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2006年07月21日
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テーマ: 本日の1冊(3683)
七夕の日

憲法問題研究会は、1957年政府が憲法問題調査会を立ち上げたことに危機感を抱いた研究者たちが、1958年につくった研究会である。1950年、朝鮮戦争、保安隊の発足、1952年警察予備隊を経て1954年の自衛隊が設立した。その中で、憲法解釈も変わっていく。「一切の戦力の不保持、自衛戦争を含むあらゆる戦争の放棄」から「自衛権は否認していない」という解釈へ。その中で自民党に一挙に9条を変えようという改憲勢力が相当の力で台頭してくる。この岩波新書がこの時期、立て続けに出された背景にはそのようなことがあったのであろう。

「憲法と私たち」の中に 竹内好 (魯迅研究者)が1962年憲法記念日に講演した 「自衛と平和」 という文章が残っている。以下出来るだけ要点だけ紹介していくが、それでも長い文章になる。要旨は述べたくない。原文を出来るだけ紹介したい。時代の空気を吸いながら、是非「現代の問題」を考えて欲しいと願っているからだ。出来ることなら古本屋で探して、この原文全部を読んでもらいたい。本当は一挙に文章を載せたかったのであるが、字数制限に引っかかってしまった。前編後編に分かれたことを許してもらいたい。

9条に自衛隊を明記すべきだ、という意見にたいして竹内はこのように言っている。

「このような改憲論が、ナンセンスだと私は思わない。それなりに論理の筋は通っている。自衛隊の現状は、どう見ても「戦力なき軍隊」という言い逃れが自他共に通用しない段階まで来てしまった。(この時自衛隊は15万人。05年現在現役官だけで24万人。くま注)既成事実と成文憲法の間には、どんなに解釈の幅を広げても埋らないほどのズレが生じている。既成事実にあわせるために憲法のほうを改正しようという主張は、ある意味では、憲法を改正しないでズルズルベッタリに既成事実を作ってしまった改憲消極論者より誠実だとさえいえよう。」 現代の改憲論者よ、かの愛国者、竹内好から褒められちゃったよ。

改憲と護憲の争いは、政治問題以上だ、政党の対立以上の問題だと竹内はいう。「日本国民の存在そのものに関わる大問題である。」といい、見せかけの対立で眼がくらんではいけない、と竹内は言う。
「問題の核心とは、何か。日本国民が自己の存立の基礎として自主的に選択した平和主義が、危殆に瀕し、ほとんど失われかけているということだ。憲法を改正するとしないとにかかわらず、げんに失われかけているということだ。この問題の大きさに比べたら、改憲の是非は二義的なものになる。」
我々は軍事力の分析の話をしているのではない。政治の話をしているのではない。「どうしたら、二度と戦争をしないですむのか」「平和」の話をしてるのである。と竹内は言っている。私はその言葉を断固支持する。

「個人と等しく国にも自衛権がある。この命題はほとんど自明であろう。しかし、自衛のためにとる手段は多様でありうる。武装するのが自衛に役立つか、これすら問題である。かりに自衛のために武装が不可欠だとして、そこではじめて武装の程度が問題になる。少なくとも論理的にはそうである。そして生活者にとっては何度でも原理に立ち返ることが大切なのだ。ところが、現状はそうなっていない。武装の可否の段階を飛び越えて、武装の程度が問題にされている。自衛隊は合憲か違憲かの議論がそうだ。わたしは、どちらも成立すると思う。そしてその論争は決着がつくまいと思う。理屈はなんとでもなるものだ。」 。「問題は、自衛隊が合憲か違法かにあるのではなく、そもそも自衛隊の存在が自衛に役立っているか、言い換えると、平和に役立っているか否かにある。」「成立過程もそうだが、今日でも自衛隊は、事実としてアメリカ極東軍の一部である。そしてアメリカの極東軍は、中国を主要な仮想敵国としており、その両者の関係は緊迫している。その最大の軍事基地は、日本の領土である沖縄にある。もしアメリカが中国に向って戦火を開けば、自衛隊は自動的に中国侵攻作戦の一翼を担うことになるだろう。」 自衛隊法や、安保の憲法制限規定や協議規定はなんとでも言い逃れが出来る、と竹内は言う。自衛隊の防御的な性格はアメリカの「後方任務分担」としてはぴったりであるからだ 。「憲法によってチェックされているのは、海外派兵ぐらいではないだろうか。それすら将来はどうなるか分からない。」 有事法制が成立し、「海外派遣」が実現しているいま、竹内の警告の鋭さに驚かずにはいられない。
続く






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最終更新日  2006年07月21日 22時08分32秒 コメント(2) | コメントを書く


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