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2017年02月25日
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テーマ: 本日の1冊(3698)
カテゴリ: 水滸伝

「岳飛伝3」北方謙三 集英社文庫

しかし、金国と講和をするなら、梁山泊はどういう国の姿を求めているというのか。物流による支配は、金国も南宋も拒絶する。それでも、染み出す水の流れのように、物流はどこへでも入ってくるのか。
「楊令の理想が、そのまま生きるのか」
「それは、わかりません。自由市場は、闇市ということになるのですから。しかし自由市場は、物流のひとつのかたちに過ぎません。物流はどんなかたちをとることもできるのだ、と私は思います」
「ならば、 梁山泊は国を見ていない。人を見ているだけだ 。つまり民ではないか。そして民が、揃って豊かになるのか。民のほとんどは、今日のことしか考えていない。結局は、商人が勝手に支配する国ができあがる」
秦檜は、わずかだが酔いを感じた。
「梁山泊と金国との講和、というところまでにしておこうか、許礼。それ以上は、きわめて見えにくい」
「はい、私も見えません」(95p)

当代随一の知識人、秦檜にも見えるはずはなかった。誰も、楊令さえも、見えてはいなかったのだから。しかし流石に秦檜、一瞬とはいえ、現代世界の自由市場の問題点までも見透かしてしまった。ただ、大切なのは「替天行道」に導かれてこの時代にあって「帝を戴」かず「民が揃って豊かになる」道を、梁山泊の人々は夢を見て、未だそこから外れていない。ということだ。空想的社会主義と言えばそれ迄だが、そのためにこの大河物語の中では、何百人という英雄たちが死に、何万人という兵士たちが死んだのである。

黒旗兵の照夜玉は、危惧した通りに胡土児に討ち取られ、大水滸伝一話以来の登場人物九紋竜史進は生を拾う。已に水滸伝以来の英雄たちは11人を数えるばかりであるが、智多星も操刀鬼も退場の日は近い。宣凱、王貴、張朔の成長は著しいが、彼らに何処まで替天行道の志が貫徹するのか、あと14巻を愉しみに辿ってゆきたい。

2017年2月9日読了





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最終更新日  2017年02月25日 11時39分48秒
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