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2017年02月08日
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テーマ: 本日の1冊(3693)
カテゴリ: 水滸伝

「岳飛伝2」北方謙三 集英社文庫

「おい、泣くな」
李俊に言われて、宣凱は自分が涙を流していることに気がついた。
「俺らはな、振り返ると、何人も何人もの顔が浮かんじまうんだ。その全員が、死んじまってる。志なんてものを心に持つと、死んじまうんだよ。燕青など、ほとんど人間ではないな。生き延びているんだからな」
「私は、自分が自分であるために、何をやるべきかは、いつも見えていた。志があったからだ、と思っているよ。替天行道。盧俊義殿は、その言葉を口にするたびに、ほとんど涙を流されるのではないか、と思うほど心を打たれた表情をされた。父のような方だ。私は、あの顔だけは忘れられぬ」
「よせよ、燕青。今夜は、二人で宣凱という小僧を、奈落に突き落とそうと画策しただけじゃねえか」
「奈落に、落ちてくれたようだ」
「奈落にある光。それが、ほんとうの光かもしれないしよ」
「宣凱。苦しむだけ、苦しめ。この戦が終わった時に、自分の意思をはっきりさせろ」(358p

替天行道。北方謙三は、遂に一行たりとも、それを我々の前に明らかにせずに、大水滸伝シリーズを終えたと聞いた。しかし、この第二巻において、最も語られたのは「志」という言い方の「替天行道」である。彼らの言葉から、旧宋を倒すための意義が書かれているということはわかった。どうやらその後の政権構想などは書かれていなかったらしい。童貫が死んで、旧宋が倒れた時に、楊令が選んだのは、梁山泊が政権を獲る道ではなくて、何処にも帝を戴かない、物流が世界を支配する、いわば自由資本主義革命だった。そのことの本当の意味を誰も知らなかったのだから、成功するはずもなかったのだが、綻びが出始める前に物流の道そのものが洪水で流されて、頭領楊令も暗殺されて仕舞う。しかし、そのおかげで、というか替天行道の志は残った。おそらく、帝を抱かないまま、梁山泊の英雄たちは一生を終えるのだろうと思った。

岳飛伝が始まって、登場人物たちに傑出した人物は現れず、皆思い悩んでいて、岳飛さえも冴えない。そう思って読み進めて来たのだけど、これはこれでいいのではないかと思い出した。このまま17巻も続けば気も変わるかもしれないが、今はこれでいい。

世界を生きるとは、戦いだけじゃない。明確な目的をもって生きることだけじゃない。

「人は、うまいものを求める。しかし、ほんとうは必要ではないのだ。生きるためだけなら、こんなに手間をかけることはない。羊を殺して、ただ食う。それでいい。王清、この肉は、香料と酒に十日漬け込み、一晩、風に当てて乾かしたものだ。うまい方がいい。うまい方が、生きている。人がうまいものを求めるのは、人として生きているからだぞ。無駄なものを求めるのが、人というものだ。王清、おまえの笛も同じだ。無駄なものだ。なくても、生きていける。しかし、人は笛の音を求める」
「梁興」
「なんだ、岳飛?」
「喋りすぎだ」
「そうだな」(302p)

金と梁山泊の戦いはまだ終わっていない。楊令の仇を討つためにウジュの首取りに執念を燃やしている照夜玉その先に、楊令の遺児・胡土児が居るのだ。心配でならない。


2017年1月8日読了





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最終更新日  2017年02月12日 21時22分51秒
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