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2011年07月16日
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カテゴリ: 考古学
久し振りに現説(考古学の現地説明会)に行ってきました。

4082沢田遺跡遠景.JPG
少し遅れていったのでほとんど説明は終っていて、私は説明を終えた調査員を捕まえて詳しい説明を聞いたのでした。幸いにも質問者は私独りで突っ込んだところを聞くことが出来ました。

今回の調査は、日本の代表的な弥生遺跡である百間川遺跡のひとつ沢田遺跡(旧二号線百間川橋の下南隣)で、弥生時代前期から井戸や倉庫と考えられる半地下式の大型土壙、集落を区画する大溝から木葉文の描かれた壺の出土、弥生後期の綺麗な田んぼのあとなどが出土したことが特徴です。

4076大溝.JPG
沢田遺跡は岡山では二例しかない環濠が発見されていることで有名です。今回調査した大溝は(絶対可能性はないということはないそうですが)環濠ではないのですが、以前見つかった環濠集落について私の疑問をぶつけました。
「環濠の大きさは小さいと思うのですが、最高で何軒の住居があったのですか」
「6軒です」
「だとすると、戦いから守るための環濠ではないですね」
「環濠の役割は防御のためだけにあったのではない、とだんだん考えられるようになりました。環濠があった時代は前期から中期までです。稲作が取り入れられて定住が始まった頃であって、土地への執着が、環濠という形で土地を区画するという行為になったのではないか。実際ここの環濠は逆茂木があるわけではなく、飛び越えようとしたら飛び越えることの出来る幅です。」
「けれども、住居は環濠の外にもあったわけでしょ。だとすると、環濠で区画する意味がわからない。私は環濠の中に聖なるものがあったとすれば、納得するのだけれども」

「じゃあ、選ばれた人たちだけが環濠の中に住んでいたのか」
「前期にそういう階層意識があったと思えない」
結局この環濠は「戦争のための環濠ではない」ということだけが明らかであって、本当の意味についてはまだ分かっていない、ということなのだということは分かりました。岡山の遺跡からも武器は見つかっている。けれども、戦争を準備していた部族なのかというと、最後まで違う人たちだったのだ、というのが私の「仮説」です。

4073田んぼ.JPG
さて、これが弥生後期の田んぼです。綺麗な田んぼで、大きさも現在の普通の田んぼの半分くらいから1/4位の大きさです。津島遺跡の田んぼと比べると非常に大きい。なぜ大きいかというと、この頃は鉄器が普及していて、土地を平らにして水を万遍に行き渡らせることが出来たからです。この一枚が当時の百姓の一軒の土地かというと、おそらくそうではない。当時百間川遺跡にはずーと田んぼが広がっていた。このくらいの大きさが彼らの美的感覚にはちょうどしっくりくるということだったのかもしれない。

畦は簡単に見つかったらしい。そして一部だけれども稲株跡も見つかっている。 洪水で覆われた遺跡だからこそ成果である 。稲株あとが思ったより規則正しくないということで、どうやら議論があったらしい。確かにここは意見の分かれるところですね。私は「この畦にある跡は稲株ではないか」と質問しました。ちゃんとこれも議論していたらしい。畦にあるのが何か分からないけれども、たぶん何らかの植物の址とか足跡だったかもしれない。とにかくへこんでいる部分は総て洪水でタイムカプセルとして残っているのだそうだ。

4081土こう型倉庫.JPG
今回見つかった前期の屋根付き倉庫用の土壙。大型の倉庫が建てられるのは弥生時代中期になって以降であって、前期にあるのはこんな簡便な倉庫ばっかりだったようだ。しかし、底はきっちり平らにしており、規則正しく柱穴があり、倉庫だったことは間違いない。底が板だったか蓋はあったのかどうかはわからない。たぶん長期保存には向かなかっただろう。鼠対策等ができていなかったからだ。

4090蓋表.JPG
前期の小壺の蓋も出土していた。初めて見た。壺の蓋は前期中期までは結構出るらしい。私は 前の講演のとき 、日本では土器の蓋は出ないと教えられていたし、実際見ていないのでないのだと思っていたが、蓋が出てこないのは後期になってからだということだ。もちろんお米は煮て食べていたので、何らかの形で蓋は必要だったのではある。

4091蓋裏.JPG
おそらく土器製のふたから木製蓋に変わったせいだろうが、韓国との比較についてはいまひとつ分からない。このふたは韓国でも見られない。穴に糸を通して持上げるのだが、上の写真が表。模様がある。下が裏。きちんと穴の大きさに対応した蓋になっているところが大変細かい。日本らしいと思う。

4093木の葉文様の坪.JPG
弥生時代の壺型土器を飾る文様のひとつに木葉文があります。この文様は前期でも古くからみられる文様で、百間川沢田遺跡においても、南側の丘陵裾で前期前葉の壺から見つかっています。しかし、その時の文様は、方形の区画内に四葉状の文様が描かれていました。今回見つかったのは、前期後葉の壺からで、三つ葉で方形区画も描かれていない。

4095壷拡大.JPG


4096沢田遺跡.JPG
沢田遺跡の既に発掘したところは現在では遺跡公園になっています。後景には古墳時代、早期から後期にかけて 非常にたくさんの古墳が眠っている操山 がそびえています。





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最終更新日  2011年07月16日 23時23分27秒
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