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2007年08月22日
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「アリランの歌」(岩波文庫 ニム・ウェールズ、キム・サン著)
1937年の夏の初め、アメリカの女性ジャーナリスト、ニム・ウェールズ(「中国の赤い星」のエドガー・スノーの妻)は、延安でひとりの朝鮮人に会う。魯迅図書館で英文書籍借り出し人の名簿を繰った時に、ひとりの突出した濫読家を見つけたのだ。金山(キム・サン)と名乗る彼は知性あふれる青年であったが、写真を見る限りではひどく痩せており一種の老師の風貌さえたたえている。(32歳だという!)ウェールズは彼が軍政大学の教師と言うのは仮の姿で中国共産党員であることを見抜き、伝記を書かせてほしいと頼む。そんなときに盧溝橋事件が勃発する。

その7月7日ウェールズは「日本と中国の全面戦争が始まるのか、まだ妥協と和平の道があるのか」道が見えないまま、キム・サンに聞く。
「戦争は避けられません。とうとう来たのだと思います。今度の事件で戦争にならなくても、次かその次の機会には始まります。日本は経済的帝国主義の緩慢なプランを実施するだけの資金的余裕がないから、軍隊を使って強盗式戦術を取り、軍事行政両面での徹底した強奪をやらねばならない。財政面が弱いので、中国と経済的な提携関係を築くことは出来ない、中国を安全に搾取しようと思ったら、先ずその力を潰しておかなくてはならないというわけです。」
彼はいうなれば、無名の知識人の一人に過ぎない。その彼が、当時のアジア情勢についてはおそらく世界最高水準の客観情勢を語っているのだ。当時の蒋介石の中国国民政府と中国共産党は敵対関係にあった。しかし彼は明確に日本と蒋介石が手を結ぶことは無いと分析していた。



この本を通読すると、彼の視野の広さ、知識の正確さには納得をする。もちろん敗戦後の日本の運命は違っていた。日本の革命勢力の過大評価と、米国の過小評価があったと思われる。面白いのは、実際に日本は盧溝橋事件のあと短期決戦で勝負をつけようとしており、それに対する国民政府の蒋介石は充分に迎え撃つ戦略を持っていたのであるが、一介のの共産党員であるキム・サンですらそれに近い戦略を持っていたということだ。ただ一国、日本の知性が総動員されていたはずの大参謀本部はその認識を持つに至らなかった。充分に短期決戦で中国に勝てると踏んで戦争を起こし、勝てないとさらに踏み込み、そしてずるずると泥沼に入っていくのである。(このあたりの詳しいことは「日中戦争」の感想でまた書く)

やがてキム・サン(これは偽名である。ついに彼はウェールズにも明かす事はなかった。)は、自らの波乱万丈の半生を語りだす。読んだらわかるがまさに波乱万丈である。彼は驚異的な記憶力で全てを語る。彼は多年にわたって暗号を用いた日記をつけており、それは定期的に破棄されたけれども、出来事を記憶するための良い手がかりとなってとこの細部まで思い出すのに苦労はしなかったようだ。

話は1919年の朝鮮3.1独立運動、そして日本へ、そして満州へと移る。たった14歳の少年は革命を求めて旅をする。上海に移り、中国共産党に入党。二度の監獄体験、仲間の裏切り、幾つかの女性とのロマンス、‥‥‥その人生は出来ることなら読んでほしい。いつかでいいから。本は逃げはしない。

タダ、私は少し、つまみ食いをして彼が見た1910年代の朝鮮、日本、1920-30年代の満州、中国を紹介したい。(次回)





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最終更新日  2007年08月23日 00時02分59秒
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