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2008年08月11日
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剣客商売(6)
藤沢周平を久しぶりに読んだ あとに、久しぶりに池波正太郎を読みたくなった。藤沢ほどではないけれども、池波も大好きな作家で、「仕掛け人・藤枝梅安」は最終巻まで、「鬼平犯科帳」は20巻ぐらいまで、そしてこの「剣客商売」シリーズは5巻まで読んでいた。まだテレビシリーズが始まる前である。

池波正太郎にはまた池波なりの味があって、男気があって好きなのだ。気持ちのいい保守主義を愉しむという面もある。

「剣客商売」は63才ながらまだ剣の腕前は人を寄せ付けない秋山小兵衛と朴訥の息子である剣豪秋山大治郎に、田沼意次やその娘の三冬が絡み、いろんな事件を解決していくというもの。田沼意次がまだ収賄政治家の象徴のようにみられていた時に、この作品ではいち早く経済手腕に優れた政治家として登場させている。小兵衛は世間の酸いも辛いもよくわかった御仁で、しかも若い女房を嫁にして全然ストイックではない。

この巻ではついに大治郎と三冬が結婚に至る。その祝いの席で田沼意次は小兵衛に囁く。結婚に至るきっかけになった事件について曰く 、「今このときになって抜け荷が行なわれるとは、つくづく情けない。一日も早く国を開き、異国との交易を盛んにしなくては、いまに日本の天下は立ち行くことがかなわなくなる。そのときを夢見て、私も働いているのじゃが、なかなか思うようには行かぬ」 田沼意次が開国論者だと描いて見せるのである。日本はそれから何10年もたったあとに開国に踏み切るわけだから、先を見通した政治家であった、といいたいのだろう。真偽はともかくとして、池波らしい政治家像である。

またあるとき小兵衛は嘆息して曰く 「戦国の世が終わり、徳川将軍の下に天下泰平が何百年と続いているのは結構なことだが‥‥‥わしはな、かえって戦乱絶え間なかった頃の方が、人のいのちの重さ大切さがよくわかっていたようなきがするのじゃ。今は戦の恐ろしさは消え果た代わりに、天下泰平になれて、生死の意義を忘れた人それぞれが、恐ろしいことを平気でしてのけるようになった。」 戦争を潜り抜けた池波が言うから説得力がある。

池波正太郎が自民党支持者であったのは、本人が何度も書いているから、明らかである。けれども池波は決して弱いものいじめは許さない。政治家の奢りは許さない。池波のような人ならば、十分に納得できる保守主義者である。池波は時々エッセイで、自民党の腐敗ぶりついては苦言を呈していた。どんな人がいうよりも、池波のような人がいえば自民党も堪えただろう。惜しい人を亡くした。もうずっと前だけど。





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最終更新日  2008年08月11日 07時05分05秒
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