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2017年03月11日
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テーマ: 本日の1冊(3693)
カテゴリ: 水滸伝

「岳飛伝4」北方謙三 集英社文庫

「次の戦いでは、おまえたちには耐えに耐えて貰わなければならん。それが総指揮官としての俺の命令だ。岳家軍は、いま他国に蹂躙されている漢土と民のために、闘い続ける。臨安府で、それを認めないということも考えられる。その時は、俺の指揮下を離れるだけだ。それでいいな」
「臨安府で認めないというのは、どういうことでしょうか?」
雷恭が言った。
「臨安府では、金国との最終決戦は、10年後、20年後と考えているふしがある。それが、いまの南宋の国力なのだとな。しかし、国力とはなんなのだ。いま他国の手にある漢土も民も、ついこの間までは、漢の国力だった」
「つまり、この戦は、どこかで収束が計られる、ということですか?」
「間違いない、と俺は思っているよ。兵站は、ぎりぎりだ。つまり北へ攻めのぼっていくには、絶対的に不足している」
「それは収束ではなく、戦の遂行が不可能ということではないですか?」
「岳家軍は、続けられる。そのために、岳家軍でいたのだ。北へ攻めのぼれば、いるのは、漢の民がほとんどなのだぞ。つまり、同胞がいるということだ」
秦檜には、当然それもわかっている。ただ国力の差をつけて、金国を圧倒しようと考えているのだ。そのために、どれほどの歳月が必要なのか。金国を圧倒するだけの国力を得られる保証があるのか。
攻めるなら、いまだった。金軍の主力と、対峙しているのだ。それを破れば、北へ進攻出来る。
「われわれはいま、岳飛将軍の指揮に従うだけです」
雷恭が、その話題を切り上げるような口調でそう言った。(187p)

岳飛と秦檜との考えの溝は深まりつつあった。岳飛がここまで「読んで」戦を遂行しているのが、びっくりというしかない。岳飛には、呉用も宣凱もいないのに、だ。

しかし、私には岳飛の「尽忠報国」の理想は、危なかしい。自分のすることは、武力で漢土を快復する迄、と思い定め、そのあとの構想がないのだ。あとは、秦檜に任せると気楽に思っているふしがある。それならば、秦檜が梯子を外したらどうするのか。

やっと岳飛伝らしく、岳飛が全面に出てきたが、まだ私は岳飛を主人公として認めたくない。彼の「志」に、まだ共感できない。

一方、梁山泊本寨では、「志」か「夢」か論争が起きていて、とても興味深かった。「志」は引き継げることができるのかどうか、という論争もメンバーの間で起きていた。

おそらく水滸伝が始まり「替天行道」が唱えられて、40年以上の歳月が流れていると思うが、「革命」の実現と継承は、そんなに容易いことではない、ということか。物語の推移を見守りたい。

2017年3月5日読了





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最終更新日  2017年03月11日 20時39分15秒
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