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第4話「脱出大作戦」

すっかり別人になってしまった聶桑楡(ニェサンユー)に疑念を深める寧鈺軒(ネイギョクケン)。
そんな中、大夫人が出て行くと聞いた第二夫人・温婉(オンエン)は真偽を確かめるべく思過(シカ)閣を訪ねた。
聶桑楡は温婉の思惑など知らず絶対に出て行くと宣言、親切にも最後の″痕消し膏″を贈ってしまう。
寝殿をあとにした温婉は自分が手を下すまでもないと知ってほくそ笑んだ。
「檀香(ダンコウ)、これ、あなたにあげる」

聶桑楡は痕消し膏で一儲けできると思いつき、千怜雪(センレイセツ)に協力を求めた。
怜雪はまた面倒を起こせば鞭打ちどころではないと渋ったが、半夏(ハンゲ)は確かに肩の傷がきれいに治ったと報告し、実はその残りを顔にも使ったという。

「実は十分な銀子を稼いだら寧鈺軒と別れるの、でも今の私は追い詰められている
 皆に嫌われ、傷もまだ治っていないわ、あなたの力が必要なの」
「私の?」




千怜雪と半夏の宣伝が功を奏し、使用人たちはこぞって痕消し膏を購入した。
あとは傷が完治したら離縁して出て行くだけとなった聶桑楡、そんなある夜、怜雪が思過閣に駆け込んで来た。
「大夫人、大変です!薔薇園の薔薇が一夜で全部、散りました!
 あの薔薇がなければ痕消し膏が作れません!」
実は温婉の侍女・檀香が薔薇園にお湯を撒き、薔薇を枯らしていた。

その頃、鬼白(キハク)は陌玉(バクギョク)侯に今日の大夫人の様子を報告していた。
痕消し膏の売り上げは合計90両20文、まだ衣を数枚ほど新調できる額だったが、どちらにしても商売は頭打ちになるという。
「薬材となる薔薇が全て散りました」


翌日も痕消し膏を求める使用人の長い列ができた。
しかし今日から限定販売になり、すぐ売り切れになってしまう。
千怜雪は聶桑楡の指示通り薔薇園の花が全て散ったせいで作れなくなったと明かし、それがかえって購買意欲を掻き立てた。
最近では痕消し膏の噂を耳にした令嬢たちからも問い合わせが殺到、聶桑楡は販売を制限することで付加価値をつけることに成功する。
一方、茶幇(チャホウ)の阿狼(アロウ)こと袁郎(エンロウ)は寧鈺軒の暗殺を後回しにすると決めていた。


寧鈺軒と本当の夫婦になりたい温婉。
そこで観心を買おうと人参の汁物を差し入れたが、自分の世話をする必要などないと追い返されてしまう。
「顔色が悪いようだ、そなたが自分で飲みなさい」




一方、思過閣にも陶思維(トウシイ)から滋養のある品々が届いた。
聶桑楡はなぜ陶思維が自分に親切なのか分からなかったが、苜蓿(ムーシュ)の話では2人は学友だったという。
「私を嫌いじゃない人もいたのね…」
すると千怜雪が嬉しそうにやって来た。
聶桑楡の″痕消し膏を売らない作戦″で、驚いたことに温婉が食いついたという。
「温姨娘(イーニャン)は顔色が悪いと候爺に追い返されたとか
 そこでやっと使用人たちの肌が美しいと気づいて欲しくなったのです
 でも今は入手困難で誰も譲りたがらない、結局、3倍の値段で手に入れたそうです」
「変ねえ~前に1瓶、あげたのに…まあいいわ」
聶桑楡は寧府を去る目処がついたため、部屋にある物を何でも持って行くよう勧めた。
この屋敷を出たら店を開き、痕消し膏を売るという。
怜雪はそんな聶桑楡が羨ましかった。
怜雪には科挙を受ける弟がいるため、寧鈺軒の助けが必要で離れることはできないという。
「大丈夫よ!助けが必要な時はいつでも会いに来て、だって私たちは最高の商売仲間でしょう?」
「うん!」

翌日、聶桑楡は政務中の寧鈺軒を訪ね、梨を渡した。
いよいよ明日、寧府を出て行くという。
「馬車も手配したわ、正門に戌の刻よ、あなたが何を企もうと出て行くから、いいわね!」
そして当日、大夫人を見送ろうと正門に寧府の人間が集まった。
しかし戌の刻になっても聶桑楡は現れない。
実はその時、聶桑楡と苜蓿はこっそり裏門から出ようとしていた。
「再見、寧鈺軒!ふん!」
聶桑楡はかんぬきを外して門を開けたが、衛兵たちが立ちふさがっていた。

聶桑楡の計画は失敗、門を閉じてひとまず落ち着こうとしたが、振り返ると寧鈺軒が立っていた。
「簡単に出て行けると本気で思っていたのか?」
「性格が合わないなら無理することないわ」
「ならなぜ手を尽くして嫁いだ?」
「若い娘は愚かなものよ、私も最近、気づいたの」
「自分勝手な…誰か、夫人を思過閣へ」
「思いやりってものがないの?!あなたみたいな冷血漢、親でも手に負えなかったでしょうね!」
両親を持ち出された寧鈺軒は急に顔をこわばらせ、衛兵に聶桑楡を引き渡してしまう。
「連れて行け」
そこに鬼白が駆けつけた。
西の荒れ寺に先日の賊が逃げ込んだ可能性があるという。

寧鈺軒は精鋭を連れて荒れ寺に乗り込んだ。
しかし流民は数十人、そこで寧鈺軒は流民たちの腕を調べるよう指示する。
あの時、阿狼は聶桑楡をかばって腕に矢を受けていた。
すると幼い我が子を抱いた母親が寧鈺軒に助けを求めて来る。
「大人(ダーレン)、この子を助けてください、もう3日も食べていません!」
寧鈺軒は寒そうな母子に自分の外套を掛けることにしたが、その時、母親に腹を刺されてしまう。
「グッ…なぜだ…」
「悪徳役人は殺す!お前は残酷にも私たちの親族を皆殺しにした!
 何が″匪賊を一掃し、民に利をもたらす″よ!」
精鋭たちは一斉に流民たちに剣を向けたが、寧鈺軒は追及しなかった。

寧鈺軒の怪我は重傷だった。
朝廷の役人を刺せば重罪、刑部や大理寺に知られたら母親の命はないだろう。
寧鈺軒は今夜の一件を口止めし、自分の手当てより貧しい流民への対応を優先した。
実は寧鈺軒がこの数年、匪賊の討伐に力を注いだのは、父の死に関わる茶幇を探り、天下を安定させるためだった。
…手厳しくやり過ぎたのか、まさか私が間違っていたと?…

寧府を出て行くと決めた聶桑楡は思過閣の物を全て処分していた。
閑散とした殿内で悶々とした夜を過ごす聶桑楡、すると突然、腹から血を流した寧鈺軒が現れる。
「どうしたの?!すぐ医者を呼ぶわ」
「ならぬ、誰も知らせるな…」
その頃、寧鈺軒の政敵である右執政・凌剣星(リョウケンセイ)は鬼白が夜更けに独りで都を出たと聞いた。
「しっかり見張れ」

聶桑楡は寧鈺軒の傷を確認、ひとまず止血薬で押さえたが、出血が酷く飲み薬が必要だった。
そこで処方箋を書いて苜蓿に渡す。
「薬房で探して煎じてきて」
一方、鬼白は寧鈺軒のため薬を手に入れ、都に戻る途中だった。
しかし馬が罠にはまって落馬、何者かに捕まってしまう。
阿正(アセイ)は鬼白が持っていた薬材を没収し、凌剣星に届けた。
「調べたところ、血を止めて痛みを抑える薬です、効き目の強さから深手を追う者が飲む薬かと
 念のため金めの物を盗んで山賊を装いました」
「引き続き寧鈺軒を見張れ」



翌朝、寧鈺軒は無事に目を覚ました。
しかし昨夜は激しい痛みのせいで何があったのか覚えていない。
「なぜ私はここに?!」
「覚えていないの?夜通し薬を飲ませたのよ?」
聶桑楡は呆れながら何があったのか説明した。
夜更けに寧鈺軒が血まみれで寝殿に現れ、何とか寝台まで運んだが寧鈺軒が言うことを聞かなかったという。
ꉂꉂ(ᵔᗜᵔ*)<なんてざまなの~ケタケタケタ
それでも放っておくわけにいかず、暴れる寧鈺軒の手足を寝台の角に縛りつけ、さらに竹尺で口をこじ開け、馬糞包入りの薬湯を飲ませたという。
ꉂꉂ(ᵔᗜᵔ*)<だって飲まないと死んじゃうから~ヒャヒャヒャ~いい気分♪

つづく


※″梨(リ)を送る″=″離(リ)を送る″、別れを告げる意





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最終更新日  2024.04.02 23:46:20
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