはタイムラグがあるからもう少しフォローする必要があるだろうが、おそらく今後は大して死者数は増えないだろう。なぜならここ最近の陽性者の多くは死亡率が極めて低い20〜30代の若者の無症状者が中心だからである。
2020.07.20
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連日東京ではPCR陽性者数が200人を超えと報道されている。なぜ陽性者数だけ大きく報じられて、恐怖心を煽るような報道に偏ってしまうのだろうか?PCR陽性者は、まず検査数自体が増えれば当然増える。また検査対象者をどう選ぶかによっても陽性率は変わってくる。だからPCR陽性者数は行政側が全く恣意的に増やすことも減らすこともできる数字であって、本当の感染蔓延を反映しているのかどうかわからない。正しく感染の蔓延を把握するなら、対象者を恣意的にでは無く住民基本台帳などを使ってアトランダムに選ぶ必要がある(無作為抽出による疫学的調査)。有症状者や濃厚接触者の検査をそれとは別枠にして行うべきである。そして最も大事なのは死亡者数である。感染しただけで肺炎にもならず、死ぬことも無いのであればそれはもはや恐い病気では無いということだ。新型コロナによる死亡者数は6月に入ってから激減しており、「第二波だ」などと言ってる7月に入ってからも新たな死亡者は非常に少ない。詳しくは東洋経済オンラインの各種グラフを参照されたい。https://toyokeizai.net/sp/visual/tko/covid19/現在の状況は、検査数を大幅に増やすことで無症状感染者を掘り起こしているだけのことで、死亡数の増加に全くつながっていないということである。これらの事実を冷静にまともに考えたら、新型コロナは弱毒化して人間と共存しつつあるということになる。ウィルスにとっては宿主である人間を死なしてしまうことは不利なのである。弱毒化して無症状のまま広がるをウィルス感染を封じ込めることはできないし、緊急事態宣言などで経済に大きなダメージを与えてまで封じ込める意義も無い。東京の数字を見ていると、もはやクラスター対策など不可能だし、無症状〜軽症の患者を感染症病棟に隔離しておいて病床を逼迫させるのは全く得策では無い。軽症者は自宅隔離で充分。重症者がでたときのためにベッドを開けておくべきであり、そうすれば医療崩壊は簡単には起きない。さらに言えば、今のように感染者が増えても重症者や死亡者が極めて少ないのであれば、指定伝染病の指定を外すのが妥当になってくるのではないか? インフルエンザに準じた扱いで充分だと思う。新型コロナは高齢者に死亡者が多いが、インフルエンザは若い人でも亡くなる。インフルエンザは年間1千万人が罹患し、直接死亡だけでも毎年3000人が死亡している。にもかかわらずインフルエンザでは患者を感染症病棟に隔離することは無い。日本では新型コロナの死者は未だに1000人を超えていない。
2020.07.19
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もう12月。街はクリスマス気分ですね。クリスマスソングではLast Christmasは定番でいろんな人がカバーしてますが、どれも原曲の8ビートの呪縛から逃れられないようで物足りなさを感じていました。私はなんとかこの曲を16ビートにしてギターインストのカバーにしようと作ったのがこれです。かなり原曲とはちがう雰囲気になっています。好みは分かれるかもしれませんが、ちょっと大人の雰囲気(^-^)
2016.12.09
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以前にも書いた信州大学医学部の池田教授によるHPVワクチンの副作用研究捏造疑惑についてですが、厚労省、信州大学調査委員会とも「捏造」という言い方は避けているものの、発表内容が不適切であったことを認めたようですね。信州大学調査委員会の「猛省を求める」という勧告は、トップクラスの研究者である池田教授に対する言葉としてはかなり厳しいものと受け止めるべきでしょう。さて、捏造疑惑記事を名誉毀損として訴えた裁判はどうなるのかな?それにしてもこの池田というおっさん、なんでこんなちょろいことしてまで頚癌ワクチン悪玉説に与したかったのかがよくわかりません。おそらく頚癌ワクチン副作用という話題性に便乗して自分の名前を売りたかったのでは?というのが一般的な見方のようですが・・・しかし、そのことで子宮頚癌を予防できたはずの多くの人が将来亡くなるであろうことを少しは想像しなかったのかねえ・・・
2016.12.08
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突発性難聴になるまではあまり意識していませんでしたが、いったん街に出るといたるところでBGMが流れています。コンビニ、レストラン、100均ショップ、デパート、商店街等々・・・これが実に煩わしいのです。聴覚補充現象に悩まされる私にとって、聴きたくないときに流れる音楽は非常に不快なものです。特に音が反響しやすい、例えばコンクリートうちっぱなしのオシャレな店なんかだと、例え小さい音量のBGMでもガンガン響いて耐えられません。耳栓をしてまでお店にいようとは思わないので、すぐ出ることにしています。ショッピングセンターとかデパートの中は最悪ですね。人のざわつきと建物内に反響するBGMで頭がおかしくなりそうなくらい音が響きます。まわりの人達が平然としているのが不思議なくらいです。一体いつからどこでもかしこでもBGMを流すようになったんでしょうか。本来音楽はタレ流しにする消耗品では無いはず。聴きたい人もいれば聴きたくない人もいる。私は今でも音楽は大好きなので、聴きたいときには自宅や車の中で好きな曲を聴いているし、演奏もしています。しかし一方的に流れてくる雑音のようなBGMは公害でしかありません。で、秋にふさわしいオリジナル曲を演奏してみましたので、お聴きになりたい方はどうぞ(^-^) これはタレ流しにするような曲ではありません。
2016.10.26
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突発性難聴を発症してから諦めていたもう一つの趣味はスキューバーダイビングでした。これは音楽とちがって年取ってから始めた趣味です。昔から海が好きで憧れていたスポーツですが若いときは忙しくて中々ライセンスを取るヒマがありませんでした。今から8年ほど前に空いた時間を見つけてCカードを取得して以来通算200本以上潜っていました。グレートバリアリーフやタヒチなどにも行きましたがそれはもう世界観が変わるほどの美しさです。突発性難聴で入院した時には、「あー、ダイビングもこれでダメやなあ」と悲観していました。ダイビングで潜るときには、中耳腔圧と水圧のバランスを取る必要があり、多少なりとも耳に負担がかかるスポーツです。いわゆる「耳抜き」によって耳管を開通させて中耳腔圧を水圧に合わせないと猛烈な耳痛に襲われます。「バンドにダイビング・・・趣味はこの2つしかないのに諦めないといけないのか・・・」入院中は暗くなる一方でした。しかし高圧酸素療法を受けた時の感触から、ダイビングは突発性難聴に悪影響が無いと確信を持ちました。高圧酸素療法では酸素カプセル内の気圧を2気圧まで上げます。2気圧は水深10メートルと同等の圧ですから耳抜きをやらないと耳が痛くてとても耐えられません。技師さんに聞いたところでは、耳抜きができなくて治療を中断せざるを得なかったり、滲出性中耳炎を起こして鼓膜切開が必要になったりする例もめずらしく無いようです。私の場合、ダイビングで耳抜きは馴れていたので全く苦痛を感じずに2気圧まで上げることができました。この時に「そうか、高圧酸素療法も耳にかかる負担はダイビングと同じじゃないか」と気づきました。耳抜きさえできれば何も問題が無いはずです。私の場合開始したのが遅かったこともあってか結果として高圧酸素治療は無効でしたが、ダイビングを諦めなくてもいいとわかっただけでも収穫でした。発症後約4ヶ月経った8月に、まずは地元の海でダイビングを再開しました。以前よりは慎重に、耳抜きが遅滞なくできるよう気を配りながら。海から上がって右耳の聴力がさらに落ちていたらどうしようという一抹の不安はありましたが、予想どおり耳には何の影響も無く無事楽しむことができました。念のため帰宅後uHearで聴力を自己チェックしましたが変化無しでした。海の中を漂いながら景色に見とれていると耳鳴りのことなんかすっかり忘れてますね。その後、秋には海外までダイビングに出かけました。美しい珊瑚礁と熱帯魚たちにまた会えたことはこの上も無い幸せでした。フィリピンのバリカサグ島で撮った写真です。
2016.10.08
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SoundCloudについてちょっと説明をしておくと、基本無料で誰でも自分の楽曲をuploadするページを開設することができるサイトです。何の資格も審査も必要ないので、正に玉石混淆の音楽発表の場です。プロ、アマ問わず、ロック、ジャズ、hiphop、クラシック、フォークと何でもアリです。プロがプロモとして使っている場合も多いようです。ちなみにポール・マッカートニーのページはここです。割と惜しげも無くリミックス版やバージョン違いの楽曲を載せています。当然ですがフォロワー数がすごい!アマチュアでも素晴らしいミュージシャンも多く、それらを無料で聴き放題聴けるわけですから、もうメジャーなプロのCDなんか買わなくってもいいなという気にさえなります。最初は「ライブができないならせめて」という気持ちでSoundCloudへの楽曲uploadを開始しました。しかし毎日何千曲も世界中からuploadされてくるわけですから、そのままでは誰も聴いてくれません。とにかく自分の存在をアピールするしかないと思い、SoundCloud内の他のミュージシャンのページに行っては、気に入った曲があればコメントを入力していき足跡を残します。英語は仕事でも使うのであまり不自由しませんが、こういうサイトではくだけた表現で返される場合も多く最初はちょっと戸惑いました。ありがたいことにコメントを入れると割とみんな律儀に聴きに来てくれて、コメントを入れてくれるミュージシャンが多いんですよね。まあ、このへんはお互い様ってところもあるんでしょうけど、やはり曲自体が良くないと見向きもされないというシビアな側面もあります。そうこうしているうちに、follower数が1000を超えているようなミュージシャンが気に入ってくれて私をフォローしてくれると一挙に再生回数が上がってきます。「あの人が気に入ってるヤツってどんな曲upしてるんだ?」という感じですね。Follower数が100を超えるまではけっこう時間がかかりましたが、それからは常連さんも多くできて、新曲をupした途端すぐ聴きに来てくれる人もけっこういたりします。そんなこんなでいつのまにやらfollwer数が700まで増えました。ちなみに私の曲の中で一番人気が高いのはこれです。けっこうヘビーな曲ですが、実際演奏し録音しているときは普通にステレオで音楽を聴いている程度の音量です。しかしそうなってくると、期待を裏切らないようにいい曲を定期的にupしていかないといけません。これがいい意味でプレッシャーになって、曲作りへの情熱はさらに高まっていきます。突発性難聴のためにバンドは諦めざるを得なかったけど、思いも寄らず自分の音楽を世界に発信するチャンスに恵まれました。
2016.10.02
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聴覚補充現象のところで家にこもりがちと書きましたが、かといって何事にも消極的になったというわけではありません。まずは音楽関係から。大音量を浴びるバンド活動は当然ストップせざるを得ませんでした。発症したのが昨年3月終わりで、音楽に対しては一旦全くあきらめていました。「40年間続けてきたバンド活動もこれで終わりか・・・」本当に悲しかったです。しばらくはギターに触る気にもなれませんでした。仕事に復帰し日常が戻った6月に入った頃からエレキギターを生音の小さい音でつま弾いているうちに音楽への情熱が段々強くなり、「何とかやれることをやろう」という気持ちが湧いてきました。「左耳はちゃんと聴こえているし、片耳のミュージシャンだっている。まだ自分は右耳も多少は使いものになるんだから贅沢言っちゃいけない」と考えるようになりました。とはいえバンドができないので取りあえず作曲して一人多重録音で音楽に食いついていくことにしました。。幸いテクノロジーの進歩で、大きな音を聴かなくてもいわゆるDAWソフト(音楽作成のための総合アプリケーション)によって自宅で簡単に録音ができます。音量は60〜70dBぐらいあれば作業ができるので耳への負担は少なくて済みます。とはいえやはり右耳は聴覚補充減少で疲れやすいので、適時耳栓をします。エレキギターといえばギターアンプで大音量を出すイメージがありますが、今では非常に優秀なアンプシミュレーターが数多くあり、私の場合DAWソフトへplug inするソフトアンプシミュレーターを使用しています。コンピューターの中でか細いエレキギターの生音を真空管アンプでドライブさせた音に変身させるわけです。音量はいくら小さくても迫力のある音にしてくれます。ソフトアンプシミュレーターではパソコン内の処理に時間がかかるため、ほんの僅かギターを弾いた瞬間と音が出てくるまでの間に時間差が生じます。(おそらく1秒の何十分の一程度ですが、演奏は非常にしづらくなります)しかし小音量で弾いていると、実際に弾いた瞬間の直の生音がバッチリ聴こえているのでそれほど違和感がありません。そうこう試行錯誤しながら、曲を作り上げていきました。いわゆるD T Mというやつですね。次々と曲を作ってはSoundCloudにuploadしていきました。ライブができない以上ネットが唯一の発表の場です。その中でもSoundCloudは群を抜いて世界中からの参加者が多く、ここしかないと思いました。SoundCloudに楽曲をuploadしている人はおそらく数万人以上いると思います。驚いたことに。ポール・マッカートニーやニール・ヤングまで自分のページを持っています。・・・続く
2016.09.27
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泥棒NHKその3以前に本ブログで取り上げたNHKの受信料二重取りですが、報告が遅くなりましたがその後アッサリというか、アホみたいに解決しました。結論から言うと10数万円全額払い戻しされました。まあ、お金が戻ったことは喜ばしいのですが、なんか腑に落ちないこともあるので書いときます。やはり電話でのやり取りをボイスレコーダーで録音したのが効いたようです。録音に気づいた担当者が上司に上げたようです。その後担当者から電話が掛かってきて、「あのう・・何とか返金させていただくという方向で話が進んでおりますので、今暫くお待ち下さい。」と言う。電話の度に段々低姿勢になっていくのがわかります。その2週間ほど後に「全額返金と言うことにさせていただきます。ご迷惑をおかけしました。」という電話があり、私の口座に全額が返金されました。ただし「返金に関する書類等は一切無いので、ご自身で口座に入金されたことをご確認下さい。」と言われました。一番最初の電話では、これは恐らく営業の一番下っ端が対応したのだと思われますが、「いかなる場合も返金は致しておりません」の一点張りでした。そこで諦めてしまえばそれで終わりなのでしょう。おそらくは二重取りされた善良な視聴者の7〜8割はそれで泣き寝入りしているものと思われます。で、相手がしつこく返金を主張して来る場合には、もう一つ上の人間に担当が変わるようです。そこで「これはちょっと手強そうだな」と思われた場合には営業部長決裁で返金するか否かを決定するというマニュアルになっているのだろうと思います。今回の私の場合、同一住所同一氏名の人間に二重に課金していた事実を認めた電話内容を録音されたことに感づいてヤバイと思った末の返金だと思われます。しかしそれだと、返金される人、されない人の不公平が公になるのはマズいので、「返金に関する書類」等の二重取り返金の痕跡は残さないようにしているものと想像されます。ネット上で「NHK 二重払い」などをキーワードに検索すると山ほど事例がヒットします。やはり最初は「返金しない」の一点張りの対応が多いようです。実際に裁判中の方の書き込みとか、簡易裁判所を通してNHKに督促状を送ったら、「返金するので督促状を取り下げてくれ」と言われたなどといった書き込みもありました。なんだかねえ・・・未納者が多数いる中で真面目に払っている視聴者にはそれなりの敬意を払ってもいいと思うのですが、こんな対応じゃ今後まじめに支払う気が無くなりますよねえ。
2016.09.24
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突発性難聴のことを日記に書いて以来ずっとアクセス数が増えて今でも毎日のアクセス数が200程度あるのは、それだけこの病気になる人が多いからだと思います。私の場合幸い軽症の部類には入るのですが、結局治らないまま今に至っています。軽症なりに未だに病気を引きずった状態ですので、他の方の参考のために現状を書いておこうと思います。聴力に関しては、全く変化はありません。「半年後に聴力チェックしましょう」といわれたものの面倒くさいので耳鼻科には行ってませんが、iphoneアプリのuHearで時々自己チェックしてます。ほぼ変わらず右耳の1000Hzを中心に落ち込んだオージオグラムとなっています。日常会話の聴き取り等についてはほとんど不便を感じませんが、1000Hz中心の聴力障害のため男性の声の方が聴き取りにくく感じます。騒がしいところで右側から男性に話しかけられた時は体の向きを変えて左耳で聴くようなクセがつきました。聴覚補充現象については相変わらず悩まされます。結局これが現在最大の苦痛です。「補充現象」というと何かいいことのように勘違いしますが、これはちょっと大きい音が耳に入ると「ガーン」と頭の中に響くすごく不快な症状です。特にドアを乱暴に閉めたときの「バタン」といった音や、食器同士がぶつかって「カチャカチャ」する音などはものすごく響いて、その後強い耳鳴りが続きます。いつも突然の音に警戒していなければならず、人の多いところ、飲食店などでは気が落ち着きません。耳栓を用意してても不意を突かれることが多く、外出を後悔することしきりで自然と出不精になってしまいました。特に休日はどこも人が多いので家から出ないことが多いです。脆くなった耳に対して世間はうるさすぎるのです。映画館は音が大きく、アクションものなんかだと戦闘シーンがものすごくうるさいので、突発性難聴発症以来一度も行っていません。仕事は休むわけにはいかないので、常に耳栓を携帯し、分娩室に入るとき、緊急手術の時(みな慌てているので器具の音とか人の声がどうしても大きくなります)などは予め耳栓をしています。職場ではほぼどんな時がヤバイか想像が付くようになったので仕事に支障を来すことはありません。ここ1年は症状的には横ばいですが、日によって調子のいいときと悪いときがあります。当直明けがやっぱり最も調子悪いです。耳鳴りについてもほぼ横ばい状態ですが、これは聴覚補充現象ほどつらくはありません。気にならないときは耳鳴りを忘れています。朝起きてすぐとか、うたた寝した後はなぜかすごく強くなるんですが、おそらく大脳皮質の活動が不活発になると聴覚中枢からの耳鳴りの信号がダイレクトに皮質に認識されてしまうのだろうと思います。シャワーを浴びて頭をシャキッとさせるとずいぶん楽になります。耳鳴りはよく「気にしないことが大事だ」などと言いますが、それは自分で意識してできることではありません。何かに集中して脳を使うことで耳鳴りの信号は大脳皮質レベルで「不要な信号」としてオミットされます。だから何かをしてることが一番の耳鳴り対策です。ボーッとしているときは耳鳴りに出番を与えてしまいます。とはいえ、疲れてる時はちょっとぐらいボーッとしたいものですけどね。そんなときはiphoneに仕込んであるマスカー(耳鳴りを紛らわせる環境音)を小さい音で流しながら(耳鳴に馴れるためには少し耳鳴りが聞こえる程度にマスカーを流しておく方がいい)ボーッとしてます。続く・・・・
2016.09.22
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最近頚癌ワクチンとその副作用に関する報道を読んでいて空恐ろしくなってきた。何がって、もちろん副作用が恐ろしいわけでは無い。ワクチン悪玉説ありきで事実がねじ曲げられ、信じられないようなことが起こっているからだ。まずは今年3月に名古屋市が若い女性を対象に行った疫学調査の結果だが、最初に公表したデータを名古屋市は自ら削除してしまった!かわりに「調査結果」として全く統計処理がなされていない素の数字のみの公表に切り替えてしまった。最初のデータではロジスティック回帰分析による統計処理がなされていて、一般の人が見ても、「副作用被害者といわれている人達の症状はワクチンと因果関係は無い」ということがわかるようになっていた。だから私は「名古屋市の勇気ある発表には敬意を表したい」と書いたのである。ところがその肝心の統計処理した結果が削除されてしまったのである。現在発表されているのは素の数字の羅列のみである。http://www.city.nagoya.jp/…/sikyuukeigantyousahoukokusho.pdfこれではほとんどの人が調査結果から何を読み取るべきなのかわかるまい。というかわからないようにするために削除したとしか思えない。(しかし上記の調査結果の22ページからのデータを見れば、ワクチン接種の有無に関係なく「副作用」と言われている症状がこの年代の少女にほぼ同程度に起こっていることはわかる。ロジスティック回帰分析を行うことも可能である。ヘタするとこれすら削除されかねないのでダウンロードした。)なぜこのような差し替えを行ったのか?これについて名古屋市の担当者の回答は極めて歯切れが悪い。どこからか圧力がかかったことが見え見えである。細かい経緯についてはhttp://wedge.ismedia.jp/articles/-/7148?page=1を参照されたい。最初のデータが発表されたときにマスコミは何の反応も示さなかったのに、このデータが消されたことについてだけは、「名古屋市は以前公表した結果を撤回しました」と報道し、以前の「因果関係なし」が誤りだったかのようにミスリードしている。さらにもっと不可解なことがある。頚癌ワクチン副作用被害に関する厚生労働科学研究事業を請け負った信州大学内科の池田教授によるデータ捏造である。彼は「頚癌ワクチンによって脳内に異常な抗体が沈着することを動物実験で確認した」と今年3月16日に発表し、マスコミもいっせいにこれを取り上げた。これぞ頚癌ワクチンが危険であることの科学的証拠というわけだ。ところがこの研究のデータは捏造の疑いが濃厚であることがわかってきたのである。結果ありきで自分に都合の悪いデータは出さずに都合のいいデータだけを出していたのだ。STAP細胞騒ぎも真っ青な話である。詳しくはhttp://wedge.ismedia.jp/articles/-/7080を読んでいただきたい。(科学的に詳しく検証しているので少しむずかしいかもしれない)しかしこの捏造疑惑に関してマスコミはほぼ黙殺状態である。池田教授の発表を鵜呑みにして取り上げたマスコミには捏造疑惑も報道する義務があるはずだ。なのにワクチン悪玉説を否定するような事実はいささかも報道しようとしない。そして頚癌ワクチン被害者が集団提訴に踏み切ったのが3月30日。提訴するにはそれなりに準備が必要だし、思いつきではできない。このタイミングで提訴したということは、池田教授の研究結果が公表前に訴訟の弁護団には伝わっていたと考えるのが妥当だろう。この教授さらに「本当に研究者なのか?」と思わせる行動に出ている。捏造疑惑記事が名誉毀損にあたるとして、筆者村中璃子 (医師・ジャーナリスト)を提訴した。まずこれからして、え?と思わせる。捏造していないのなら、データの基となっている実験ノートなどの詳細を開示することで疑惑を晴らそうとするのが研究者というものだろう。(iPS細胞の山中伸弥教授に捏造疑惑が出た時、山中教授は段ボール5箱分の実験ノートを提出し、しかしそれでも共同研究者の出したデータの一部だけがどうしても確認できないことを会見で詫びつつ、捏造疑惑をキッパリと否定した。その謙虚な態度とはえらい違いである。)そして驚いたことに、この名誉毀損裁判の池田教授側の弁護士というのが薬害エイズ訴訟やC型肝炎訴訟の原告支援団体である薬害オンブズパーソンの弁護士なのである。池田教授のデータ捏造問題自体は薬害問題では無い。科学的に正しい論文が書かれているかどうかという学問的な論争だ。にもかかわらずなぜ訴訟?そしてなぜ薬害訴訟専門の弁護士?なぜ研究者らしく元データを開示して反論しない?断っておくが薬害オンブズパーソンを悪く言うつもりは毛頭無い。ただこの裁判にかかわるのが適当かどうかという問題だ。詳しくはhttp://japan-indepth.jp/?p=30026に書かれているので参照されたい。こうして見てくると、事実がねじ曲げにねじ曲げられて、何としても頚癌ワクチンを悪玉にしようという流れがあることに暗澹たる気持ちになる。マスコミはこれらの経緯を知りながら、報道しようとしない。なぜならワクチンが実はシロであり、被害者と称される人達は被害者では無いのかもしれないなどということを報道しようものならたちまちバッシングの嵐になるだろうと恐れているからだ。マスコミの正義感など所詮この程度のものなのである。頚癌ワクチンが導入された国で、こんな風にねじ曲がった形で接種が中断しているのは日本だけである。頚癌ワクチンと同じように、因果関係が無いのにワクチンが悪玉にされてしまった例が過去にもある。イギリスの医師Wakefieldが1998年に「MMRワクチン(麻疹 風疹 おたふくの三種混合ワクチン)によって自閉症が起こる」という論文を、Lancet(医学雑誌としては最も信頼生が高いものの一つ)に発表したために、ヨーロッパ全体で接種率が下がり麻疹の流行がみられた。しかし2009年になってこの論文が捏造であったことが発覚してLancetはこの論文を抹消、Wakefieldは医師免許を剥脱されている。当時は自閉症という病気に対する認識度が低く、実はワクチン接種に関係なく相当数の患者がいることがその後の疫学調査でわかってきたという経緯がある。
2016.09.21
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さて、件のNHK二重払いのその後ですが・・・まあ、カッカするのも損なだけなのでここからは楽しみながら相手を追い込みたいと思います(^-^)まずはNHKが私という同一住所の同一個人の口座から年に2回ダブって受信料を引き落としていたという事実が通帳に記載されていることを確認(古い通帳なんかシュレッダーにかけて捨てようかと思ったけど、残しておくもんですなあ・・・)次いでこっちからNHKの営業部に電話をかけて、相手を名乗らせた上で「住所○○市○○町○番地○号の私の銀行口座から二重契約と承知しながら5年にわたり毎年2軒分の受信料を引き落としていたこと」、「NHKとしては同一住所同一氏名でもそれが同一個人であるとは限らないなどと無茶苦茶な主張していること」、などを再確認し、これらを全てボイスレコーダーに録音しました。さらにこれもけったいな話ですが、「確かにあなたががそこに住んでいるという証拠に住民票を送れ」という。「住民票を見た上で上司と相談させてもらう」そうだ。なんか私の方が詐欺扱いされてないか?これって。まあ、しかし当初とは若干トーンが変わってきたのも事実。最初は「返金はできない」の一点張りでしたからねえ・・・(ゆっくりと何回も事実確認をさせたので、録音に気づいたのかもしれません。途中から怯えるような話し方になってました(^-^))「受信料がらみのクレームなんかいちいち上にあげるな!どんな理屈を付けてもいいから返金は拒否しろ。」おそらくこれが営業部の下っ端が守るべきマニュアルなんでしょうね。「どうもこれはヤバイ」という事例に限って上司にあげることになっているんでしょう。早速住民票を送ったので後は相手の出方次第ですが、素直に返金に応じるとも思えないので、すでに次善の策を考えています。これにはボイスレコーダーの記録が役立つと思います。なぜ二重契約になったのか?これは5年前のことなので私の記憶も不確かですが、それまで訳あって2軒の異なる住所での受信料を払っていた時期があって、平成23年に1軒は必要がなくなったので1契約にすることにしました。その手続きがまずかった可能性があります。解約という手続きを取らずに住所変更をしたようです。私の判断でそうしたのか、NHKから何らかの指示が会ってそうしたのかは記憶にありません。住所が統一されれば当然1契約になるだろうと私は考えたのかもしれません。なぜなら「受信料は1世帯で1契約」ということがNHKの規約にハッキリと書かれているからです。にもかかわらず1世帯2契約にしてNHKは5年間も受信料を二重に引き落としていました。まあ、ですからきっかけは私のミスで起こったことかもしれませんが、規約に反した契約は無効であり、NHKに返金の義務があるのは当然。こんなことがあるとどうしても最初は感情的になってしまいますが、理詰めで相手を追い詰める方が得策ですね。まあ、手を尽くしても最悪お金は戻ってこないかもしれませんが、泣き寝入りしてモヤモヤした気持ちをずっと抱えているのは非常に気分が悪いので、やれることを粛々とやっていきたいと思います(^O^)v受信者をナメっとたらあかんぞ、NHKのボケ!! おっとっと感情は抑えて(^ ^);
2016.06.12
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私、あまり人に腹を立てることはないのですが、今回はあまりにあまりなので、このブログをを借りて怒りをぶちまけます。先日非通知設定の電話あり。いつもは非通知の電話は取らないのですがこのときは、たまたま取ったところNHKから。平成23年から私の名前で受信料が二重に口座から引き落とされていたという。長くなるので詳細は省きますが、私の住所、氏名、電話番号で2つぶん受信料が5年に渡って引き落とされていたことが判明、一つは6月にもう一つは12月に引き落とされているので私も気づかなかった・・・「なんで今になって?返金していただけるんですよね。」「いえ、一旦支払われた受信料は返金しないことになっております。今までにも何度かお電話したのですが?」「非通知で?」「あー、はい。」「留守電にメッセージも入れず?」「あー、はい。」んなもんわかるわけ無いだろ(`ヘ´)「二重払いになっていることがわかっていながら返金できない理由は?ふつう民間企業なら返金しますよ。」「2人が同一人物であるという確認ができませんので。」「はあ?住所、氏名、電話番号が同じなら同一人物に決まってるじゃ無いですか?」(もうこのへんで私はブッチギレている)「いえ、私どもとしてはそれを確認できませんので。」この後も長々とやり取りがあったのですが、最初っから返金する意志が無いことが明白。話しているうちに腹が立ってきて、「とにかくとっとと解約の書類を送れ!」と怒鳴って切りました。一体どうなってるんやNHKは? NHKに務めている友人もいるから悪くはいいたくないが、いい番組作っていると思うからちゃんと受信料欠かさず払ってきたのに、その善良な受信者に対してこの態度(`ヘ´)今後どう対応していくか思案中ですが、とにかくここで一度ガス抜きしないと収まらないので。まことにつまらない記事ですみませんm(_ _)m
2016.06.11
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突発性難聴発症後3ヶ月早いもので、もう3ヶ月が経ってしまった。仕事はすっかり発症前の状態に戻っている。おそらくハタから見て私の突発性難聴は完全に治ったと思っている人も多いだろう。もちろん右耳の聴力は低下したままである。確かに日常会話に関してはほぼ問題が無い。問題は聴覚補充現象と耳鳴りである。前者は騒がしいところで顕著に現れて、音が右耳の中でワンワン反響して健常な左耳からでも聴き取りがむずかしくなってしまう。後者の耳鳴りは静かなところにいると「ゴー」という感じで聞こえてきて煩わしい。幸い今はエアコンを入れること多いので、エアコンの音で耳鳴りは紛れてくれる。いずれにせよどちらも1ヶ月前と比べると軽くなってきているように思える。もう耳鼻科通いはすっかり終わり、この1ヶ月やった治療は鍼灸だけ。聴覚補充現象と耳鳴りの軽減は鍼灸の効果といっていいのかもしれない。しかし油断はできない。先週の学会で特別講演を行った講師の声がものすごく響いて耐えられなかった。まわりの人間が平然と聞いているのが不思議だった。携帯していた耳栓をしてもまだ響く。15分が限界で、会場を出た。どうも特に響きやすい音というのがあるようだ。1ヶ月前はどんな音でも響いていたが、今はやや周波数が低くてなおかつ大きな声に限定してきたようだ。声の大きいおっさんが傍にいると、反射的に距離をとってしまう。逆に言えば、それ以外の音に対しては耐性ができてきたようで、耳栓をする頻度は明らかに減ってきた。しかし調子のいい日と悪い日があるので、月単位で判断しないと良くなってるのかどうかが判断しにくい。調子が悪くなるときはハッキリしている。疲労がたまっているときである。特に日勤→当直→日勤で結局36時間も働かされると覿面耳鳴りと聴覚補充現象が強くなってきて気持ちが落ち込む。楽器を触る時間が増えてきたのは、全体として調子が良くなってきたことの表れだろう。もちろん大きな音は聴けないが、ギターをつま弾いて新曲ネタを作ったりしている。調子に乗りすぎると耳鳴りが強くなって後悔するのだが・・・バンド活動ができないので、soundcloudに自作曲をuploadしてなんとか音楽に繋がっている。ああ、しかしやっぱりライブをやりたい!
2015.07.01
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突発性難聴発症後約2ヶ月が経った。今日が最後の耳鼻科受診で聴力検査のみ。変化が無いのはuHearでわかっていたが、やはり1000ヘルツは40dbのままだった(´・ω・`)幸い500ヘルツが若干良くなっているため、平均聴力レベルは計算上31.3dbと1ヶ月前の32.5dbよりもほんの少し改善している。まあ、誤差範囲ともいえるが。この1ヶ月でやったことは鍼灸治療だけ。この誤差範囲の改善では鍼灸による聴力の改善は無かったといえるが、耳に響くいやな症状は少し改善したかも。鍼灸の歴史からいえば、純音聴力検査なんか無かった時代からの治療法だから、その効果は耳閉感、耳に響く感じ、耳鳴り等の主観的な症状の緩和には強いのかもしれない。しかし、ふり返って最悪だった入院当初と今日のオージオグラムを比べると、改善有りと言っていいだろう。上が入院した4月2日の、下が今日のオージオグラム。ただ改善は発症後11日目の4月8日で終わっていて、その後は大きな変化無く今に至っているので、「最初の2週間で決まる」というのは教科書通りというころか。大学の思惑やシステム上の不合理から無理だったとはいえ、やはり最初の2週間にやれることを全てやっておいた方がよかったのだろう。以前の日記で岡本秀彦氏の病側耳集中音響療法の論文を紹介した。あれは突発性難聴急性期に行われていた。もう私の場合は急性期を過ぎてしまっている。聴力を上げることはかなわないかもしれないが、患側耳を積極的に使うことによって、音の割れや響きなどの改善は見込めないのだろうか?まあ、ダメもとと思い、2週間まえから外来診察時に健側の耳に耳栓を詰めて、患側の右耳だけを使って患者やナースと会話するようにしている。気がついたことは、右耳に入ってくる音が響いてつらかったのが、健側の左耳に耳栓を詰めるとなぜか響く感じが軽減する。あの響く感じは両耳のあいだでの聴こえの差も一因となっているのだろうか?以前述べたように、左右で周波数認識にずれがあるので、両耳で聴くと干渉を起こしているのかもしれない。それと、最初はさすがに小さい声の人や、ボソボソと話す人の声は聴き取りづらかったが、段々と慣れてきてのか、聴き取りに不便を感じなくなってきた。これはもちろん聴力が上がったわけでは無く、おそらく脳の聴覚中枢および更に上位大脳レベルでの音声処理が内耳からの質の落ちた信号に対して適応しだしたのかもしれない。あるいは無意識のうちに読唇術を心得てきているのかもしれないが・・・音が部屋中を響き渡っている分娩室では、逆に患側の右耳に耳栓をしないと対処できない(^ ^);音楽を聴くときも、1日30分程度右耳だけで耳に負担にならない音量で聴いている。オージオグラムに合わせてイコライジングで補正(1000ヘルツを中心に持ち上げる)しても右耳の方は音質の劣化が明らかなのだが、それでも徐々に左耳との差が縮まってきているような気がする。弦楽器や女性ボーカルを聴いているとよくわかる。当初は音が割れて悲しいほど音質が悪かったが、今では音に少しツヤが出てくるようになった。以前紹介した論文が述べているように、いずれ付随する症状から開放されることを期待しながらボチボチ行くか・・・突発性難聴によって片方の聴力を完全に失われる方もおられることを思えば、私のような軽症の部類に入る人間がここまでブログでグチめいた事を書いてきたことに対しては「贅沢言うな」と御批判をいただくかもしれない。突難経験を書き出してからのアクセス数の多さからすると、厚労省の発表以上に相当数の方がこの病気のため悶々とされているのではないだろうか。少しでも私の経験を参考にして下されば幸いである。
2015.05.28
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突発性難聴治療のゴールデンタイムは2週間といわれており、治療開始は早ければ早いほどよいことに間違いは無い。高圧酸素治療(HBO)についても当然早く始めた方がいいのだが、前にも述べたシステムの矛盾が早期からのHBOを妨げているのが現状である。最初に受診、または紹介された病院にたまたまHBOの設備があり、なおかつそこの耳鼻科医がHBOの効果を知っているという条件が揃わないと無理である。(設備があっても耳鼻科医がHBO反対派という病院が実際にあり、そこではHBOは行えない。)・・・すなわち何度も言うが運次第である。HBO治療開始のタイミングと治療効果の関係について調べた論文「高圧酸素療法を併用した突発性難聴522症例の治療成績」が2000年に日本で出されている。香川労災病院での症例を基にしたものである。RCTではなく後方視的検討なので突っ込みどころはあるかもしれないが、症例数が多いのでかなり説得力がある。(ここには敢えて引用しないが、図1のグラフは特にRCTでないことに留意すべきで、高圧酸素治療群には重症例が偏って入っていることが本文を読めばわかる。従って高圧酸素治療群の方が成績が悪いのは当然なのである。)この論文で注目すべきは以下のグラフである。I群は発症7日以内にHBOを開始できた患者で、具体的には最初から香川労災病院でステロイド+HBOを開始した患者か、最初他院でステロイド治療を行っていたが極早い時期に香川労災に紹介されたおかげで発症7日以内にHBOを開始できた患者である。II群は前医でステロイド治療を受けて無効であり、かつ紹介時期が遅く発症8日以後にHBOを開始した患者である。(私の場合こちらに入る)I群とII群との差はグラフから明らかである。I群の方が明らかに改善している患者が多い。「著明回復」や「回復」などの細かい定義は本文を参照していただければいいが、改善率はI群で66.6%、II群で38.8%と発症7日以内に開始した方が断然成績がいい。発症7日以内に開始すれば7割近くの例で聴力が改善するのである。さらにHBO開始時期を細かく分類して比較したのが下のグラフ。(紛らわしいが、この文献では高圧酸素治療をOHPと略している)縦軸がHBOを開始した時期で、開始時期が遅いほどHBOの効果も低くなるのがわかる。特に発症15日以後の開始例からガタンと効果が落ちる。実は私はこの文献を入院前に読んでいたので、何としても発症14日以内にHBOを受けられるようにと考えていたのである。(実際にはシステムの問題と、私のとまどいから17日目からの開始になってしまったのは以前書いた通り)昨日今日と長々と書いてきたが、結論は自明である。突発性難聴に対してHBOは有効であるが、発症7日以内、ギリギリ遅くとも14日以内に開始しないと効果が期待できないということである。しかるに現在の医療システムの中で発症7日内にHBOを受けるのはかなりむずかしい。多くの場合ステロイドの効果が無かったときに初めてHBOのある施設に紹介されるからである。どこにHBO設備があってかつ突発性難聴に使用可能かなどを患者の側で調べて強引に計画を立てていかないと無理なのである。患者の立場というのは弱い。患者から担当医に自分の希望をあからさまに主張するのは憚られる、あるいは担当医に全てをお任せすべきと考える人の方が多いだろう。しかし実は突発性難聴に限っては耳鼻科医も何がベストかわかっていない。医学的な矛盾が無い限り患者の希望が最優先されるべき疾患なのである。
2015.05.24
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前にも書いたように、高圧酸素治療を受けるにはいろんなハードルがあって、設備が遊んでいるにもかかわらず突発性難聴患者に使えないという事態が起こり得る。私の治療経過では高圧酸素治療(Hyperbaric Oxygen = HBOと略す)の開始が遅れたことが悔やまれることはすでに述べたが、HBOは果たしてどの程度突発性難聴に有効なのだろうか?他の方のブログを読んでいると、私と同様にHBOまでたどり着かないうちにゴールデンタイムを逃してしまう人が多いようだ。もしHBOが本当に有効なのであれば多くの人が治癒するチャンスを奪われているのでは無いか。ちなみに私が入ったのはこのような1人用のカプセルけっこう窮屈です。このように数人が一度に入れる大きなものもあるこれの方が楽そうだな・・・HBOの有効性に関しては多くの論文が出されているが、日本高気圧環境・潜水医学会の学術委員会から2014年3月に発表されている「高気圧酸素療法 エビデンスレポート2013 高気圧酸素治療の科学的根拠に基づく臨床的研究」が参考になるだろう。HBOはもちろん突発性難聴だけでなく、潜水病、ガス壊疽、脳梗塞、腸閉塞等々いろんな疾患の治療に用いられている。この論文ではそれら各疾患に対する有効性をこれまでに行われてきた臨床研究のうち信頼に足るものだけを基に検証している。結論を先に言ってしまうと、「突発性難聴に対する高圧酸素治療の効果は複数のRCT(後述)で有効性が示されており、(ステロイドなどの)他の治療法と比較しても最も有効性の高い治療法と考えられる」ということになる。わかりやすく解説を加えると以下の様になる。果たしてある治療法が有効かどうかを調べるにはどうしたらいいか? これは極めてむずかしい。例えば100人の患者にある治療を行って30人が治癒したとしても、それだけではこの治療法は有効であるとは言えない。病気というものは治療しなくても自然に治る人が相当数いるのが普通だからである。従ってある治療法が有効か否かを判断するには、その治療を行わなかった人達と行った人達との間で治った人の割合を比べる必要がある。HBOの場合で言えば、HBOを行わなかった患者100人(対照群)と、HBOを行った患者100人(HBO群)との間で治癒率に差があるかどうかを比較する。もしHBO群の治癒率が対照群の治癒率に比べて、偶然の範囲を超えて高かった場合(これが大事なところ。偶然に起こり得る誤差範囲の差では有効とはいえない。「有意差がある」とは、偶然の範囲を超えているということである)に限りHBO治療は有効であるということになる。ただし対照群と治療群とでは重症度や年齢等が偏らないようにランダムに振り分ける必要がある。「ランダムに」ということは研究者の意図が入らないようにということである。「この患者は軽症だし高圧酸素治療までやらなくてもいいだろう」などと恣意的に振り分ければ、結局重症例ばかりがHBO群に入ってしまう。これではHBO群の治癒率を対照群と比較することに意味が無くなる。ランダム化するためには、例えばカルテ番号の末尾が偶数なら対照群に、奇数ならHBO群になどといった患者の状態に左右されずに振り分ける方法が採られる。これがRCT(Randomized Control Study ランダム化比較試験)である。RCTによらなければ治療の有効性を正しく判断できないというのが医学の常識である。さてこの論文では、Cochran review(世界中の臨床研究、特にRCTを中心に総合的に評価するシステム)によって行われた7つのRCTの解析結果を引用している。その内容は・2つのRCTにおいては聴力閾値の25%以上の改善(例えば60dbまで聴力閾値が上がっている患者が45db以下に改善)をカットオフ(有効と無効の境目)とするとHBO群で改善した患者が有意に(=偶然の誤差以上に)多かった。・4つのRCTにおいてはHBO群では対照群よりも平均して15,6dbの有意な聴力改善がみられた。の2点である。このことから、7つのRCTのうち6つで高圧酸素治療の有効性が証明されたことになる。ただしこれらのRCTはいずれも発症14日以内に治療を開始した症例を対象としている。一方ではほとんどの耳鼻科医が第一選択として使用するステロイドはどうだろうか?これもCochran reviewの評価を引用している。ところが世界中の文献を探しても評価に耐えるRCTが3つしか無いそうである。これは私も少し驚いた。そのうち1つのRCTではステロイド治療群に有意な改善が証明されたが、他の2つのRCTではステロイドに有意な治療効果を認めなかったとしている。ステロイドは突発性難聴に対して充分な検証が無いまま何となく今まで使用されてきているのである。さて他の薬剤についてのRCTについても言及した後に、著者は「突発性難聴に対する高圧酸素治療の効果は複数のRCTで有効性が示されており、(ステロイドなどの)他の治療法と比較しても最も有効性の高い治療法と考えられる」と結論づけている。もうここまで読めば、「突発性難聴にはHBOは無効」などという主張は通りようが無いだろう。むしろ何よりも優先して行うべき治療と言ってもいいぐらいだ。ステロイドを使用することに反対はしないが、そのために貴重な時間が過ぎていき、より科学的裏付けのある高圧酸素治療の開始が遅れてしまうのはどう考えてもおかしいのではないだろうか?続く・・・
2015.05.23
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昨年11月に開催された、第59回日本聴覚医学会学術講演会のプログラムをみつけた。2日間に渡って196題もの演題が発表されるけっこう大がかりな学会のようだ。日本聴覚医学会という名前から推察して、多くの突発性難聴に関する演題があるのかなと思いきや、196題中たった6題しか無い!全演題のわずか3%!そのうちの2つはこのブログでも紹介した、岡本秀彦氏の病側耳集中音楽療法に関するものと、京大の中川隆之氏らによるIGF1を用いた治療に関するものだ。この2つの講演にしても、質疑応答を含めてたった15分間の発表時間である。あれほどの画期的な内容なら、特別講演としてそれぞれ1時間ぐらい時間を取ってもいいぐらいだと思うのだが・・・「耳鼻科学会」じゃなくて「聴覚学会」だろう?研究者の間ではそれほど突発性難聴はマイナー分野なのだろうか?こんなにたくさん患者がいて苦しんでいるというのに・・・
2015.05.20
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uHearという聴力測定を行ってくれるiphoneアプリがある。無料でダウンロードできる。測定にはヘッドホンでは個体差がありすぎて結果が無茶苦茶になることがあるので、カナルタイプのイヤホンがいいようだ。(ノイズキャンセリング機能はオフにしておかないと正しい結果が出ない。)これで健康なときの自分の聴力検査を行っておくことをお勧めする。結果はオージオグラムとしてsaveされる。医療用のものほど正確とは言えないが、常に同じイヤホンを使用して測定すれば再現性はバッチリなので比較には充分である。面白いのは、このソフトでは検査の度に右、左、周波数、発音間隔が全てがアトランダムになるよう設計されていて、次に何が来るか予想できないようになっている。馴れによって予想でタッチして見かけ上いい結果を出す危険を排除するためだろう。その点、耳鼻科で検査するときって、検査技師さんの動きや、スイッチ回す音なんかで、「お、もうすぐ来るな」とか予想してしまうからどうしても馴れが生じる。uHearのいいところは、静かな場所でさえあればいつでも気軽に聴力検査ができることだ。例えば大きい音を聴いて耳がキーンとしたときなど、家に帰って静かなところで手軽に自分で測定してみるといい。もし4000ヘルツのところで聴力が落ちていれば、「音響性外傷」である。その他、「なんか耳が詰まった感じがある」とか「音が耳に響いて不快」とかいった症状があればいつでも自分で測定できる。健康なときと比べて変化があればすぐに耳鼻科受診すべきである。私が3月29日に突発性難聴を発症したときもいきなり耳鳴りがしておかしいと思い、家に帰ってすぐにuHearで聴力測定したところ、あきらかに1000ヘルツ(1K)がmoderate loss(中等度聴力障害)にまで落ち込んでいた。夜だったので翌朝一番に耳鼻科を受診した。たまたま前日の記録もsaveしてあったので、並べておく。差が歴然である。完全に聴こえないほどの難聴ならuHearなど用いずとも耳鼻科に駆け込むだろうが、私の場合、まだ両耳で音を聴けていたのでこれほどまで1000ヘルツが落ちているとは思わなかった。突発性難聴患者の耳鼻科受診が遅れるのは、「あれ?今までに無い耳鳴りだな。そのうち治るだろう」などと数日様子を見てしまうからだ。uHearで普段の聴力を測っておけば、「おかしい」と感じたときにすぐに測って比較すれば聴力障害をやりすごしてしまうことは無いだろう。
2015.05.19
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この季節、まわりに田んぼが多い我が家では蛙の鳴き声が窓から聞こえてくる。今日は小雨の降る音がそれに加わっている。心地いい・・・・耳鳴りがどこかに行ってしまった。どんな薬よりも効くなあ。
2015.05.18
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今日5月16日で発症49日目。もうすっかり日にちが経って、聴力に関してはあきらめの境地・・・現在は週2回程度の鍼灸治療のみで、あとは病院でもらった気休めの薬だけ飲んでいる。まあ、飲んでも飲まなくても変わらないんだろうけど、捨てるのも勿体ないし。鍼灸が効いているのかどうかはわからないが、ハリ治療した翌日は少し耳鳴りが大きくなってその次の日に落ち着くという感じ。一昨日施術を受けたが、今日はずいぶん耳鳴りが気にならなくて調子が良い。正直ハリ治療で聴力が劇的に改善するとは期待していないが、耳鳴りや聴覚補充現象などの付随症状が少しでもよくなればという思いで通っている。鍼灸師のおっちゃんは体のあちこちを触診してお灸のポイントやハリのツボを丹念に探していく。その過程である程度患者の体調がわかるらしい。やはり体に直接触れて患者の体調を診るというのが医療の基本だろうな。血液検査や画像診断でしか判断できないような時代になっているが、医師は基本に立ち返る必要があるかも。まあ、鍼灸師のおっちゃんは人がいいので、1時間あまりの施術中いろいろと四方山話をしているだけでも何となく癒される。仕事は完全に通常勤務に戻っている。騒がしいところで無い限り会話に不自由することもない。職場の人間は私が突発性難聴で入院していたことを知っているので、中には敢えて大きな声で話しかけてくる人もいる。しかしこれは聴覚補充現象に悩む私にとっては全く逆効果。特に患側の右側から大きな声をかけられると思わず手で耳を塞いでしまう。機会をみてみんなに説明しようと思う。手術中は不思議と耳鳴りがしない。それだけ神経が集中しているからと言えばカッコいいが、実は患者の血中酸素飽和度モニターの「ピッ ピッ」という機械音が耳鳴りを消してくれているようにも思える。いずれにせよ耳のことに煩わされず手術できるのはありがたい。いろいろと書いてきたが、やはりこの歳になると体の急激な変化を受け入れるのは中々むずかしい。受け入れ難くなっている最大の理由は自分でもわかっている。「あー、もうバンドやるのはひょっとして無理なのかなあ」という思い。ご多分に漏れずクラプトンやジミーペイジに憧れて高校生の頃からバンドを始めて、大学、社会人と住むところも転々としてきたが、行く先々でメンバーをみつけてはバンドをやってきた。もうかれこれ40年。その間耳をいたわること無くギターアンプを鳴らし続けてきた。突発性難聴は確かに大音量が原因では無いが、いたわってやらなかった耳が機嫌を損ねたのかなあと思ったりもする。ライブで思い切りギターを弾く心地よさ、年齢も職業も違う人間が、音楽という接点でもって次々と繋がっていく楽しさ。・・・バンドをやってきたことがいかに自分の人生を豊かにしてくれたことか。あー、それももう終わりなのか・・・・とにかく今年いっぱいは自粛して、シコシコと曲作りに励むことにしよう。
2015.05.16
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突発性難聴で完全に回復された方はいいが、難聴が残ってしまった場合につらいのが耳鳴りと聴覚補充現象で、私自身この2つに悩まされていることはすでに書いた。特に今回の耳鳴りは比較的低音で、「ブーン」といった感じで鳴っている。ものすごく耳詰まり感を助長する音で、うっとうしいことこの上ない。「勝手に鳴ってろ」式に相手にしないようにはしているのだが、まだ脳は「危険信号」と勘違いしているらしく、どうしても意識に昇ってくる。聴覚補充現象は調子のいい日と悪い日でだいぶちがう。先日仕事からの帰り道、時代遅れのマフラーを外してシャコタンした車が猛烈にエンジンを吹かして通り過ぎていった。あまりの響き具合に頭の中が一瞬真っ白になった。「何考えとんねん、ボケ!」と怒鳴りたかったが、とうに過ぎ去った後だった。何をするのも手荒く作業する人がいる。普段は気にしたことも無いが、例えばお店でものを片付けている店員さんが、作業が荒くていちいち大きい物音をたてたりするとそれが耳に響いて、店を出たくなる。 先日久しぶりに回転寿司屋に行ったけど、「ヘーイ、いらっしゃーい!!」と大声で叫ばれるだけでもうアウト。そして普段気にしたことも無かった店内のざわつきが「グォー」という地響きのような音をたてて耳の中で暴れる。体全体が宙に浮いたような不安定な感じになる。聴力が固定してしまった以上、この2つのやっかいな症状は一生つきまとうのだろうか?これについて調べた論文がAudiology Japanという雑誌に載っている。耳鼻科の先生方の間でどれほど読まれているのかはわからないが、もしご存じ無いのであれば難聴が残ってしまった患者さんの説明に是非とも参考にしてほしい。著者の一人である新田清一氏は耳鳴りの治療で有名。というか耳鳴りの治療に取り組んでおられる耳鼻科の先生は圧倒的に少ないのである。突発性難聴もオージオグラムが変動しなくなったらそれで終わりという耳鼻科医がほとんどだ。中には「耳鳴りは耳鼻科の領分じゃありません。心療内科に行って下さい。」と平然という耳鼻科医もいるらしい。さてこの論文では15例の患者を対象に、耳鳴りと聴覚過敏という突発性難聴の後遺症とも言うべき不快な症状が、最終的にどうなっていくかを追跡している。いろいろと専門用語も出てくるので、ごくザックリと説明すると、突発性難聴発症後6ヶ月経つと、ほぼ全症例でこれらの不快な症状が苦痛では無くなっていたという結論である。耳鳴りに関してはおそらく前にも書いたhabituationに至ったということだろう。聴覚補充現象についても、単に馴れるのかその現象自体が収まってくるのかはハッキリ書かれてはいないが、いずれにせよ苦痛で無くなれば治ったのと同じ事だ。6ヶ月は長いようにも思えるが、一生苦痛から逃れられないのではないかと不安に陥っている患者からすればこの上無く朗報である。苦痛から解放される日が来ると思えば6ヶ月ぐらい耐えられる。例数が15例しかないので、100%とは言えないにしても「そのうちよくなるんだ」という希望の裏付けには充分なるだろう。それにしてもこの論文、2013年発表である。ということは患者にとってこんな大事なことが今まで調べられてこなかったということだ。聴力固定したらハイ終わりでは無くて、こういった長い目でのフォローアップがもっと必要なのではないだろうか?
2015.05.14
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放置プレイだったこのブログに4月26日から私の突発性難聴の経過を書き出して以来、アクセス数がどんどん増えてきて、今や毎日200人近くの方が読んで下さっている。それだけ突発性難聴の患者さんが多いと言うことだろう。私がそうだったように、病床でパソコンを広げて「突発性難聴 闘病」などをキーワードに検索してたどり着いて下さった方も多いのではないだろうか。私も多くの方の突発性難聴闘病記を読ませていただいた。経過は人によって千差万別ながら、みなさん戸惑いながら不安の中で治療を受けておられることは共通している。突発性の名前が示すとおり、正に突然発症するこの病気に対して前もって充分な知識を持っている人などいない。ましてやどこでどんな治療を受けるのがベストなのかなんてわかるはずも無い。しかも最初の2週間が勝負ときている。医師である私でさえあれこれ考えているうちに時間が経ってしまい悔いを残すことになってしまった。結局どんな治療を受けることができるのかは、住んでいる地域や最初に診た耳鼻科医の考え方によって決まってしまう。要するに運任せなのである。患者は後になってネットであれこれ情報を仕入れていくうちに、「こんな治療法もあったのか」とか「最初からあの病院に入院していれば治ったのかも知れない」と思いを巡らせることになる。治った人はいいが、治らなかった人は大きな悔いを残してしまう。誰もが最も有効な治療を初期から受けられるようにするには、各県あるいは各地域で突発性難聴センター(突難センター)を作って、突発性難聴と診断された患者を全員そこに集めて、統一したプロトコールの下で最善の治療を受けられるようなシステムを構築する必要があるのではないかと今考えている。私は産科医だが、未熟児をどうやって助けるかが大きな課題である。私の住んでる福井県は人口90万程度だが、県立病院と大学病院の2カ所に周産期センターがあって、早産になりそうな妊婦は県内各地から救急車で母体搬送される。未熟児は搬送中に弱ってしまうことが多いので、母の胎内にいるうちに母体搬送した方が明らかに予後がよくなる。周産期センターに必要なのは産婦人科医と小児科医はもちろん、いつでも手術が行える設備と麻酔科医が必要になる。もちろんNICU(新生児集中治療室)は必須であり、そこでも多数のスタッフや医療機器が必要となる。膨大な人的物的資源が必要なのである。切迫早産で未熟児が生まれそうな妊婦は、最初は開業医であろうが一般病院であろうがどこで妊婦健診を受けていようとも担当産婦人科医の責任の下に適切な時期に周産期センターに母体搬送されて、未熟児は手厚い治療を受けることができる。「未熟児で生まれちゃったらどこにお願いしたらいいのか?」とか「早産の徴候があると言われたけどこのまま今の病院で診てもらっていていいのか?」といったことを患者自身があれこれ悩む必要は無いし、どんな治療が受けられるのか運任せということも無い。2つの周産期センターは常日頃から連絡を取り合っており、定期的にカンファレンスも開かれているのでお互い切磋琢磨して治療成績を上げている。当県の周産期死亡率を下げてきた非常に有効なシステムなのである。産婦人科医、小児科医をはじめ周産期医療に関わる人達の熱意と行政の協力があってこそ生まれたシステムである。周産期センターを作ることを思えば、突難センターを公的病院の中に作ることはずっと容易だろう。まず夜中に人員を確保しておく必要が無い。手術の準備をしておく必要も無い。高圧酸素治療の設備は必要だが、NICUを作る費用に比べれば全然問題ならない金額である。要するに日中の時間帯に耳鼻科医、(星状神経節ブロックの上手な)麻酔科医、ナース、技師などがいて、紹介患者が来ればいつでもステロイド、星状神経節ブロック、デフィブラーゼ、高圧酸素治療などが行える態勢であれば充分なのだ。東京や大阪などの都会ならすでにそれだけの機能を有する病院がいくつもあるので、それらをそのまま突難センターに指定すればいい。開業医であれ病院の医師であれ、とにかく耳鼻科を受診した患者に突発性難聴と診断をつけたら、その医師は必ず患者を突難センターに直ちに紹介することを義務づけてしまうのである。そうすれば患者が右往左往することなく、最善の治療が受けられる。いくつかハードルはあるだろう。突難センターでどのような治療を標準治療とするかが最もむずかしいところだろう。門外漢の私見を述べれば、医学的禁忌が無い限り上記の治療法を初期から全て(デフィブラーゼと星状神経節ブロックのみ二者択一)同時併用して集中的に治療するのが今考えられる最善の方法だと思う。自分がこれから治療を受けるなら是非そうしてほしい。現実にはステロイド→デフィブラーゼ→高圧酸素治療と順を追っての治療しか受けられなかったことは今でも悔やまれる。「まず一つの方法で治療して効果をみてから次の治療をやれ」みたいな大学のえらい先生の考えでは、治療のゴールデンタイムはあっという間に過ぎてしまう。センター化することのさらなるメリットは、症例数が集まってくるので、各施設がバラバラの方法で治療をしているよりはずっとしっかりした統計を取ることができる。これが何よりも治療の進歩に役立つのではと思う。私がこのブログで縷々述べてきた、今の突発性難聴に対する医療システムの矛盾はこうすることによってしか解決できないだろう。しかしこれもまた、耳鼻科の先生方が熱意を持ってそういうシステムを作ろうと立ち上がってくれなければ全く実現は不可能である。
2015.05.13
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このブログでも再々出てきたオージオグラム(聴力検査のグラフ)だが、改めて説明すると横軸は検査用のヘッドフォンから流れてくる純音の周波数、縦軸は基準となる小さい音量(これを0デシベルとする)よりどれだけ大きくしたときに初めて聴こえるかを表している。例えば私の場合1000ヘルツのところで40デシベルだから、基準となる0デシベルの音の10の4乗倍、すなわち1万倍の大きさの音で初めて1000ヘルツの音が聴こえていることになる。もし50デシベルなら10の5乗倍、すなわち10万倍の大きさの音でないと聴こえないということである。横軸の周波数は125,250,1000,2000,4000,8000ヘルツと順次倍になっており、片対数グラフである。音の高さでいうと1オクターブずつ上がっていることになる。私の今回の突発性難聴では、オージオグラムでは(以前から両耳で落ちている4000ヘルツは別として)1000ヘルツのところのみピョコンと凹んでいる。自分でiphoneアプリを用いて純音の周波数を連続的に変えて調べてみると700ヘルツあたりから徐々に聴こえにくくなり、1200ヘルツあたりで最低となった後徐々に聴こえやすくなり、1700ヘルツのところで正常に戻る。聴こえている周波数にズレがあるのは前に述べた通り。つまり範囲にして700から1700までの約1000ヘルツに渡って聴力に異常があることになる。しかしもしこれが、1000ヘルツから徐々に落ちて2000ヘルツで正常に戻るような聴力障害だったらどうなるだろう?あるいは2000ヘルツから4000ヘルツの範囲だったら?落ち出すところと戻ったところの周波数はほぼ正常だからオージオグラムは正常のパターンを示すことになりはしまいか?さらには、例えば900ヘルツから落ちだして1900ヘルツで戻るような場合だったら、見かけ上オージオグラムでは「1000ヘルツのみ少し凹んでいるけど、ほぼ正常」という判断になるかもしれない。耳鼻科医が言うには、私のように1000ヘルツだけピョコンと落ちているパターンはめずらしいということだが、実は検査の網の目にひっかからずに見逃されている例がけっこうあるのではないだろうか?私の場合たまたま1000ヘルツのラインをまたいでいるから診断がついているが。こんなことを考えたのも、入院中暇にまかせてネットで突発性難聴の体験記を片っ端から読んでいくと、「突然耳鳴りと耳が詰まる感じがして耳鼻科を受診したら、聴力検査で異常が無いと言われた。しかしますますひどくなって数日後に受診したら重症の難聴だと言われた」というエピソードが少なくないからだ。早期治療が大事と言われながら、極初期には聴力障害が限局した周波数で起こっていて診断がつかない症例もあるのだろう。これも門外漢が言うことではないかもしれないが、オージオグラムの周波数の網の目は粗すぎるということはないのだろうか?これまた暇にまかせて、オージオグラムの歴史を調べてみると、今の形になったのは何と1956年のことだという。私が生まれるより前!50年以上変わっていないのである。調べる周波数の間隔をもう少し詰めていくのは技術的には容易いことだと思うが、50年以上そのままというのは何故だろう?実用上これで充分と考えられているのだろうが、目を細かくすれば引っかかってくる症例がいるのではないだろうか? それが如何ほど難聴の治療に貢献するのかはわからないが。それと何回も言うが、聴こえている音の質がオージオグラムでは全く評価されない。オージオグラムだけから判断すると、私の右耳は40dbで1000ヘルツの音が聴こえるということになっているが、実は1000ヘルツとしては聴こえていない。1300ヘルツに上がってしまっている。だから実際は1000ヘルツの音は全く聴こえていないに等しい。700〜1700ヘルツの範囲で周波数のズレがある。しかしそういう質的判断はオージオグラムからは全く不可能である。一方で両耳で落ちている4000ヘルツについてはちゃんと4000ヘルツで聴こえている。2000ヘルツの音のちょうど1オクターブ上の音になっているのでわかる。健側と患側との間の周波数認知のズレは、前にも書いたiphoneアプリのtinnitus measurerを使えば素人でも簡単わかる。まめにやれば例えば100ヘルツ毎に左右のピッチ感覚のズレ具合をグラフにすることも可能だ。今の技術をもってすれば、実際の臨床現場で簡単に使える機械を開発することは容易だろう。音が耳に響く辛い症状は聴覚補充現象で説明されているが、この周波数認知のズレも少なからず影響していないだろうか? 実際に耳に入ってくる生活音にはあらゆる倍音が含まれているが、そのうちの特定の周波数の倍音が狂って聞こえていれば、ワンワン響いて誰が何をしゃべっているのかわからなくなるということが起こっても不思議が無いように思う。あくまで素人判断だが・・・周波数認知のズレ(diplacusis=複聴)に関する研究論文は調べた限り日本では何と1961年のものが最新だ。これまた50年以上誰も研究していないのだろうか・・・どうも耳鼻科学では聴こえの質については無関心ということか。私の場合、オージオグラムのみから判断して、右耳のみ平均聴力レベルが32.5dbの軽度難聴だから大したことはないと言われると、どうにも納得がいかない。そしてオージオグラム上聴力が固定すれば治療は終了となる。いかに不快な症状を伴っていようとも。もっと多角的に聴力障害を評価するような進歩があってもいいのではないだろうか。
2015.05.12
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決定的な治療法が無い突発性難聴。一体この病気の治療法はみつかるのだろうか?いろいろと近年の文献を探し回っていて画期的と思われる研究が2つあった。一つは京大で試みられているIGF-1(インスリン様成長因子)を用いた治療で、すでに臨床治験段階に入っている。鼓膜から鼓室内にゲル状のIGF-1を注射器で注入し、内耳に吸収されるIGF-1が有毛細胞の再生を促すというものだ。一般向け解説はこちら。英語原著はこちら。あと2〜3年もすれば実用化されるのでは無いだろうか? もう一つは、これは発想の大転回というべきだが、突発性難聴発症早期から患側の耳で音楽を聴くようにすると聴力の回復がよくなるという自然科学研究機構生理学研究所の岡本秀彦氏の臨床研究。一般向け解説はこちら。英語原著はこちら。今でも耳鼻科医の間では突発性難聴になったら患側の耳ではできるだけ音を聴かないようにして休ませるというのが鉄則になっている。岡本氏の研究のように、健側の耳は耳栓で塞いで、患側の耳にだけヘッドフォンをあてて1日6時間も!音楽を聴かせ続ける(もちろん適正な音量だが)ことで聴力の改善を図るなんていうのは大方の耳鼻科医にとってはとんでもないということになるだろう。岡本氏の考えの根底にあるのは、「突発性難聴は内耳の障害だが、内耳障害によって脳の聴覚中枢に刺激が行かなくなると中枢の音の認識機能も衰えてしまう。敢えて健側の耳を使わずに患側の耳を使うことで患側の聴覚中枢の機能を保つことが聴力の改善に繋がる」ということらしい。論文を細かく読むと、症例数も充分だし適切な統計的処理がなされている。対象例が音楽鑑賞可能なレベルの突発性難聴患者に限られるため、上記のIGF-1の対象患者より軽症例が多いので一概に言えないが、IGF-1よりも聴力改善効果は優れているようにも思える。しかし、この論文が発表されてすでに1年以上が経っているのに、どこの施設も追試しようとしないのは何故だろう?特別な試薬も設備も必要が無いからすぐにでも実施可能な方法なのに。ちなみにこの論文のコピーを私の担当医に渡して、「先生、こんな治療法も発表されてますがどうなんでしょうね?」と聞いたところ、「突発性難聴では耳を休ませることが大事ですから」と一蹴されてしまった(^ ^); 比較的若い私の担当医ですらこうだから、「突発性難聴患者に6時間も音楽を聴かせるなんて耳にいいはずがない」と大方の耳鼻科医は思っているのだろう。実はこの論文の存在をネットでみつけてくれたのはうちのカミさんである。それを読んで私は時々ヘッドフォンを使って小さい音量で右耳で音楽を聴くようにしていた。落ちている1000ヘルツあたりをイコライザーで持ち上げて(論文でも落ちている周波数帯をイコライザーで補正している)。しかし6時間というのはとても無理だ。やはり耳が疲れてしまう。30分か長くてもせいぜい1時間が限度だった。しかし左右で周波数のズレがあるにも関わらず両耳で違和感なく音楽が聴けているのはこのトレーニングのおかげかもしれないと勝手に思っている。せっかく日本の研究者が発表しているのだから、是非とも日本で追試してもらって効果的なプロトコールを作ってもらいたいものだ。さらにもう一つ、まだ具体的な論文は出ていないが、最も期待されているのはiPS 細胞を用いた内耳有毛細胞の再生だろう。実際にマウスの内耳の有毛細胞の再生は成功している。http://l-s-b.org/2014/06/ips-think/超えるべきハードルはたくさんあるようだが、実現すれば突発性難聴の治療は根本的に変わるかもしれない。こうして見ると、世界的に見ても治療の困難な突発性難聴の画期的治療法が日本から生まれる可能性は充分に高いように思われる。しかし耳鼻科医全体のモチベーションが高くないと、臨床治験一つにしても中々進まないのではないだろうか?門外漢がえらそうなことばかり書いて恐縮だが、このやっかいな病気の治療法を何としても確立してほしいと願う。
2015.05.11
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オージオグラムからは読み取れないつらい症状が、音が耳に響くことと耳鳴りであることは今までに書いてきたが、耳鳴りは非常にやっかいなものだ。これは前の日記でも書いたように、耳鳴りが脳によって危険情報と認知されて意識に昇り大きくなっていくという悪循環を断ち切るしかない。Jastreboff氏によると、耳鳴り患者の4分の3は自然に悪循環を断ち切って耳鳴りを意識しないようになり、苦痛から解放されることがわかっている。これをhabituation(慣れること)という。人間の適応力は大したものだと思う。「意識しないようにしよう」と思っている間は意識しているということである。「鳴るなら勝手に鳴ってろ。俺は勝手にやらしてもらう。」ぐらいの気持ちの方がいいのかもしれない。私は少しお酒を飲むとそんな気持ちになって耳鳴りが気にならなくなる。人によっては逆に耳鳴りが強くなることあるらしいので誰にもお勧めというわけにはいかないが。Youtubeやニコニコ動画を探すと、小川のせせらぎや森林で小鳥がさえずる音などを録音した動画ファイルがたくさんある。こういった環境音を流しておくのは耳鳴りから意識をそらすのにものすごく有効である。静寂な環境はイヤでも耳鳴りが意識のトップに昇ってくるので耳鳴り持ちにとって大敵なのだ。耳鳴りで苦しんでいる人のブログを見ると、医師から「耳鳴りは治療法がありません。慣れて下さい。」とか「一生付き合っていくしかありませんよ。」と突き放されたように言われて絶望している人が多い。せめて上に書いてあるような具体的な説明をして、「ほとんどの人は気にならなくなりますから心配しないで」ぐらいは言ってあげてほしい。それぐらい説明するのに20分とかからないだろう。Jastreboff氏も「耳鳴りに対してネガティブな感情を持たせるようなカウンセリングは絶対に避けるべきである」と強調している。ネガティブな感情がますます耳鳴りを肥え太らせることになるからだ。不用意な医師の一言がその患者を耳鳴りの呪縛から逃げられなくしてしまうのである。やや強引だが一時的に耳鳴りを消す方法がある。耳鳴りと同じ周波数の音を聴くことである。residual inhibitionという現象で昔から知られている。そのためには自分の耳鳴りの周波数を知る必要があるが、これが意外とむずかしい。耳鳴りは純音のようなピッチのハッキリした音ではないからだ。通常は聴力が最も落ちている周波数に一致した音が耳鳴りになるのだが、今回の私の場合どうもオージオグラムの落ち込んでいる1000ヘルツと一致していないようだ。明らかにもっと低い音である。これまた耳鳴りのピッチを探すiphoneアプリ(tinnitus measurer)があるので、これで大体あたりをつける。ピッチが合っていれば純音でもresidual inhibitionが得られるが、耳にきついのでネットからホワイトノイズの音声ファイルをダウンロードして、あたりをつけたピッチ周辺をオーディオ編集ソフトのグラフィックイコライザーで持ち上げれば耳に優しい音でresidual inhibitionが得られる。試行錯誤の末、今回の私の低音性の耳鳴りに対しては690ヘルツあたりを持ち上げるのが最も効果的なようだ。おそらくは聴力が落ちだし際の周波数が耳鳴りになっているのかと思う。この音を5〜6秒の長さに切り出して、フェードイン&アウトで適当な間隔を空けて繰り返し(iphoneに入れて1曲リピートにする)1分間程度聴くと、その後耳鳴りがしばらく消える。あくまで耳を痛めない適度な音量で聴く必要がある。まあ、ものの2〜3分もすれば耳鳴りは戻ってくるのだが。しかしわずかの時間でも静寂を取り戻せるのは精神的に支えになる。ただしあまりこれに依存するとhabituationは達成されないので、疲労や緊張などでどうしても耳鳴りが苦痛でしょうがない時のみ使っている。薬をきらう人もいるが、精神安定剤を適時使用するのは効果的である。精神的緊張が取れると耳鳴りの悪循環はかなりおさまる。私の場合調子が悪いときはデパスを服用している。とにかく大事なことは「耳鳴りをなんとか治そう」とか「耳鳴りと格闘する」などと思わないことである。それはとりもなおさず耳鳴りを意識することになるからである。と、まあ人に解説することはできるのだが、これらは昨年来高音性の耳鳴りに悩まされて調べた知識である。そんなこんなでせっかく慣れてきたところで今回の突発性難聴で新たな低音性の耳鳴りがスタートして振り出しに戻ってしまった。「鳴りたいなら勝手に鳴ってろ」である。
2015.05.10
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以下は治癒しなかった患者のグチと思って読んでもらえればいいのですが・・・大学病院に入院していると交代で毎日耳鼻科医の回診が有る。「どうですか調子は?」みたいな感じで始まり、私の方からは症状の変化や質問などをするのだが、どの医師も突発性難聴という病気に興味を持っているようには思えなかった。こっちから質問しても食いついてくれる医師は一人もいなかった。diplacusisのことを知っている医師もいなかった。ましてや周波数認知のズレが最終的にどうなっていくのかや聴覚補充現象がいつまで続くのかなど誰も知らないし興味が無いようだった。大学病院だからどうしても頭頚部悪性腫瘍のような手術対象となる疾患に興味が偏っているということもあるのだろう。結局突発性難聴は「やることやっても治るやつは治るし治らんやつは治らん」というのが前提にあるのだろう。だから切迫感が無いし、患者の訴えから何かを得ようとする気持ちも湧かないのだと思う。治らないなりに患者のQOLを上げるといった考えは少なくとも微塵も感じられなかった。正直、「これでは20年以上治療が進歩しないはずだな」と思った。前日の日記で書いた、入院患者が他院で高圧酸素治療を受けられないシステムにしても、耳鼻科医側から厚労省に訴えていかないと状況は変わらない。厚労省の役人は治療の現場のことを知らないからである。しかし耳鼻科医側に熱意が無ければどうしようもない。もしこのブログを読んでおられる方の中に耳鼻科の先生がおられたら、是非反論なりしていただければ幸いです。まあ、グチばかり書いているとネガティブ思考になってしまうのでこのへんにして、今の自分の生活状況を・・・現在は仕事に完全復帰している。仕事の上で会話に不自由するといったことはほとんど無いが、疲れが溜まると聴覚補充現象による音の響きと耳鳴りが強くなってくる。今日は外来患者が多くてさすがにこたえた。仕事が終わって一息ついたが、右耳の中で換気扇が回っているような感じだ。突発性難聴の体験記が書かれたブログは本当にたくさんあって、みなさん症状や経過は様々だ。そんな中で、私なんかはまだ充分に幸運な方だったと言うべきだろう。治療は思ったほど効果は無かったが、「悪くなるのを食い止めてくれた」と考えれば、今の状態は感謝すべき状態だ。右側から話しかけられると声が響いてつらいが、周囲が騒がしくなければ聴き取ることは充分にできる。発症当初からめまいが無かったのも幸運だった。他の方のブログをみるとめまいで長く苦しんでおられる方も多くおられる。最初は、「なんで私がこんな目に会わないけないのか?」と運命を恨んだが、どんな不幸もいつ誰に起こるかわからないものだ。私の同級生の中にはもっともっと重い病気になって苦しんでいる者もいれば、すでに病気で亡くなった者も何人かいる。まだ充分に受け入れることができたとは言えないが、ともかく仕事ができて左右アンバランスながら両耳で音が聴けることに感謝して、与えられた条件の中でポジティブに考えることにしよう。楽しいことも考えなければ。まずは音楽を聴く環境を整えることにした。もちろん大音量で聴くことなどできないが、悪くなった耳でもよりよく聴ける工夫は必要だ。まずはiphone。音楽を聴くために左右でイコライジングを個別に調整できる便利なアプリを探し当てた。たった360円!これをインストールし、右側の1000ヘルツを中心に15db程度持ち上げ、両側の4000ヘルツ付近を10db程度持ち上げて、オージオグラムの落ち込んでいる部分を補正するような設定にした。しかし右側の1000ヘルツ付近を無理に持ち上げると音割れが目立ってしまう。突発性難聴は単に聴こえが悪くなるのではなく、聴こえの質も低下しているのだ。最終的に8〜9db程度上げてやるのがベストだとわかった。周波数認知のズレがあるそのあたりを強調することで、右耳のピッチのずれが顕在化しないかと心配したが、不思議と違和感なく音楽を聴ける。この状態でヘッドフォンで音楽を聴くと、全く右の耳が悪いことがわからないくらいだ。カーステレオでもこうして調整したiphoneからの音楽を流している。次に自宅のオーディオ環境。自宅で音楽を聴くときは、DTMで演奏や録音をする関係からパソコン(itune)→オーディオインターフェース→ミキサー→オーディオアンプ→スピーカーという接続になっている。ミキサーのおかげで左右のチャンネルに別個にイコライジングができる。幸い中音域は250〜5000ヘルツの可変式になっているので、調整しやすかった。スピーカーの位置もできるだけ左右の音が混じらないよう、部屋の(せまい部屋だが)両端に置いた。しかしスピーカーで聴くとどうしても右耳が響いて疲れる。響く現象は、どうやら音が空気中を伝わって多少壁などに反射しながら耳に入ると起こりやすいみたいだ。一般的にヘッドフォンで音楽を聴くのは耳に良くないといわれているが、今の自分には適正な小さめのボリュームにしてヘッドフォンで聴いた方が耳に優しい。後はギターをどうするかだなあ・・・エレキギターをアンプを通さずに弾いたときの音量を測定したところ、大体60〜70db前後。まあ、力一杯コードを弾くとその瞬間だけ85dbぐらいになってしまうが、加減してやっていけば耳に障らない範囲で練習はできる。しかし今後ギターアンプのスイッチをONにできるような日が来るだろうか・・・少なくとも今年いっぱいはライブハウスに足を運ぶことはできないだろう。まあ、何もデカい音を出さなくても熱い音楽はできるはずだ。アンプラグドという道もある。とにかく残された聴力を大事にしながら音楽にしがみついていこう。
2015.05.09
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今回の突発性難聴体験で最も悔いが残るのは、高圧酸素治療を発症初期から受けられなかったことだ。今も調べれば調べるほど、発症初期の高圧酸素治療の有効性を支持する論文がたくさん見つかるのである。もちろん初期から受けられたとしても治っていたかどうかはわからない。しかし初期治療で全てが決まってしまう病気なのだから、例え治らなかったにしても「初期から充分にあらゆる治療を受けることができた。これで治らなかったのなら致し方ない」と納得できるのと、「あのときあの治療を受けていれば治っていたかもしれない」と悔いを残すのとでは気持ちの上で雲泥の差がある。前にも述べたように当地では高圧酸素治療の設備があるのはN病院と県立病院のみだが、前者には耳鼻科が無く、後者では耳鼻科では使われていない。県立病院で使われていない理由はわからないが、診療点数の高い緊急疾患のみに絞っているためか、県立の耳鼻科医が高圧酸素治療の効果を認めていないかのどちらかだろう。従って「耳鼻科に入院してしまうと高圧酸素治療が初期に受けられなくなる」というバカげた矛盾が発生する。この矛盾について少し説明しておこうと思う。医師は意外と健康保険上のルールに無頓着なところがあるが、病院の事務方はいい意味でも悪い意味でも医師にルールを守らせて病院に経済的不利益が発生しないようちゃんと監視している。大学病院のような公的病院であってもというか、むしろ公的病院の方が厳しいかもしれない。厚労省が決める保険のルールは、多くの場合医療費の抑制が目的であって患者の利益のためでは無い。自分が患者になって初めてわかったが、私が入院した大学病院はDPC対象病院である。DPC対象病院とは入院中にどんな治療や検査を行っても、病名によって診療報酬が一律に決められている病院である。いわゆる「まるめ=包括」のことである。手の込んだ治療や検査をするほど病院としては損することになる。逆に無駄な検査せず不要な薬は使わないようにして、早めに退院させれば病院は得をする。要はこれも医療費抑制を目的とした制度である。入院中の回診時にこんなやりとりがあった。講師「この聴力の落ち方(1000ヘルツに限局している)はめずらしいね。聴神経腫瘍による圧迫も疑った方がいいんじゃないかな。頭部MRIを撮るべきだね。」私「じゃあ入院中ですし時間はありますから撮ってもらえませんか?」講師「いや、入院中の患者には緊急でも無い限りMRIは撮れないんですよ。」私「ハア?」講師「入院中だと何をやっても一定金額しか診療報酬が入ってこないから、MRIのような高額な検査は原則入院患者にはやらないんです。もしやるんだったら、退院した後に外来でやるといいよ。」なんのこっちゃ?重症でしっかり治療しようということで入院しているのに、MRIひとつ撮れないなんてあまりにも矛盾しているじゃないか!?撮れないわけじゃない。病院が少しでも損しないように撮らないよう指導されているのだ。高圧酸素治療についても同じ矛盾が立ちはだかっていた。もし私が大学病院入院中にN病院に出向いて高圧酸素治療を受けたとしたら(本当はそうしたかったのだが)、それにかかる費用をN病院は保険請求できないことになっている。入院先である大学病院から保険請求して、支払われた金額を大学からN病院に支払うことになる。ところが包括の別枠として大学病院から保険請求できるのは発症後1週間以内の高圧酸素治療のみで、それ以後の高圧酸素治療の費用を大学病院は保険請求することができない。包括の中での治療と見なされるのである。もちろんN病院としては無料で高圧酸素治療を行うわけにはいかないので、大学病院は一定の診療報酬の中から発症7日以後の高圧酸素治療の費用をN病院に支払わなければならない。これはかなりの金額になるので、大学病院の収益はガタッと減ってしまうことになる。通常突発性難聴に対する高圧酸素治療は10〜15回あるいはそれ以上行われるので、大学病院はかなりの金額を持ち出すことになる。ヘタすると赤字である。これが大学病院入院中の患者が他院で高圧酸素治療を受けられない(大学病院が受けさせない)理由である。これも医療費抑制のために厚労省が決めたルールである。結果として私の場合発症後17日目というあまり効果の期待できない時期からの開始となってしまった。しかしこんなことは、突然耳が聴こえなくなってとにかく治療をと焦っている時期に冷静に調べられることではない。この矛盾に満ちたシステムがわかった今なら、開業医でもどこでもいいから耳鼻科にお願いしてステロイドとデフィブラーゼを強引に外来通院で点滴してもらい、N病院で高圧酸素治療を受けるよう紹介状を書いてもらえば全ての治療を発症後7日以内受けることができただろうにと思う。ヘタに入院してしまったのが失敗だったのだ。都市部にいけば、ステロイド+デフィブラーゼ+高圧酸素治療、もしくはステロイド+星状神経節ブロック+高圧酸素治療を入院当日から同時に行える病院がある。東京なら荏原病院などが有名だし、大阪なら大阪労災病院、滋賀県なら草津総合病院などがある。探せば他にもあるだろう。しかしそんな情報がわかってきたのは、すでに大学病院に入院してしばらく経ってからだ。時既に遅しだった。今このブログを読んで下さっている方は既に突発性難聴になってしまった方が多いのかもしれない。幸いにしてまだなっていない方は、もしなってしまった場合速やかに全ての治療が同時に行える病院に行くことを強くお勧めする。ステロイドやデフィブラーゼ点滴などどこでもできる。要するにポイントは高圧酸素治療設備があるか否かである。できれば星状神経節ブロックも選べる病院の方がいい(デフィブラーゼ点滴と同時には行えないが)。これは腕のいい麻酔科医がいることが条件となる。最初は開業の耳鼻科で診てもらったとしても、よほど軽症で無い限り全ての治療が行える病院に紹介状を書いてもらうよう頼み込むことだ。治すチャンスは2週間しか無い。2週間などあっという間に経ってしまう。例え遠い病院での入院になったとしても、その後の人生で片耳の聴力を失うか否かを考えれば迷うことは無いはずだ。
2015.05.08
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Day33 4月30日 大学病院耳鼻科「良くなってることはないだろうな」とわかっていたので、聴力検査は落ち着いて受けることができた。いつもの技師さんだった。両耳とも125〜500ヘルツの低音が少し落ちているが、これは高圧酸素治療が終わって2時間ほどしか経っていないので中耳圧のバランスがまだ元に戻りきっていないためである。問題の1000ヘルツは果たして40dbとわずかに改善していた。変動の範囲内かも知れないが、悪くなるよりは100倍いい。耳鼻科のドクターはこの結果(オージオグラム)を見て判断するのみだが、実はこの1000ヘルツは相変わらず1300ヘルツに聴こえているのである。未だに800〜1700ヘルツの範囲でピッチのズレは変わっていない。オージオグラムだけみるとかなり正常に近づいたようにも見える。平均聴力レベル(4分法が国際標準)32.5dbということは「軽度難聴」の部類に入る。(25〜40dbは軽度難聴)しかし数値には表れない、聴こえ方の質、耳に響く不快な症状、耳鳴りなどは評価のされようがないのである。治療法が確立されていない以上、これらの問題を云々してもしようが無いのかもしれない。「ちょっとよくなったみたいですね。デフィブラーゼ点滴も高圧酸素治療も終わりましたし、時期的にはそろそろ聴力は固定する時期ですから、次回は1ヶ月後に聴力検査をしましょうか。」「発症後1ヶ月経ちましたから、もうこれ以上聴力が良くなることはないということですね?」「そうですね。」「いろんな音が耳に響く症状はいつか治るものですか?それとも一生治らないものですか?」「そうですねー ちょっとわかりませんねえ・・・ 中々治りにくい人もいるようですが・・・ ところでお薬はどうされます?次回の診察までの分出しておきましょうか?」「どうされます?」と聞いている時点で、単なる気休めの薬であることが明らかなのだが、鍼灸治療を終わるまでは薬ものんでおこうかと何の根拠も無く考えて処方してもらった。アデホス、メチコバール、ツムラ39番(漢方薬)とどれも屁みたいな薬だが、1ヶ月分となるとけっこうかさばる。病院通いの爺さんになった気分で病院をあとにした。残りの人生、この耳で生きていくしかないんやなあ。なんやかんや言いながらも、大学というややこしい硬直しがちなシステムの中で、融通を利かせてくれた担当医には感謝した。
2015.05.07
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さて大学の担当医はゴールデンタイムであるDay14を過ぎてからの聴力回復はかなりむずかしいと思ってか、聴力検査は高圧酸素治療が終わる4月30日に行うことになった。デフィブラーゼの点滴もそれまで週2回ペースで行うことになる。高圧酸素治療は連日行っているにもかかわらず、終了直後耳鳴りが小さく感じられることがあるぐらいで、毎回カプセルに入る度に「奇跡が起こるのではないか」と期待しつつも効果は出ていないように思われた。というかiphoneのアプリで聴力検査せずとも大体わかってしまうのである。周波数のズレも相変わらずだったが、diplacusisが顕在化してこないのは幸いだった。しかしともかく自分の気持ちにけじめをつける意味でもとにかく14回やり通そうと思った。鍼灸の方は仕事に復帰してからはせいぜい週2回程度しか行けない。幸い行くたびに鍼灸師のおっちゃんは意欲を高めているようだ。お灸する場所やハリを刺す場所を微妙に変えながら効果を出そうとしている。これも効いている実感があるわけでは無いが、取りあえず5月いっぱいはできるだけ通ってみよう。テレビの音などを聴く限り少なくとも聴力がさらに悪くなってることは無さそうだったが、耳鳴りは日に日に煩わしくなってくる。右耳の中で冷蔵庫が1日中うなっている。昨年来高音の耳鳴りで悩まされていろいろと調べて耳鳴りの対処法はわかっていたものの、この新しい耳鳴りはやっかいだ。感音性難聴では内耳からの音声信号が来なくなったことで脳の聴覚中枢がなんとか聴こうとして感度を上げ過ぎてしまうことで耳鳴りが起こる。だから性格にいえば耳鳴りではなくて脳鳴りなのである。Jastreboffという耳鳴り治療の第一人者が述べていることだが、大脳が耳鳴りを「危険な信号」と認知する限り大脳辺縁系や自律神経系にネガティブな信号を送り続け苦痛として認識される。その苦痛がさらに耳鳴りを意識させてますます大脳に大きな音として意識されるようになる。この悪循環を断ち切ることで耳鳴りを意識しなくなれば、耳鳴りはその人にとって苦痛では無くなる。耳鳴りは難聴の原因では無く結果である。従って耳鳴りそのものは何ら危険なものでは無いということを理解するだけで耳鳴りは小さくなってくる(実際に小さくなるわけでは無く、大脳の上位にのぼってこなくなるので意識しなくなるだけである)。さらには日頃から耳鳴りを意識の前面に陣取らせないよう、適当に雑多な音の環境にいることが大切である。もちろん大音量はいけないが。そんなことを知ったおかげで昨年来の高音性耳鳴りはかなり楽になってきていた。理屈を知っていても、今回の突発性難聴に伴う新たな低音耳鳴りは脳がイヤでもまだ「危険な信号」と認知してしまうらしく、日に日に大きく感じられる。逆に皮肉なことに高音性の耳鳴りについては脳が優先順位を新たな耳鳴りにシフトしたためか、ますます意識にのぼらなくなった。「あれ、あっちの耳鳴りはどうなったのかな?」と意識すれば確かにまだ鳴ってはいるし、静かな環境では「ああ、やっぱりまだあるんや。けど今の低音耳鳴り比べたらかわいらしいもんやな」と思える。このしんどい突発性難聴の中での唯一のメリットかもしれない。そうこうするうちにDay33の4月30日、高圧酸素治療も最後の14回目を終えて、その足で大学病院へと向かった。
2015.05.06
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大学病院退院後は結構忙しくなり、例えば自宅から1時間かけてN病院で高圧酸素、その後そこから1時間かけて大学病院でデフィブラーゼ点滴、その後またそこから1時間かけて鍼灸院へ、という日もあった。ずっと一人で運転するのはしんどいので主にカミさんに運転してもらった。もう完全に1日仕事である。そうこうしながらこれ以上の聴力回復が不可能である場合を考え、今の状態を受け入れる必要を感じていた。4月2日に入院して以来ずっと仕事は休んでいる。同僚や後輩の医師達には随分迷惑をかけてしまった。「病院のことは心配せずに、とにかく治療に専念して下さい」と気遣ってくれて本当にありがたかった。そうは言ってもいつまでも休んでいるわけにも行かない。4月20日から仕事に復帰した。手術の入っていない午後などを利用して通院治療を続けつつ。仕事に復帰するとあらためて耳の調子が悪いことを自覚する。床や壁が音を反射しやすい場所では特につらい。病棟のナースステーションは反射しやすいのに加えて人の出入りも多く、申し送りの話し声、モニターのアラーム音、院内PHSの呼び出し音などが渦を巻くように耳の中で反射する。その点外来診察室は床が吸音性の高い素材でできているのでかなり楽だ。ただ診察机の配置状、医師の斜め右隣に患者が座るかっこうになるので、患者からは奇妙に見えたかもしれないが、自分はできるだけ左耳が患者の方に向くよう、椅子をやや右側に回転させて話を聞いたりしている。分娩室は聴覚補充現象に苦しむ私にとっては最悪の環境だった。部屋全体が反響しやすい上、胎児心拍モニタリングの音、妊婦さんの唸り声(これが一番響く!)、助産師のかけ声、生まれたらベビーの泣き声、酸素モニターのアラーム音などでほとんどパニック状態になってしまう。必ず耳栓をして入ることにした。こうなると「突発性難聴」という病名はえらく患者の自覚症状とかけ離れたものに感じられる。難聴だから補聴器では無く、音が響くから耳栓が必要になるのである。
2015.05.04
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一体どんな病気が得意なのか?病院以上にわかりにくいのが鍼灸院だ。特に突発性難聴は鍼灸のなかでも特殊分野らしく、扱っているところは少ないようである。ネットで探すと東京や大阪などでは突発性難聴治療を売りにしているところがあるようだが、地方在住の我々にとって通うのはむずかしい。大阪にある突発性難聴を得意とする鍼灸院に電話してみたら、鍼灸師自身が電話に出たみたいだが、「今そちらで病院の治療を受けておられるなら、まずそれを優先して下さい。特急電車に2時間も乗る方が耳に障ると思いますし。」との返事。なんか声のテンションが低くてやる気がなさそう。東京なんかだと新幹線通院を推奨している有名な突発性難聴専門鍼灸院もあるのになあ。更に探してなんとか車で1時間で行ける鍼灸院を見つけたので、入院中から外出して通うことにした。高圧酸素治療開始後も合間を縫って週3回程度通院。突発性難聴に興味があって症例を蓄積したいとのことで、施術料が1回3500円のところ、突発性難聴患者に限り2000円と安い。うーん、これはまだ症例数が少ないからまずいとみるべきが、熱意を買って治療効果を期待すべきかちょっと迷ったが、他に選択枝が無いので通うことにした。40才ちょい過ぎのおっちゃん鍼灸師で、気さくなどこにでもいるおっちゃんという感じ。ベッドが6つほどあって、けっこう人気があるようで常に複数の患者を助手の奥さんといっしょに治療している。建物に入るなりプーンとお灸の臭いがする。当たり前か。まずは問診、病院での治療経過を説明し、オージオグラムを見せた。オージオグラムは見慣れているようだ。「この1000ヘルツのとこだけが落ち込んでいるのはわりと珍しいですね。両耳の4000ヘルツが落ちているのは以前からですか?」「はー、そこは長年バンドやってるせいで以前から徐々に落ちてきたみたいです。けど1000ヘルツは3月29日の夜に突然聞こえにくくなったんですわー」「1000ヘルツのところは会話域ですし落ちるとつらいですよね。1回や2回の施術では治らないかもしれませんが、鍼灸の場合西洋医学とちがって発症後2ヶ月程度は聴力改善の可能性が残されていると考えてますし、実際2〜3ヶ月かけて徐々に良くなった方もいらっしゃいますのでとにかくやってみましょう。」N病院の脳外科ドクターの頭ごなしに出鼻をくじくような言い方とは大違い。で、どんな治療をするにかを大まかに説明してくれた。お灸と言っても昔おばあちゃんが腕にもっこりとモグサをのっけて火傷を作りながら我慢してたようなやり方ではなく、耳かき1杯程度のモグサに線香みたいなもので火をつけて、少しツボを暖めるというやりかたらしい。ハリの方はディスポのものを使うので感染の心配は要りませんとのことだった。難聴の治療だから耳のまわりばかりやるかと思えばさにあらず。お腹、背中、ふくらはぎ、足首、前腕といろんなところに耳のツボがあるらしく、それらに順番にお灸していく。確かにそれほど熱く無い。たまに「あちっ」となる程度。首を支える胸鎖乳突筋という筋肉が左右両側にある。耳が悪くなってからやけにこの筋肉が凝っているのが自分でもわかっていたが、鍼灸的にも胸鎖乳突筋は耳と強く関連しているとのこと。胸鎖乳突筋の後縁から耳介の後方にかけてたぶん10カ所くらいだろうか、ハリをうっていく。痛いことはないが、「あ、そこツボやな。なんかきゅーっとくる」という感じ。丹念に触診しながらツボを見極めて施術していくところがベテランぽい感じ。それとちょっと意外だったのは、スーパーライザーという器械で首元の星状神経節に近赤外線を照あてるというもの。これは星状神経節ブロックと類似した効果をねらってやるらしい。このあたりは西洋医学的でもある。なんやかんやで1回の施術に1時間15分程度かかる。まあ、適当に雑談しながらやってくれるので長くは感じない。治療のことを「手当」と言うが、まさに手当してもらっている感じで癒され感はあるなあ。これで2000円というのは良心的な値段だ。効果の程はまだまだわからないが・・・続く・・・
2015.05.04
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自分の周りで突発性難聴を体験した人は意外と多い。職場の人間、友人等、私が突発性難聴になったことを知って、「自分もなった。大変だった」とか「結局今も聴力が回復せず、左耳で電話に出れない」などと打ち明けてくれた人達が少なからずいて驚いた。直接話を聞いた人だけで7人もいる。そのうちの4人は今も聴力の低下や耳鳴りや聴覚補充現象で苦しい目に会っている。皆顔に出さないので鈍感な私が気がつかなかっただけなのか。厚労省の報告では、毎年3000人から4000人に1人の発症頻度とされているが、実際はもっと多いのではないだろうか?ここ10年ほどの間に、医療界では各疾患に対する治療ガイドラインが次々と作成されている。日本には多くの医師がいる。勉強熱心な医師もいればそうでない医師もいるだろう。場合によっては最新の知識に接すること無く、昔ながらのやり方に固執している医師もいる。しかしそれでは患者が最も有益な治療を受け損ねてしまう可能性がある。全国の医師がすべからく患者に最善の診断と治療を行えるよう、あるいは自分のところで治療不可能なら速やかに適切な施設に紹介できるよう、その時点での最新知見に基づいた方針を学会がまとめたものがガイドラインである。例えば私の専門である産科領域では、産科診療ガイドラインが日本産婦人科学会によって作られており、妊婦、新生児の各疾患に対する早期診断法や適切な治療について事細かく解説されている。これは3年に一度改訂されるので、新しい版ができた瞬間から改訂に向けて専門家や一般臨床医から広く意見を求めて次回の改訂の準備がなされる。もし不幸にして妊婦や新生児が亡くなったり後遺症を負ってしまった場合は訴訟となることが多いが、そのときに医療側に過失があったか否かはガイドラインに沿った医療行為がなされていたかどうかがで判断される。第一版の産科ガイドラインが出版されたのが2008年だったと記憶しているが、出版される前には、「そんなものを作ったら、裁判の時に医療側が不利になるんじゃないか」とか、「全ての医師に最新の知識を要求するのは無理じゃないか」とかいろいろと批判があったようだ。しかし学会側としては、「訴訟が多いからこそ全ての産科医が高いレベルの医療を提供できるようにしていくべきで、そのためには具体的なガイドラインがどうしても必要だ」との考えで出版に踏み切った。その判断は全く正しかったと思う。もちろん診断も治療も難しい病気は数多くあるので、ガイドラインに従えば大丈夫というほど医療は単純では無い。しかし日進月歩の医学の中でリアルタイムに最新の知識とそれに基づく治療の選択枝を示すことは医師にとっても患者のとっても非常に有益である。そして現実問題として産科ガイドラインが作成されてから訴訟件数は減っているのである。突発性難聴についても、これほど多くの人を苦しめ治療の難しい病気であれば当然ガイドラインがあるものと思っていた。しかし調べてみると中耳炎や良性発作性頭位めまいや副鼻腔炎などのガイドラインはあるが、突発性難聴のガイドラインは存在しないのである!この総説によると、「ガイドラインを作ることで現場の医師の裁量権を縛りはしないか,訴訟が起こった場合ガイドラインが悪意を持って利用されないかなどが懸念されたものと記憶している。そのような事情で突発性難聴の診療ガイドラインの作成は中断して今日に至っている」と書かれている。なんたるアナクロニズム!全く患者サイドに立っていない旧態依然とした態度にあきれるしかない。難しい病気であるからこそ全国の耳鼻科医が最新の知見と治療の選択肢を知っておくべきなんじゃないか!その上で患者と相談し治療方針を決める。これがインフォームド・コンセントというものだろう。現状では突発性難聴患者がどんな治療を受けられるかは全く運任せで、私のような医療関係者ですら自分で調べてあれこれ考えたあげく八方ふさがりになるのが現状である。そりゃ治療の進歩が無いのも当然じゃないか。
2015.05.03
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Day174月14日朝10時過ぎにN病院に到着。200床ぐらいの中規模私立病院で、内科、外科、脳外科、神経内科、心臓外科などを標榜している。脳卒中や心筋梗塞の急性期、一酸化炭素中毒、潜水病(この病院は海から1時間弱のところにある)などのために高圧酸素治療の設備が置いてある。N病院では外から紹介の突発性難聴患者はまず脳外科のドクターから簡単な問診を受ける。そこでの一言は一生忘れまい。「なんでこんな時期になって来たの?もう2週間以上経ってるからこれから高圧酸素やっても効果は期待できないよ。もっと早く来れば治る可能性が高いのに。」と半ば叱りつけるような口調で語る。しかし患者である私にどうしろというのか?いかに医師であるとはいえ、大学病院に入院していた以上自分で勝手に来るわけにいかないじゃないか!遅いかもとは知りつつも最後の望みを託してやっとたどり着いた患者に、こんな闘病意欲を無くすようなことを平気で言うやつに医師の資格があるのか?「そんなこと言うならお前の病院に耳鼻科を作っとけ、ボケ!!」と心の中で叫びつつも、「はあ、とにかくできるだけの治療を受けたいのでお願いします。」と頭を下げるしかなかった。本当に患者の立場は弱いものである。この医師とは正反対に、高圧酸素治療を行ってくれた技師さん達は皆親切で優しかった。ちょっとした優しい言葉がどれほど患者の不安な気持ちを癒してくれることか。私を含めて医師は身を以て知るべきだとつくづく思う。高圧酸素治療の設備としては、数人が入れる高圧酸素室と、一人しか入れないカプセルタイプのものがある。N病院のはカプセルタイプ。SECHRISTという会社が作っている。アンチエイジングやアスリートの疲労回復に使うような酸素カプセルは、せいぜい1.5気圧までしか加圧できず酸素濃度も30%程度までだが、この器械は2気圧まで加圧できなおかつカプセル内の酸素濃度を100%近くにまで上げることができる。ヘンリーの法則に従って高気圧の酸素が血液中の血色素だけでなく、血漿中に何十倍も溶け込み内耳の損傷部位に少しでも多くの酸素を供給して再生を促そうという治療である。ただし2気圧の100%近い酸素は静電気が発生するだけで爆発の危険があるので、綿100%のパンツであることを確認した上で病院が用意してくれているガウンを着て入る。過去には使い捨てカイロを持ち込んだために発火して爆発し死傷者が出た事故が他県であったとのことだ。初日を担当してくれた技師さんはベテランの方で、丁寧に治療過程を教えてくれた。「まずは耳抜きといって、加圧中に中耳内に耳管から空気を入れていかないとものすごく耳が痛くなりますので耳抜きの方法を教えますね」と言われたが、ダイビングで耳抜きは慣れていることを話すと「あ、それなら心配要りませんね」ということで早速治療開始。ストレッチャーに乗せられてカプセルの中に入ってハッチというかドアを閉められた瞬間、シンと静かになり耳鳴りが気になってしまう。外にいる技師さんとはインターカムで話すことができる。寝返り打つのもやっとの狭さだが、アクリル性で全体が透明になっているため外の様子は見ることができ、これなら閉所恐怖症の人でも大丈夫だろう。スイッチオンで酸素がシューという音ともにカプセル内に送り込まれてくる。意外とうるさい音だ。「では今から圧を上げていきます」と技師さんがインターカムで教えてくれる。約20分かけて2気圧まで上げる。「大丈夫ですか?耳痛くないですか」と何度も技師さんが聞いてくれたが、予想通り耳抜きは全く問題無かった。ダイビングのときは10分もすれば水深10メートルまで潜っているので、むしろ余裕があった。「はい、今2気圧になりました。この状態で1時間待ちますのでゆっくりなさって下さい」と技師さんの声。この1時間が中々に長い。見えるところに時計が置いてあるのだが、見ていると余計に長く感じる。「少しでもたくさん酸素入ってこい」と願いながら、何度も深呼吸をした。2気圧下で1時間過ごした後に20分かけて減圧する。中耳にたまった酸素が耳管を通して「ボキュボキュ」という感じで出てくる。あくびをして少し耳管を開けてやるとスムースに中耳圧のバランスが取れてくる。「ボキュボキュ」という音ともに治っていくんじゃないかなあという気になるが、減圧が終了して静かになると相変わらず右耳の耳鳴りがしている。「耳大丈夫でしたか?」・・・圧の変化で耳に痛みが来ていないかを心配しての言葉だけど、耳の病気で来てるのにちょっと滑稽な感じがした。「今日はまだ何も変わらないかもしれませんが、効果が出る人は4回目ぐらいから良くなることが多いみたいですよ。」とのこと。こういう一言がすごく励みになる。今日を含めて連日計14回行う予定。続く・・・
2015.05.02
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高圧酸素治療に加えて、もう一つ選択枝に入れていたのが鍼灸治療である。これはネットでの体験談とか鍼灸院の宣伝ホームページぐらいでしか情報が入らない。かなりやらせの情報もあると思うのだが、海外文献を検索してみるとこのようにちゃんとしたデータを出しているものもある。西洋医学的治療が全く満足な治療結果を出していない以上、東洋医学的アプローチを偏見の目で見る理由は一つもない。しかし鍼灸院の中で突発性難聴を扱っているところは大都会に集中しており、地方では数少ない。幸い車で1時間ほどのところに突発性難聴を積極的に治療している鍼灸院があることがわかった。ネット上で実際の治療症例を呈示しており、ある程度信用してもいいのかなと思われた。これについては行うのに何の縛りも無いので、一応担当医に断った上で病院から外出して4月9日から週3回のペースで通い出した。しかし車の運転の音が意外に耳に響くのである。右耳に耳栓を突っ込んでおかないとものすごく疲れる。1時間がものすごく長く感じられる。時間に余裕があるときは高速を使わずに下道をゆっくりと運転して移動した。Day13〜17発症後13日目の4月10日金曜日。デフィブラーゼは隔日投与で血中フィブリノゲン値50〜60mg/dlとちょうどいい効き具合を維持していた。4月6日と8日の聴力検査で改善が見られていたことから、「よし、デフィブラーゼが効いてきたな」と担当医も私も思っていた。一方でゴールデンタイム終了のDay14が迫って来ている。担当医が、「今日も聴力検査しましょうか?どうします?」と聞いてきた。私の頭の中での当初の予定ではDay13のこの日は聴力検査を受けるつもりをしていた。そこでデフィブラーゼの効果が頭打ちか否かを判断して、あまり効果が上がってこないようなら明日高圧酸素治療を受けるべく退院しようというハラだった。それでギリギリ発症後14日以内の高圧酸素治療開始となる。フィブリノゲン値が安定しているのでデフィブラーゼの点滴は外来通院で続けることも可能だろうし。しかし情けないことに先日の聴力検査の時のイヤな思いがものすごくトラウマになっていて、どうにも聴力検査室に行く気になれなかった。「いやー、あまり一喜一憂するのもねえー。聴力検査は来週の月曜日にお願いしてもいいですか?」と答えてしまった。前回の検査結果からの甘い期待もあって、つい逃げてしまったのだ。自覚症状は何も改善していないというのに・・・土日にかけては耳鳴りがさらにひどくなっているような気がした。夜9時頃、人気の無くなった病棟1階のロビーの椅子でカミさんとくつろいでいると耳鳴りが気にならなかった。自販機の「ブーン」という音が耳鳴りをマスクしていることに気がついた。病室のエアコンの音よりマスキング効果は強いようだ。iphoneのボイスメモで自販機の音を録音して、ituneでリピート再生できるようにして就寝時枕元で小さい音で鳴らすと寝やすかった。果たしてDay16となってしまった4月13日月曜日の聴力検査。この時はいつもの技師のお兄さんで落ち着いて検査を受けることができたが、結果は4月8日よりも悪くなっていた!1000ヘルツが45dbに戻ってしまったのだ。デフィブラーゼの効果もここまでなのか・・・担当医に、「もし今の状態が治らないとしても、後で後悔しないようにできることは何でもやっておきたい。入院させてもらいながら申し訳ないが、高圧酸素治療を受けたいのでN病院に紹介してもらえませんか?デフィブラーゼの点滴は通院して続けますので。」と申し出た。担当医は少し躊躇したようだったが、「わかりましたN病院に連絡してみます。」と了解してくれた。後でわかったことだが、どうもこの件についても担当医は教授に内緒で段取りしてくれたようだ。「デフィブラーゼの効果を見極めてからにしろ」と言われるのを恐れてのことだろう。話は早かった。明日4月14日の朝10時半から高圧酸素を始めるから、来てくれとN病院から返事があったのである。急遽カミさんと荷物をまとめて退院の準備をし、担当医からの紹介状を手に14日の朝大学病院を退院した。Day17からの開始になってしまったが、これは私自身に責任がある。急いで段取りしてくれた担当医には感謝した。この日から、それぞれに車で1時間ほどかかるN病院と大学病院と鍼灸院を行ったり来たりしながらの通院生活が始まった。もう安静もクソも無いわけだが、することもなく病室でじっとしているよりはよほどストレスは無かった。手元の文献にある「これを発症からOHP(高圧酸素治療)開始までの日数別に予後を検討すると,第8~14病日の間にOHPを開始した症例は治癒率19.6%,有効率28.3%,改善率56.5%であった.それに対し,第15~21病日の間では,治癒率4.5%,有効率18.2%,改善率45.5%,第22~28黒日の間では,治癒率14.3%,有効率14.3%,改善率28.6%であり,既治療例に対するOHPも早期に行った方が効果が期待できると考えた.」という記載の下線部にある45.5%に何とか食い込んでみせると思いながらN病院に向かった。続く・・・
2015.05.02
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私の突発性難聴は厚労省の分類からいえば軽症のgrade1にあたる。(最重症はgrade4)しかしこの重症度は単にオージオグラムの結果のみから定義されており、患者の自覚的な苦悩度は考慮されていない。もちろん全く聴こえなくなってしまっているgrade4の患者さんに比べればずっと軽症なことに間違いは無いし、実際外に出てみて風が耳たぶを撫でる音、あるいは空高いところで鳴く小鳥の声が両耳で聴こえるときこの上もない幸運を感じる。しかし人の声が耳の中で響く症状や鳴り続ける耳鳴りはものすごく辛い。特に私の場合、1000ヘルツという最も大事な周波数を中心に狭い範囲で聴力が落ちているので耳詰まり感が強い。この病気を自分で経験していない耳鼻科医にしてみれば、「この程度なら日常生活に支障は無いし大したことない」と思われるかもしれない。しかし患者の苦痛はオージオグラムだけではわからないのだ。そのへんを医療側はもっと理解してほしい。わがままな一患者の立場から節に願う。さて入院以来ちょっとしたことに一喜一憂しているが、入院が決まった時からある意味冷静に何をなすべきかを考えていた。とにかく発症後2週間が勝負だということは知っていたので、国内外の文献を読み漁ってはどう治療していくのが最善かを模索していた。しかし未だにglobal standardとなる治療法が無い突発性難聴では、文献を読めば読むほど「どないせいちゅうねん!?」という気になる。入院時にデフィブラーゼを併用しようということで担当医と意見が一致したが、私は同時にデフィブラーゼの効果が出なかったときはどうするか?を考えていた。デフィブラーゼを選んだ時点で星状神経節ブロックは使えない。となると選択枝として残ってくるのは高圧酸素治療である。高圧酸素治療の文献はいろいろあって、結論も異なっていたりして、門外漢としては「果たして治療の選択枝に入れていいのかどうか?」悩むところである。耳鼻科の医師の中でも高圧酸素治療賛成派、反対派がいるようである。反対の理由は、加圧時にうまく耳抜きができないと、中耳腔が陰圧になってしまい滲出性中耳炎を起こし、伝音性難聴を併発することがあるというものである。鼓膜切開が必要であった症例が18%あったという報告もある。そういったリスクの割には効果が明らかでは無いというのが反対派の意見だ。ただし私はスキューバーダイビングを200本以上経験しているので、耳抜きに関しては何の心配もなかった。高圧酸素治療では2気圧の中で1時間過ごすことになるのだが、これは水深10メートルに相当する圧で、ダイビングに慣れているものにとっては大した圧では無い。賛成派の意見は、発症後14日以内のステロイド単独治療群と高圧酸素治療併用群で比較すると併用群の方が治癒率、改善率ともに高い。発症後15〜21日に高圧酸素治療を開始した症例(多くは他院でステロイド治療やデフィブラーゼ治療を受けて効果がみられず高圧酸素の設備がある病院に搬送された症例)では早期治療群に比べるとその治療効果は劣るが試みる価値は充分にある。しかし発症後1ヶ月以上経った症例では効果は期待できない・・・といったところである。以上のことを総合的に考えて、自分としてはデフィブラーゼが聴かない場合には大学病院を退院して高圧酸素の施設がある病院へ行くつもりをしていた。そのためにも本当のことを言えば何としても入院時の4月2日にはデフィブラーゼを開始して早くその効果を見極めたかったのである。それなら発症14日以内ギリギリの所で高圧酸素治療を開始できると考えたからだ。さらに言うなら、本当はデフィブラーゼと高圧酸素を入院となった時点で同時に開始したかったのだが、大学病院にその設備が無く、市内の県立病院にはあるが専ら一酸化炭素中毒やガス壊疽などの救急疾患のみにつかわれており、耳鼻科では使用できないことになっている。市外の私立N病院にも設備があるがそこには耳鼻科が無い!N病院は耳鼻科から紹介を受ければやってくれるが、他院入院中の患者にはできないことになっている。八方ふさがりの状況なのである。だから次善の策としてはデフィブラーゼの効果を早く見極めてダメなら退院してN病院へ通院という道しかとれなかったのである。ほんまになんちゅう理不尽なシステムなんや!!
2015.05.01
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Day9〜11発症9日目の4月6日月曜日、音が耳に響く感じや耳鳴りなどの自覚症状は何ら改善していないように思えた。血液検査では血中フィブリノゲンはデフィブラーゼ投与前の200mg/dlから77mg/dlまで低下していると担当医から告げられた(フィブリノゲンの正常値は150〜400mg/dl)。突発性難聴の治療目的としては50〜100mg/dlが適切といわれているので、ちょうどいい効き具合だとのことだ。午後からの聴力検査では、500ヘルツ、1000ヘルツとも5db回復していた!先の見えない入院の中ではわずかの回復でもこの上なくうれしい。本日もデフィブラーゼ点滴だが、下がりすぎても危険ということで前回の半分(5単位)を投与することとなった。「ケチらずにドーンといってくれ」という気持ちもあったが、ここは担当医の冷静な判断に任せるべきだと思った。4月8日水曜日、この日のフィブリノゲン値は55mg/dl。やはり担当医の判断は正しかった。この日は午前に聴力検査があった。ここの大学病院では聴力検査室が外来にある。午前中は外来患者が多く、待合室は結構騒がしく耳が辛い。「あーイヤだなあ」と思いながら指で耳を塞いで待合の椅子で待つこと約10分。呼ばれて聴力検査室に入ると、いつもの技師のお兄さんじゃなくて見習いの若い女の子が、「言語聴覚士を目指している学生です。今日は検査を担当しますのでよろしく」と挨拶。「あ、お願いします」と返事して検査用のヘッドフォンをつけてもらったが、どうも器械の扱いに慣れていないようでたどたどしく操作している。「指導者もつけずに大丈夫か?」と思いながら検査が始まった。難聴が治るかどうかひたすら心配している患者にとって聴力検査は滅茶苦茶緊張するものだ。そんな中での不安な検査・・・ところが間もなく外の診察室から子どもの泣き声が聞こえてきた。防音ドアを閉めてあるのにけっこう大きな泣き声が漏れ聞こえてくる。とても純音の小さい音が聴こえる状態ではなくなった。しかし彼女はお構いなしで検査を続けようとする。普通は検査を中止して、外の子どもの診察が終わるのを待つべきだろう。腹立ちを抑えながらヘッドフォンを外して、「無理です。あの泣き声では何も聴こえません。やり直して下さい。」と彼女に訴えた。「あー、そうですか。はい、すみません。」とドアを開けて診察室の様子を窺う彼女。子どもの泣き声はさらに大きく鳴り響く。「誰かちゃんと指導しろよ!」とイライラしながら待つこと約5分。「あのー、今診察が終わったみたいなので、もう1回最初からやりますね。」静かにはなったものの、もうこっちとしては全く気持ちが冷静になれず、神経が集中できない状態で検査を受けなければならなかった。本当にイヤな気分だった。検査が終わって病室で落ち込んでいるところにカミさんが面会に来た。私の様子を見て、「どうしたん?」・・・・上記のいきさつを説明しているうちに再び怒りがこみ上げてきた。夕方になり担当医が病室に来て、聴力検査の結果を説明してくれた。何と、あんな状況だったにも関わらず、聴力はさらに改善していた!1000ヘルツは40dbまで回復している。最悪だった50dbよりも10db良くなっているのだ。さっきまでのイヤな気分が吹っ飛んだ。担当医も私も、「これはいけるのでは?」と大いに期待した。続く・・・
2015.04.30
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右耳は1000ヘルツを中心に聴力が低下していることは前にも書いたが、入院している間に重大なことに気がついた。聴力が低下している周波数帯では周波数が正しく認識されていないのである。病院で行う聴力検査は、125、250、500、1000、2000、4000、8000ヘルツの各周波数の純音を小さい音から聴かせて、聴こえたらスイッチを押すというもので、果たして1000ヘルツが1000ヘルツとして認識されているかどうかという質的な問題については一切わからない。私のiphoneには任意の周波数の純音を発生させるソフトが入っている。入院中ヒマにまかせて周波数を徐々に変えてどのあたりから聴力がおちているかを調べてみた。700ヘルツまでは左右とも同じ大きさで聴こえるが、そこから周波数が高くなるにつれ徐々に右耳では聴こえにくくなる。800ヘルツでは左で聴く倍ぐらいの音量にしないと右では聞こえない。さらに810、820ヘルツと順次上げていくと850ヘルツあたりから右耳ではさらに聴こえにくくなるとともに周波数にズレが出てくることに気がついた。健常な左耳で聴く850ヘルツの純音が右耳では830ヘルツぐらいに下がって聴こえる。また音質も割れたような濁ったような感じになってくる。そして900ヘルツを超えたあたりから逆に右耳で聴く周波数が上がって聴こえるのである。1000ヘルツの純音は右耳では1300ヘルツに聴こえる(これはピアノの高いシの音がミの♭あたりまで上がってしまうことになる)。ただし相当に音量をあげないと聴こえないのだが。このあとはずっと右耳での周波数は上がった状態が続くが、1400、1500ヘルツとなるにつれ徐々に左右差が無くなり、1650ヘルツで左右同じ周波数に聴こえると同時に音量も左右均等になる。つまり突発性難聴は単に聴こえにくくなるのが問題だけでなく、音の性質まで変わってしまうのだ。この問題をネットで調べたところ、diplacusisという言葉がみつかった。http://hearinglosshelp.com/resources/diplacusisthe-strange-world-of-people-with-double-hearing/一般の人向けに平易な表現で書かれているが、内容はかなり詳しい。diplacusisに対する適当な日本語が無いようだが、「二重聴」とでも訳せばいいだろうか。pitch perception shift(周波数認知の変動)ともいう。要するに左右の耳で周波数の認識にズレが起きる状態のことである。突発性難聴に限らず騒音性難聴などであっても、要するに内耳の有毛細胞が壊れてしまうことにより周波数の選択性が狂ってしまい起こる現象らしい。私の場合幸いにして音楽を聴くと左右に周波数のズレは感じられないし、退院後実際のピアノで1000ヘルツあたりに相当する高いシの音を弾くとちゃんと右耳でもシの音に聴こえた。これはおそらく実際の楽器の音は複雑な倍音の総和として音程が認識されているのと、周波数のズレている帯域は聴力が低下しているおかげであまり影響を与えないのだろうと思われる。しかしピアノの1000ヘルツのシの音をよく注意して聴くと、右耳では明らかに音量全体が小さく感じられるのは当然として、「キン」という感じでわずかに1300ヘルツ相当の音が乗っかっていることに気づく。予備知識がなければ気づかない程度で実質上演奏するには問題無いレベルだが。しかし現実に聴力障害のためdiplacusisが顕在化し、左右の耳でピッチが合わないため演奏不可能となり楽器を手放すミュージシャンも少なくないという。しばらくは無理としても、いずれは音楽を再開したいと思っている自分としてはかなり恐い話である。diplacusisについて担当医に尋ねてみると、その存在すら知らなかった。回診の時に講師と思われるやや年配の耳鼻科医と話したときも、「へー、そうですか。そりゃ内耳が病気になってんだから周波数も狂うでしょう。」で終わり。私としては耳鼻科医なら当然知っているし興味も持っているものと思っていただけにかなり失望した。そのへんから治療の糸口はつかめないのだろうか・・・・
2015.04.29
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Day6〜8発症6日目の4月3日(金)からステロイドに加えてデフィブラーゼ開始となった。生理食塩水のボトルに溶解してゆっくりと点滴する。見かけはステロイドの点滴と何ら変わらないが、危険な薬なので点滴速度はゆっくりだ。心の中で「フィブリノゲン下がれー!効いてくれー!」と叫びながら点滴終了を待つ。デフィブラーゼの点滴はステロイドと異なり、血液検査でフィブリノゲンの値を見ながら週に2〜3回量を加減しながら行う。突発性難聴の治療は入院した方がいいといわれるのは、安静が必要なためだと言われている。しかし病室で何もせずに過ごすことに本当に意味があるのだろうか?突発性難聴は耳の調子が悪いが、体がだるいわけでも痛いわけでもない。そんな状態で何をすることもなく病室に居るのはストレス以外のなにものでも無い。むしろ適度に体を動かして血流をよくした方がいいような気がする。「ストレスが悪い」と言いながら、安静を強いてストレスを溜めさせるのはどうも矛盾している。ただ私の場合はデフィブラーゼを使用することになったので、通院では万一ケガなどしたときに急な対応が取れないといけないから入院しないといけないという理由があった。だから自分で納得の上入院したのだが、実質2種類の点滴をする2時間ちょっと以外はただ病室にいるだけなのでやはりストレスは溜まる。そして何よりも「治るかどうかがわからない」という状態で病室で悶々としているのがたまらなくつらい。デフィブラーゼ初回投与終了後の夜、耳鳴りが軽減しているような気がした。ところが実は部屋のエアコンの音が耳鳴りをマスクしていることに気がついた。エアコンを止めれば「ブーン」という耳鳴りがハッキリと聴こえる。「そんな早くから効くはず無いわな」と思いながら就寝。次回のデフィブラーゼは月曜日にフィブリノゲン値を測定した上で追加予定。土日は1日1回のステロイド点滴のみ。見舞いに来てくれている妻と気晴らしに売店にいってみた。売店のような人の多いところではざわつきが右耳に響いて辛い。常に右耳の中が「ワンワン」と鳴っている感じ。レジのおばちゃんの声が聴き取りにくい。特に大きい声の方が割れてしまい聴き取りにくくなるのだ。おそらく普通の人は「難聴なんだから大きい声で話してあげないと」と思うかも知れないが、むしろ大きい音の方が耳に辛くて聴き取れない。聴覚補充現象といわれるものだ。人の多いところはダメだなということで、外に出て病院敷地内の満開の桜を見にいった。「あー、こんな憂鬱な気分で満開の桜を見るなんて想像もせんかったなあ・・・」続く・・・
2015.04.29
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前回の続きの前に、突発性難聴治療の現況を簡単に述べると、ここ20年以上治療法は進歩していない。よく「早期に治療を開始しても治るのは3分の1、改善するが元に戻らないのが3分の1、全く治らないのが3分の1」といわれているが、その状態が20年以上変わっていないのである。おそらくほとんどの病院でステロイドが第一選択として使われているが、本当に有効なのかどうかについても未だに結論が出ていない。(実際私の場合は何の効果も無かった。)だからこそステロイド以外のいろいろな治療法が試みられているわけである。だが耳鼻科医にはどうも「ステロイド信仰」のようなものがあるように感じる。それはいいとしても、ステロイドが効かなかった場合に柔軟に他の治療法を試みるという考えが無く、「ステロイドが効かなかったからあなたは治りません」で終わってしまう医師もいるのは問題だ。自分の土俵だけでしか勝負せずに、患者が治るチャンスを奪ってしまうことになる。そもそも「突発性難聴」という病名自体一つの疾患を表しているのでは無く、原因のわからない急性の内耳障害による難聴の総称である。「原因はストレス」などと平気で書かれていたりするが、それは「原因がわからないので一応そういうことにしておこう」という程度の意味しかない。そもそもまともに社会生活を送っていてストレスの無い人などいるはずもない。おそらく原因はいくつかあって、患者個人個人によって異なるものだろう。だからある人はステロイドが効き、ある人は血管拡張剤が効き、ある人は抗凝固剤が効き、と作用機序の全く異なる薬剤が有効であったり無効であったりするのだろう。話は戻ってデフィブラーゼだが、これは血液中の凝固因子であるフィブリノゲンを減少させて血を固まりにくくする薬剤である。血をサラサラにすることにより末梢循環の血流をスムースにして、内耳の修復を促そうという目的で使用される。突発性難聴に対する効果はステロイドよりも優れているというデータを出している病院もある。ただし、フィブリノゲンを減少させるということはもし治療中にケガなどをしたときに血が止まらなくなる可能性があり、かなり慎重に使う必要がある。突発性難聴は非常に患者のQOLを下げる病気だが、死ぬ病気では無い。死なない病気に対して危険な副作用を有する薬を使うことには確かに耳鼻科医は一抹の不安を覚えるのかもしれない。しかし私も医者のはしくれ、それぐらいの危険は百も承知している。特に私の専門である産科では、常位胎盤早期剥離によってフィブリノゲンが減少し、妊婦が死ぬこともある。その上で担当医にお願いして、担当医も快く「やりましょう」と言ってくれたのである。だからこそ4月2日のうちに入院し、夕方にはデフィブラーゼの点滴が始まるものと待っていたのだ。ところが、耳鼻科の教授が「まずはステロイドの効果を見極めてからにしろ。効果が無いなら来週の月曜日4月6日からデフィブラーゼを使え」と言い出したのだ。担当医がすまなさそうに病室にその旨を告げにきた。「なんでやねん!?なんのために今日入院したんや!前医はステロイドだけではあかんからこそ早めに大学病院に紹介してくれたのに。」2週間のゴールデンタイムを過ぎれば、どんな治療も格段に効果が落ちる。その前にやれることは何でもやっておくべきなのだ。教授はそのことをわかっているのだろうか?「なんでもかんでもやって結局何が効いたのかわからない」というのは学問的な見地から納得しにくいのかもしれないが、ステロイドが効く場合は最初の数日で急速に良くなり、その後は徐々に快方に向かうことが多く、私の場合むしろ悪化しているのだからさらに4日間も貴重な時間を無駄に過ごすのは無意味である。私としてはあまり好きなやり方では無いが、大学の懇意にしている別の医師から口をきいてもらって、教授には内緒で何とか明日4月3日からデフィブラーゼを開始するよう段取りしてもらった。1日遅くなってしまったが、それで妥協せざるを得まい。入院当日はやむなくステロイドの点滴のみで就寝となった。静かな病室では耳鳴りが気になり眠剤無しでは眠れない。続く・・・
2015.04.28
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順番が後先になるが、これが発症翌日の耳鼻科クリニックでの聴力検査(オージオグラム)○が右耳で×が左耳。両側とも4000ヘルツが落ち込んでいるのは昨年末の音響性外傷によるもの、というか40年間ロックバンドをやってきたツケとも言える。ただ4000ヘルツはあまり日常生活の中では重要な音ではないので落ちているという自覚が無い。今回の問題は右の1000ヘルツが45dbまで落ち込んでいることで、この周波数はモロに聞こえにくさとして自覚してしまう。3日間連続して点滴したステロイドが効かないことと、1000ヘルツの聴力障害の重要性を考えて大学病院への紹介となった。Day5 4月2日 大学病院の耳鼻科受診。多くの患者や従業員がいる受付でのざわつきがものすごく右耳に響いて、係の人の説明がなかなか聴き取れない!右耳を指でふさいで何とかしのいで耳鼻科外来までこぎつけた。あらためて自分の耳がかなりおかしなことになってしまったと自覚。この日の検査では1000ヘルツはさらに低下して50db。500ヘルツも落ちている。大学病院まで来た以上、ステロイド以外にどんな選択枝があるのだろうか?私の調べた限りでは、星状神経節ブロック、デフィブラーゼ(血中のフィブリノゲンを下げて血をサラサラにする薬)、高圧酸素療法あたり。ただしデフィブラーゼと星状神経節ブロックの併用はできない。首元の血管から血が止まらなくなる可能性があるからだ。大学の担当医と相談して、入院して安静にしてステロイドを継続しつつデフィブラーゼを併用しようということになった。突発性難聴はとにかく治るチャンスは発症後2週間以内と言われているので、サクサクと方針を決める必要がある。(後で後悔することになるが、この大学病院には高圧酸素治療の設備が無いのである。)とにかく早速同日入院し、今日からデフィブラーゼ開始と思いきや、意外なところから横ヤリが入ってしまった。続く・・・
2015.04.27
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facebookだと匿名性が無く、あまりに深刻な話は書けないのでこのブログで自分の突発性難聴の経過を覚え書きとして書いておこう。昨年11月末のライブの後耳鳴りが止まらなくなり耳鼻科で音響性外傷と診断された。聴力も若干落ちていたが、しばらくバンド練習を止めて徐々に良くなってきていた。耳鳴りは続いていたが、慣れてきて日常生活に支障が出ることもなく、3月に入ってからは自分でも随分調子が良くなったなと思っていた。Day1 突発性難聴発症3月29日 その日も朝から耳鳴りは気にならず調子よかった。しかしその日の夜7時に突然右耳が聞こえにくくなった。「ヒーン」という耳鳴りとともに。翌日近医耳鼻科で突発性難聴と診断された。聴力検査では右耳の1000ヘルツのみが40dbまで落ちている。耳鼻科ドクター曰く、騒音性の難聴ではこのような落ち方はしないという。正真正銘の突発性難聴ということだ。人間の会話域は500~2000ヘルツであり、1000ヘルツはそのど真ん中にあたる最も大事な周波数なのである。自覚的には人の声は聞こえているが、左耳を塞いでみると男の人の声が聴き取りにくい。音が響いてワンワンしている。耳詰まり感がつらい。そして比較的低音の「ブーン」という感じの耳鳴りが時折聴こえる。まずは通院で仕事の合間にステロイド(プレドニン60mg)点滴開始。翌日、翌々日と聴力検査を行うが早期治療開始にもかかわらず効果が出ていない。耳鼻科ドクターの顔つきが険しくなった。「このままステロイドだけを続けても良くなりそうにないので大学病院に紹介しましょう。入院した方がいいと思います。」私はこの時点で、「ひょっとしたらこれはもう治らないかもしれないな」と直感した。耳を大事にしてきたのになぜ? 理不尽を感じざるを得なかった。続く・・・
2015.04.26
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集団的自衛権の論議がどうもしっくり来ない。賛成派の意見も反対派の意見もなにか違うような気がする。この違和感は結局、「自分の国をどうやって自分たちで守るのか?」という肝心の所が素っ飛ばされていることからくるものだろう。賛成派・・・念仏のような抽象的な文言を弄しているが、つまりはアメリカに守ってもらうためには日本もいざというときにはアメリカの軍事行動に手を貸しまっせということだろう。しかしアメリカに手を貸すための法整備を考えるよりも、他国の手を借りないで自分たちを守ることを考える方が先ではないか?反対派・・・ただ単に反対している連中を見てると、いざというときにはアメリカに守ってもらうという前提は崩していないように思える。集団的自衛権反対というなら、自分たちで国を守るにはどうするということがセットで出てこないとおかしいだろう。
2014.07.03
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自分の思いとは裏腹に帝王切開で出産せざるを得なかった女性は、そのことを引け目に感じたり、周りから心ない言葉をかけられたりして傷つくことが多く、充分な心のケアが必要、というのがこの記事の主旨のようだ。もちろんこの記事に書いてあることを否定するつもりはない。しかし・・・今一度事実を見つめてほしい。毎年アフリカから日本の医療を視察にくる医師達と接しているが、彼らの国では適切な医療を受けられずに亡くなっていく赤ちゃんや妊婦さんは日本の何百倍という頻度で存在する。誇張でなく何百倍というオーダーである。日本はありがたいことに妊婦のケアを行う医療施設は数多くあり、医療の手が全く届かない状態で妊娠・出産を体験する女性はほとんどいない。そんな環境の中で、ある場合は危険を回避するために帝王切開で出産し、健康な児を得、また母体の健康も保たれているのである。なんの医療的補助を受けることもなく亡くなっていった赤ちゃんや母親のことを思えば、帝王切開の何を引け目に感じることがあろうか。まわりが多少無神経なことを言おうが放っておけばいいではないか。健康な子どもと自分がいるということ何よりも貴重なことと感じてほしい・・・というのが私の率直な思い。いろいろと恐い目にあった、自分の予想していたこと全く違う状況になってしまった、というときに近年ではPTSDといった病名が出てきて「心のケア」が叫ばれる時代だ。しかし苦境を乗り切って無事でいる場合には何よりもその幸福を自覚するというのが大事なのではないだろうか。そうすれば自ずとPTSDなどといわれて周りから腫れものに触るように扱われなくても、自分のネガティブな経験をプラスに変えていける人はたくさんいると思う。
2014.06.03
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今、阿倍政権が集団的自衛権を憲法解釈で実行しようとしている。私は決して左寄りの人間ではないが、安倍総理がやろうとしていることは何ともしっくり来ない。このモヤモヤした感じはどころから来るのだろう?集団的自衛権を、改憲せずに憲法解釈の変更でゴリ押しするというのはかなり無理がある。憲法を素直に読めば、日本が国外で武力行使を行うのはどう見ても無理がある。というかそれを解釈だけで認めてしまえば、憲法そのものが骨抜きになってしまう。ザルのような憲法に基づく国など果たして国際的に信用されるのだろうか? 安倍総理が例示している具体例が、集団的自衛権の行使に相当するようなものか?ということもひっかかる。例えば紛争国から脱出する邦人を輸送している米艦隊が武力攻撃を受けたときに、日本が武力によって反撃するというもの。そんな事態を想定するぐらいなら、邦人の輸送を直接自衛隊の艦隊が行えるような法整備を優先すべきだろう。順番がちがうのでは? わざわざ米艦隊に輸送してもらって、何かあったら自衛隊が出てくるという状況が不自然すぎる。また「外国の武装集団が日本の離島を占拠するなど、警察や海上保安庁が対応しきれない可能性に備え、自衛隊の迅速な出動を可能にすること」というのも、日本の領土に外国の武装集団が侵入しているわけだから、これは憲法が定める範囲の自衛のための行動だろう。ことさら集団的自衛権という理由が無い。敢えてハードルの低いところから議論を初めて、最終的に米国と一心同体の軍事行動が取れるというところまで行きたいのだろうか?自国を守るというのが基本理念であれば、日米同盟も戦略の一つとしてはいいだろうが、まず自分たちの力で日本を守るための軍事力の保持とそれを使用する際の厳密な基準を明確にすべきだろう。やはりそのためには憲法改正が必要だと思うし、そこを正面から議論せずに、付け焼き刃のような解釈でズルズルと集団的自衛権に行くのはさらなる米国への属国化を促すだけではないだろうか?もし米国が誤った行動に出たときに、「それには賛成しかねる」とハッキリ言える国であってほしい。それが言えないのに軍隊を外国に派遣できる国であってほしくはない。
2014.06.01
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産科医等確保支援事業というのがある。昨日の産婦人科医の会合で話題となった。産科医不足が叫ばれて久しいが、それを受けて厚労省が数年前に起ち上げた事業である。お産の担い手の待遇をよくする目的ということだ。「もしあなたの病院が産婦人科勤務医を引き留めておきたいのなら、出産に関わった医師にインセンティブとして分娩1件につき1万円を支給しなさい。そのうち1/3は国が補助します。残り2/3は自治体が各々の予算に応じて面倒みて下さい」というものである。実質、自治体からの補助は予算の厳しいところではゼロだそうだ。ということは、1万円のうち7千円近くは病院が自腹を切ることになる。福井県の場合は自治体が4千円程度の補助で、病院の負担は3千円程度らしい。主旨はわかるが、どうもねえ・・・ 例えば月に20件出産に立ち会えば、20万円の収入増だが、その程度で産科を離れることを思いとどまるとは思えない。というかそういう問題じゃないんだよな。昨日の会合では、福井県の産婦人科施設の中でこの制度を利用しているところは1施設だけであった。その1施設もこの制度の利用を早くやめたいと言っている。なぜ利用されないかというと、一つはこの制度自体が全く周知されていなくて、病院も勤務医もほとんど知らない(私も知らなかった)こと、もう一つは手続きがあまりに煩雑過ぎて、忙しい診療の中ではとても事務処理に手が回らず、わずな補助のために県の職員が頻回に監査に来たり痛くもない腹を探られたりするので病院としてはやってられないからもうやめた、あるいは今後やめたいということだった。まあ、役人が考えることはこの程度なんだろうと思う。おそらく事務的手続きに要する人件費の方がこのわずかばかりの歩合給の補助よりも高くついていることが予想できる。そんな大して役に立たない制度を作っている一方で、今春の帝王切開手術料金の9.1%減!一体何を考えてるんだろうね。こんなことされたら、医師に歩合給を払うどころか病院の存続自体が危うくなる。おそらく今回の手術料減額に関わった役人は、同じ厚労省が「産科医等確保支援事業」を行っていることを全く知らないのだろう。さすが縦割り組織というべきか・・・大して甘くないアメを押しつけられながら首を締められているようなものだ。
2014.05.14
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競馬払戻金課税で判決私自身はギャンブルをやらないが・・・28億7000万円の馬券を買って、30億1000万円の払戻金。どう考えても利益というのはこの差額の1億4千万円だけに決まってる。検察側の主張は、当たり馬券の購入費のみを経費と見なすという無茶苦茶なもので、どこに当たり馬券だけを買えるヤツがおるっちゅうねん!?外れ馬券を経費と見なさず、払戻金30億1000万円から当たり馬券の購入費のみを差し引いた金額をまるまる利益として5億円7千万円の税金を課すなんてアホなことが通用するはずがない。儲けた金額の4倍も税金を払らえなんて、詐欺にも等しい。当然と言えば当然だが、高裁では、外れ馬券も経費と見なされて、課税対象は実質上のもうけの部分だけに限定されるという判決となった。この判決でおそらく被告は納得することになるのだろうけど、しかしこの判決でさえ理不尽に思える。日本の競馬のテラ銭は25%と諸外国より高率で、そのうち15%がJRAの取り分、10%は国の取り分となっている。つまり馬券を購入すること自体でその10%を税金として納めているのである。この男性は29億7000万円もの馬券を購入しているから、この時点で2億9千700万円もの税金を納めていることになる。その上で儲けにさらに課税しようというのだから、これはどう考えても二重課税だろう。どこまでむしり取ろうと言うのだろうか。
2014.05.11
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渡辺淳一さんが亡くなられた。この人、昔は医療にかかわる小説を数多く執筆されていたが、60才を超えたあたりから情愛を描いたものばかりになってきて、それでメジャーになったようなところがある。人間歳をとるにつれ、よりピュアなものに傾倒するということかな。医療ものでは、医師として人間の生死を見つめてきた冷静な目で、生命の価値観や医療の限界などをテーマにした作品が多く、私も学生時代によく読んだものだ。命の根源までピュアに掘り下げて行き、最終的に「性愛」というテーマにたどり着かれたのかと思う。私にとっていまだにこの人のベスト作品は「神々の夕映え」だけど。新聞記事によると、前立腺を患っておられたらしい。自宅で息を引き取られたとのことだ。渡辺氏の作品を読めば当然のことだと思うが、病院で徒に意味のない延命治療を受けることを良しとされなかったのだろう。ご冥福をお祈りします。
2014.05.06
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まあ、今さらグチる気は無いですが、サービス業にはGWは関係ないですなー5月3日と6日だけが休みの予定だったけど、結局今日は2件の臨時帝王切開に呼ばれてしまいました。それで手術を行いながら思っていたのですが、この春から帝王切開の手術料が221600円から20200円に引き下げられています。医療の値段は国によって一義的に決められてしまうので、我々にはどうすることもできません。休日に臨時で帝王切開するには、医師2人、看護師2〜3人を招集する必要があります。さらには当然手術器具、シーツ類、等々多くの材料費がかかります。これらは4月からの消費税upで全て値上がりしているのです。にもかかわらず9.1%の料金引き下げを強いられているというのは本当におかしな話しです。これによって分娩の取り扱いをやめる医院や病院がまた増えるでしょう。あー、ほんま我々の苦労も軽く見られたもんや(`ヘ´)
2014.05.03
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