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. ★ご訪問くださり、有り難うございます。★ ★ 昼と夜の交差点 ★ 黄昏に見る君は 陶器の肌が なお白く 僕の心を躍らせる 太陽は沈み 未だ夜の来ない カフェテラス 全ての影は失せ 灯りが浮かぶ その合間 ニンフが踊る 天使が運ぶ 魔法の瞬間に 全てが神に平伏して 夜の帳の入り口で 深い吐息をつく 口元のピンク その隙間から 零れる笑み それは 何物にも代え難い 宝物 昼と夜の交差点で 僕らは 口づけを交わした この詩を、愛息に贈る By.星原女瑪(2016.7.23.新作)2018.4.30. (注意:詩の転載を禁ずる:シェアはご遠慮下さい) 参照 題名を元に戻しました。 幻惑=げんわく【 うっとりさせること・まどわすこと 】 瞬間=よみ{とき} 太陽が沈み 夜の帳に包まれるまでの束の間。 その瞬間は、あらゆる物の影が消えるそうです。 その瞬間を、マジックアワーと呼びます。 今回の新作は、 その瞬間を、 マジックアワーと言う言葉を使わずに、 詩にしました。 詩を読んで下さった方々に、 心より感謝いたします。 By.星原女瑪(LAME39) 以前に掲載した夕焼けです。 *------*------*------*------*【 お知らせ 】 短編小説・心ゆくまで・ お待たせしています~🙇 執筆中ですので、今少しお待ち下さい。 ***------*------*-----*------*------*------*------*** 短編小説 ミステリーロマンの世界へ、ようこそ。 拙い小説ですが、読んで戴けましたら幸いです。 *------*------*------*------* ★心ゆくまで★ 終章【4】夜の11時を過ぎて、柿谷はオンザロックを片手に、2階へ上がって行った。その夜、丘の上には柔らかな早春の風が、吹いていた。あくる日も、晴天の穏やかな日だった。昼食のサンドイッチを前に、『柿谷さん、宜しかったら散歩に出ませんか』沙織が誘うと、『いいですね。出ましょう。 帰ってきたら買物に付き合ってください』『お買い物ですか...』『あなたに必要な物を、買いたいのですよ。 夕食は、その時に済ませましょう』『柿谷さん、 本当に有りがとうございます』沙織は礼を言ってから、コーヒーポットに手を伸ばした。表に出て肩を並べると、ライトグレーのウィンドブレイカーの柿谷は、思いのほか背が高かった。『私ね、リスをみたんです。 とっても艶の良い可愛いリスでしたわ』『リスですか、それはいい。 昨日の散歩ですね』『ええ。上に、梅の老木が花を付けていますわ』『そうですか。案内をお願いしましょう』和やかな会話の合間に、鶯のさえずりが聞こえた。丘の上で足を止めると、梅の木にリスが遊んでいるのが見えた。『おっ、古い梅ですね』柿谷の声にリスは逃げて行ったが、梅の香は漂っていた。『柿谷さん、お話が有るので掛けませんか』沙織は、ベンチを指さした。『私ね、影が無いんです』『影ですか...』『そうなんですの。ほら、見て』沙織は立ち上がって見せた。『沙織さん、その事なら知っていました。 残念ですが気付いていました』『そう......。どうしてかしら、 私ったら変ですよね』奥村沙織は、珍しく声を荒げた。『沙織さん、 安心して落ち着いてください』柿谷貴次{かきたにこうじ}は手を差し出して、沙織を座らせた。『実は、あの晩なのです。 貴女を此処まで運ぶ途中で、 不思議な体験をしたのです。府中を過ぎた頃に、 不意に現れた光が凄いスピードで追いかけて来て、 貴女に当たった瞬間、天高く昇って行ったのです。 沙織さんの肉体が天高く舞い上がり、消えて行きました。 あの光は、分離した貴女の魂だったのだと、 僕は感じました。魂は車に残り、 仮の姿の中に入った様です。 だから形ある沙織さんの肉体は天に消えて、 不確かな肉体に、魂が宿ったのだと思いました。 着いて、車から抱き上げた貴女は、 空気の様に軽かった......。 しかし僕にとって沙織さんは、存在しています。 僕には、貴女を感じる事が出来るのですよ。 不思議ですがね...』『そうでしたか...。 それにしても不思議な事ですね......』二人の沈黙の間に、鶯の囀りが木霊した。『沙織さん。僕には見えますが、誰にも貴女は見えません。 だから、気を付けましょう』『柿谷さん、一つだけ教えてくださる。 貴方は、こんな私を受け入れてくださるのですか』『勿論ですよ。 沙織さんは僕にとって掛け替えのない人ですからね。 大切にして行きます』柿谷貴次は、きっぱりとした声で言った。『そうですか......』奥村沙織は複雑な心境の侭、黙り込んでしまった。 終章【4】に続く 2018.4.20.星原女瑪. 終章【3】 沙織が深い眠りから目覚めたのは、 翌日の午後の事だった。 電話のベルに驚いて起き上がると、 携帯電話から柿谷の声がした。 『沙織さん、どうですか...。大丈夫ですか』 『はい、大丈夫です。私ったら、 昨日から眠っていました。変ですわね』 『そうですか、それは良かった。 まあ、眠れた方が良いですから、大丈夫ですよ。 何か気になる事でもありますか...』 『いえ、その.....』 沙織は影の事を言いそうになって、 それを押し留めた。 『今夜には帰りますから、 何か有ったのでしたら、後でゆっくり聞きますよ。 ひとりで待たせておくのは心配ですが、 頑張って待っていてください。それでは、また後で』 『はい。電話を、ありがとうございました』 『あっ、そうだ。書斎とリビングに、 画集が有りますから、眺めてみてはどうですか』 『はい。ありがとうございます』 電話を切った沙織の顔に、笑みが零れた。 寝覚めの耳に、柿谷の穏やかな口調が心地よかった。 戸惑いを察してくれた心配りは、それにも増して心に浸みた。 沙織はベッドを抜け出した。 その足でクローゼット開けると、 素早く着替えをした。 その後はキッチンで珈琲を要れてから、 リビングの画集を眺めて過ごした。 美しい装丁の画集は、見事だった。 その画集に、 沙織は思わず引き込まれて行った。 ふと気付くと、夕刻になっていた。 慌ててシャワーを済ませてから、 沙織は再び、画集を眺めて過ごした。 その夜、柿谷が帰宅したのは、 8時を大分に過ぎてからだった。 寿司屋の握りと出来合いのサラダを携えての、 帰宅だった。 柿谷は寿司を摘みながら、 『沙織さん、着替えたのですね。 ラベンダー色のセーターが似合って、素敵ですよ』 『まあ、嬉しいわ。ありがとうございます』 沙織は軽い恥じらいを感じながら、 茶碗の美しい玉露に、視線を落とした。 『お部屋のクローゼットやタンスに、 サイズと色合いの合いそうな衣類が沢山有ったので、 お借りしています』 『ああ、そうですね。気に入ったものが有ったら、 ぜひ使ってください......。 実は亡くなった姉の物で...。 あの部屋を使っていた時期があったのです』 『そうだったのですか。 お姉さまは亡くなられたのですね』 『沙織さん、今夜は疲れているので、 この話は止めましょう。 近い内に話しますので、待って貰えますか...』 『もちろん、柿谷さんにお任せしますわ』 『良かった、それでは近い内に話します。 そろそろシャワーを浴びたいので、失礼しますよ。 そうだ。出来たらコーヒーか紅茶でも入れて置いて下さい』 『夜も更けて来ましたから、お紅茶にしますね。 アイスティーにしましょうか』 『それは嬉しいですね。 シャワーの後には最高ですよ。 そうだ、チョコレートを買って来たんだった。 荷物の中に有りますので、適当にお願いします』 『はい、分かりました』 柿谷は食事を済ませると、 慌ただしく浴室に向かった。 続く】 By.星原女瑪.2018.3.23. 終章【2】 沙織は眩暈を覚えてベンチに座り込んだ。 胸が俄かに高鳴り、額には冷たい汗が滲んだ。 『わたしは......』 奥村沙織は額の汗を拭い、目を閉じた。 影が無いことでショックを受けた沙織は、 なんの躊躇いもなく歩いて来たことを思い、 困惑した。 当たり前のように乗っていた車椅子は、 何処に置いて来たのか覚えがなかった。 奥村沙織は胸に手を当てて、 目を開けてみた。 梅の白い花が見え、 陽の光が柔らかく降り注いでいた。 『緊急時には、遠慮なく使ってください。』 そう言われ、 渡された携帯電話が、ポケットの中に有った。 左手を伸ばして触れると、幾らか気分が落ち着き、 沙織は深く息を吸うことが出来た。 山の奥の方から、 デデッポッポ、デデッポッポと、 山鳩の鳴き声が聞こえ、 それは寂しく木霊した。 その鳴き声を聴きながら、 奥村沙織は立ち上がった。 緩やかな坂道を歩きながら、柿谷の事を思ってみた。 しかし仕事の事を考えると、 電話に触れることは出来なかった。 帰路は永遠に続くのかと思われる程に長く、 その間じゅう何故なのかと言う疑問を、 自分に打つけては苦しくなって足を止めた。 早春の陽光の下で、 トンネルを歩き続けている心地だった。 漸く玄関の前に立つと、 鍵をしまってダイニングへ向かった。 柿谷が座っていた傍らに、車椅子が有った。 だとすれば、 柿谷は立っている私に向かって挨拶をして、 出掛けて行ったのだ。 沙織は一抹の不安と寂しさを抱いて、 ベッドにもぐり込んだ。 一度は火葬場で燃やされるはずだった自分なのだ。 奥村沙織は目を閉じて、自分を鼓舞してみた。 幾らか落ち着くと、 沙織は深い眠りに落ちた。 続く】 By星原女瑪・2018.2.7. *----* ご訪問くださり、誠に有り難うございました ランキングに参加しています。ポチお願い致します。 .小説もこちらにお願いします。 応援有り難うございました ★宜しかったら 又お立ち寄り下さい★ http://ping.blogmura.com/xmlrpc/qv94i9tevul1 http://blog.with2.net/link.php?1832603a
2018.04.30
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. ご訪問くださり、誠に有り難うございます ★ 私の孤独 ★ 遠い銀河の果てから 日暮れると 咽び泣きが聞こえる 遠く 追い遣られた星の 咽び泣きが 聞こえる 遠い宙の彼方で 蒼白く瞬く星よ お前は いったい 何時から そこで 咽び泣いている さあ 今夜は降りて来ないか 私の 孤独よ By.星原女瑪.(2014.12.30)2018.4.23. (注意・詩の転載を禁ずるシェアはご遠慮下さい) 今年は薔薇が、早めに開花しました。 紅茶色が、ブラックティーです。 黄色が、ロイヤルサンセットです。 ブラックティーは{薔薇の家}にて、 ロイヤルサンセットは{吉本園芸}さんで購入しました。 狭いベランダ園芸で鉢植えですが、 薔薇は一生懸命に咲いてくれます。 2018.4.23.LAME39. ブラックティーです。 肉厚になり、色も深くなって来ました。 ロイヤルサンセットです。 昨年の秋に買い、初めての開花です *------*------*------*------*【 お知らせ 】 短編小説・心ゆくまで・掲載しました。 お待たせました~🙇. ***------*------*-----*------*------*------*------*** 短編小説 ミステリーロマンの世界へ、ようこそ。 拙い小説ですが、読んで戴けましたら幸いです。 *------*------*------*------* ★心ゆくまで★ 終章【4】夜の11時を過ぎて、柿谷はオンザロックを片手に、2階へ上がって行った。その夜、丘の上には柔らかな早春の風が、吹いていた。あくる日も、晴天の穏やかな日だった。昼食のサンドイッチを前に、『柿谷さん、宜しかったら散歩に出ませんか』沙織が誘うと、『いいですね。出ましょう。 帰ってきたら買物に付き合ってください』『お買い物ですか...』『あなたに必要な物を、買いたいのですよ。 夕食は、その時に済ませましょう』『柿谷さん、 本当に有りがとうございます』沙織は礼を言ってから、コーヒーポットに手を伸ばした。表に出て肩を並べると、ライトグレーのウィンドブレイカーの柿谷は、思いのほか背が高かった。『私ね、リスをみたんです。 とっても艶の良い可愛いリスでしたわ』『リスですか、それはいい。 昨日の散歩ですね』『ええ。上に、梅の老木が花を付けていますわ』『そうですか。案内をお願いしましょう』和やかな会話の合間に、鶯のさえずりが聞こえた。丘の上で足を止めると、梅の木にリスが遊んでいるのが見えた。『おっ、古い梅ですね』柿谷の声にリスは逃げて行ったが、梅の香は漂っていた。『柿谷さん、お話が有るので掛けませんか』沙織は、ベンチを指さした。『私ね、影が無いんです』『影ですか...』『そうなんですの。ほら、見て』沙織は立ち上がって見せた。『沙織さん、その事なら知っていました。 残念ですが気付いていました』『そう......。どうしてかしら、 私ったら変ですよね』奥村沙織は、珍しく声を荒げた。『沙織さん、 安心して落ち着いてください』柿谷貴次{かきたにこうじ}は手を差し出して、沙織を座らせた。『実は、あの晩なのです。 貴女を此処まで運ぶ途中で、 不思議な体験をしたのです。府中を過ぎた頃に、 不意に現れた光が凄いスピードで追いかけて来て、 貴女に当たった瞬間、天高く昇って行ったのです。 沙織さんの肉体が天高く舞い上がり、消えて行きました。 あの光は、分離した貴女の魂だったのだと、 僕は感じました。魂は車に残り、 仮の姿の中に入った様です。 だから形ある沙織さんの肉体は天に消えて、 不確かな肉体に、魂が宿ったのだと思いました。 着いて、車から抱き上げた貴女は、 空気の様に軽かった......。 しかし僕にとって沙織さんは、存在しています。 僕には、貴女を感じる事が出来るのですよ。 不思議ですがね...』『そうでしたか...。 それにしても不思議な事ですね......』二人の沈黙の間に、鶯の囀りが木霊した。『沙織さん。僕には見えますが、誰にも貴女は見えません。 だから、気を付けましょう』『柿谷さん、一つだけ教えてくださる。 貴方は、こんな私を受け入れてくださるのですか』『勿論ですよ。 沙織さんは僕にとって掛け替えのない人ですからね。 大切にして行きます』柿谷貴次は、きっぱりとした声で言った。『そうですか......』奥村沙織は複雑な心境の侭、黙り込んでしまった。 終章【4】に続く 2018.4.20.星原女瑪. 終章【3】 沙織が深い眠りから目覚めたのは、 翌日の午後の事だった。 電話のベルに驚いて起き上がると、 携帯電話から柿谷の声がした。 『沙織さん、どうですか...。大丈夫ですか』 『はい、大丈夫です。私ったら、 昨日から眠っていました。変ですわね』 『そうですか、それは良かった。 まあ、眠れた方が良いですから、大丈夫ですよ。 何か気になる事でもありますか...』 『いえ、その.....』 沙織は影の事を言いそうになって、 それを押し留めた。 『今夜には帰りますから、 何か有ったのでしたら、後でゆっくり聞きますよ。 ひとりで待たせておくのは心配ですが、 頑張って待っていてください。それでは、また後で』 『はい。電話を、ありがとうございました』 『あっ、そうだ。書斎とリビングに、 画集が有りますから、眺めてみてはどうですか』 『はい。ありがとうございます』 電話を切った沙織の顔に、笑みが零れた。 寝覚めの耳に、柿谷の穏やかな口調が心地よかった。 戸惑いを察してくれた心配りは、それにも増して心に浸みた。 沙織はベッドを抜け出した。 その足でクローゼット開けると、 素早く着替えをした。 その後はキッチンで珈琲を要れてから、 リビングの画集を眺めて過ごした。 美しい装丁の画集は、見事だった。 その画集に、 沙織は思わず引き込まれて行った。 ふと気付くと、夕刻になっていた。 慌ててシャワーを済ませてから、 沙織は再び、画集を眺めて過ごした。 その夜、柿谷が帰宅したのは、 8時を大分に過ぎてからだった。 寿司屋の握りと出来合いのサラダを携えての、 帰宅だった。 柿谷は寿司を摘みながら、 『沙織さん、着替えたのですね。 ラベンダー色のセーターが似合って、素敵ですよ』 『まあ、嬉しいわ。ありがとうございます』 沙織は軽い恥じらいを感じながら、 茶碗の美しい玉露に、視線を落とした。 『お部屋のクローゼットやタンスに、 サイズと色合いの合いそうな衣類が沢山有ったので、 お借りしています』 『ああ、そうですね。気に入ったものが有ったら、 ぜひ使ってください......。 実は亡くなった姉の物で...。 あの部屋を使っていた時期があったのです』 『そうだったのですか。 お姉さまは亡くなられたのですね』 『沙織さん、今夜は疲れているので、 この話は止めましょう。 近い内に話しますので、待って貰えますか...』 『もちろん、柿谷さんにお任せしますわ』 『良かった、それでは近い内に話します。 そろそろシャワーを浴びたいので、失礼しますよ。 そうだ。出来たらコーヒーか紅茶でも入れて置いて下さい』 『夜も更けて来ましたから、お紅茶にしますね。 アイスティーにしましょうか』 『それは嬉しいですね。 シャワーの後には最高ですよ。 そうだ、チョコレートを買って来たんだった。 荷物の中に有りますので、適当にお願いします』 『はい、分かりました』 柿谷は食事を済ませると、 慌ただしく浴室に向かった。 続く】 By.星原女瑪.2018.3.23. 終章【2】 沙織は眩暈を覚えてベンチに座り込んだ。 胸が俄かに高鳴り、額には冷たい汗が滲んだ。 『わたしは......』 奥村沙織は額の汗を拭い、目を閉じた。 影が無いことでショックを受けた沙織は、 なんの躊躇いもなく歩いて来たことを思い、 困惑した。 当たり前のように乗っていた車椅子は、 何処に置いて来たのか覚えがなかった。 奥村沙織は胸に手を当てて、 目を開けてみた。 梅の白い花が見え、 陽の光が柔らかく降り注いでいた。 『緊急時には、遠慮なく使ってください。』 そう言われ、 渡された携帯電話が、ポケットの中に有った。 左手を伸ばして触れると、幾らか気分が落ち着き、 沙織は深く息を吸うことが出来た。 山の奥の方から、 デデッポッポ、デデッポッポと、 山鳩の鳴き声が聞こえ、 それは寂しく木霊した。 その鳴き声を聴きながら、 奥村沙織は立ち上がった。 緩やかな坂道を歩きながら、柿谷の事を思ってみた。 しかし仕事の事を考えると、 電話に触れることは出来なかった。 帰路は永遠に続くのかと思われる程に長く、 その間じゅう何故なのかと言う疑問を、 自分に打つけては苦しくなって足を止めた。 早春の陽光の下で、 トンネルを歩き続けている心地だった。 漸く玄関の前に立つと、 鍵をしまってダイニングへ向かった。 柿谷が座っていた傍らに、車椅子が有った。 だとすれば、 柿谷は立っている私に向かって挨拶をして、 出掛けて行ったのだ。 沙織は一抹の不安と寂しさを抱いて、 ベッドにもぐり込んだ。 一度は火葬場で燃やされるはずだった自分なのだ。 奥村沙織は目を閉じて、自分を鼓舞してみた。 幾らか落ち着くと、 沙織は深い眠りに落ちた。 続く】 By星原女瑪・2018.2.7. *----* ご訪問くださり、誠に有り難うございました ランキングに参加しています。ポチお願い致します。 .小説もこちらにお願いします。 応援有り難うございました ★宜しかったら 又お立ち寄り下さい★ http://ping.blogmura.com/xmlrpc/qv94i9tevul1 http://blog.with2.net/link.php?1832603a
2018.04.23
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. ご訪問くださり、誠に有り難うございます ★ 風の色 ★ 漸く上がった雨の後を 湿り気をおびた 翠い風が吹いている 野山は すっかり色を深めた 五月の風は 湿りかけた手を揺らし 束の間の季節に 別れを告げる 稲田の苗は地に託され 五月雨の恵みに 感謝する その仔らが 五月の風に揺れている By.星原女瑪.(2011.5.13)2018.4.20 (注意:詩の転載を禁ずる:シェアはご遠慮下さい) ミニ薔薇ロンダ・2017に咲いた写真です。 *------*------*------*------*【 お知らせ 】 短編小説・心ゆくまで・掲載しました。 お待たせました~🙇. ***------*------*-----*------*------*------*------*** 短編小説 ミステリーロマンの世界へ、ようこそ。 拙い小説ですが、読んで戴けましたら幸いです。 *------*------*------*------* ★心ゆくまで★ 終章【4】夜の11時を過ぎて、柿谷はオンザロックを片手に、2階へ上がって行った。その夜、丘の上には柔らかな早春の風が、吹いていた。あくる日も、晴天の穏やかな日だった。昼食のサンドイッチを前に、『柿谷さん、宜しかったら散歩に出ませんか』沙織が誘うと、『いいですね。出ましょう。 帰ってきたら買物に付き合ってください』『お買い物ですか...』『あなたに必要な物を、買いたいのですよ。 夕食は、その時に済ませましょう』『柿谷さん、 本当に有りがとうございます』沙織は礼を言ってから、コーヒーポットに手を伸ばした。表に出て肩を並べると、ライトグレーのウィンドブレイカーの柿谷は、思いのほか背が高かった。『私ね、リスをみたんです。 とっても艶の良い可愛いリスでしたわ』『リスですか、それはいい。 昨日の散歩ですね』『ええ。上に、梅の老木が花を付けていますわ』『そうですか。案内をお願いしましょう』和やかな会話の合間に、鶯のさえずりが聞こえた。丘の上で足を止めると、梅の木にリスが遊んでいるのが見えた。『おっ、古い梅ですね』柿谷の声にリスは逃げて行ったが、梅の香は漂っていた。『柿谷さん、お話が有るので掛けませんか』沙織は、ベンチを指さした。『私ね、影が無いんです』『影ですか...』『そうなんですの。ほら、見て』沙織は立ち上がって見せた。『沙織さん、その事なら知っていました。 残念ですが気付いていました』『そう......。どうしてかしら、 私ったら変ですよね』奥村沙織は、珍しく声を荒げた。『沙織さん、 安心して落ち着いてください』柿谷貴次{かきたにこうじ}は手を差し出して、沙織を座らせた。『実は、あの晩なのです。 貴女を此処まで運ぶ途中で、 不思議な体験をしたのです。府中を過ぎた頃に、 不意に現れた光が凄いスピードで追いかけて来て、 貴女に当たった瞬間、天高く昇って行ったのです。 沙織さんの肉体が天高く舞い上がり、消えて行きました。 あの光は、分離した貴女の魂だったのだと、 僕は感じました。魂は車に残り、 仮の姿の中に入った様です。 だから形ある沙織さんの肉体は天に消えて、 不確かな肉体に、魂が宿ったのだと思いました。 着いて、車から抱き上げた貴女は、 空気の様に軽かった......。 しかし僕にとって沙織さんは、存在しています。 僕には、貴女を感じる事が出来るのですよ。 不思議ですがね...』『そうでしたか...。 それにしても不思議な事ですね......』二人の沈黙の間に、鶯の囀りが木霊した。『沙織さん。僕には見えますが、誰にも貴女は見えません。 だから、気を付けましょう』『柿谷さん、一つだけ教えてくださる。 貴方は、こんな私を受け入れてくださるのですか』『勿論ですよ。 沙織さんは僕にとって掛け替えのない人ですからね。 大切にして行きます』柿谷貴次は、きっぱりとした声で言った。『そうですか......』奥村沙織は複雑な心境の侭、黙り込んでしまった。 終章【4】に続く 2018.4.20.星原女瑪. 終章【3】 沙織が深い眠りから目覚めたのは、 翌日の午後の事だった。 電話のベルに驚いて起き上がると、 携帯電話から柿谷の声がした。 『沙織さん、どうですか...。大丈夫ですか』 『はい、大丈夫です。私ったら、 昨日から眠っていました。変ですわね』 『そうですか、それは良かった。 まあ、眠れた方が良いですから、大丈夫ですよ。 何か気になる事でもありますか...』 『いえ、その.....』 沙織は影の事を言いそうになって、 それを押し留めた。 『今夜には帰りますから、 何か有ったのでしたら、後でゆっくり聞きますよ。 ひとりで待たせておくのは心配ですが、 頑張って待っていてください。それでは、また後で』 『はい。電話を、ありがとうございました』 『あっ、そうだ。書斎とリビングに、 画集が有りますから、眺めてみてはどうですか』 『はい。ありがとうございます』 電話を切った沙織の顔に、笑みが零れた。 寝覚めの耳に、柿谷の穏やかな口調が心地よかった。 戸惑いを察してくれた心配りは、それにも増して心に浸みた。 沙織はベッドを抜け出した。 その足でクローゼット開けると、 素早く着替えをした。 その後はキッチンで珈琲を要れてから、 リビングの画集を眺めて過ごした。 美しい装丁の画集は、見事だった。 その画集に、 沙織は思わず引き込まれて行った。 ふと気付くと、夕刻になっていた。 慌ててシャワーを済ませてから、 沙織は再び、画集を眺めて過ごした。 その夜、柿谷が帰宅したのは、 8時を大分に過ぎてからだった。 寿司屋の握りと出来合いのサラダを携えての、 帰宅だった。 柿谷は寿司を摘みながら、 『沙織さん、着替えたのですね。 ラベンダー色のセーターが似合って、素敵ですよ』 『まあ、嬉しいわ。ありがとうございます』 沙織は軽い恥じらいを感じながら、 茶碗の美しい玉露に、視線を落とした。 『お部屋のクローゼットやタンスに、 サイズと色合いの合いそうな衣類が沢山有ったので、 お借りしています』 『ああ、そうですね。気に入ったものが有ったら、 ぜひ使ってください......。 実は亡くなった姉の物で...。 あの部屋を使っていた時期があったのです』 『そうだったのですか。 お姉さまは亡くなられたのですね』 『沙織さん、今夜は疲れているので、 この話は止めましょう。 近い内に話しますので、待って貰えますか...』 『もちろん、柿谷さんにお任せしますわ』 『良かった、それでは近い内に話します。 そろそろシャワーを浴びたいので、失礼しますよ。 そうだ。出来たらコーヒーか紅茶でも入れて置いて下さい』 『夜も更けて来ましたから、お紅茶にしますね。 アイスティーにしましょうか』 『それは嬉しいですね。 シャワーの後には最高ですよ。 そうだ、チョコレートを買って来たんだった。 荷物の中に有りますので、適当にお願いします』 『はい、分かりました』 柿谷は食事を済ませると、 慌ただしく浴室に向かった。 続く】 By.星原女瑪.2018.3.23. 終章【2】 沙織は眩暈を覚えてベンチに座り込んだ。 胸が俄かに高鳴り、額には冷たい汗が滲んだ。 『わたしは......』 奥村沙織は額の汗を拭い、目を閉じた。 影が無いことでショックを受けた沙織は、 なんの躊躇いもなく歩いて来たことを思い、 困惑した。 当たり前のように乗っていた車椅子は、 何処に置いて来たのか覚えがなかった。 奥村沙織は胸に手を当てて、 目を開けてみた。 梅の白い花が見え、 陽の光が柔らかく降り注いでいた。 『緊急時には、遠慮なく使ってください。』 そう言われ、 渡された携帯電話が、ポケットの中に有った。 左手を伸ばして触れると、幾らか気分が落ち着き、 沙織は深く息を吸うことが出来た。 山の奥の方から、 デデッポッポ、デデッポッポと、 山鳩の鳴き声が聞こえ、 それは寂しく木霊した。 その鳴き声を聴きながら、 奥村沙織は立ち上がった。 緩やかな坂道を歩きながら、柿谷の事を思ってみた。 しかし仕事の事を考えると、 電話に触れることは出来なかった。 帰路は永遠に続くのかと思われる程に長く、 その間じゅう何故なのかと言う疑問を、 自分に打つけては苦しくなって足を止めた。 早春の陽光の下で、 トンネルを歩き続けている心地だった。 漸く玄関の前に立つと、 鍵をしまってダイニングへ向かった。 柿谷が座っていた傍らに、車椅子が有った。 だとすれば、 柿谷は立っている私に向かって挨拶をして、 出掛けて行ったのだ。 沙織は一抹の不安と寂しさを抱いて、 ベッドにもぐり込んだ。 一度は火葬場で燃やされるはずだった自分なのだ。 奥村沙織は目を閉じて、自分を鼓舞してみた。 幾らか落ち着くと、 沙織は深い眠りに落ちた。 続く】 By星原女瑪・2018.2.7. *----* ご訪問くださり、誠に有り難うございました ランキングに参加しています。ポチお願い致します。 .小説もこちらにお願いします。 応援有り難うございました ★宜しかったら 又お立ち寄り下さい★ http://ping.blogmura.com/xmlrpc/qv94i9tevul1 http://blog.with2.net/link.php?1832603a
2018.04.20
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. ★ 本日も、ご訪問有り難うございます。★ ★ あけぼの ★ ひと滴が 雪解けの嶺より 零れ落ち また ひと滴が 零れ落ち 嶺の谷間に 細やかな流れが 春の音色を奏でる 鹿は その匂いに誘われ 栗鼠は その調べに誘われ 乾きを癒す 獣たちよ 君らは 春の訪れを 感受する 幽弦に 緑が芽吹き 降り注ぐ雨は 炭色の里に 彩りをもたらす ああ 春よ たおやかで 強き春よ その源は 零れ落ちた ひと滴 参照= ひと滴(ひとしずく)・細やか(こまやか) ・栗鼠(りす)・嶺(みね) By.星原女瑪(2015.3.26)2018.4.14. (注意・詩の転載を禁ずる;シェアはご遠慮下さい) *------*------*------*【 お知らせ 】 短編小説・心ゆくまで・は、執筆中です。 お待たせして、御免なさい~🙇. ***------*------*-----*------*------*------*------*** 短編小説 ミステリーロマンの世界へ、ようこそ。 拙い小説ですが、読んで戴けましたら幸いです。 *------*------*------*------* ★心ゆくまで★ 終章【3】 沙織が深い眠りから目覚めたのは、 翌日の午後の事だった。 電話のベルに驚いて起き上がると、 携帯電話から柿谷の声がした。 『沙織さん、どうですか...。大丈夫ですか』 『はい、大丈夫です。私ったら、 昨日から眠っていました。変ですわね』 『そうですか、それは良かった。 まあ、眠れた方が良いですから、大丈夫ですよ。 何か気になる事でもありますか...』 『いえ、その.....』 沙織は影の事を言いそうになって、 それを押し留めた。 『今夜には帰りますから、 何か有ったのでしたら、後でゆっくり聞きますよ。 ひとりで待たせておくのは心配ですが、 頑張って待っていてください。それでは、また後で』 『はい。電話を、ありがとうございました』 『あっ、そうだ。書斎とリビングに、 画集が有りますから、眺めてみてはどうですか』 『はい。ありがとうございます』 電話を切った沙織の顔に、笑みが零れた。 寝覚めの耳に、柿谷の穏やかな口調が心地よかった。 戸惑いを察してくれた心配りは、それにも増して心に浸みた。 沙織はベッドを抜け出した。 その足でクローゼット開けると、 素早く着替えをした。 その後はキッチンで珈琲を要れてから、 リビングの画集を眺めて過ごした。 美しい装丁の画集は、見事だった。 その画集に、 沙織は思わず引き込まれて行った。 ふと気付くと、夕刻になっていた。 慌ててシャワーを済ませてから、 沙織は再び、画集を眺めて過ごした。 その夜、柿谷が帰宅したのは、 8時を大分に過ぎてからだった。 寿司屋の握りと出来合いのサラダを携えての、 帰宅だった。 柿谷は寿司を摘みながら、 『沙織さん、着替えたのですね。 ラベンダー色のセーターが似合って、素敵ですよ』 『まあ、嬉しいわ。ありがとうございます』 沙織は軽い恥じらいを感じながら、 茶碗の美しい玉露に、視線を落とした。 『お部屋のクローゼットやタンスに、 サイズと色合いの合いそうな衣類が沢山有ったので、 お借りしています』 『ああ、そうですね。気に入ったものが有ったら、 ぜひ使ってください......。 実は亡くなった姉の物で...。 あの部屋を使っていた時期があったのです』 『そうだったのですか。 お姉さまは亡くなられたのですね』 『沙織さん、今夜は疲れているので、 この話は止めましょう。 近い内に話しますので、待って貰えますか...』 『もちろん、柿谷さんにお任せしますわ』 『良かった、それでは近い内に話します。 そろそろシャワーを浴びたいので、失礼しますよ。 そうだ。出来たらコーヒーか紅茶でも入れて置いて下さい』 『夜も更けて来ましたから、お紅茶にしますね。 アイスティーにしましょうか』 『それは嬉しいですね。 シャワーの後には最高ですよ。 そうだ、チョコレートを買って来たんだった。 荷物の中に有りますので、適当にお願いします』 『はい、分かりました』 柿谷は食事を済ませると、 慌ただしく浴室に向かった。 続く】 By.星原女瑪.2018.3.23. 終章【2】 沙織は眩暈を覚えてベンチに座り込んだ。 胸が俄かに高鳴り、額には冷たい汗が滲んだ。 『わたしは......』 奥村沙織は額の汗を拭い、目を閉じた。 影が無いことでショックを受けた沙織は、 なんの躊躇いもなく歩いて来たことを思い、 困惑した。 当たり前のように乗っていた車椅子は、 何処に置いて来たのか覚えがなかった。 奥村沙織は胸に手を当てて、 目を開けてみた。 梅の白い花が見え、 陽の光が柔らかく降り注いでいた。 『緊急時には、遠慮なく使ってください。』 そう言われ、 渡された携帯電話が、ポケットの中に有った。 左手を伸ばして触れると、幾らか気分が落ち着き、 沙織は深く息を吸うことが出来た。 山の奥の方から、 デデッポッポ、デデッポッポと、 山鳩の鳴き声が聞こえ、 それは寂しく木霊した。 その鳴き声を聴きながら、 奥村沙織は立ち上がった。 緩やかな坂道を歩きながら、柿谷の事を思ってみた。 しかし仕事の事を考えると、 電話に触れることは出来なかった。 帰路は永遠に続くのかと思われる程に長く、 その間じゅう何故なのかと言う疑問を、 自分に打つけては苦しくなって足を止めた。 早春の陽光の下で、 トンネルを歩き続けている心地だった。 漸く玄関の前に立つと、 鍵をしまってダイニングへ向かった。 柿谷が座っていた傍らに、車椅子が有った。 だとすれば、 柿谷は立っている私に向かって挨拶をして、 出掛けて行ったのだ。 沙織は一抹の不安と寂しさを抱いて、 ベッドにもぐり込んだ。 一度は火葬場で燃やされるはずだった自分なのだ。 奥村沙織は目を閉じて、自分を鼓舞してみた。 幾らか落ち着くと、 沙織は深い眠りに落ちた。 続く】 By星原女瑪・2018.2.7. *----* ご訪問くださり、誠に有り難うございました ランキングに参加しています。ポチお願い致します。 .小説もこちらにお願いします。 応援有り難うございました ★宜しかったら 又お立ち寄り下さい★ http://ping.blogmura.com/xmlrpc/qv94i9tevul1 http://blog.with2.net/link.php?1832603a
2018.04.14
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. ★ 本日も、ご訪問有り難うございます。★ . *------*------*------* ★ うつろい ★ ひと雨ごとに 温かくなり ひと雨ごとに 冬 とおく ひと雨ごとに 暖かくなり 春は とおく ひと雨ごとに 冷え込んで 秋 ふかく ひと雨ごとに 寒くなり 雨は 雪に 恋は とおく 想いは 胸に By.星原女瑪.(2016.9.01.)2018.4.8. (注意:詩の転載を禁ずる:シェアはご遠慮下さい) *------*------*------*【 お知らせ 】 短編小説・心ゆくまで・は、執筆中です。 お待たせして、御免なさい~🙇. ***------*------*-----*------*------*------*------*** 短編小説 ミステリーロマンの世界へ、ようこそ。 拙い小説ですが、読んで戴けましたら幸いです。 *------*------*------*------* ★心ゆくまで★ 終章【3】 沙織が深い眠りから目覚めたのは、 翌日の午後の事だった。 電話のベルに驚いて起き上がると、 携帯電話から柿谷の声がした。 『沙織さん、どうですか...。大丈夫ですか』 『はい、大丈夫です。私ったら、 昨日から眠っていました。変ですわね』 『そうですか、それは良かった。 まあ、眠れた方が良いですから、大丈夫ですよ。 何か気になる事でもありますか...』 『いえ、その.....』 沙織は影の事を言いそうになって、 それを押し留めた。 『今夜には帰りますから、 何か有ったのでしたら、後でゆっくり聞きますよ。 ひとりで待たせておくのは心配ですが、 頑張って待っていてください。それでは、また後で』 『はい。電話を、ありがとうございました』 『あっ、そうだ。書斎とリビングに、 画集が有りますから、眺めてみてはどうですか』 『はい。ありがとうございます』 電話を切った沙織の顔に、笑みが零れた。 寝覚めの耳に、柿谷の穏やかな口調が心地よかった。 戸惑いを察してくれた心配りは、それにも増して心に浸みた。 沙織はベッドを抜け出した。 その足でクローゼット開けると、 素早く着替えをした。 その後はキッチンで珈琲を要れてから、 リビングの画集を眺めて過ごした。 美しい装丁の画集は、見事だった。 その画集に、 沙織は思わず引き込まれて行った。 ふと気付くと、夕刻になっていた。 慌ててシャワーを済ませてから、 沙織は再び、画集を眺めて過ごした。 その夜、柿谷が帰宅したのは、 8時を大分に過ぎてからだった。 寿司屋の握りと出来合いのサラダを携えての、 帰宅だった。 柿谷は寿司を摘みながら、 『沙織さん、着替えたのですね。 ラベンダー色のセーターが似合って、素敵ですよ』 『まあ、嬉しいわ。ありがとうございます』 沙織は軽い恥じらいを感じながら、 茶碗の美しい玉露に、視線を落とした。 『お部屋のクローゼットやタンスに、 サイズと色合いの合いそうな衣類が沢山有ったので、 お借りしています』 『ああ、そうですね。気に入ったものが有ったら、 ぜひ使ってください......。 実は亡くなった姉の物で...。 あの部屋を使っていた時期があったのです』 『そうだったのですか。 お姉さまは亡くなられたのですね』 『沙織さん、今夜は疲れているので、 この話は止めましょう。 近い内に話しますので、待って貰えますか...』 『もちろん、柿谷さんにお任せしますわ』 『良かった、それでは近い内に話します。 そろそろシャワーを浴びたいので、失礼しますよ。 そうだ。出来たらコーヒーか紅茶でも入れて置いて下さい』 『夜も更けて来ましたから、お紅茶にしますね。 アイスティーにしましょうか』 『それは嬉しいですね。 シャワーの後には最高ですよ。 そうだ、チョコレートを買って来たんだった。 荷物の中に有りますので、適当にお願いします』 『はい、分かりました』 柿谷は食事を済ませると、 慌ただしく浴室に向かった。 続く】 By.星原女瑪.2018.3.23. 終章【2】 沙織は眩暈を覚えてベンチに座り込んだ。 胸が俄かに高鳴り、額には冷たい汗が滲んだ。 『わたしは......』 奥村沙織は額の汗を拭い、目を閉じた。 影が無いことでショックを受けた沙織は、 なんの躊躇いもなく歩いて来たことを思い、 困惑した。 当たり前のように乗っていた車椅子は、 何処に置いて来たのか覚えがなかった。 奥村沙織は胸に手を当てて、 目を開けてみた。 梅の白い花が見え、 陽の光が柔らかく降り注いでいた。 『緊急時には、遠慮なく使ってください。』 そう言われ、 渡された携帯電話が、ポケットの中に有った。 左手を伸ばして触れると、幾らか気分が落ち着き、 沙織は深く息を吸うことが出来た。 山の奥の方から、 デデッポッポ、デデッポッポと、 山鳩の鳴き声が聞こえ、 それは寂しく木霊した。 その鳴き声を聴きながら、 奥村沙織は立ち上がった。 緩やかな坂道を歩きながら、柿谷の事を思ってみた。 しかし仕事の事を考えると、 電話に触れることは出来なかった。 帰路は永遠に続くのかと思われる程に長く、 その間じゅう何故なのかと言う疑問を、 自分に打つけては苦しくなって足を止めた。 早春の陽光の下で、 トンネルを歩き続けている心地だった。 漸く玄関の前に立つと、 鍵をしまってダイニングへ向かった。 柿谷が座っていた傍らに、車椅子が有った。 だとすれば、 柿谷は立っている私に向かって挨拶をして、 出掛けて行ったのだ。 沙織は一抹の不安と寂しさを抱いて、 ベッドにもぐり込んだ。 一度は火葬場で燃やされるはずだった自分なのだ。 奥村沙織は目を閉じて、自分を鼓舞してみた。 幾らか落ち着くと、 沙織は深い眠りに落ちた。 続く】 By星原女瑪・2018.2.7. *----* ご訪問くださり、誠に有り難うございました ランキングに参加しています。ポチお願い致します。 .小説もこちらにお願いします。 応援有り難うございました ★宜しかったら 又お立ち寄り下さい★ http://ping.blogmura.com/xmlrpc/qv94i9tevul1 http://blog.with2.net/link.php?1832603a
2018.04.08
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