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2014年04月27日
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テーマ: 本日の1冊(3693)

「古代国家はいつ成立したか」都出比呂志 岩波新書

たいへん刺激に富んだ本だった。最近は新書も図書館で借りる事が多かったのだが、これは一目惚れで購入した。私の目の確かさを褒めてあげたい。借りていたならば、付箋紙だらけになって、結局もう一度本屋に走らなければならなかった処であった。

学んだことを書こうとしたならば字数制限を超えるので、著者の問題意識のみをメモしておく。

著者が国家について考え始めたのは、戦中子供時代の空襲体験と戦後苦労した母親の「国は信用ならない、日の丸は見るのもいや」という言葉だったらしい。考古学少年だった都出さんは、しかし当時の考古学学会が皇国史観を内部で反省していなかったことで、その道に進むことに躊躇する。考古学への道を決定つけたのは小林行雄「古墳の発生の歴史的意義」(1955)だという。また、近藤義郎「戦後日本考古学の反省と課題」(1964)である。私は考古学の性格から言えば戦後の最初から神話から自由だったと思っていたので、都出の学生時代の思いは意外だった。

最初ケンゲルスの「国家・私有財産・国家の起源」を参考に氏族社会から国家への道筋を考えていた都出は、日本に当てはめることの難しさを感じていた。そこで、クラッセンの初期国家という概念に出会う。古墳時代を初期国家と位置づければ、弥生時代、古墳時代、律令国家をうまくつなげることが出来ると思ったのである。

国家は多くの人を組織して社会を動かしてゆく営みなので、土地の分配、税、生産、経済、文化、共通の思想など多面に渡る複雑な仕組みを要求する。それは一朝一夕に出来ることではなく、弥生時代からの試行錯誤があったことは確かだろう。最近の発掘成果はそれを次第と明らかにしつつあるという。弥生終末期には、そのほとんどの萌芽があったという指摘により、私は様々な空想を広げることが出来た。

現在、グローバル化が進み、国家の垣根は非常に低くなっている。「(ひと昔前には)考えもしなかった大きな変化が私たち自身に起きています」と著者は云う。そういう時だからこそ、初期国家を構想して未来を見据えた弥生のパイオニアたちのことを、私はもっと考えて行きたい。
2014年4月14日読了





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最終更新日  2014年04月27日 11時01分40秒
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