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2008年07月06日
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梶山季之が死んだとき、私は15歳だった。彼の名前は知っていた。川上宗薫と並ぶポルノ作家としての名前をなぜか知っていたのである。だから、彼が死んだときに出た新聞の書評が彼の死を心から惜しんでいるのを読み、違和感を覚えた記憶がある。当時私が通っていた本屋は週刊誌や文庫やカッパブックスくらいの新書ぐらいしか置いていなくて、つまり私は梶山季之を見損なっていたのである。

梶山 季之(かじやま としゆき、1930年1月2日 - 1975年5月11日)は、日本の小説家・ジャーナリスト。週刊誌創刊ブーム期にトップ屋として活躍、その後『黒の試走車』『赤いダイヤ』などの産業スパイ小説、経済小説でベストセラー作家となり、推理小説、時代小説、風俗小説などを量産するが45歳で死去。ルポライターとして梶季彦、少年向け冒険小説として梶謙介のペンネームがある(出典: 『ウィキペディア(Wikipedia)』)

今回初めて彼の作品を読んだ。元トップ屋ということもあり、なかなかの社会は作家なのである。この前に観劇した青年劇場の「族譜」に興味を覚えて原作を読んだ。岩波現代文庫に収められていた。

族譜

梶山季之は植民地化の朝鮮はソウルの生まれである。だから、いくつかその時代を映した朝鮮を舞台にした小説がある。1961年に発表。早い時期に日本の植民地化政策がいかに卑劣で徹底していたかを告発している。観劇のときにも感じたが、「創始改名」政策ほど、日本の植民地化政策の卑劣さを感じることはない。創始改名は決して法律として強制されるものにはなっていない。あくまで自主的なものとして最初は宣伝される。「内鮮一体」として、それまで何かと差別されてきた朝鮮の方々も日本名を名乗れるようになり、差別から解消されるのですよ、と呼びかける。

朝鮮語に「恨(ハン)」という言葉がある。いろんな意味に訳されるが、もともとは祖先に対する感情なのである。祖先に顔向けできないようなことがあったときに、それを解消するまで「恨」はなくならない。だから、それがなくなることを「恨を解く」というのである。それほどまでに、朝鮮民族にとって、祖先は自分の内内までにしみこんだ感情の元になっているし、それを集大成した族譜、姓は大切なものだ。

創始改名したものには、就職にも入学にも有利に働き、それまで低調だった改名率は一挙にあがる。

当局が、今までの生ぬるい態度を捨てて、強制的に創始改名する方針に出始めたのは、このころからであったろう。釣り上げた魚に、餌をやる莫迦はいない。

創始改名したら、日本人と同等に遇しようと表面では甘い餌をさらしながら、その実当局が考えていたのは、何であったか。---それは日本国民であるがゆえに、果たさなければならない義務、つまり徴兵だったり、徴用だったのである。また税金であり、供出だった。従来の志願兵制度を一挙に徴兵制度に切り替えるための準備工作だったのだ。(その証拠にまもなく膨大な兵士を要する大東亜戦争が起こった。)

水原の有力者、薛鎮英の一族は700年も続いている族譜を持っていた。(李王朝ですら300年の歴史しか持っていない。しかもその族譜は戦乱で焼けている。)娘の婚約者を何の根拠もないのに、思想犯として逮捕し、後見人として身請けするのなら、創始改名して出直せと圧力をかける。娘は断腸の思いで婚約者よりも族譜のほうを選ぶのである。婚約者はその後獄死をする。

原作は劇とは違い、創始改名した日に自殺した鎮英の遺言により、物語の主人公谷六郎は貴重な族譜を大学に寄贈することを頼まれる。日本人にとっては救いのある終わり方ではある。劇では、白装束の娘から一方的に谷六郎は責められ終わる。族譜の内容を言って聞かせる演劇の第二部のほとんどはこの原作の中にはない。改めて、ジェームス三木の脚本はうまいことこの原作を膨らませていると感じた。
そして日本人に非常に厳しい劇になっていたのだと感じた。


「族譜 」(輝国人の韓国映画)
監 督 イム・グォンテク「風の丘を越えて」「酔画仙」
韓国の中で、谷六郎という人物を配置できたのが、なんとなく救われる。

哲さんが 「朝鮮の植民地統治は史実に反する」発言への抗議賛同願い を書いている。
賛同したい。





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最終更新日  2008年07月06日 08時05分44秒
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