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2008年10月17日
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最初著者の半自伝 「在日」 の中で自分はうつ病にかかっていたと告白していたのでてっきりその体験を詳しく論じた本かと思っていた。ところが、それはほとんど書かれていない。あくまでウェーバーと漱石の著作を借りて一般論としてすすめる。そのストイックで頑固な書き方がいかにも著者らしいと感じた。

悩む力
この本は「悩み相談ハウツー本」としてよりは「夏目漱石読本」として読んだほうが、案外期待に応えることが出来るように思う。「三四郎」「門」「心」「それから」「行人」「明暗」等々漱石の「悩む力」をうまく引き出しながら論じている。

この本は著者の誠実な生き方を反映してお勧めの本なのだが、この文章が素晴らしいと特別抜き書きするのが難しい。(私の理解力不足?)一方でこの本が売れているという。そのことに現代の深刻な状況があるのだと思う。答えは見つからないけれども、どうも不安だ。自分はダメな人間だ。本当にダメなのか?そんなときにはこの本は役に立つだろう。あなたの不安は実は漱石の不安でもあり、私の不安でもあると。

例えば
「精神医学者で思想家のV.E.フランクルは、人は相当の苦悩にも耐える力を持っているが、意味の喪失には耐えられないといった趣旨のことを述べています。」 といいながら、アウシュビッツの強制収用所で、年齢の上でも体力でも劣る自分が生き残り、強健で若い人が死んでいったりした例を述べます。「命を粗末にしてはいけない」という素朴な「慣習」で自殺を食い止めていた昔とは違い、「自由」が進んだのと引き換えに個人は「寄る辺のなさ」を味をなくてはならなくなっている、著者は論じます。「心」のなかで先生は同じようなことをいいます。それでも最期には先生は「私」に手紙で打ち明けてくれた。そこに著者は「人と人とのつながり」の中に希望を見るのです。
単純に「死んではいけない」とは、私には言えません。でも、「人との繋がり方を考えて欲しい」とは言いたいのです。繋がるためにはどうしたらいいかを考えて、その意味を確信できたとき、たぶん「生」も「死」も両方、同時に重みを取り戻すのではないかと思うのです。そう信じたいのです。

閑話休題
終章では著者の夢について語っている。なんと前に私が紹介した 「アリランの歌」 を映画化したいというのである 。「南北統一の暁に日中韓米ロ共同で制作するのです。シリアスに作ると当たり前になってしまうので、ミュージカル仕立てにします。映画のオープニングシーンは、満州の原野のロングショットで、ひとりの男が歩いています。彼はアリランの歌を口ずさんでいて、そこにカメラが次第にズームアップしていきます。男と言うのは、もちろん私です。」





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最終更新日  2008年10月17日 23時27分49秒コメント(0) | コメントを書く
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