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2012年04月21日
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カテゴリ: 水滸伝

「草莽枯れ行く 下」北方謙三 集英社

「新しい政府ができたら、俺はやろうと思っている事がある」
「お前なら、結構いいところに行けると思うぜ。どうせ、薩摩と長州で官の奪い合いだろうが、薩長の幕府という非難を避けるためには、お前の様な草莽を加えるのがいい、と誰もが思うだろう」
藩を後ろ盾にしているわけで無いから扱い安い。そんなことは、総三にも分かっていた。総三がやろうと思っているのは、新政府の仕事ではないのだ。
商売をやってみる。例えば、清水には松本屋平右衛門という回船問屋がいる。清水には、幕府の米が集められ、駿府に運ばれている。幕府がたおれれば、その米が無くなる。つまり船が余るのだ。
薩摩や長州や土佐の商人は、政商になっていくのが目にみえていた。そうでない道を、松本屋とならば探れる。政商ではないものの強さも、どこかにあるはずだ。それに清水には次郎長がいた。(105p)


前巻の感想で私は 「これは日本版「水滸伝」だ。革命小説だ」 と書いた。 内政の腐敗の一掃と外交、二つの危機をどうするか。それを解決する方法として、「佐幕開国」「尊王攘夷」「公武合体」「薩長連合」「大政奉還」「版籍奉還」があり、僅か数年のうちにそれが目まぐるしく変わった。

その中で周辺の知識人たる相楽総三は、持てる手段の全てを打って「未来」を作ろうと(この小説の中では) している。しかし、彼らに待ち受ける未来は「敗北」であることが既に決定している。その意味で、「水滸伝」であり、「楊令伝」なのである。

岩倉という男なら、どんなことでもするだろう、と次郎長は思った。いかさまでも、半端はやらない。華奢な男だが、そういう所はあった。いかさまをいかさまと思わない。博徒にも、そういうのがいる。岩倉は似ていた。
総三がなにをやったかというと、それだけなのだった。
つまり、少数の人間の都合のために、殺されたのだ。殺しただけでなく、汚名も着せた。
やくざでもやらないことだ、と次郎長は思った。喧嘩は勝負。終われば、汚ないことはしない。何がなんでもというのは、長脇差を抜いている間だけのことだ。
幕府が潰れようと、新政府が出来ようと、次郎長にはどうでもいいことだった。(264p)


次郎長は最後に岩倉具視を斬る(それで岩倉具視が死んだかどうかは、読んでのお楽しみ)。この小説では、西郷隆盛も権謀術数を駆使する悪人として描かれている。他にも伊牟田小平、益満休之助、勝海舟、山岡鉄舟、新門辰五郎、土方歳三、板垣退助などが登場、側面から幕末を活写している。それに「ヤクザ」の視点を入れることで、幕末の「上からの革命」部分が見事に描かれていると思う。そういう所もヤクザ者が多い「水滸伝」とよく似ていると思う。





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最終更新日  2012年04月22日 00時55分49秒
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