再出発日記

再出発日記

PR

フリーページ

カレンダー

2007年04月17日
XML
カテゴリ: 邦画(07)
ベテランと新鋭監督の豪華共演。「こんな夢を見た」という一言から始まる夢のオムニバスというアイディアは黒澤明の発明かとずーと思っていた。実は今から100年前に文豪夏目漱石先生がすらりと書いていたのだ。しかもこの言葉にほとんど拘っていない。

監督 : 実相寺昭雄 、 市川崑 、 清水崇 、 清水厚 、 豊島圭介 、 松尾スズキ 、 天野喜孝 、 河原真明 、 山下敦弘 、 西川美和 、 山口雄大
出演 : 小泉今日子 、 うじきつよし 、 香椎由宇

この映画、し かし残念なことに見るべき絵は4夜のみであった、というのが私の評価。とくに「リンダ、リンダ、リンダ」の山下監督に至ってはまったくの楽屋「落ち」であって、あれはやっちゃあいけないでしょ。清水祟監督は原作をうまいこと活かしながら、得意のホラーを披露する。夜中に自分の赤ちゃんを負ぶって散歩に出ると、いつの間にか赤ちゃんの目は無くなっていて、しかもすべて悟ったように喋り出す、というもの。もしかしたら、いつもより怖かったかもしれない。とはいっても、原作のほうがもっと怖いのだけどね。松尾スズキ監督の「運慶」は傑作だった。まさかあの章をあそこまでヒップホップに変えてしまうとは。彼の作品「恋の門」を見損なっているのが悔やまれる。 「ゆれる」 の西川美和監督の担当したのは第9夜。原作の江戸末期を太平洋戦争の時代に移し変えてみる。彼女らしく、セリフがある場面よりは、ない場面のほうが雄弁にテーマを語る。オーソドックスだけど、どうどうとした心理劇であった。最終話は山口雄大の作品。この監督まったく知らなかったのだけど、本上まなみが痛々しいほどの体当たり演技をしていて、(いや、本当はものすごく楽しんでいるのかもしれないが)ぶっ飛んだ。いや、それだけじゃなくて、笑いの中に非常に怖い部分があって、凄い作品になっている。冒頭の実相寺昭雄監督は最後の最後まで映像美の監督であった。合掌。

今回映画に先立ち、原作を読んでみた。古本屋で一冊100円の緑の表紙の1970年発行旺文社文庫を見つけたからである。小田切進がなんと20Pにもわたる詳しい解説を書いていて、さすがあの頃「中学生のための文庫全集」だっただけある。(しかも注が全頁に渡って付けられている。)そして、その中のたった34Pに満たないこの短篇を読む。そのあまりにもの「シュール」さに度肝を抜かれた。「私のこの作品は100年たたないと理解されないだろう」と漱石は言ったという。至言である。さて、100年後に映画は作られた。残念ながら、夏目先生の文の力のほうがまだまだ勝っている。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2007年04月17日 22時45分52秒
コメント(6) | コメントを書く


■コメント

お名前
タイトル
メッセージ

利用規約 に同意してコメントを
※コメントに関するよくある質問は、 こちら をご確認ください。


Re:「ユメ十夜」原作と読み比べ(04/17)  
薔薇豪城  さん
オムニバス映画って短くて好きなんですが、いいのといまいちとあったんですね。こちらの映画館では、夏目漱石の1000円を持っていくと1000円で見られると書いてあったので、探したんですがどこにもなくて、結局終わってしまったようです。残念! (2007年04月17日 22時54分52秒)

Re[1]:「ユメ十夜」原作と読み比べ(04/17)  
KUMA0504  さん
薔薇豪城さん
いま夏目漱石の1000円というのはほとんどの人が持っていないはず。宣伝としてはちょっと失敗でしょうね。
いろんな人の感想を見ていると、私にはいまいちだった作品を好きな人がたくさんいました。このあたりがオムニバスの面白いところですね。 (2007年04月18日 17時38分52秒)

TBありがとうございました  
シャーロット さん
こんばんは。こちらからのTBは反映されないようです。コメントのみで失礼します。
ユメという題材ですから自由な発想と表現で監督達の個性を見ることが出来ました。
自分の好みは第7夜です。
http://blog.goo.ne.jp/charlotte26/ (2007年04月20日 20時32分39秒)

Re:TBありがとうございました(04/17)  
KUMA0504  さん
シャーロットさん
「第7夜」のアニメが一番だったんですね。確かに幻想的で、ユメらしい夢でしたね。
私はしいて言えばやはり「運慶」かなあ。 (2007年04月22日 08時35分11秒)

Re:「ユメ十夜」原作と読み比べ(04/17)  
ききみみや  さん
TBありがとうございました。
好きな俳優さんをまとめて観られて
私にとっては楽しい映画でした。

一緒に行った妹は山本耕史のファンでしたし。
福袋みたいな映画なので、買った人によって
お得なのか、損したのかが分かれるかもしれませんね。私もTBいただいていきますね(^o^) (2007年04月24日 23時01分15秒)

Re[1]:「ユメ十夜」原作と読み比べ(04/17)  
KUMA0504  さん
ききみみやさん
>TBありがとうございました。
>好きな俳優さんをまとめて観られて
>私にとっては楽しい映画でした。

香椎由宇が最初潜水艦擬似SF映画に出たときには大丈夫かなあ、この子、と思っていましたが、「リンダ、リンダ、リンダ」で実力を発揮し、この映画ではまた違う一面を見せました。楽しみな俳優になってきました。


>一緒に行った妹は山本耕史のファンでしたし。
>福袋みたいな映画なので、買った人によって
>お得なのか、損したのかが分かれるかもしれませんね。私もTBいただいていきますね(^o^)
-----
オムニバスの面白いところではありますね。
(2007年04月25日 00時00分54秒)

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x

キーワードサーチ

▼キーワード検索

コメント新着

永田誠@ Re:アーカイブス加藤周一の映像 1(02/13) いまはデイリーモーションに移りました。 …
韓国好き@ Re:幽霊が見えたら教えてください 韓旅9-2 ソウル(11/14) 死体置き場にライトを当てたら声が聞こえ…
韓国好き@ Re:幽霊が見えたら教えてください 韓旅9-2 ソウル(11/14) 死体置き場にライトを当てたら声が聞こえ…
生まれる前@ Re:バージンブルース(11/04) いい風景です。 万引きで逃げ回るなんて…
aki@ Re:書評「図書館の魔女(4)」(02/26) 日本有事と急がれる改憲、大変恐縮とは存…
北村隆志@ Re:書評 加藤周一の「雑種文化」(01/18) 初めまして。加藤周一HPのリンクからお邪…
ななし@ Re:「消されたマンガ」表現の自由とは(04/30) 2012年に発表された『未病』は?
ポンボ @ Re:書評「図書館の魔女(4)」(02/26) お元気ですか? 心配致しております。 お…
むちゃばあ@ Re:そのとき 小森香子詩選集(08/11) はじめまして むちゃばあと申します 昨日…
KUMA0504 @ Re[1]:書評「どっちがどっち まぎらわしい生きものたち」(02/26) はんらさんへ 今気がつきました。ごめんな…

バックナンバー

・2024年06月
・2024年05月
・2024年04月
・2024年03月
・2024年02月
・2024年01月
・2023年12月
・2023年11月

© Rakuten Group, Inc.
Design a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: