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2020年02月14日
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「孟夏の太陽」宮城谷昌光 文春文庫

古代中国を自家薬籠中のものとしてきた著者の初期連作小説。実は宮城谷昌光氏は喪われた古代書物を匿していて、それを翻訳しているだけではないか?と窃(ひそか)に測っているが、証拠を見つけること我能わず。

冗談はそれぐらいにして、紐解いたのは、小野不由美「十二国シリーズ」の世界観は、孔子以前、つまり古代中国春秋時代だと当たりをつけている私が、また別の作家の視点から、その世界を見たかったからです。

小説は紀元前655年ごろから始まり、時代の覇権を担った晋の宰相を務めた趙氏一族を7代に渡り記し、紀元前453年ごろに終わります。

すると驚く勿れ、十二国の世界観が至る所に展開されていました。
曰く。
「山の霊に憎まれるようなことを、わたしはやったおぼえがないのに‥‥」(24p)
←この素朴な信仰から神仙信仰までは近いと言えるだろう。
曰く。
「趙盾の立場からすると、公子楽の殺害は、あきらかに法の行使であった」(54p)
←既に法治主義が徹底されていました。法に照らして宰相が王子を殺すことも許されるのです。日本で言えば弥生時代中期ですよ。すごいな。
曰く。
「たとえ楚との戦いで敗けても、晋は滅びはせぬが、苛政をおこなえば、国人は叛かんして、国はおのずと滅んでしまう」(112p)

曰く。
「寛大な政治とは水であり、厳格な政治とは火である」(213p)
←この水と火の政治の葛藤が、時々十二国世界で、大長編となっていっているようです。
曰く。
「天が授けたものは、たとえ生まれが卑しくても、かならず尊貴になるものです」(269p)
←有名な占い師の言葉に従い、趙鞅は下女が産んだ無恤を優秀な息子を差し置いて跡取りと決めて仕舞う。もっとも趙鞅はそのほかにも人(世論調査)と地(宝探し)の声も聞いて判断したのではあるが。此処に、既に「天」という動かし難い神?権威?が有る。しかもそれに従ったから、思いもかけない「運命」を趙氏は乗り切ってゆくのです。こういう「跡取り=王」の決め方は、十二国世界観と繋がっているものでしょう。

思いもかけないところで、孔子も登場します。また、チェン・カイコーの映画「運命の子」の原作となった「趙氏孤児」のエピソードを、氏独自の視点で、この大河物語に挿話しています。蓋(けだ)し、中国古典は物語の宝庫也。





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最終更新日  2020年02月14日 11時57分16秒
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