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2017.06.21
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カテゴリ: 観照 [再録]

今年(2014)から祇園祭は前祭と後祭との分離巡行に戻されました。
宵山のご紹介で触れた通り、 49年ぶりの復活 だそうです。冒頭画像は、宵山のご紹介の折に引用させていただいた 前祭のガイドページ です。  (今回の祇園祭で無料配布されているパンフレットです。) 

巡行ルートの部分を切り出しての引用です。そこに通り名を加えています。

17日の山鉾巡行は、巡行コースとしては今まで通りのルートですが、前祭では巡行する山鉾が23基になりました。 巡行距離は変化無しですが、今までのように全ての山鉾が一挙に巡行すれば、当然ながら巡行順番が後になる山鉾は待機時間が長くなります。巡行を観覧する側にも、炎天下の観覧が長時間に及びます。そういう意味では行事本来の前祭・後祭に分散した方が長丁場にならない分、楽かもしれません。

四条烏丸の交差点のところから、 「くじ取らず」の先頭である長刀鉾 が巡行を始めたころに家を出て、巡行見物に出かけました。これが最近のパターンになっています。

現在、生稚児(生身の稚児)が鉾に乗るのは、先頭の長刀鉾だけです。

四条通麩屋町の角のところで四条通りを横切って張られた注連縄をその稚児が日本刀を使って切るという儀式が行われて、巡行がいよいよ始まります。
この長刀鉾が、四条河原町の交差点に至るのが9:45頃、そこで鉾の向きを東西から南北に方向転換させるのが辻回しです。この辻回しが巡行ルートの角々で行われることになります。これが一つの見どころでもあります。

私が京阪電車で祇園四条駅に着いたころには、既に長刀鉾は河原町通を巡行している時刻でした。最近の行動パターンですが、移動しながら山鉾巡行を見物しようかと思っていたのです。ところが、四条河原町の交差点まで行くと、南東角の一隅で何とか見物できそうでした。結果的には、巡行順番の3番目「芦刈山」から最後の「舩鉾」まで、南東角の一隅に居座ったままで、巡行を観覧し写真も何とか撮れました。

山鉾は、まさに「動く美術館」 。山鉾の趣向を楽しむとともに、山鉾の飾りの華麗さや意匠を満喫できるのが楽しいのです。お囃子を聴きながら前懸、胴懸、水引、見送、欄縁飾等を眺める楽しみです。小雨の予報があるようなら透明ビニールが被せられて、その楽しみが半減されます。今年も天気が良くてラッキーでした。

前置きが長くなりました。観覧した山鉾をデジカメで撮った画像を中心にご紹介します。
多少とも山鉾巡行を定点で鑑賞した雰囲気が伝わればうれしい限りです。

「芦刈山」
ご神体の翁の正面からの姿、前懸のライオン頭部のアップは、拙ブログの宵山の記事をご覧ください。
山口華楊原画の段通「凝視」です。

胴懸は尾形光琳原画「燕子花図」、見送は山口華楊原画・綴織「鶴図」。

「孟宗山」


「函谷鉾」
前懸は旧約聖書創世記の場面(毛綴・2006年復元新調。オリジナルは16世紀末の毛綴)
毛綴とは、タペストリーといわれる壁掛用の綴錦です。

鉾頭は、函谷関から見上げる暁の山稜を象徴しているものといいます。
中程の黒塗小屋根の下に、 天王人形として孟嘗君の木彫人形が結わえられています。

(しで) が結わえられ、金幣一個が挿されています。

辻回しが豪快なのです。
固定され前後に回転するだけの車輪。交差点で車輪の下に多数の割竹棒を敷き、水をかけて滑りやすくして、曳き手が音頭取のかけ声に合わせて強引に横に引っ張ってずらせていくのです。この時の巧みさで横に曳く回数が変わります。曳くたびに、車輪の下の割竹棒の微妙な調整が成されるのです。まさに熟練技です。
なにせ、巡行時の鉾は総重量が約8.5~12トンもあるのです。
この辻回しで。鉾がズイッと方向を変えるたびに、観客からはどよめきが起こります。

胴懸は梅に虎を織り出した17世紀李氏朝鮮絨毯、花文様インド絨毯、玉取獅子図中国絨毯の三枚が組み合わされています。その上の水引は山鹿清華作「手織群鶏図」。

小さくて見づらいですが、今年使われた見送は「金剛界礼懺文」の紋織見送です。文字の見送は山鉾全部の中でこれだけだとか。

「山伏山」
淨蔵貴所の大峯入りの姿をあらわしているそうです。八坂にある法観寺の塔が傾いたときに法力でそれを直したという伝説のある人物です。
前懸は雲龍文様の刺繍がなされたもの。欄縁には飛鶴があしらわれています。


綾傘鉾を先導するのは、 棒振り囃子の行列 です。

巡行中、要所要所で鉦・太鼓・笛のお囃子に合わせて、赤熊を被った棒振りが踊りを披露します。棒の振り方が緩急自在、その妙技がみものなのです。



「綾傘鉾」
この傘鉾は昭和54年(1979)に巡行が復活されたものです。
前の傘の垂りは綴錦「飛天の図」、後の方は染織家森口華弘の友禅「四季の花」。

「伯牙山」
中国・周の時代の伯牙にまつわる故事を題材にした山。
琴の名人伯牙が自分の琴を理解してくれた友人鍾子期の死を聞き、その琴の弦を断ったという物語。
この伯牙の人形は身長196.5cmだそうです。

前懸は中国・明代の作で「金襴慶寿裂」の逸品だとか。上の部分には、「慶寿詩」という題の漢詩が記されています。

水引は人物図の押絵切付、胴懸は花卉尾長鳥文様の綴錦。見送は仙人図刺繍。

 辻回しのための割竹棒を運ぶ人たち

「菊水鉾」
菊水鉾の特徴は、唐破風屋根です。
この鉾は謡曲「枕慈童」(観世・梅若では「菊慈童」と称される)から着想されたといいます。

稚児人形は枕慈童の能装束の舞姿 で、童子の素顔として造られ、 名は菊丸
魏の文帝の勅使が薬水を求めて山に入り一人の少年に出会います。その少年は菊の露を飲んで700年生き続け、不老長生してきたと言うのです。慈童は薬水を勅使に献じて庵に姿を消すという奇譚です。人形は無形文化財岡本太郎氏で昭和31年(1956)の作。


鉾頭は天向きの十六菊。天王座には彭祖像を祀り、白地に葉附き菊の紋附き幕を垂らし、台の四隅には色違いの造花菊小枝を立てています。

左右に突き出した榊には多数の紙垂 (しで) が付けられ、 藍地に「菊水」と金色の篆字で記され、昇り龍と下り龍の二頭が両側から抱えた形の額 が付けられています。これは田丸京阿弥氏の制作寄進の品だそうです。

辻回しの準備中


胴懸は皆川月華氏作で、砂塵を巻き上げて雲を疾走する麒麟二頭の図。

見送は同じく皆川月華氏作、長谷川文平氏刺繍の「孔雀花草図染色繍。

つづく

参照資料
*冒頭の宵山・巡行ガイド パンフレット  宵山にて入手
*「平成26年度祇園祭山鉾参観案内書」 リーフレット  宵山にて入手
*『祇園祭細見 山鉾篇』 松田 元著 郷土行事の会発行
山鉾について  :「祇園祭」


【 付記 】 
「遊心六中記」と題しブログを開設していた「eo blog」が2017.3.31で終了しました。
ある日、ある場所を探訪したときの記録です。私の記憶の引き出しを維持したいという目的でこちらに適宜再録を続けています。
再録を兼ねた探訪記等のご紹介です。再読して適宜修正加筆、再編集も加えています。
少しはお役に立つかも・・・・・。他の記録もご一読いただけるとうれしいです。

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Last updated  2017.06.30 23:55:41
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