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2007年06月22日
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と、思うよりも
大山の影立ち上がる謙作の迎えた
朝日を見たい
『暗夜行路』の末の夜明けを見たい


ってなことを書いたからといって、私が長編『暗夜行路』を読んでいるとは限らない。いや、実は読んでいる。しかし、ほとんど忘れた。うじうじと大人の男が悩む話であった。中学二年のときに、国語の先生が読書ノートをつける事を勧めていて、読書好きの私は片っ端から(ルパン、ホームズから宮本武蔵まで)書いて先生に見せていた。唯一国語の授業の中で褒めてくれたのがこの作品の感想だった。

私としては有名な小説なので一応読んでおくか、ぐらいで読み始めたのだが、自分は誰の子供かとかで悩む話だったような気がする。「つまらない。」意地で読んでいると、最後の場面でやっと共感できる場面にぶつかった。それを書いたのだ。
最後の場面は大山(岡山県と鳥取県の境の中国第一の山)からみた主人公の独白のあと少しエピソードがあって終わる。それに対し、「少し前に学校で登った大山登山のときにこの本を事前に読んでいたならば、そこから見える風景がまた違って見えたのに。」という感想だった。その感想のどこがいいのか、国語教師はしきりと褒めてくれた。おかげで何十年も経った今でも覚えている。後で考えると、私の感想『文』が素晴らしいのではなくて、その小説のその部分を取り上げたことに教師は感心したのであった。結局この長編小説はその最後のクライマックスが『肝』だったらしい。

「謙作はふと、今見ている景色に、自分のいるこの大山がはっきりと影を映している事に気がついた。影の輪郭が中の海から陸へ上がって来ると、米子の町が急に見えだしたので初めて気付いたが、それは停止することなく、ちょうど地引網のように手繰られて来た。地をなめて過ぎる雲の影にも似ていた。中国一の高山で、輪郭に張切った強い線を持つこの山の影を、そのまま、平地に眺められるのを希有(けう)の事とし、それから謙作は或る感動を受けた」。(『暗夜行路』志賀直哉)

さて、どうしてそんなことを思い出したかというと、悪法が次々と通る国会の様子を眺めていると、なんだか今日の夕日がとても綺麗に見えたので、つい感傷に浸っていたのであるが、それでいいのだろうか、とふと思ったときに、この小説の朝日を思い出したというわけだ。

出雲には綱引き神話がある。自分の国がみすぼらしいと感じた神は、一方の足を大山にかけて、朝鮮半島その他から土地を綱をかけて引っ張り込んだ。そういう発想は、大山の夜明けを見ながら、自分たちで自分たちの国を作るんだ、という気概から生まれたとしか思えない。志賀直哉の簡潔な文章は、そういうことさえ感じさせるものだろう。沈む夕日の世界で美しい国の感傷に浸る場合ではない。つまりはそういうことを言いたくて、最初の詩にもならない呟きになったわけです。







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最終更新日  2007年06月22日 23時43分57秒
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