再出発日記

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2021年07月28日
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「その果てを知らず」眉村卓 講談社
SF作家眉村卓の遺作である。2019年11月3日死去、2020年10月20日発行。

何度目かの入院生活をしているSF作家映生(84歳)は、ある日、天井から剥がれ落ちようとしている透明薄膜などが見えてくる。彼はそれが幻覚であることを自覚して観察している。それ以降さまざまな幻覚がやってくる。やがて映生はエッセイのようなSF黎明期の話を書き出すが、やがておかしな方向に話が進んでゆき‥‥。

まるでエッセイか小説か、前衛的なSFか、わからないような作品。映生の過去の話は、少しSFを齧った者には直ぐにモデルがわかるようなことばかりだと思う。私のような者でも速水書房が早川書房、「月刊SF」は「SFマガジン」、「原始惑星」という同人誌は「宇宙塵」、光伸一は星新一、毛利嵐は小松左京、会津正巳が初代マガジン編集長の福島正実、林良宏は次の編集長の南山宏とピンとくる。もしかしたら、ここで初めて明かされる秘話もあったのかもしれないが、私はそこまで詳しくはない。

私の父親は大手術の後に深夜明確な幻覚を見たが、ホンモノだと言って譲らなかった。回復した後は、そんな幻覚なぞ忘れたように3年間過ごしたが、最期の時が近づいたころふと「あゝ分かったぞ、ホントのことが」などと言っていた。幻覚と現実の狭間を「自由に」往来した眉村卓さんは、人生の仕舞い方について、その一つの典型を、私に提示してくれた。

映生(眉村卓)さんは、最後の方でテイニー(瞬間移動)能力さえ身につけ、林良宏から宇宙の秘密を授けられる。実際、何処から狙って構成された小説で、どこから本気の幻覚小説だったのか、わからなかった。真面目な読者は「こんなの小説じゃない、SFでもない」と怒るかも知れないが、私はアリだと思う。そもそも、SFって、こんなモノだった。





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最終更新日  2021年07月28日 23時22分39秒
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