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2010年07月27日
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カテゴリ: 邦画(09~)


以前、加東大介の原作に付いては読んで感想を書いたことがある。




運命のいたずらで加東の部隊はアメリカ軍の総攻撃から免れる。しかし、補給路を断たれて七千人の兵士たちは次々と死んでいく。戦意高揚、いや、生きる意欲高揚のために加東たちは芸を持った人たちを集め、「マクノワリ歌舞伎座」を創設する。余興ではない。毎日休まず公演を行うりっぱな「部隊」である。数々の感動的な「場面」がある。「生きる」とはどういう事なのか、「生き甲斐」とはなんなのか、そのエッセンスが淡々とした加東の文章の中に隠れている。

さすが、名エッセイスト沢村貞子の弟だけあり、文章は時にユーモラスで、臨場的で、無駄が無く、素晴らしい。隠れた名戦争文学である。この作品は一度東宝で映画化されたそうだが、「生きる」意味を見失っている現代、ぜひもう一度映画化してもらいたい。
(2004年12月23日(木))


このときはまだ映画は観ていなかった。DVD化してないので映画の方もまさに隠れた名作となっている。出演俳優は加東大介は一応主演ではあるが、抑えた演技をしている。一人ひとりの兵士を描くことに主力をおいている。何しろ出演者が凄いのである。当時の喜劇俳優総出演と言っていい。伴淳三郎、有島一郎、三木のり平、渥美清、フランキー堺、西村晃、森繁久弥、小林桂樹‥‥‥とここまで書いて気がつく。みんな既に故人となった。彼らはおそらく全員戦争経験者だろう。その人たちが鎮魂の意をこめて舞台で「まぶたの母」をする。紙の雪が降る。やせ衰えた満員の兵士たちからざわめきが広がる。「おい、雪だ」「雪だぜ」遠くから命からがらやってきた一人の兵士はそこで息を絶つ。

歌舞伎座が少し立派過ぎるような気がするし、兵士たちの飢餓のリアルな描写は少ない。けれども、あまりリアルにしすぎると1961年当時だと経験者は多かっただろうし、少し生々しすぎたかもしれない。

私の母の兄も南の島で亡くなったと聞いている。「本当に秀才で‥‥‥兄が生きていたら‥‥‥」という母の言葉が今も忘れられない。南の島での戦闘の悲惨さは「野火」等の小説で知っている。水木しげるもラバウルで九死に一生を得ている。そのようないわば一般的な認識を元に戦場のなかで突然現れた異世界(ふるさと)を描くこの作品は、まさに鎮魂としての映画になっているのだろう。





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最終更新日  2010年07月27日 07時42分42秒
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