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世界の未来は日本次第 長谷川慶太郎 渡辺哲也 2015年「BtoB」、そして「BtoG」 秀でている日本の技の数々と現実に起きている変化を知ることができた。中韓の現実の理解の仕方、破滅的な未来予想がわかった。一方、価格形成の力を保持するロンドンの実力、コンピュータを駆使して極限まで効率化している米国の底力など、あなどれない世界の実力も面白い。 日本にとっては、技で競り勝って、世界に貢献していくのが、基本的な姿であるようだ。砂漠化防止技術、光ファイバー製造技術、水道や発電などのインフラ、鉄道のレール、工作用ロボット、原動機、超耐熱材、レントゲン装置、ライフル照準器、原子炉格納容器、創薬など、世界でダントツの技術を発揮して席捲している製品が紹介されている。 インフラ輸出については、「世界を動かす技術思想」木村英紀では、新興国の成長程には日本の輸出は伸びておらず、ライフサイクルと一体となったシステムとしてのインフラ提供力が弱いのではないかと指摘されていたが、本書では、2012年に3兆円の輸出が今や9兆円にまで伸びていて、日本からの資金提供と組み合わせた輸出がカギとなっていると。扱うメガバンクではプラントのわかる工学系学生を採用するまでになっていると評価している。 また、原子炉の格納容器を世界で作成できるのは、680億円もする鋼鉄の15000トン超大型プレス機を持っている日本の三工場に限られていて、他国は持っていても使いこなせないと本書は言う。米もソ連も敗戦時の日本やドイツから持って行ったが使えずスクラップにしたのがオチであったと。 「ふしぎなイギリス」笠原敏彦ては、イギリスは原発を8基新設する方針で、2013年ヒンクリーポイントの2基は2兆8800億円でフランスに発注され、フランスのパートナー企業は中国の二つの国有企業と言う。 本書は、日本の重化学工業の実力は、一朝一夕にできる技ではなくて、簡単にはおいつけない水準にあると言う。アメリカの大陸横断鉄道のレールは老朽化していて脱線の少ないのぞみ級の頑丈なレールは、日本の二か所の製鉄所でしか作れないと言う。 日本は、技を生かしたダントツの製品を価格支配して世界に供給できるので、未来は明るいそうだ。
Jun 30, 2015
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コンテンツの秘密 川上量生 2015年 ぼくがジブリで考えたこと 大勢のアニメータ-等の共同表現で映画は完成されるらしいが、表現者の力量に合わせてカットを変えてしまう進め方がとられているのに少し驚いた。出来にこだわり、時間と人材を浪費するようなことはせず、技量にあった仕事を与えて表現させて、コンテンツを組み上げていくらしい。 えもいわれぬ感性が支配している制作現場かとばかり思っていたが、合理的な戦略的な世界でもあるようだ。 盛り込む情報量の加減、精密とデフォルメのメリハリ、ありえぬ構図のリアル感、らしい動きの創作、謎の用意、パターンのずらし、予測の裏、ストーリーより表現の優先など数々の「技」が披露され、計算しつくされた「謎」の構成力におどろきました。 やっぱり、えもいわれぬ技の世界だ。
Jun 29, 2015
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日本インターネット書紀 鈴木幸一 2015年 インターネット技術と同志の技術者に賭けて、日本初、インターネットサービスプロバイダーの起業物語で心震えるものでした。安いISPを享受してばかりで、どうせ巨大資本のなせる技かと思い込んでましたが、技術者たちの挑戦と実戦が繰り広げられたおかげであったとは、とても有難く、頭が下がる思いがしました。技術も志も遅れていないベンチャー気質が日本にも立派にあったことを知りました。 信念の下に一か八かの度胸一発、同志による起業。開業までの苦難、国策のOSIとの競合、不合理な事業届出受理遅滞、説明行脚と資金調達、技術優先経営、営業なしの開業、待ち望んでいた先客の万来、技術の公開、競業社の立ち上げ支援、突貫の全国展開、日本をハブにすべくアジア行脚、NYNASDAQ上場、インターネットの町工場流人材育成、「濡れ雑巾」での技術育成、特許をとらぬ公益観などなど、目まぐるしい展開に息をのみました。 数々の挑戦の後に業態転換し、技術力を散逸させない生き残りは、とても高次元の経営であると感心させられます。「NTTに挑み、NTTに助けられた」との述懐に、技術の価値を社会にとっての価値として正しく理解し、実用化に賭ける見識が日本には限られたところにしかないという現実を表しているようです。 巨万を築きえたのに囲い込むこともなく、インターネットの技術基盤とともに事業者の競争環境をも日本に築き上げた志と情熱はとても尊く、清々しい著作でした。 いわば、ピーター・ティールのゼロ・トゥ・ワンを地でいった話で、加えて、技術に賭けたみごとな志士伝と思います。
Jun 26, 2015
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日本木造遺産 藤森昭信 藤塚光政 腰原幹雄 2014年 千年の建築を旅する 23の木造建築の写真と解説はいずれもとても面白い。由来と凝らされた技巧、込められた主題に感心するばかり。文化財の良さを知るとはこのように楽しいものであることがよくわかった。こうした語り部は有難い。 建築がこれほど迫ってくるとは、つながれた技がなすものと思う。建物自体が、技と渾身の力がこめられた巨大な美術品にも見えてきた。建物の存在が、空間美をつくりだしてもいるようだ。 木造遺産は、「遺跡でなく、弛まぬ補修と維持のおかげで実物を体験できる。連綿と生き続ける現代建築で、後世に引き継ぐ未来建築でもある。」との巻末の説明の意味がよくわかった。 是非、なんとか先達の技のかずかずを体験してみたいと思う。
Jun 25, 2015
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世界を動かす技術思考 木村英紀 2015年 要素からシステムへ 半導体露光装置の日本メーカーのシェアが、2000年代以降低下し続け、オランダのメーカーに席捲されてしまったそうだ。1990年代80%であったものが、20%だそうだ。日本製品が要素の部品として活用され、水平分業で調達して組み上げるシステムでオランダの企業一社に抜かれたそうだ。 社会インフラの先進技術をパッケージ化して輸出しようと10年来とりくんでいるが、新興国の市場の成長に見合うだけの成功はしていないのが、日本のインフラ輸出の現実で、技術や単体の装置は優秀でもシステム化する実力が不足しているのではないかと提起されています。 技や高性能の単体製品だけで勝負するのではなく、ライフサイクル全体を通した管理・運営ができるようにシステム化した商品サービスを提供するビジネスが必要なそうです。 次世代ロボットは、米国では手術ロボットとして医療器具としてシステム化されて活用が始まっているのに、日本の次世代ロボットは踊ったり走ったりさせて趣味に走って喜んだだけで、システム化がなされず、日本の要素技術をシステム化した海外の次世代ロボットに敗北したそうです。 欧米は、システム科学技術(IT技術ではないそうです)が、石油、水、資源探査、航空、シンクタンクなどの産業で中核技術として活用されて、モデリングや最適化技術を駆使する技術者が活躍しているそうです。このシステム科学技術力が日本は欠けているそうです。 「ものづくり」に固執するのではなく、目的と機能要素を適切に結び付ける柔軟な発想力、システム技術力に日本の未来がかかっているそうです。 布施哲の「米軍と人民解放軍」では、航空自衛隊は、空戦技術にこだわり、腕は相当よいのだが、戦略・戦術運用がシステム化されず、弱いと読んだ気がする。F15戦闘機はアナログ機で、米や同盟国の情報ネットワーク化された演習にも参加できなくて別空域で飛んでいた。後方・補給ロジスティクスが弱くて情報戦略は弱いらしい。 70年以上前から、着眼も着手も小局で、技に溺れてしまう弱点は、変わっていないかのようです。
Jun 23, 2015
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はじめての福島学 開沼博 2015年 「常磐線中心主義」では、著者の出身のいわきの事情がとてもよくわかりました。本書では、震災後5年目に入った福島の事情がよくわかりました。 新聞、テレビ、雑誌、ネットの太宗は、発信者の都合で誘導された事実の切り出しにより、関連する脈絡、事実が切り捨てられ、受け手は意味を誤認したままになり、多くの人にとって福島の実態はわからないままになっていることがよくわかりました。 思考狭窄・商業功名"角度"報道、非科学扇動言動・売名評論、復興予算目当ての収奪的勢力が、道を険しくしていることもよくわかりました。前近代的な人の弱みや混乱に乗じての騙りが全国に誤認を撒き散らしているかのような印象です。 そうした中で、まどわされずに着々と助け合い、時にそっとしておきながら、考え抜いて前進させる人々がとても立派に感じます。戦っているのは、震災だけでなく、日本全体が抱えている少子高齢化、産業・地域の空洞化などの凋落傾向であるとの事実の切り分けもよくわかりました。 福島を知るための25の数字は、いずれも予想外で、実態とかけ離れた事実誤認が蔓延している、わかっていないのは自分だけではなかろうと心配になります。やはり危うい情報環境に置かれているようです。 言論報道空間にヒステリックな反応を見ないで済むとよいですが。
Jun 22, 2015
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田園発港行き自転車 宮本輝 2015年 北陸資本主義で豊かな富山県の様子を知り、行ってみたくなりましたが、本書を読んで益々合点がいきました。 大切にされている郷土と自然の美しさと厳しさが、生活している人びとの心と精神の清廉さを際立たせるようでとても気持ちの良い話でした。 親族、同僚、同郷人をいとおしみ、気遣いあう人々が自然に描かれていて、厳しくも美しく清らかな田園生活が人をはぐくむのではないかと言っているように思えました。 心洗われる再生の物語だった。
Jun 17, 2015
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人生をいじくり回してはいけない 水木しげる 2010年 境地に達するには、それなりの経験と天分が必要らしい。睡眠と食事をゆっくりとって遅刻常習の動じない幼少生活、子供の時に港で時々みかけた花街に売られてきた女性が息絶えて水からあげられた姿、殴られてばかりの軍隊生活、襲撃や爆撃にあっても呑気さに救われた命、殴られても殴られても呑気に過ごす態度に根負けする上官、現地人に大事にされるまでになる心の交流など、生半可の境遇では到達できない境地に思う。 実生活では、アパートを買うなど経済観念もあり、漫画家としての激務に努力したとの自負もあるそうだ。さらに、努力は人を裏切ることも知っておく事と、気負いはもたれないようだ。 「幸せとはない方が良い言葉で、あるから求める。叫んで手に入るものではなく、好きなことに情熱を傾けてる間に幸せの空気が漂ってくる」そうだ。 凡人にはなかなか辛抱できそうにない。いじくり回してしまうのがオチのようだ。 暗闇でも、達観できぬマナコにはみえるはずもない。
Jun 15, 2015
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さっさと不況を終わらせろ ポール・クルーグマン 2012年End this depression now! 2012年に書かれた本で、チャールズ・ファーガソンの「強欲の帝国」が事件簿なら、本書は、ケインズ経済学の学理による原因メカニズム解明とその処方箋だった。両書ともに惨状の責任は、歴代政権による金融規制緩和、銀行、証券、格付け会社等による屑証券詐欺にあるとすることは同じだった。 危機の発生メカニズム、不況の長期化理由、対策の機能しない理由がとてもわかり易い。一流の経済学者がこんなにわかり易く大衆向けの本を書いてくれる文化が羨ましい。退官して米国にいってしまう伊藤隆敏の日本財政「最後の選択」も日本の財政状態の評価と将来の課税強化の必要性検証がとてもわかり易かった。先端を走る経済学者が書くわかり易い啓蒙書は有難い。眉唾読書の中で光明を見るようだった。 日本の経済運営が、この内容そのものなので、政権はやりきってくれるのか期待と不安があるが、原理が多少わかって明るい気もしてきた。あまりにそのままなので、日本が実験に入ったと言われる理由がよく分った。
Jun 4, 2015
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日本海海戦 悲劇への航海 コンスタンチン・プレシャコフ バルチック艦隊の最期 The Tsar's Last Armada The Epic Vayage to the Battle of Tsushima 世界の五大海戦のひとつだそうだ。1905年は、英国ネルソン提督がスペイン・フランス連合艦隊に勝利したトラファルガー海戦から100年後にあたる。途中、東郷連合艦隊司令長官のことを日本のネルソンは、との言い回しもあり、茶化したのか、そう思っているのか、果たしてどのような心情で母国の敗戦史を書いているのかいささか気になる。 これまで、日本海海戦は、侍仕込の明治の開化軍人が武人として見事に近代戦を合理的に制した海戦で、勝因は、情報蒐集、客観的分析、合理的作戦・戦術、艦隊運動の習熟訓練、兵員の均質な実戦技能習得、最新外国戦艦の調達、新火薬・砲弾の開発成功などでロシアを上回ったからと思っていたが、本書では、ロシア軍は内部腐敗した官僚軍で、実践経験のない士官と鍛錬していない兵員で急造された艦隊で、軍令が徹底できない相手で司令官は負けると思ってやってきたとのことで、弱い相手の瓦解であったように思える。著者は、日本の資料は調査できていないと書いており、理解に偏った可能性があるとした著述。 司馬遼太郎くらいは読まなかったのだろうか。けなげな国の荒廃の瀬戸際にたった勝利と思うのだが。 帝政ロシアでは、司令官が皇帝に「負ける」と冷静に説明しても、大津事件がトラウマの皇帝と、権力に取りすがる貴族将官・軍事官僚は合理的意見をいれず、繰り出される盲断に誰も抗しなかったようだ。負け戦に大勢の人びとがかりだされていく悲劇が本書で描かれている。 追い上げる勢いのある国と押さえつける護りの国の、精神の健康状態の違いが如実に現れている。負け戦に人々を駆り出す国は、やがて転覆され、滅びる。
Jun 2, 2015
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北陸資本主義 清丸惠三郎 2015年 法政大学の2011年の都道府県幸福度ランキングで、ベストスリーが福井、富山、石川で新潟も10位だそうだ。小中学校の偏差値の2014年ベストフォーは、秋田、福井、石川、富山だそうだ。 明治以降の殖産興業官営工場、軍駐屯地、国立大学、鉄路などの冷遇の歴史も、21世紀になっての新幹線開通で裏日本差別の解消の兆しのようです。 自然環境、住環境、教育環境、教員の質、地域社会性、郷土文化、世帯所得、正規雇用水準、地場資本の企業活動など多岐に解説されてまして、なぜ幸福なのか、よく分りました。 自らが置かれた、土地と水と海を活かして地の産業振興に自らが励み、住みやすい郷土を自らでつくりあげてきたようです。 励む気質があっての幸福であるようです。
Jun 1, 2015
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