再出発日記

再出発日記

PR

フリーページ

カレンダー

2021年04月23日
XML
カテゴリ: 洋画(12~)
昨日、思いもかけずNさんから「今回の映画評は良かった」とお褒めの言葉を頂きました。〆切過ぎても書ききれず、苦しんで書いた文章だったので、望外の言葉でした。



今月の映画評「ジョジョ・ラビット」

 冒頭、1944年秋ドイツ、青少年集団ヒトラーユーゲントの合宿に、10歳のジョジョ(ローマン・グリフィン・デイビス)が勇躍して参加しようとしています。その場面に、なんとビートルズの「抱きしめたい」の楽曲が被さります。ヒトラーに熱狂している人々の実物映像も被さります。とってもポップで詩的な反戦映画ができあがりました。

 あゝこれはリアルなヒトラー映画じゃないな、という予測がつきます。ポピュリズム(大衆迎合主義)を戯画化しているのかな。ところが、だんだんコメディタッチが、深刻な真実をあぶり出してゆくのです。子供たちが合宿で学ぶ「武器の使い方」「人の殺し方」「ユダヤ人の差別の仕方」。心優しいジョジョは、訓練でウサギを殺せず、教官から<ジョジョ・ラビット>という不名誉なあだ名をつけられてしまいました。それでもジョジョは、空想上の友達であるアドルフ・ヒトラー(タイカ・ワイティティ)の助けを借りて、立派なナチスになろうと奮闘するのです。ナチスの洗脳教育の愚かしさをこれでもかと見せつけます。

 ベルリンの家では、隠し部屋にユダヤ人の少女エルサ(トーマシン・マッケンジー)が匿われていました。ヒトラーの子分みたいなジョジョは、「アンネの日記」から出てきたようなユダヤ人少女に逢ったならばば、何を選択するのでしょうか?

 10歳の子供から見たら、世界はこのように見えるのかもしれません。冷静に見たら、狂気の世界が見えます。密かに反戦活動をしているお母さん(スカーレット・ヨハンソン)がかっこいい。密かに母親に恋している大尉(サム・ロックウェル)もかっこよかった。

 靴の紐を一人で結べなかったジョジョは、お母さんの死に出会って、必死の想いでお母さんの靴の紐を結びます。この場面の処理の仕方が、とっても悲しくて秀逸でした。

 喜劇と悲劇、寓話とリアル、空想のヒトラーとユダヤ少女、二つが重なりながら、ダンスが嫌いだった少年はラスト、ボウイの「ヒーローズ」に乗せて踊り始めるまでに成長するのです。
 そして最後はリルケの詩が、物語を締めました。

全てを経験せよ 
美も恐怖も 
生き続けよ 
絶望が最後ではない

(2020年 タイカ・ワイティティ監督、米国作品、レンタル可能)







お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2021年04月23日 11時52分04秒
コメントを書く
[洋画(12~)] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x

キーワードサーチ

▼キーワード検索

コメント新着

ヒフミヨは天岩戸の祝詞かな@ 自然数の本性1・2・3・4次元で計算できる) ≪…三角野郎…≫は、自然数を創る・・・  …
永田誠@ Re:アーカイブス加藤周一の映像 1(02/13) いまはデイリーモーションに移りました。 …
韓国好き@ Re:幽霊が見えたら教えてください 韓旅9-2 ソウル(11/14) 死体置き場にライトを当てたら声が聞こえ…
韓国好き@ Re:幽霊が見えたら教えてください 韓旅9-2 ソウル(11/14) 死体置き場にライトを当てたら声が聞こえ…
生まれる前@ Re:バージンブルース(11/04) いい風景です。 万引きで逃げ回るなんて…
aki@ Re:書評「図書館の魔女(4)」(02/26) 日本有事と急がれる改憲、大変恐縮とは存…
北村隆志@ Re:書評 加藤周一の「雑種文化」(01/18) 初めまして。加藤周一HPのリンクからお邪…
ななし@ Re:「消されたマンガ」表現の自由とは(04/30) 2012年に発表された『未病』は?
ポンボ @ Re:書評「図書館の魔女(4)」(02/26) お元気ですか? 心配致しております。 お…
むちゃばあ@ Re:そのとき 小森香子詩選集(08/11) はじめまして むちゃばあと申します 昨日…

バックナンバー

・2024年09月
・2024年08月
・2024年07月
・2024年06月
・2024年05月
・2024年04月
・2024年03月
・2024年02月

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: