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昨日、鳥山明が亡くなったニュースが世界中のキッズやオタクを震撼させた。私はコミックスは一度も読んだことがなかったけれど、あられちゃんのアニメは学生の頃、「なんてけたたましいアニメ。でもキャラクターが日本人離れしているし、女子向け・男子向きとか関係ない面白さ」と思ったくらい。大岡山に住んでいた頃、今はない小さな書店(ほとんど雑誌と再度両面の棚には文庫本があった)に毎週F!速報買いに行くと、小学生低学年くらいの男の子が『ドラゴンボール』のコミックスを買いに来てた。何度も。男の子向けの冒険譚なんだろうな、ぐらいの知識しかなく、アニメも一度も見たことがなかった。でも「ドラゴンクエスト」には夢中になった。鳥山さんの絵柄はパッケージとか象徴としてのキャラクターだけだったけど、どこからも不満の出ない(エロにも搾取されず大人も納得する子どもがワクワクするキャラ)完璧さだった。日本のサブカルが往々にしてチャイルディッシュなことをより印象づけたとも思うけど。でもこの時代からヨーロッパで日本のアニメに嵌る人たちがでてきて、これは抑圧された階級社会におけるブルーカラーの人たちにとってのパンクロック以前の年齢でこういうアニメの洗礼を受けると健全に育ちそうだし、実際、嬉々として日本にやってきてアニメグッズやガンプラにはまるあんちゃんを観てきて、彼らも堂々と大人だけ、あるいは上流だけの世界じゃない、僕らにも楽しみを持つ権利がある、と言えたんじゃないかと思ったりした。TARAKOさんの訃報も流れてきて、同い年だし、もうなんだか。自分も週4勤務になって給料10万も下がるけど生きて行けるかな。とりあえず住宅ローンは繰り上げ返済して関西することにした。老後のたくわえが300万ほど減る→65歳以降年金じゃ暮らせないから月5万くらい蓄えから取り崩す→年間60万つかうと10年しかもたない→どこかのタイミング(70前くらい?)で家を売るかリバースモーゲージにする。どれだけ不利なのかもっとちゃんと調べないと。
2024.03.09
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年に1回くらい投稿しないと使い方忘れるお年頃なので4カ月ぶりの投稿。文字数限られるXより、だらだら好き放題描けるブログに戻るかも。今日は日本橋に映画観に行こうと思っていたけど、観たいのは「ボーはおそれている」「~フラワームーン」「落下の解剖学」。いずれもアカデミー賞レースがらみ。でもどれも長い。解剖学で150分。他は3時間以上。きっと途中で意識が飛ぶ(数分で大抵致命的なシーンを見逃す傾向にある)。ならば「Perfect days 」をもう一回観ようかなと思ったけど、土日は上映していなかったよ。映画館は、ほぼ配信では観られなそうなマイナーなものしか観ないのはまあ映画はついでで、デパ地下で3月ぽいお弁当やお菓子、魚を買おうと思った。なぜか無性に筋子が食べたくなったのと、生協で取り寄せた鮭がおいしくなかったから、塩辛い新巻鮭を買おうと思った。でも来週はアカデミー賞のために休暇を取ったので、週末からの3連休にこそ食費にお金をかけようと思った。というわけで、いつもの自炊。でも3月3日でスーパーにもそれらしい食材が並んでいてうれしい。生ガキ買った。白ワインでチーズとレモン並べてオードヴルにする。デザートに小さな桜餅と柏餅も。早く新茶出ないかなあ。おいしい煎茶がなくて悲しい。料理は切昆布があるので山菜と切昆布ときくらげとこんにゃくとちくわとお揚げの炒め煮。豚肉入れようか迷うけど、お肉は豚汁にしよう。エリンギをいっぱい入れて炊き込みご飯もつくる。明日ははまぐりの潮汁! 花より団子なのでお花も雛飾りもないけど、3月っぽい。そういえばエンゼルのお向かいの河津桜は満開だった。ネトフリ、2月4日にバーンスタインの伝記映画のために久々に会員になったけど、結局ほかはあまり観なかったので、1カ月で退会。最後になんかみとこうとおもったら、「グレイス&フランキー」という平均年齢80オーバーのハリウッドスターたちのソープオペラがあった。シリーズで。すげえええ。だってジェーンフォンダ昭和12年生まれよ? 2015年の第一シーズンだからジェーンフォンダが82、トムリン76、ウォーターストン、マーティンシーンが75歳。最終シーズンはフォンダ85歳よお。信じられない。スタイル変わらない。動きも若い時のまま。すごいなあ努力とお直しの賜物か。で。お話はドタバタスラプスティックソープオペラ。40年以上一緒に暮らしてる夫婦が2組。ところが今になって旦那二人が結婚するからと妻に離婚をつきつけカードも止める。フォンダはみたまんまのシニアモデルとしてヘアカラーのパッケージに写真が使われるレベルのセレブ、夫のシーンは離婚弁護士、トムリンはフラワーチルドレンのなれの果て。ウォーターストンは何の仕事かな平均的なホワイトカラー。やっぱりこの世代の女性が一番強烈だわ。ダイエットとワークアウトに命かけてるグレイス(フォンダ)を知っているフランキー(トムリン)は、食事の席でウォッカ注文するグレイスに「いいのお?そのお酒、芋からできているのよ?」とかいう。1回30分がいいね。ネトフリドラマではもっとも長寿らしい(2022年代7シーズンで終了)。フランキーはアマチュアで絵を教えたりしているベジタリアンで、高級老人ホームの絵のサークル講師に応募したのに入居者と間違えられて隅々まで案内され、「ちなみにおいくら?」ときいたら、「月1万ドルです」と。使用料食費込みなら安いんだろうな。雑貨屋っぽい店のレジで、レジ係はすぐに若い客に対応してしまい、いつまでもタバコすら注文できず無視される。高齢者つらいよね。期待しちゃいけないのよ。若い子にはかなわないのよ。向こうから手を差し伸べない限り、若いこと対等だと思わないほうがいいのよ。どんなに自分のほうが経験豊富で何でもしっていて、周囲の若者がみんな間違っていてもね。さて、途中で炒め煮作って味みたら、薄味でなかなかよい出来。今日はほかに炊き込みご飯にしようとおもったけど、白ご飯で混ぜご飯にしてもいいな。切昆布、こんにゃく、エリンギ、人参、山菜水煮、お揚げ、百年ちくわ、きくらげ。テンポがよくてヒッピームーブメントの洗礼を浴びた世代が面白がるドラマだわ。3話目観てるけど、離婚されて生活費のために仕事をしなくちゃと思ってる二人。でも「自分はまだまだやれる」と思っても、世間はそう見ないのが高齢者。昔取った杵柄は通用しないのが高齢者。ツイッタ界隈でも趣味ジャンルで昔のネタを重箱の隅をつついて日がな連投しているのは高齢者。わたしももうじきその道に足を突っ込むんだな。若ぶろうとするつもりはないけど、ちょっと下の世代から生温い目でみられるのはいやだなあ。気を付けよう。いろいろと。
2024.03.02
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かつてはその業界の仕事もしていたクラシックの話題をググってたら自分のブログがヒットしたので、え、8年ぶり?の記念カキコ(死語?)。機能がいろいろ変わってて困惑w2015年くらいからクラシックよりロックが増えて、仕事も変わってなんだかゆっくり書けなくなっていたのでツイッタにスイッチしたんだった。当時はなぜあんなに長い文章を平気で書けたのか、書きたいことが多かったのか謎。まあX(旧Twitter)では制限ギリまで書くタイプで、それだけでオバ認定だし、オバどころかババに近づいてきたわ。たまには書き込みしてたらまた維持してくれるのかしらね楽天さん。
2023.11.23
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■なぜ南米でプログレがThe O2でのアーサー2016が無事終わったようだ。長男がツイッタ―に簡単な状況と写真を載せている。その前に、春頃録音していたスタジオ盤のお披露目パーティがあって、懐かしい面々(アシュリー、女性ヴォーカリスト、デイブ・コルクホーンら)の顔も確認できた。1日限りの久々のビッグステージ、リックが大好きなビッグステージでの高揚感が得られるだろう。何しろO2は2万人近く入る。当然DVDで発売されるだろうな。スタジオ録音盤とセットでお願いしたいものだ。終わったら、南米ツアーやるんだろうな。90年代後半くらいから、リックのシンフォロックはなぜか南米で火がついて、毎年のようにコンサートやっている。契約書の条項に「マント着用のこと」とあり、どうやら70年代のリックのイメージがいまだに温存(?)されているようだ。アルゼンチンかどこかで、15歳くらいの少年がヘンリーのCDを持ってきてリックにサインをねだってきたので「どうしてこんな古い音楽を?」とたずねたら、「1週間前に初めて聞いたので、僕にとってこれは新しい曲なんです」と言われて、なんだか感動したというエピソードがある。暑くて楽天的な国民性(よくわかんないけどおおざっぱな印象)のエリアでプログレが流行るとは思わなかったけど、リックのオケもコーラスもバンドもあれもこれも、っていう過剰性が受けているのかもしれない。実際、つべにあがっているライブとか見てると聴衆の熱狂ぶりはすごいな。リックもうれしそうにショルキーかかえて客席に降りて行って、女づれでもどってきたりしているし。なんだろ、欧米では70年代のキーボードの魔術師が、見た目あんなに変わってしまっても受け入れ、当時と同じものを要求する国民なのか。日本だったらおとなしく、ピアノ1台のコンサートでも聴衆は満足なのにねえ。今回も、まあO2のあとも忙しそうだけど、あわよくば、日本にも来て、オペラの電光掲示字幕みたいなのつけて、日本人のナレーター(山寺宏一希望!)で地底探検とアーサーをやってほしい。アーサーも地底探検も見ていると、オーケストラと合唱がいかに合わせられるかにかかっているよね。どうしてもアウフタクトをカウントするから、頭出しが遅れる。そして金管が壊滅的にへたくそ。まあ一流のオーケストラを使えるわけではないからなあ。でもあの程度の金管だったら、シンセで打ち込みやったほうがマシだと思うんだよねえ。それより、久しぶりに見た笑顔のオリバーがすごく老けてて驚いた。一瞬、え、オリバー?・・・だよね?と疑ったくらい。法令線がくっきりしてきたのは、最近の練習風景でも気になっていたけど、笑うと目じりがグンと下がって長~いシワが現われる。無精ひげもあって、なんか小汚いおっさん風。いかん、いかんよオリバー。あの中途半端な髪の長さもいかん。まあね、さすがに40を過ぎると、超ロングは見苦しくなってくるんだよね。女性もそうだけど。でも今の長さだと、リックのほうが長いんじゃないの?オリバーは2002年に正式に結婚。2000年ころにはワイフとして写真も掲載しているけど。奥さんの名前はLisa。ブロンドの知的な美人。子どももいるような話は書いているけど、よくわからない。結婚14年目か。なんだかアダムに比べていろいろ不遇っぽいけど、ウェイクマン家の血統で唯一「気品」を感じされる人なんだから、頑張ってほしいものだ(そして彼の音楽はほとんど凡庸)。■地底探検 in メルボルン 197575年2月のメルボルンでの「地底探検」ライブDVDを見た。リックが日本人をディスっているといういわくつきの悪名高いライブ。笹川さんの、あんまり役に立たない、でも面白いライナーがついていた。この一件でリックは日本で相当評判を落としている。未だに某掲示板ではリック嫌いの理由としてこの件を持ち出している人もいる。イエスを出たり入ったりしてイエスの成長を妨げた(?)戦犯という声まで。まあ、それは随分勝手な思い込みだと思うけどね。最新のDVDではその部分が削られているという書き込みをネット上で見たけど、2006年発売のDVDではしっかり字幕でも紹介されている。でもディスっているわけじゃなくて、「日本語はRとLを区別しない言語だから苦労した」と、日本語の特性を理解したうえで、パフォーマンスにかかわる苦労話をしているだけだった。そこでリックもやめときゃいいのに、ついリップサービスで「英語を話す国に来てうれしい」を2回言っているし、日本人のコーラスだとこのフレーズがこうなっちゃうんだと真似してみせる。これはいかんね。前にもリックは自分のソロコンサートのMCで日本語マネてみせているけど全然似てないですから!ネガティブな人なら前者は「英語を話さない国には行きたくない」、後者は「欧米人からは滑稽に見える変な言語」ってことになるだろうし。そもそもあの時期、あの段階で、いきなり極東まで来たのがすごいよね。41年前だよ。すでにイエスで1回来ているとはいえ、オケとコーラスを現地調達して、東京・大阪・名古屋で計7回って、多すぎだろう!チケットちゃんと売れたのかなあ。地底探検自体、日本人にそれほどなじみのあるお話じゃないし、ナレーションは英語だったんだよねえ。ああいうスタイルだと、どうしても朗読付きの音楽劇を想起させるけど、ステージでは誰も演技しない。ひたすら演奏しているだけ。今ならリックの要塞をアップにして大型スクリーンに移したりと、もっとかっこいい演出ができるのかもしれないけど、リックはあくまで音楽が主役で、5歳の頃からのお気に入りの地底探検をやりたかったんだなあ。DVDは120分ほどあって、地底探検自体はLP1枚分だから、なにかおまけがついているんだろうと思ったら、コンサート自体が、ヘンリーから2曲、まだアルバム発売前のアーサーから2曲弾いていた。よくつべにも上がっている、ものすごい高い位置でのマーリンの速弾きはこのときの映像だった。あれ、自分だったら鍵盤に手がとどかないな。リックはあの長身とあの長髪で、遠目には本当に異形で、他を圧倒する存在感なんだけど、相変わらず(というか今見ても)陶酔しながら弾く顔はちょっとアレなんだよな。でも、指が90年頃の「神キーボード」映像よりさらに細くて長くて美しい。どうして神はこんな美しい指とピアノの技量を、あんな俗物に与えたもう他のだろうか。■30年ぶりの同窓会このDVD、思ったよりも画質もよく満足だけど、なによりの収穫はおまけ映像Lost Journey(失われた旅路)だった。ぴったり30年後に当時の主要メンバー5人に集まってもらい、ツアー中にメンバーの一人(ピックフォード・ホプキンス)が8ミリで撮ったプライベート映像を見ながら当時を懐かしむという同窓会。5人のメンバーのうち、私はリックとアシュリー・ホルト以外わからなかったけど、当時のギター、ドラムス、ツインボーカルのもう一方、ゲイリー・ピックフォード・ホプキンスだった。日本での移動中の光景などがしっかりおさめられていて、東京駅や新幹線、車中、ホテル内での様子は珍しい。リックはほとんど映っていないけど、あの風体の連中が、当時の日本(東京)をうろうろしていたら、さぞかし目立ったことだろう。しかも、英語の通じないアジアに来るのは、リック以外はほとんど初めてだったんじゃないのかな。はしゃぎぶりがつたわってくるようだ。リックは、30年前の映像を見ながら、「この人も、この人も・・・当時の人はもう5人くらい亡くなっている」とちょっと悲しそう。30年という時の流れを感じるよね。指揮者のミーシャムはひときわ年上だったから仕方がないとしても、一緒に苦楽を共にしてきたバンド仲間が鬼籍に入るのは切なく思っているだろう。さらに10年経っている今は、もっと生存者は減っている。そして真冬の東京からメルボルンに行ったらそこは夏だから、リハーサルなんてみんな上半身裸。リックも裸でリハやっていて、あの長い髪の毛が汗でべったり背中に貼りついていて、やっぱりこれだけの長髪の管理は大変だろうなあと思う。あとは当時はリックもすごい酒飲みだったから、ひたすらどれだけ酒を飲んでいたかと言う話だな。まあはっきり、本番前も本番中も飲んでいたらしいことをうかがわせているし(カット、とか言ってるけどまあ時効だろう)、頁数は冗談だとしても、興業契約書には酒とナッツの条項が16頁もあったとかなんとか。24本入りのビールの箱が24箱あったとか、ビールとブランデーとウィスキーとワインをがぶ飲みしてたとか。みんな強すぎる。そうそう、ホプキンスが「日本では君が代を歌うつもりで、通訳と夜中まで練習したんだ」と言っていた。アシュリーも「そんなことあったな、思い出した」「朝の5時まで練習したのに、リックが直前になって気が変わってやめたんだ」って。リック~。合唱団のあまりの下手さにキレていたのかもしれない。船に乗っているらしいシーンや、また出たブライアン・レーンや(彼は当時、リックのマネジャーかな)、NYCでの様子では、街のビルボード(ミック・ロンソン)に声を上げたり。あと、リック以外のメンバーが口をそろえて言うのは、ジェイミーなんとか(英国の料理研究家)ですら15人分の料理をつくるのは大変だって言ってるのに、リックは150人をコントロールしていたとか。スタッフも入れると300人近い大所帯だったらしい。なので、飛行機が遅れたりして1日伸びると経費がかさんで大変なことになる。一度、エアポケットが目の前にあるけど、回避して飛んだり、引き返したりすると時間がかかって1日分余計に経費がかかるからエアポケットに突っ込んだとか、すごいエピソードがポンポン飛び出す。みんななつかしいんだろうなあ。30年前といったら、私は社会にでて間もなく、Biz編集部で編集のイロハを習っているころだ。あと、地底探検のロゴ入りのチャーター機の映像にリックが「信じられない!こんな映像が残っていたんだ」と本当に驚いていたり。当時は椅子の果てまで全部運んでいて、大変だったらしい。「今ならどこへ行っても椅子なんで数ドルで変えるのに」って。本当に大変だったんだろうなあ。ワグナーの歌劇を上演するためのオーケストラと歌手と合唱団と機材一式に匹敵する引っ越し公演だったんだろう。ゲイリー・ピックフォード・ホプキンスについて調べていたら、彼はその後、フェイセズを辞めて日本に戻ってきた山内哲と日本でバンド(Tetsu & Good Times Roll Band )を組んで、日本ツアーを行って、アルバムも1枚残していた。ヴォーカル以外は日本人なので、ゲイリーは半年とか、結構長く日本にいたのかもしれない。これも妙な縁なり。しかし彼は残念ながら、2013年にがんで亡くなってしまった。やはり山内テツとバンドを組んでいたせいで、ピックフォード・ホプキンスを知る日本人は多く、ブログにヒットする。ロッド・スチュワートばりのヴォーカルとか、ポール・ロジャースの間、とか一流とは言わないまでも、みんなほめている。当時の典型的なハードロックのヴォーカリストだったに違いない。合掌。それにしても、どこにでも現われるなブライアン・レーン。ロイ・フリンの名まえも出ていたし、このころはイエスを脱退して、イエスはリレイヤーを発売しているころか。レーンは実はイエスよりかなり前からリックとは既知の間柄で、リックの地底探検への想いを知ったレーンは、1969年ころに「一流のミュージシャンを集めて地底探検の音楽物語をやろう」とリックにもちかけている。しかしリックは、それだとレーンが仕切ることになり自分の思い通りにできないと判断。わずか20歳くらいの若造によくもレーンもそんなホラ話をもちかけるよな。そしてリックの判断は正しい。「自分で稼いだ金なら好きなことができるとボウイは言っていた」と、ここでもリックはD・ボウイからの教えを語って見せる。よほど印象的な経験をしたんだろうな。おかげでリックは家を抵当に入れてまでして資金を調達。チケット完売でも25万ドルの赤字となったのだった。ちゃんちゃん。https://www.discogs.com/ja/artist/149420-Rick-Wakeman?page=7アーティスト別のタイトルを網羅できるDISCOGでリックを検索したら、同音異種は1つとカウントしても172枚のアルバムが検索できた。もおおリック・・・
2016.06.21
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■Rick Wakeman solo in Japan 2014年、日本でのリックのソロコンサートの音源、初めて聞いた。ブートにしては、かなり音がいい。まあピアノソロということもあり、お客さんもクラシックコンサート並みにお行儀がいい。ちょうど2年前の6月、65歳のリックか。まったく技量は衰えるどころか、指がまわってまわって仕方がないという感じだ。オリジナル版からはかなり大きく変わっている2曲のヘンリーの後半なんて、過剰なまでにプラルトリラーが入りまくる。ミーティングもリストばりに細かい装飾スケール入ってすげえええと思う。そりゃ多少は指がすべってミスタッチもするけど、調性が崩れるようなミスではないし、指の動きは依然として安定して速い。スタインウェイだろうけど、こんなにこまかく広域アルペジオが鍵盤上を駆け回るのは珍しい。大きなフレーズ間のコントラストをつけるために、ちゃんとデュナーミクも考えていて、もともと5指が完璧に独立しているから、5指で旋律、1-3指で伴奏していても、1-3指が大きく聞こえることはほとんどないもんな。 考えたら、イエスでは立ちっぱなしで弾いているから、ちゃんとすわってペダルも細かく踏み分けられる生ピアノのほうが、緻密で正確な演奏を聞かせられるのは当たり前だ。リックにとって生ピアノに座って弾くコンサートなんて、本当はちゃらいのかもしれないと思う。リックのソロコンサートでは定番になっているビートルズの2曲、ヘルプとエリナーリグビーのアレンジ。 後者がプロコフィエフ風だということは、リックがずっと以前から公言しているし、このアレンジ自体、1990年頃からステージで披露している。リックがまだカレッジに通っていた頃にプロコフィエフのオーケストレーションを勉強し、断然好きになったらしい。それよりヘルプである。「フランスの作曲家、サン=サーンス風(スタイル)」!原曲とはまったく異なった様相の、のったりしたリラクゼーションミュージックに変身させられたうえに過剰な音のシャワーで埋め尽くされたアレンジは、なんとサン=サーンスだった。そう言われてみれば、あのグダグダに溶けているようなハーモニーはサン=サーンスっぽいかも。I hope you understand that~と前置きしてたけど、この「わかってくれるといいなあ」は、スタイルを感じてもらえたらいいという意味なのか、自分の言っていることが分かってもらえているといいという意味なのか判断に迷う。サン=サーンスもセルゲイプロコフィエフも、英語の発音と日本語表記は違うからなあ。このセットリストは日本公演向けということで、UKツアーとは異なるようだけど、言葉の通じない遠い異国のファンにも受けるように、極力メジャーな曲で構成している跡がみられる。文芸三部作のメドレーを中心に、キャット・スティーブンスやボウイ、ビートルズのアレンジ、イエスの曲。その合間にオリジナル。とくに千の光のダンスはオケとコーラスのカラオケのうえにリックのキラキラスケールが載るという、本当に美しいメロディアスな音楽だった。リックはやっぱり基本は美しいクラシカルなメロディーメーカーなんだよな。なのにロックが好きで、本当に困った人だわ。だってロックのリックはB級なんだもん。(文芸三部作除く)■RCMとRAMところでRCMとRAMの違い、ちゃんと理解した。もっと早くWikiを調べればよかった。そしてリック(中退)は間違ってRAMのほうに掲載されていた。RAMのほうが核式は高く、エルトン・ジョンやアニー・レノックスが卒業しているけど、意外にもクラシックの名演奏家はRCM出身のほうが多かったりする。おそらくもともと名家の子を受け入れるのがRAMで、出てもプロにならないんだろうかと思ったり、ワーキングクラスが奨学金で来るのがRCMなのかもと思ったり。RCMも国立の音楽大学で、前身が教師養成だったので、教職過程という実務を教えるんだろうけど、出身者を見ると全然RAMに負けていない。HP見てたら、ニュースリリースというか定期的に発行しているPR誌の2011年にリックのインタビューが載っていた。 自分が通っていた頃とは随分変わってしまったとか、記憶にある先生たちとか。そして本にも書いてあったけど、入ってみたら真剣にプロを目指している人がたくさんいて自分の来るべき場所じゃないと思ったって。チャイコフ先生の「もう帰ってくるな」には後日談があって、彼自身、地方のオケに奏者として誘いがって、1年後には学校を辞めていた。あれ?でも75年のTVドキュメンタリーには出てたよね。チャイコフ先生のクラリネットの個人レッスンの詳細が面白かった。 基本、1人30分らしく、1)まず数分遅れて行く、2)先生とチャット(世間話)をする、3)おもむろに楽器を組み立てる、4)念入りにチューニングする、5)5分も吹いていると、次の学生が早めにやってくる。というわけで、いつも5分と吹かずに終わっていたらしい。そんなに下手ではなかったと思うのに、いやだったのかなあ。まあピアノのように自由にはならなかったんだろう。あと、オーケストラとロックの共演については示唆に富んだ発言をしていた。つまり、リックが最初にオケや合唱とロックを合体させた当時は、オーケストラはクラシック以外の音楽に対する理解がほとんどなくて、「彼らは正確に弾くけど、それじゃ正しくないんだ」と言って、ロックを理解するためにやるべきことは「それを聞くこと」なんだって。でも今はオーケストラのメンバーもいろんな音楽を理解していて態度が変わったと言ってる。やりやすくなったんだな。そりゃあね、先進国では人口は減るし、音楽のジャンルは一層細分化・多様化するし、クラシックだけでオーケストラの財政なんて維持できない時代だよね。30年くらい前から。ところでRCMは立地がいいねえ。ロイヤルアルバートホールのまん前。感覚としては明治神宮絵画館前、みたいな感じかな。あーいや、やっぱり東京芸大と文化会館みたいな関係性かも。この一角は私の大好きな場所、V&Aや科学博物館からも近く、ハロッズも歩ける範囲だし、なにしろナイツブリッジ、サウスケンジントン、ノッティングヒルとくれば、おハイソな地域だ。最初にロンドンいった当時は、まだハロッズはアラブ資本じゃなくて、ジーンズでは入店できなかったし、1フロアまるまる乗馬用品とかだった。近くには馬場専用レーンのある広大なハイドパークがあるし、ああこれがイギリスのクラースね、とちょっと感動したものだった。ロンドンに行くと、1日はVA行くついでにこのあたりを散策する。ハイドパークには乗馬専用レーンとかあるし、有名なスピーカーズコーナーを確認し、疲れたら東側の対面にあるグロスターホテルでお茶をする。■初Genesis 73年のジュネシスのライブ映像を見た。ピーガブって当時からこんなコスプレやってたのか。日本では70年代前半にはジュネシスは大きく取り上げられることはなかったと思う。MLや専科での特集とかも記憶にないし、写真なんかもほとんど見た記憶がない。第一、アルバムの広告を見た記憶がない。でも、聞いてみたら好きな音楽だった。どうしよう。このうえジュネシスまで。 方向性としては舞台上の演劇空間重視なんだろうな、ピーガブって人は。音楽を視覚まで含めた総合芸術として表現したいあたりは、リックのシンフォロックとはまたべつの意味でプログレッシブではある。でも、そのコスプレたるや、まだサイケやフラワーチルドレンを引きずっているようなファッションだし、今見るとかなり無理がある。 入ったばかりのハケットはなぜか椅子に座ってプレイしている(当時の定番スタイルだったらしい)。口ひげを蓄えてかなり落ち着いた印象。でもみんな20代前半なんだよね。フィル・コリンズだけがやっぱり浮いている。トニー・バンクスを初めてちゃんと認識した。いい鍵盤楽器奏者だと思う。音の組み立て方がキースやリックともまた全然違う。もっと硬質で現代音楽的だ。この人はどういうバックグラウンドがあるのか興味を持って調べてみた。ああそうか、噂では聞いたことがある、全員パブリックスクール出身のお坊ちゃん集団だった。この人もそう。12歳から全寮制の学校で、そこでピーガブと知り合う。勉強していたのは高等数学、サセックス大学では化学を勉強してたけど、後に論理学と物理に転向とある。まあ完全理系の脳みそなんだな。だから楽器の取り回しもやたら詳しい。コルグのサイトにあるバンクスのページでも60歳くらいのトニーが、オアシスのワークステーションを楽々使いこなしていることが紹介されていた。もともとテクノロジーに強い人なんだな。地底探検を100回以上読んできた読書好きのリックとは、まったくかぶるところがない個性だ。 今世紀に入ってからは、ナクソスからアルバム出しているということは、やっぱりクラシックに回帰しちゃったか。音楽的な影響としては、ピアノはラフマニノフ、ラヴェル、オーケストラはマーラー、ショスタコーヴィチ、ホルスト、V・ウィリアムズなど、たくさんの名前が挙がっている。プログレの人は、まずミュージシャン自身がクラシック好きだよな。ジョン・アンダーソンも相当好きっぽいし、師匠もクラシック曲はソロでたくさん弾いている。アランも幼いころはクラシック聞いてたとか言ってたし、クリスは聖歌隊員だったし。
2016.06.10
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YESオフィシャルFBにあがっていたリックのバースディコメントに添えられていた写真がひどすぎる・・・。最近のリックはわりとちゃんとしたスーツ姿でのソロか、Tシャツにコートジャケット姿でステージに上がることが多く、ケープを身にまとうことはほとんどない。契約条項に明記されている南米とか、2009年のヘンリーのようなオケ+コーラス隊も含めた大掛かりなコンサートでのみ、演出上ケープを装着するが、高齢になって動きが鈍くなっている今、ケープはむしろじゃまだろうと思える。今回載ってた写真は、イエス初期に装着していたような、全身金ラメのゴージャスなもので、樽のようなボディスを包み隠すには有効だが、振り向きざまのその表情が、まるで「自分がどこにいるかわからなくなった認知症の人」のような不安げな顔なのが痛々しい。どうしてこんなことになってしまったのか。あのキラキラケープはさ、プラチナブロンドのロングヘアとセットなんだよね。だから今のリックには似合っていない。リックはもうすこしプレス向けの画像を入念にチェックすべきだ。でも欧米のコンサートではスマホ類での撮影を禁じていないようで、ライブ会場では多くの人がスマホを掲げて動画や写真を撮影しているようだから、一般オーディエンスの撮ったものまではチェックしきれないよね。ここ最近(3月ごろ)のスタジオでの様子がFBでみられるけど、さすがに毛髪量が減ってデコは後退しているが、あのゴージャスなプラチナブロンドはそのまま、後頭部もまだしっかり髪の毛があるので、ちょっと安心。アランやスティーブ・ハウは30代後半からどんどんたいへんなことになったことを思えば、リックは毛髪に関しては健闘していると言える。というかいくつになってもお盛んなリックは、そっちの方を元気にするためには結構なんでもやっていそう。見た目の老化より男性機能優先でいろいろ努力していたら、植毛や増毛なんてしなくても、髪の毛も維持されるのかもしれない。まあ一説には男性ホルモン過多だと頭はハゲるらしいから、リックは逆なのかも。体毛は金色なのよくわからないけど、胸毛はうっすらという感じだったな。Say Yesには、ロザリンとの離婚の話や1年足らずで終わった2人目(マウンテンスタジオの秘書だった女性)と別れることになった顛末が書いてあった。ロザリンとのことは、アーサーオンアイスで借金まみれになって家も抵当に入って文無しになってたところに「イエスのレコーディングに参加しないか」とブライアン・レーンから(またしても!)電話がかかってきて、スイスに行くことになったことが原因のようだ。当時、2人の間にはやっとこさ幼稚園い通い始めたオリバーとアダムがいて、教育上移住が難しかったのとロザリンが旅行をいやがったので別れたらしい。そんな理由? 多分リックは一旦覚めるとどうでもよくなってしまうタイプなんだろうな。ついてこないならもう終わりだね、みたいな。息子たちは可愛くなかったのかなあ。2人目の女性も、スイスでの一人暮らしの無聊を慰めるためだったろうし(出会いは結婚の数年前。すぐに一緒に暮らし始めた、とある)。パイプカットをするぐらい50を越えてもお盛んなようだから、基本的に女性は切らさないタイプなんだろう。でもそこはプロテスタント信者としてのモラルはあるから、商売女じゃなくてちゃんと結婚する。でも相手にもリックにも問題があって結局別れることになる、ということを繰り返してきたのね。家を女性に残して別れるというのは見上げた行動だけど、リックの場合、その時には財産もなくしているようなので、どこまで生活保障的な慰謝料を払っていたのかはわからないなあ。私的には、結婚を繰り返していることを自身のネタにしているところこそがリックのモラルを疑ってしまうところなんだが。もう過去のこととはいえ、未だにネタにされる女性たちはたまらんな。まあ、クラシックの演奏家にも何度も結婚している人は大勢いるので、結婚ー離婚自体は、回数はあまり問題にならないのかもしれない。Grumpy Old Picture Show、エンドロールも入ったオフィシャルな映像を見た。23分割(トークと演奏が別々になっている)という途方もないものだったけど、1本は5~8分程度なので、少しずつ制覇した。Picture Showの意味がやっとわかった。古い写真や作り込んだ映像(再現ビデオ風)による関係者インタビューとかが入るのね。演奏のほうは、ジェンマ、コーラス、ERE、ゴードン・ギルトラップらとの共演。リック自身の6手(3回分重ね録り)との共演と言うのもあったな。Amazing grace以外のジェンマの歌を初めて聞いたけど、やっぱり巧いとは言えないな。リックは自分の子どもたち6人全員ミュージシャンだと言い張っているけど、そう思いたいだけなのかも。もちろん音楽的素養はあるんだろうけど、プロとして活躍できるかどうかは別だ。あと、Starship Trooperを演奏するのはうれしいが、キーの合わないアシュリー・ホルトに無理やり歌わせるのはやめてほしい。あ、そうそう。The Other Side of~でもあったけど、観客参加型で、今回も客席の女性一人をステージに上げて、シンセのペダルを踏んでもらって、鳴っている間にピアノに移動する、というのをやっていたけど、なんとその移動中にリックの携帯にカレー屋から電話が入っていた!これは爆笑ものの演出。ちゃんとすごいインド訛りの英語になっていて、「今本番中なんだけど」「海洋演奏中でしょ」「海洋じゃないよ」とかやりとりしてた。電話が切れるや否や、マーリンの超速演奏。ふうう相変わらず指はよく回るなあ。アーサーのメドレーではシンセからシンセへ映るところが結構毎回ヒヤヒヤものでスリリングだ。でも、音が不足することはあっても、外れたりリズムが途切れたりすることがないのはさすが。 古い写真では、11歳くらいできりりとした短髪のリックがピアノ前に座っている写真が印象的。でもこのころもう、女の子に興味津々で…とか話はじめる。映像として登場するのは、フットボール仲間、学生時代の友人、離婚弁護士、リック自身が幼稚園児になりきってはちゃめちゃな演技をするシーンもあった。こういうのうますぎる。イエスのメンバーでは誰ひとりここまでできないだろう。イエスの来日は本決まりのようだ。11月後半にオーチャードホールで3日間、というところまで情報公開された。2000人規模のホールだよな。今回は、いまヨーロッパを回っているドラマ+こわれものツアーでなく、夏から全米を回る海洋+ドラマツアーになるのかな。海洋はどちらもやっぱりジョンの声で聞きたいなあ。特に神の啓示の呪文部分とか、儀式のフランス語とか。ジョンDはギターも達者だから、ジョンAのように手持無沙汰になることもないだろうけど、定番の「こわれもの」「危機」は多くのトリビュートバンドも演奏しているし、ドラマはもともとジョンAじゃないからまだ受け入れられるけど、海洋はね・・・。ちょっと微妙な心境。それにしても、2年おきに日本にやってくるって、ファンは毎回「これが最後」と思ってお布施をするんだろうけど、品質劣化するのをただ漫然と受け入れるだけになっているようなのがつらいなあ。前回3000人キャパを1000人減らしてきたことで、よもやチケット1万超えとかだったら迷うかもしれない。遠い極東までわざわざやってきてくれるのは本当にありがたい。特に今回は、南米もオセアニアも入っていないのに、経費も時間も倍かかる日本公演を入れてくれたのは、1973年の初来日以来、日本のファンがいつも歓迎しているからにほかならないよね。どこへ言っても安心・安全な環境だし、ファンが熱くなって殺到するようなこともない。礼儀正しくおとなしい観客は、年老いたメンバーにとってはありがたいだろう。43年も経っているのに、日本ってすごいな。シンガポール公演をやったことがあるらしいけど、ちょっと前まで勢いのあった新興国である韓国や中国には寄らずに、日本だけでやってくれるのは、本当に光栄だ。クリスが最後にライブを披露した地でもあるし、師匠にとってもエイジア時代から馴染みの国だろう。ダウンズにとってもね。アランだって、クリスと同じ回数だけ来日しているんだな・・・。ジョンDも急遽交代なったベノワの代わりに2012年に来日しているから、もう3回目。ビリーはイエスとして来日したことあるんだっけ。いずれにしても、今回こそ最後だと思ってお布施するか。もしかしたら土倉さんも一緒に来てくれるかもしれないしね。90年代中ごろまでのリックの指は、細く長くしなやかで、見ていてうっとりするほど美しかった。しかも2-4指がほぼ同じ長さというくらい均整がとれていて、中指の長さは黒鍵とほぼ同じ(10センチ)はありそうだった。なんと恵まれているんだろう。おそらく私の中指は彼の小指くらいだろう。50歳を過ぎたころには身体が大きくなるのと並行して、指も太くなっていったようで、かつてのようなスリムさはなくなったけれど、指さばきは相変わらず見事の一言で、マーリンの超速弾きもなんらゆるぐことなく安定している。そして彼の「手癖」とまで言われる、あの高速モルデント、ターン、プラルトリラーの数々は音が小さくなるどころか、前後の音よりはっきりしっかり聞こえる。打鍵がしっかり鍵盤の底まで着いているのにあの速さである。昨日、Yesyearsを見直していて、会場セッティング中のざわざわした中でのリックのインタビューで、燃える朝焼けの中間部の印象的なピアノソロを口頭で口ずさむところがあったけど、ばっちり音程が合っていた。まあ、そうだろうなとは思っていたけど、彼は絶対音感の持ち主だった。でも海外のサイトを検索してみても、perfect pitchに言及するものはあまりなくて、重要な要素ではないと思われているようだ。ふうう。ここ1週間ばかりの間、考えていたことを一気にはきだしたけど、結局リックとイエスのことばっかりだな。そろそろELPやフロイドも買いなおそうとは思っているんだけど、リックのソロの多彩さがすごい。ニューエイジ系でなかなかいいと思ったものが、RWCCのコメントでは「金のためにやったけど、やりたくなかった」とか平気で書いてて、いやいやリックは金で動くほうがいい仕事してるんじゃないのと思い始めた昨今だった。
2016.05.29
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つべで観たジョンロードトリビュート、ロイヤルアルバートホール、オケ付きというのはイレギュラーかと思ったら、パープルはすでにモントルージャズフェスでオケをバックに何度もコンサートをやっていた。そういう時代なのか・・・。Gaoで11年のものをフル公開していた。ジョン・ロードは亡くなっているし、オリメンでいないのはブラックモアか・・・。でもイアン・ギランがこんな顔だっていうのを拝めてよかったわ。当時はもさいカーリーヘアに隠れて顔がわからなかった。イアン・ペイスは今のほうがかっこいいなあ。あ、会場は野外じゃないくてオペラハウスっぽい。ハードロックバンドがオケと共演って、60年代後半になるとムーディブルースとかがやってたな。イエスも2ndアルバムでオケつかっているし。でも真正面からライブでやろうとしたのはリックの地底探検やアーサー王かたりからなんだろうなあ。なんだか感慨深い。客席は老若入り混じっているな。パープルくらい大御所になるとハードロックでもロック・クラシック枠であり、クラシックの演奏家たちもティーンの頃に聞いていたかもしれないロックに歩み寄ってバックを務める時代になったんだな。もともとロックはリズム隊の正確なリズムがあってこそのグルーヴ感なんだろうし、オケも指揮者がしっかりテンポを守っていれば、合わせること自体はそう難しくない。ただ私の中では、冷静に演奏しないといけないアンサンブル(オーケストラ)と、アドレナリンだしまくりのロックの高揚感とは相いれないものだと思っていたんだけど、みてるとストリングものりのりでグルーヴしながら弾いている。あんな動いたら音程狂いそうだけど、そこはそれ、電気楽器の巨大PAにまぎれて少々の不安定さは見逃されそうだ。 途中でドン・エイリーのソロがあって、真面目にラフマニノフの2番コンチェルトやっていて吹いた。オケバックだからやりたかったんだろうなー。デジピで弾くチャらいラフマニノフだけど立ったままではなかなか弾けないよな。つづいてジャズのブギウギっぽいフレーズ速弾き。こっちおのほうがオーディエンスの反応がいい!そしていきなりトルコ行進曲。オケもついてくるぜ!ラストはチャイコンのフィナーレ。うーん。前にもエイリーのソロを聞いた時、楽器配置もリックそっくりで、正統クラシックのフレーズをちりばめる人だったので驚いたけど、パープルでもこれやるんだ。・・・と生ぬるい気持ちに。音大卒だから腕はいいんだろうけど、ソロアーティストとして目立った曲がないと、結局自分のテクはこういう形(クラシック)でしか表現できないのかと思った。リックのほうが何倍もいいわ。でも、先日見たRAHでのジョン・ロードトリビュートでは見事な采配ぶりで、プロデュースもできる人なんだと思う。せっかくギター連中がラウンドアバウト仕掛けてくれたのに、乗らないリックはどうかと思ったよ。そしてエイリー、中背中肉っぽいけどやっぱりお腹はぽっこりさんだった。そして一人若手(といっても54年生まれ)のリードギター、スティーヴ・モーズ。音大でジャズも学んだアメリカ人。やっぱりそういうことになるんだね。助っ人的には=優秀アメリカ人。正式メンバーではないもののソロパートもあり、ちょっとラビンやビリシャーみたいな立ち位置かな。なんかソロを聞くとプログレっぽいな。バッハっぽいバロック単旋律フレーズを延々弾いていた入りしてちょっとびっくりした。でも濁らずきれい。エレキでやるとはハウもびっくりかもね。こういうところを聞くとパープルがプログレだというのもわかる気がする。70年代には年寄りのロッカーはいなかった。当たり前だ。そしてカリスマミュージシャンは早々にこの世からおさらばしているものだった。シド・バレットしかり、ブライアン・ジョーンズしかり。もちろんジミヘンもジャニスも。プレスリーは入れてやんないw。だからロッカーなんて、どうせ酒やドラッグでろくな死に方してないんだろうなーとか思っていたら、イエスは現役で35周年ツアーとかやっていた。それすら12年前だと知ってのけぞった。リックの爺ぶりはつべで観ていたので知っていたから、むしろ35周年の頃はかっこいいとさえ思えた。しかし、スティーヴ・ハウとクリス・スクワイアの変貌ぶりはどうだ? 往年のロッカーが60歳を過ぎても現役を続けることがどういうことか。しかもだるい演奏は許されないプログレで。ファンは今のイエスのつまらなさにはとっくに気づいているけれど、でも見捨てられないんだろうな。わかるよ。
2016.05.21
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リレイヤーまでとABWHで止まっている私のなかのイエス史の扉を開いて、2カ月半で現在まで追いついた。アルバムは一体何枚買ったんだろう。DVDが10種類以上、関連書籍もリックの自伝など10冊ほどにおよび、聞いていなかった時期に起こったことも概ね理解した。もう最近ではメンバーのアシスタントやエンジニアの名前まで覚えてしまったよ。もっとも衝撃が大きかったのは、「芸人リックの大活躍」だったけど(笑)。イエスは2カ月足らずで追いついたので、ここ1カ月ほどはリックのクロニクルをカバー中なんである。今はクリムゾンやストローブスにまで飛び火している。もう彼はオリジナルのコンセプトアルバムを生み出す力はなくて、ひたすら過去作品のメンテナンス作業とピアノ1台の気軽な(下品な)トークと音楽の会、たまにアダムを巻き込んで大掛かりなコンサートを南米あたりでやるぐらいになっているんだな。それでもまだまだ活躍しているだけでもうれしいよ。往時は彼のピアノをじっくり聞く機会はなかったから、グランド一台で何時間でもコンサートが出来そうなhugeでexcessなところは天下無双で驚いた。かっこつけたり秘密主義なところが一切なくて、ワーキングクラス丸出し感満載で自分のだらしなさもひっくるめて全部ネタにしてMCやっているところなんて、まあ知りたくなかったともいえる。結局この人は、すばらしい指さばきとアレンジメントの技術が飛びぬけているけれど、国立劇場ではなくて浅草演芸ホールの人だし、大衆演芸向けにしては(そしてあのごついガタイからは信じられない)美しすぎる音とメロディを紡ぎ出すところがすごいんだろうな。あと、あの話芸があまりにも俗人すぎて、それも彼の音楽とは対極にあって、そのギャップを楽しむ人なのかもしれない。レコードコレクターの最新号がキーボードプレイヤーの特集だったけど、リックなんても場外もいいとこだった。評価の多くは「過剰すぎる」。プログレは過剰で大げさなのが身上かと思っていたけど、今はそういう評価なんだな。さて、本家イエスだけど、未だに入手していないアルバムはUnionとTalkとOYEだけとなった。プロデュースの問題などもあって評価が極端に低い、いわばイエス史から抹殺したいようなアルバムと理解して、この3枚は聞かずにそっとしておこうと思った。だって、LadderやMagnificationも、一部絶賛する人はいるので聞いてみたけど、私にとってはイエスにはなくてもいいアルバムだった。新たに聞いたイエスの曲で、これぞ名曲!と思ったものはAwakenだけだったよ。これは70年代プログレの白鳥の歌としてイエス史に残る曲だろう。あと、Keys~に収録されているMind Driveも往年のイエスらしい大曲で好きだけど、どうも組曲同士のつながりがぎこちない感じなんだよね。大曲ということではFFHもよかったけど、小ぶり感は否めない。もちろん他にも、印象に残るポップソングとしての出来のいい曲はたくさんあった。Dramaは名作だし、20125にもH&Eにも上質な曲はあったけど、やはり私は70年代のアルバムを一生の友として行くんだろうと思っていた。ところが、ARW始動ということで、某掲示板で複数のファンがセットリストを妄想しているのを読むと、やたらEndless Dreamの名前が挙がってくる。そんな曲あったっけと焦って調べてみたら、これが、最初から無視していたTalkに入っている曲だった。そしてなぜか、ファンの多くが「ラビンとリックによるEndless dream」を切望している。さっそく聞いてみたら・・・すごくいい曲じゃないか! ポップなのに王道プログレ。うわー灯台もと暗し。こんな名曲を知らずに過ごすところだった。Talkはラビンが最後にイエスに残していったアルバム。ポップなロック寄りのヒットメーカーが、最後にこんな「いかにもイエスらしい」大曲を残していってくれるんなんて。しかも冒頭からピアノでのエンドレスなミニマリズムイントロで始まる。こんな技、トニー・ケイにできるんだっけ?と思ったら、やっぱりラビンが弾いている。ケイの存在って・・・。続いて、まるでリレイヤーのようなシャープでアグレッシブなギターリフ。ヴォーカルも、最初はピアノをバックにメロディアスなラインで始まり(ラビン)、中間部のピアノソロなんて、まるきりリックが弾きそうな(書きそうな)展開で驚いた。ユニオンツアーで意気投合した2人は、結局その後イエスで一緒にプレイすることはなかったけど、もしかしてラビンはこの曲をリックに弾いてほしいかったのかもしれない。ジョンの声によるBメロが始まると、その余りのリリカルなメロディーとジョンの高い音の神々しさに、時間は短いのに泣けてきた。これだよ、イエスって!しかし、危機からは20年以上経っていて、その間にパンクだテクノだ産業ロックだといくつものウェーブが襲ってきて、プログロックは不遇の時代を過ごしていた。ほぼ20年後のEndless Dreamは、ちゃんとそれらを教訓として受け入れ、前人未到だった70年代感を排している。神々しさやわけのわからない精神主義っぽさ、呪文とか宗教とか高尚な歌詞なんかはない。それでもシンフォニックでわかりやすいメロディーと、シンセ満載の音作りはまぎれもないプログロックに聞こえる。Talkに入ってからの中間部のシンセは、「リックだったらこうはしない」というのっぺりした部分もあるけど、それもまたよし。宇宙空間をほうふつとさせるシンセのバックに、ラビンのエッジの聞いたギターが響く。ジョンが歌いあげるメインテーマは、ラビンだけにちょっとポップすぎるとも思うけど、バックにずーっとミニマルな音型が流れていたり、いかにもマルチプレイヤーらしいラビンのアイデアが満載。結局、こういう人がいないと、ジョンとクリス、アランだけではアルバムが作れなかったんだよな。イエスは。ちょっとクラシックらしいメロディラインに、荘厳なミサ曲のエンディングのような美しいハーモニーが聞ける後半もすばらしい。これがラビンの作曲だとすると、意外なほどに保守本流な正統派のクラシック理論を見に付けていることがわかる。これは本当にライブで聞きたい曲だわ。リック、サポートにトニー・ケイでも誰でも連れてきていいから、ぜひこの曲やってほしい。そして私の中では、ラビンはイエスを21世紀につないだ中継ぎの功労者という認識だったけど、彼の功績はもっともっと評価すべきだった。この1曲だけでも。ラビンはその後、ハリウッドで名うての映画音楽作家となったけど、その背景には、彼がもともと南アフリカのユダヤ人社会でのセレブであったことと、ユダヤ人脈とハリウッドの関係がなんとかというのもちらっと読んだけど、まあそんなことより、イエスでの12年ほどの経験が、彼にとって無駄な時間でなかったことを祈るばかりだ。■オリバーよ・・・いつものようにつべを巡回していたら、珍しくオリバーとリックの二人に新生EREを加えたアットホームな感じのコンサートを見つけた。リックが住んでいるノーフォークの近くにある古い農業倉庫を改造したライブスタジオ。この場所は有名で、クラシックのアーティストもよくコンサートをしている。しかしここはキャパ150くらいのはずだ。お客さんはいつものとおりリックと同年代。@5000円くらいで5人もステージ登場したら、ほとんどあがりはないんじゃないのかなあ。リック、営業がんばるなあ。年末にはアダムとジョイントコンサートがあるらしい。それにしてもオリバー、リックとは共演しないんじゃなかったの?それともアダムの都合がつかなかったの?仕事がなくて困ってるの? 相変わらずリズムがグダグダ、メリハリのないのっぺり演奏、速弾きも微妙…。なんか無理やり笑おうとしている瞬間があって、そうそう、その調子と思ったらすぐにいつもの仏頂面に戻っちゃった。リックはいつものように軽口MCで「オリバーは生まれたとき4,5キロもあったビッグベビーだったんだ」とか言ってるけど、リック、おまえもなー。アシュリー・ホルトとは17歳で知り合ったと言ってて(ピアノ弾いていた酒場にいた)、優に50年以上のつきあいであることを知る。そうだったのかー。
2016.05.16
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ディヴィッド・ペイトンとの2人舞台のDVDを再度観る。ペイトンはハンサムさんだけど線が細いので、リックと2人だと大分影が薄い。最初に観た時はそれで貢献度を見誤ってしまったけど、なかなかいいプレイヤーに見える。曲は、1)アーサーより抜粋、2)After the ball、3)サマータイム、4)Sea Horses、5)エリナーーリグビー、6)1984この映像はパッケージにもデータがないけど、どうやら1991年のようだ。リックの髪型や服装からしてABWHとユニオンツアーの後のものに思える。服装はスカーレット色のシャツに黒のハーレムパンツ。正直、似合わない(笑)。珍しく胸を大きくはだけて胸をあらわにしている。それに赤いレザーのスニーカー。そういやイエスのライブでも全員スニーカーみたいな時期があったな。髪はサイドにシャギー入れて全体にパーマかけたように毛先を遊ばせていて、いつもよりは短い。ABWHの頃は前髪をオールバックにしていたけど、この映像ではアップにはしていない。シンセに詳しい人なら、楽器の品番でいつなのか特定できるかもしれない。コルグのM1とT1、ローランドのD50を使っていた。ペイトンはシンプルな黒字にストライプに見える(実は細かいドット)の厚手のシャツに白いチノパン。ベースを2種類(スタインバーガーとフラットレス)と、スパニッシュギターを使い分けていた。とくにサマータイムみたいな曲にはフラットレスベースの不安定な音程がよく似合う。プログラムは、現在に至るまでリックのソロステージではおなじみの曲もあるけど、「サマータイム」は珍しいし、Sea Horsesも、4ウェイクマンズのライブでしか聞いたことがない。きれいな曲アンビエントっぽ曲だけどどのアルバムに入っているんだろう。手元のアップをみるとわかるけど、リックはテヌートするためにちゃんと指を同一鍵盤上で置き換えている。その入れ替え方がとてもスムーズでみていて美しい。普通、手の小さな人はよくこうした置き換えをするけど、手の大きなリックもやるということは、ペダルにたよらず一音一音大事に弾くという、いかにもクラシック的なテクニックだ。エリナーリグビーでは前半、ペイトンのスパニッシュギターのソロを聞かせ、そこにリックのお得意のプロコフィエフ風オスティナートリズムがかぶさってきて、メインフレーズをギターで録らせる凝ったアレンジ。途中でペイトンの3度下で旋律を合わせるということもしている。でもまあシンセの音とアコギはあんまり合うとは思えない。スパニッシュギターで本来、自由にポルタメントなりして弾きたいのにリックの正確無比なリズムについていくのは大変だ。結構リズム合ってないものね。そしてオスティナートの部分は、最近よく聞くアレンジとはちょっとコード展開が違う。発展途上だったのかもしれない。ラストの曲は、リックが1981年に発表した「1984」。ティム・ライスとの共作による1曲。共作って言っても、弾かれた曲には歌詞はないんだけど。しかしよもやリックが、ロイド・ウェーバーとのゴールデンコンビでおなじみのサー・ティム・ライスと仕事していたとは。1984は思った通り、オーウェルのディストピア小説からヒントを得たコンセプトアルバムらしいけど、ほんとにリック、ちゃんと原作読んでいるんだろうか(笑)。ヘンリー8世やアーサー王も本を読んでインスパイアされたらしいけど、テレビやコメディ大好きっ子のリックが思慮深く読書から学ぶタイプとは思えない(ファンとも思えない問題発言)。1984は映画にもなってて、昔観た記憶はあるんだけど、やたら暗くて救いのない内容だったな。オーウェルの作品の中では異色だし、現代においてはそれほどインパクトのある作品ではないというか、私の中での評価は低い。オーウェルを語らせたらうるさいぞ。何しろ史学科に行かなかったら英文科でオーウェルをやろうと思っていたんだから。史学科でもスペイン戦争を絡めれば無理やりオーウェルを卒論にできるんではと2年までは考えていた。指導教授がいなくて実現できなかったけど。私はオーウェルの「戻るところがあることが前提の貧乏ごっこ」にあこがれた。あ、でね、リックの1984って、作品の出来はともかく、ヴォーカルにチャカ・カーン、J・アンダーソンとか、なんか不思議な取り合わせのアルバムらしい。これでディストピア小説を音楽で表現しましたって言われてもなあ・・・まあ、音源が届いたら、またちゃんと感想書くけど。もうわかっているけど、きっとがっかりするに違いない(笑)。でもいいの。それでも。評価としてはさらに悪いRockn'roll prophetまで手配済みだし。これはね、リックのリード・ヴォーカルが聞けるから。 私の今の野望は、リック亡き後、リック・ウェイクマン博物館が出来たら、そこに行ってコアなファンと昔話をすることだ。最後に演奏されていた1984には、あからさまに「エリーゼのために」が挿入されていたり、なんだか不思議テイスト。コンサート中盤ではあの例の、作曲するのを忘れて即興一発で録音したという「ホワイトロック」からのAfter the ballも演奏していて(これは出だしがもろに「愛の夢」)、ちゃんとネタばらしもしていて、「終わってビールを飲んでいたら1曲忘れていることがわかって、いや頭の中に音楽はあるからっていって一発OKだった」とか、リックってばあいかわらずこういうことを平気でいう。このエピソードは最初のGrumpyにも書いていた。ステージでは「自分で言うのもなんだけど、いい曲だから、あとからちゃんと練習したんだよ」みたいなことを言っている。こういうリックの一面って、「自分は欠点だらけの人間だけど、音楽に対する倫理観は人一倍強いんだ」みたいな発言に通じるんだろう。Yesspeakのなかで忘れられないリックのセリフがあって、お父さんが昔リックに、~be take the music siriously, but don't take yourself seriously って言って、今でもそれを実行してるんだって。音楽には真面目に、自分のことは適当に。その通りで30代までに2度も死にかけているし、結婚歴が多いのはなんだけど、一応人生からも学んでいるっぽい。ペイトンについて言えば、マリーンのあの速弾きを他人が合わせるのは大変なようで、2回ほど一瞬出遅れていた。hほかの曲でも完全にシンクロとはいかなくて、私もカウントしたけど、リックのタイミングが若干早いのかもしれないと思うことがある。サマータイムではアコギで旋律も弾いていて、なかなかよかった。あと、MOOGの映画を見たら、リックが下ネタ全開でムーグを称賛していた。これは字幕つきだったけど、ニュアンスとしては字幕よりもっと下品な軽口、という感じがする。エマーソンのコメントがとれなかった分、リックのコメントを採用したんだろうけど、他が真面目な人が多かったので、かなり浮いている。ムーグ博士トリビュート映画には逆効果だったんではないかと心配だ。・・・あーでも、その硬軟の対比が面白いってことかな。 「ムーグには余分な機能がない。ほとんどのデジタル楽器は90%は使わない機能で、女房とおんなじだ。本当に必要な女房の機能は10%で、あとの90%は必要ないんだ。だから何回も結婚してしまった」みたいな感じ。あとジャック・ブルースのお誕生日ライブにも登場していた黒人のキーボード奏者がまた、輪をかけてへんなメタファーを使って、「ムーグは女をいかせるようにやさしく弾くと応えてくれる」とか言うと、リックが「俺のソロは短いって言われるんだよな」「それはそこリズミカルに何度もやれば・・・」とか。誰もそんなこと聞いてないし!ムーグ博士大爆笑。どえらい博士の前で話すことか?このフランクさが愛される理由なのか。Grumpyもほぼ8割は下ネタが登場していて、英語はやさしいのに子どもには読ませられない内容になっていた。やれやれ。これも彼のexcessな一面。そういえば、キース・エマーソンの自伝も、下ネタ満載で下品の極み!みたいなレビューだったな。なんだか70年代の突出したキーボーディストの傾向なんだろうか。リックはまじめなプロテスタントの家庭で育っていても、10代の早いうちから大人相手の場所で演奏していて、飲酒も含めいろんな悪事やエロいことを学んでしまったような気がする。たしかストリップ劇場でも弾いていた、みたいなことを言っていたし、要するにサントリーホール向きの人ではなく浅草演芸ホールの人なんだろうなあ。やっとわかってきたよ。もう神格化するのはやめる。そしたら、海外のファンがリックのアルバムのコメントとして「リック・ウェイクマンといえばexcessと同義語」とか書いていたな。向こうの人からみてもそう思うわけね。やっぱりなー。
2016.05.09
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Where is this dream of your youth のすさまじいリックのハモンドオルガン、映像が残されていないだろうかとネットの海を探ったら、残念ながらリック本人のライブ映像はなかったけど、代わりに2009年と2012年のストローブス(再結成かな?)のライブで、長男と次男がこの曲プレイしていて盛大に吹いた。リックなにやってんだ! 自分の出番をことごとく息子に振って、サポっているととらえればいいのか、息子たちに機会を与えているととらえればいいのか。息子ら、40過ぎてそんなに仕事ないんだろうか。どうせ、イエスにはもう戻らないことを公表したリックに、カズンズが「なあ、昔のよしみで再結成ライブに出てくれないか?」と誘ったところ、「いや、俺ドクターストップかかっててさあ。息子でよかったら安く貸しとくぜ。どっちがいい?」みたいな会話があったと妄想する。で、同じ曲を二人の息子がどう演奏しているのか、興味深く見てたら、オリバーが結構がんばっていた。相変わらずリズムがちょっとあららなのと、音色・音量が?なのと、無愛想なのが玉に瑕だけど(なんかこう書いちゃうとすごくへたくそみたいだ)、リックのキレのいいスタッカートプレイを踏襲している部分があったり、イエスでのリックばりに数台のキーボードを使い分けてプレイしていた。リズムが危うくなるのはスタカートの速弾きの部分なので、結局はテクニックなんだろうなあ、足りないのは。あとなあ、オリバーは表情が乏しくて、いつもつまらなさそうに演奏しているように見える。もう少し口角上げて演奏してくれれば最高なのに。でも、がんばっている。動きが派手なところもあって好ましい。イエスのころよりずっといい。相変わらずムーグの音はちゃうやろ、ってセンスだけど。しかもリックのころのハモンドオルガンを意識した演奏というより、ちゃんと今の時代のマルチキーボードに合った演奏になっていて感心したわ。…兄ちゃん、パパの影響下で仕事するのはいやなんじゃなかったのか?そしてこの時期、オリヴァー参加のストローブスは海外公演もやっているけど、オリヴァーってばイエスと掛け持ちじゃないか!ライブハウスみたいな小さな箱でやるのと、イエスみたいに(往時よりは規模は小さいとはいえ)大音量PAシステムの下で大きな箱でやるのと、いろいろ極端な経験しているなあ。かわいそうに、キーボードのセッティングがグズグズでちょっとグリッサンドやろうものなら結構グラグラ左右に揺れてて弾きにっくそうだった。https://www.youtube.com/watch?v=XvapzHEPIoY一方、アダムくん。オリバーの頃(2009年)より一層テンポが遅くなって、むしろ弾きやすそうだけど、音量控えめ、音色固定。そしてずっと音符がスラーでつながった演奏で変化に乏しい。このテンポでリズムまで合わなかったら最低だけど、さすがにテンポは合っていた。おじいちゃんずがもうゆっくりしか演奏できなかったのか、あえてアレンジを替えてこのテンポになったのかは不明。アダムも結構頑張っているんだけど、目立たなすぎ。普段サポートばっかりしているから、パパのように目立つのが苦手なのかな。せっかくキーボードの見せ場のたっぷりある曲なのにもったいない。もう少し音量上げるだけでも違うと思うのになあ。ちゃんと聞いてみると、ハモンド意識してグリッサンド入れたり、いろいろ考えられている演奏なのはわかる。あとね、イエスの曲に出てきそうなフレーズ弾くのはやめようね(awakenとかいろいろ聞き覚えのあるフレーズ多し)。とりあえずこの兄弟対決は兄の勝ち。https://www.youtube.com/watch?v=-zDIIm_8SYUストローブス、オリメンなのかどうか不明だけど、70年代からのメンバーはカズンズとベースマンだけかな。ドラムスとギターは世代がちがうっぽい。カズンズはもうギターを持つのもやめてヴォーカル専任なのか。パパリックがこの曲弾いてから45年近くたってるんだもんなあ。残念なのは、楽器の性能もミュージシャンの技量も上がっているはずの今の演奏より、40年以上まえのリックの演奏のほうが格段にかっこいいってことだ。やっぱりあの時代だからこそのかっこよさなんだよな。だから息子たちは父のプレイを踏襲するんじゃなくて、全然違うものにしなくちゃいけなかったのかもしれない。まあ、カズンズが許せばだけど。なにしろ普段、ニューエイジ&ヒーリング寄りのオリヴァーと、ヘビメタやってるアダムでは、トラッドフォークのストローブスと音楽的な共通点があまりない。なのに父の命令に逆らえなかったのか、暇だったのかわからないけど、なんでもかんでも気楽に仕事受けるんじゃないよ!とちょっと思った。もう40過ぎた二人の息子の行く末が本当に心配だ(笑)。いろんな意味で確実にロック史にその名が刻まれるであろう父に比べて、評価の高いアルバムの1枚も出せていない、セッションやサポートに甘んじているように見える二人を見ていると、音楽の才能なんて遺伝しないってことがよくわかる。
2016.05.07
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そんなわけで、こちらもほぼ40数年ぶりのクリムゾン・キングの宮殿を聞く。まあ、エピタフや21世紀は、断片的に聞こえてくることがあるので、そんなに長い間聞いていない、という感じではないけど。■21st century~21世紀、演奏始まる前に人工的な環境音が入っていて(当時は気づかなかった)、これはもしや危機がパクってるのではと思った。危機は自然音だったけど。当時はこういうの流行っていたかな。あと、ドラムがビルそっくり!ちがう、ビルがマイケル・ジャイルスにそっくりなのか。ストトトトンってかんじの軽いドラミング。ドラムのことはさっぱりわかんないけど、ジャズドラムってこんな感じなんだろうか。中間部はジャズっぽいんだけど、4分40秒あたりからのドラムと管のユニゾンはお見事!こういうの好きだ。あ、でも多重か。こういうのをライヴで聴きたいな。ここもイエスのサイベリアンのラストのアカペラユニゾンにつながるような気がする。そして、わかってたけど歌詞が怖い(笑)。アルバム通して聞いてみると、REDでも感じたんだけど、やっぱり時代を感じさせる。なんだろう、ストリングス(メロトロン)の使い方なのかな、ブラスが入るロックというのも70年前後を容易に思い起こさせる。全体に古い音楽に聞こえてしまうのが残念だ。人工的に歪めすぎているのも、今の時代からするとダサイ。前回も書いたけど、イエスのような巧みでメロディアスなコーラスがあると救われるのになーと思う。クリムゾンのような暗さや重さはむしろ好きなんだけど。当時は、イエスのような陽のプログレはむしろ珍しかったし。■墓碑銘あー、なんかメロトロン自体が私のなかでは「古い過去のも」を想起させるのかもしれない。いや、そのとおりなんだけどさ。イエスみたいに本物の管弦楽使ったらまた違っていたかな。特にストリングスが前に出て、そこに甘いレイクの声がかぶさるエピタフみたいな曲は、なんちゅうか俗っぽいドラマの附帯音楽みたいだ。きっと、40年の間にフォロアーがたくさん出てきて、手垢が付きすぎて「使い古された」ものになってしまったのかもしれない。メロトロンを使った場面転換(pp→ff)なんてのもロックっぽくなくて劇音楽の部類に聞こえる。こういうのはムーディブルースもやっていたような気がする。そもそもメロトロンを知ったのはムーディーズの曲だったような気がする。サテンの夜のほうが宮殿より先だよね?エピタフは、当時は気づかなかったけど、後半、シンバルの縁を叩くようにタタタタタタと小さな細かい音がずうっと入っていて、こういうのもビルが好きそうだと思った。おい、今頃ビル愛すごいな自分。あああでもレイクの声はやっぱりいいなあ。キーはジョン・アンダーソンなんかよりはずっと低いけど、澄んだ甘い声。同じキーですこしかすれが入るとジャスティン・ヘイワード、ジャスティンの声を5度くらい上げるとアンダーソン(笑)。そういう意味では、実際に時間が経っているわけだから、古く感じるのはむしろ当たり前で、私が2月ごろに突然イエスを聞き始めて、まったく古色蒼然と聞こえなかったほうが奇跡に近いのかもしれない。おそらく、いま「サテンの夜」とか聞いても、懐メロにしか聞こえないと思うのに、イエスの3rd~海洋までは、何度聞いても飽きない。究極以降は新曲だったし(笑)。なんでだろう。ハウとクリス、アランはむしろ正統的なロックらしさをもっているのに、そこにアンダーソンの声とリックのフレーズが入り、絶妙のコーラスが醸し出されると、それだけでかっこいい。70年代当時、聞いていたころは、いちばん聞いていたのはピンフロだったかもしれないし、イエスだけを突出して好きだったわけではなかったのに、不思議。クリスの死という要素が余計に神格化させているのかもしれないなあ。■ブラス入りが流行った時代70年代前半限定の記憶と知識でいうと、この時代、ブラスセクションの入るロックにヒット曲が多かった。チェイスの黒い炎とか、ブラッド・スウェット&ティアーズのスピニングホイールとかシカゴとか。でもこれらはどっちかというとタテ乗りのロックだった。クリムゾンは今聞くと、ロックではないしジャズとも言い切れないし(アドリブっぽい部分はジャズだけど)、なんつうかすごく俗っぽく聞こえる。あれれれこんなだったっけ?I talk to the windは、ロック小僧のクラスメートに頼まれて譜面に起こした記憶がある。なんだか日本のフォークソングみたいだよね。今日、本読みながら聞いていたストローブスの曲にも、歌詞が日本語で聞こえてきそうなフォークソングがあって、この時代は世界共通でこうしたノリのフォークが全盛だったことも思い出した。メロディラインがきれいで、母音の多い日本語がぴったりはまるシラブルのつくりになっている。もしかしてこういうのがやがてユーミンとかにつながっていくのだろうか。■ついでにストローブスストローブスはリック脱退後に最大のヒット曲が生まれて、それは私も覚えていた。でもリック在席中の演奏は知らなかったので、2枚聞いてみた。曲はフォークロック+ちょっとプログレ。うーん、プログレはないな。むしろトラディショナルな感じか。ケルトとかあっちのほうの寒い民族音楽っぽく感じる曲もある。リックは「こっそり」という感じで、ハモンドオルガンで細かい装飾を入れていたり、バックに薄く(無理やり)ピアノを入れていたりしている。きっと本来、キーボードがなくても成り立つ音楽なのに、カズンズはストローブスの音楽自体をキーボードを入れることによって変えていきたかったのかもしれない。5分に及ぶピアノソロでは、イエスのライブでのソロにはないジャズやブルースっぽいフレーズも入れていて、20歳をやっと超えたくらいの若者に、ちゃんと場を用意してくれたカズンズに感謝。もう1曲、さまざまなハモンドオルガンの音色とテクニック(すごくキレがよくてギターかと思った)を聞かせる12分もの曲もあって、頭と終わりにヴォーカルも入るんだけど、完全にリックの独壇場みたいな曲。これもお気に入り。なんだっけ。Where is this dream of your youth? アドリブっぽいメロディラインがスタッカートみたいに粒立って聞こえる。こういうの、ラテン系のジャズバンドとかの演奏で聴いたことがあるかも。こういう音やフレーズはイエスでもソロでも聞くことができない。ポップでノリがよくて、でもいかにも60年代の音(ハモンド)で、貴重な演奏だと思う。あと明らかにハープシコードみたいな音が聴ける曲もあった。ピアノならまだしも、ハモンドでこれだけ引出しの多いところを聞かせる(しかもライブで即興)20歳やそこらの若者って、そりゃほうっておかれないだろう。ストローブスはイエスやその後のリックのソロともまったく親和性のない音楽だけど、どんな音楽にでも合わせられるというリックの器用な一面が、こういう形で残されているのはうれしい。リックの1000セッションとも2000セッションともいわれるセッションミュージシャン時代って、ちゃんとした曲だけじゃなくて、30秒のCMソングやジングルやサウンドロゴなど、およそ楽器が必要なコマーシャルな場面での仕事も全部カウントされるんだと思う。私もバブルのころは、広告屋で企画やコピーを書いていたけど、社歌の仕事なんてのも受けたことがあって、作曲家・作詞家に仕事を依頼し、スタジオを抑え、歌手をオーディションし、セッションミュージシャンを予約する仕事をやっていたことがある。そう、当時はCIが大流行して、社名を替えたりロゴを作ったりするついでに社歌なんてのも作るのが流行ったぐらい金余りだったんだよ。中村八大作曲・永六輔作詞(これは結局かなわず、八大さんのとこのお弟子さんに頼んだ)・デュークエイセスのコーラスというビッグネームの社歌に数千万投入された。依頼主の証券会社も今はない(笑)。兵どもの夢の跡。リックもこういう、名前の残らない仕事を山のようにやって稼いでいたんだろう。ひそかに社歌とか校歌とか(UKにそんなものがあるならば)に貢献していたかもしれないと想像するとちょっと楽しい。この器用すぎる才能がすべてロックに向いていたら、自分のバンドやもうちょっとマシになっていたと思うし、80年代以降の駄作のオンパレードなんてのもちょっとは防げたかもしれない。オケやコーラスとロックバンドのアンサンブルというのは、19世紀にワグナーがやろうとしていた斬新さに近いかもしれないと思う。でも残念ながら彼は自分のクリエイティブな能力は20代で使い切ってしまったんだと思う。
2016.05.05
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Tちゃんが猫を構う&久々にロック回帰した私と昔のロック話でもりあがろうと遊びに来て、家でだらだら飲みながらタケノコご飯の夕食を食べる。ブルース好きのTちゃんには、ジャック・ブルースのお誕生日ライブを餌にしておびき寄せ、むりやりイエスのDVDを見せる。彼女も全盛期、こわれものと危機はリアルタイムリスナーだ。でも、プログレはそれほど詳しくなくて、好きなのはむしろブルースロック。イエスもこの2枚くらいしかちゃんと聞いていない模様。しかし彼女は守備範囲が広く、ブリティッシュロックも産業ロックも詳しい。数年前から「今頃ジャーニーにはまっちゃった!」とか言っていて、ジョン・アンダーソンが今はイエスじゃない経緯を話したら「ジャーニーにそっくり!」とか言われてしまった。しかし、産業ロックも好きだという彼女が、あんな長いプログレをよく聞いていたものだ。「すごく好きかというと、そういうわけでもなく。なんというか24年組の少女マンガって、当時の女子ならだれでも読んでいたじゃない。そういう感じで聴いていたの。だから知っているし好きな曲もあるけど、本当に好きなグループは別にいる、みたいな感じ」。それにしては、危機の冒頭のテープ音源「鳥のさえずりの部分がさ・・・」とかやけに記憶が鮮明なので驚いた。シベリアン・カートゥルも大好きだったようだ。「あの最後のパッ、パパーパパーパパーってところ、合わせられるまで歌わなかった?」と聞かれ、「歌った~何拍子なんだろうと手拍子しながら!」と、お互いその後知り合うことになろうとは思いもよらない当時の女子二人が、時空を超えて同じことをしていたことにちょっと感動。往時の5人を知っているので、さっそく今(といっても2003年)の5人を見てもらう。あれれ、おどろかない。それどこか、「ハウ、かっこいいじゃない。リックもこんな風になるって想像できるよね」。うむ。頭髪に拒否反応がないのは喜ばしいことだ。「あの人たち、当時から菜食主義とか言ってたよね。まあヒッピーとかそんな感じだし、ジョン・アンダーソンはかっこからしてヒッピーぽかった」。クリスの妙な衣装も覚えていて「あの人は、サイケだよね。当時ボウイとかもう寛斎の衣装着てライブとかやってたじゃん。ああいうコスチュームぽいのは見た目意識したロックの最初のころだよね」。クリスはサイケだったのか・・・そういやクリスがいたシンや、スティーヴ・ハウのイエス以前の写真や映像では、もろサイケ柄の衣装着ているな。サイケとヒッピーの違いがよくわからないけど(ファッションとライフスタイルか?)、なんとなくサイケは都会で、ヒッピーは自然志向という気はする。まあ、それにしても70年代前半のイエスって、衣装の嗜好がバラバラすぎるな。ジョンはヒッピー、クリスはサイケ、ハウもどっちかというとサイケ、そしてリックは魔術師(笑)。なにを目指していたのか、見た目ではわからんなー。Tちゃんにはその後、今のヴォーカリストのawakenを見せたら、曲よりヴォーカリストをやたら気に入ったもよう。ジョン・ディヴィソンは、ジョン・アンダーションよりストイックな感じがして好みだそうだ。ストイック…そういう感想もありか。確かに一生懸命コピーして自分のものにしようと頑張っている姿はストイックかもしれない。「当時、こんな恰好してたらぜったいドラッグやってる人認定だけど、今だとマクロビやってる人、って感じだよね」。なるほど~根っこは同じだもんね。自然に寄り添い身体や精神にとっていいことをする生活。よもやフラワーチルドレン(ヒッピー)とマクロビが同列だとは。イエスでひっぱろうと思っていたのに、フリップの似非紳士ぶりをみてほしくてボウイ5つの時代を見始めたら、なんとボウイにフリップを紹介したブライアン・イーノを「かっこいい~」と言い始めて、再度びっくりした。本当に頭髪で差別しないな、Tちゃん(笑)。ああそうだった。彼女は昔のロック話ができる数少ない友人の一人だが、好みはまったく違うのだった。彼女は白人のブルースが好きだし、私はブルースはよくわからない。でも私はビートルズよりストーンズが好きだけど彼女は逆。でもイーノ?いま環境音楽やってんだよね。「当時はイーノって気持ち悪かったじゃない。なんか辮髪みたいで。そもそもブライアン・フェリーと言い、ロキシー・ミュージックのすかした感じは嫌いだった」のに、なんだか建築家みたいな風貌のおっさんになったイーノに一目ぼれした模様。人の好みは変わるもんだ。私は当時からブライアン・フェリーのスタイリッシュさは好きだった。ロキシーの音楽はさっぱりわかんなかったけど。そして見てほしかったフリップには「なんか詐欺師みたいだよね」ある意味当たっている(笑)。やっぱり私の好みがヘンなのだろうか。でも二人ともボウイは「ヒット曲以外はよくわかんなかったよねー」ということで意見が一致した。そうそう、当時、コックニーレベルの「さかしま」がすごい話題になって聞いたけど、これもロキシーと同じ匂いはするけど、よくわからなかった。でも5,6年後、大学時代にローリー・アンダーソンとかナム・ジュン・パイク、あ―名前思い出せないけど、浜辺のアインシュタインの人に入れあげてた時、ちょっとロキシーやコックニーレベルと同じ匂いがした。ああいうコンテンポラリーをロックに取り入れようとする試みだったのかも。ムーディブルースも好きだった(童夢限定)彼女に、こないだのバカラックトリビュートに出てきたジャスティン・ヘイワードを見せる。40年後のロッカーのなかでは、私のイチオシ。「えー、なんかやだ」。そうですか。ジミー・ペイジが武道館を尋ねるドキュメント(SONGS)とかも一緒に見てたら、彼女はツェッペリンはフィジカルグラフィティまで全部聞いていて、一般的には人気のなかった3rdが好きだという。40年前のロックのかっこよさに、当時小娘だった元女子がしびれた夜だった。そうそう、もう一月ほど前になるけど、Hちゃんにもイエスを布教した。彼女は70年代生まれだけど、なぜか古いロックに詳しくて、シド・バレットなんて名前も知っている。ベルベット・アンダーグラウンドとかが好きだった年の離れたお姉さんからのすりこみのようだ。でもプログレはほとんど聞いたことがなかったみたい。サバスとかアイアンメイデンとか、ハードロックは知っているみたいだった。で、いかに70年代のプログレがおもしろかったかを居酒屋で話しているうちに、そうそうとウォークマンを取り出し、とりあえずAwakenの断片を聞いてもらう。「すごい…」と絶句。だよねー。うれしい。ところが、その後にリックの手癖がラヴェルに似ていることを証明しようと、クープランの墓を聞かせたら、「こっちのほうがもっとすごい!」ということになってしまった。しまった失敗。やっぱり電気的・人工的な音が大半のロックより、アコースティックの難曲の名演のほうが人を感動させられるわけね。ラヴェルはトッカータ以外を聞かせるんだった。Yesspeak、英語字幕を出せるバージョンが届いたので見直した。やっぱり細かいところは落ちていたな。リックが終わりちかくで両親について、若いころは自分のアルコール依存のことでずいぶん心配かけた、みたいなことを話していた。リックは一人っ子で、アッパーワーキングクラスの家庭で、プロテスタントの信仰篤い両親に愛されて育った。リックが子だくさんなのは、自分が一人っ子だったことの裏返しかもしれない。リックがアダムにインタビューするラジオ番組では、今の自分の奥さんはお前より若いんだぜ~えへへみたいなことを平気で言っちゃうリックが好きだ。音楽に対するモラルは高いけど、人生に対するモラルは適当な人なんだよな。ジョン・ロードトリビュートの大がかりなコンサート(ロイヤル・アルバートホールかな?クラシックのホール)に、少しだけリックが登場していた。懐かしいHushとBurn(パープル)にまざってムーグの手癖満載アドリブをやっていたけど、バッキングのドン・ヘイリーがよかった。こういう昔風のオルガン弾く人なんだ。かっこいいし、目配り・気配りできて、次々に「はい、つぎソロどうぞ~」という感じで合図を送っていた。リックはたいして本気でないのか、長いソロは弾かなかったけど、途中で周囲がリックに気を使って、ラウンドアバウトのリフを弾いて、リックのソロを促したけど、なかなかそれに乗らない。なんでだろう。さすがにハードロックの祭典で、イエスの曲はまずいとおもったのか、そもそももうとっくにイエス愛はなくて、「いまさらラウンドアバウトなんて弾きたくない」って感じだったんだろうか。リックはジョン・ロードの生前最後くらいのトリビュートコンサートでがっつり共演しているし、本来、こういうギンギンのロック好きだよね。自分のバンドも持っているし。でもそれが彼がつむぎだすクラシックベースの音楽とはベクトルが違うから、なんか一緒にやってもどこかに距離があるというか、違和感がある。むしろドン・ヘイリーみたいにバッキングに徹して、コード(俗にいう白玉弾き?)で押し切れればいいんだけど、そうなるとリックの持ち味でない。なかなか悩ましい。イアン・ギラン、久しぶりに聞いた。いいおっさんになっていた。グレン・ヒューズまでは覚えているけど、あの小さい若い(というか私と同じくらい)の人は誰だ? すっごいうまい。→調べました。アイアン・メイデンの人。パープルは数曲(水煙とトーキョー、バーン)くらいしか記憶にないけど、ハッシュは聞いたら「ああ、この曲か」と思ったわ。今のパープルがプログレっぽいという話をよく聞くけど、源流は多分同じだよね。フーとサイケ。60年代後半のプリティッシュロックはすごかったな~。今、タイムスリップするならこの当時だな。
2016.05.04
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■破綻のない変拍子REDのスターレス、冒頭のメロトロン(ストリングス)聞いてたら、スティングのFragileを思いだしちゃったじゃないか。スティングが発表した当時、とっくに誰かが指摘しているだろうけど、これぐらいのコード進行のダブりはパクリとはいわないのか。ヴォーカルの裏メロのようにサキソフォンがかぶさるところとかもスティングによく似た曲があったなあ(→Englishman in NewYork)。なんつうか醸し出すジャージーな雰囲気(ジャージーって言い方は好きじゃないが)がクリソツ。イエスだってアルプス一万弱とかバーブラの追憶とか、そっくりさんフレーズはあるし、クラシックにだって山のようにあるからいいんだけど、楽器編成まで同じだと目立つわな。残念ながらスティングのほうが圧倒的にビッグだから、クリムゾンが異議申し立てをしたところでなにも変わらないとは思うけど。そしてヒットソングとして優れているのはどうしたってスティングのほうだ。まあスティングもジャズ寄りの人だから、こういうこともあろう。あ!そうか。クリムゾンの暗さは私が好きなスティングやU2につながる暗さなんだな。クリムゾンを聞いていたから、その後、スティングやU2は聞けていたということかも。なるほど。すごく腑におちた。でもクリムゾンにあってスティングにないのは 「重さ」。ビルのドラムスをもってしても、あの引きずるような重さはいかんともしがたい。REDは、イエス以上にほとんどの曲でしょっちゅう拍子変えているけど、変拍子ってほどじゃなくて、とってもわかりやすい。破綻がない。 極端な話、8+8+7+7+8+8+5+5+8+8…とか、数学的にきれいで、設計図(楽譜)がすぐに思い浮かぶ。こういうのは変拍子というよりミニマルの流儀に近いような気がする。数学的に破綻のないものはそれだけで美しいに決まっている。フリップはパズルとか好きそうだ(笑)。それを敢えて電気的に音を歪めて演奏するからプログレなんだろうか。一方、イエスの拍子変えは予測できないんだよね。え、ここでこう入れてくる?って感じで。理屈わかってないでやっていて、たまたまちょっとやってみたらはまった、みたいである意味天然で最強。だから一般には逆の理解なのかもしれないけど、イエスのピーク時の大曲はクリムゾンよりもっと混沌としている。なんというか、形式にとらわれない組曲なんだ。→お昼食べながらREDの拍子をカウントしてたら、3(5+5+6+8)+8+(8×14)+2(7+7+8+8)+とか、記譜上はまた別の拍になるかもしれないけど、私ならこう割る、という形がちゃんとみえてくる。そしてリフレインが多いので、形式割りできるわ。楽しい。でも破綻があるのがロックな気もする。■5年の間になにがあったのかリックのバンド入りのコンサートが結構面白かったので、もう一回70年代のソロアルバムNo earthy correctrionを聞き直したら、クリムゾンに似ている(笑)。たぶん変拍子の使い方がイエスじゃなくてクリムゾンなんだよね。設計図が思い浮かぶ。クリムゾンにリックが入っていたら、もっとまじめにバンドに貢献してくれたかもしれないとか思った。まあ、フリップのもとでは1カ月も耐えられそうにないというか、フリップから「お前うるさいから出ていけ」と言われそうだけど。フリップさまは下品なのはお好きじゃないだろう。リックは10代のころ、すでに全調自在に展開できて、曲を一回聞けば、自分がどうそれに参加すればいいのかがわかる子どもだったんだろう。ジャズ的なフレーズもブルーノートもビバップも、もちろんダンスのリズムも弾けていたことがよくわかった。14歳前後って誰でもそうだけど、なんでも貪欲に吸収できる時期だから、その頃にはあらゆるスタイルを再現できるようになっていたんだろう。極端なことを言うと、ストローブスの頃には、その後の彼の特徴といわれるものはすべて出そろっている。完成はされていないので、その後に展開があるわけだけど。でも最終的にリックはブルーノートにもフリージャズの方向にも行かなかったから、本人の意思にかかわらずいつまでたってもクラシックベースで「お上品」と言われるんだろう。98年の暮れに放映されたThis is your lifeに出演していたリックは、その年の夏に大病をして一気に体重が落ちたせいか、いまだかつて見たことがないほどスリムになっていて、とても下品なジョークを飛ばしたり大酒飲んだり、本番中にカレーを食べたりするような人には見えなかった。なんつうか、経済界のエグゼクティブみたいに見えた。しかしそれからわずか5年後のイエスのツアー(フルサークル→35周年)時には、かなり人相が変わっていた。なんつうかより怪人に近くなったと言うか。体もふた回りほど大きくなって恰幅がよくなり、首(顎の下)がたるんできて、眉間に深いしわが刻まれていた。49歳から54歳までの間に彼になにがあったのか。一つはニナとの離婚だろう。放映当時既に2人の生活は破綻していたかもしれない。クリス・ウェルチの評伝でもそんな書き方だった。だからこそ、あの番組中、ニナが隣に座っている状況で、いつも饒舌なリック節がほとんど出なかった。そして、一緒に暮らしているはずの四男オスカーが、久しぶりにリックに会えたみたいに、必死に抱きついていた。まだ子どもたちはお金がかかるし、慰謝料相当だったかな。YESSPEAKの英語字幕付きが届いたので早速見たら、メンバーがもっともくつろげる場所(自宅など)で個別にインタビューしていて、リックは なんとスペイン領カナリア諸島のテネリフェ滞在中だった。ホテルなのか別荘なのか不明だけど、ホテルっぽい感じかな。テネリフェ、世界遺産のリゾート地だよね。さすがに日本からはかなり遠くて、ヨーロッパのお金持ちのリゾート地という感じがする。あの赤ら顔は日焼けだったんだな。毎日ゴルフ三昧でもしていたか。そして、経済的苦境について、例のアーサーオンアイスの借金のことと、やはり何度も離婚していることが原因、みたいなこと言ってる。お金が無くなって初めて自分がリッチだったことに気が付くんだって。使っている自覚はあったんだな。■息子二人は見た目から入る最近、リックの2人の息子にもご執心だ。ゴリラ顔リックから、こんなナイスガイな息子が生まれるなんて。でもその才能は父親を上回ることはない。オリヴァーは、アコースティックギタリストとのアンサンブルの映像をyoutubeで見たり、本人のアルバムの一部も聞いてみたりしたけど、いまひとつピンとこない。少なくとも新しい音楽には聞こえない。プログレにも聞こえなかった。でも見た目はすごい好み。ちょっとたれ目だけど涼しげなブルーの目元と、サラサラのロングヘアは前髪をつくらないで、少し斜めからサイドに流しているスタイルも似合っている。70年代の少女マンガで育った自分の萌えツボを直撃してくる。口元は父親によく似ている。めったに笑顔にならないので、なんかちょっと屈折した過去があるっぽいところがいい。 父リックはキーボードを弾きながら恥ずかしげもなく陶酔の表情を見せることがあったけど、オリヴァーはそんなことはしない。イエス在籍中は無愛想なほど無表情で、ひたすら淡々と自分のパートをこなしていた。で、一応、完コピ目指して、そこに自分らしさを加えようとしていたらしいけど、残念ながら本家よりは明らかに劣る(音が少ないとか音色のセンスが悪いとか音量がミスマッチとかリフのリズムに遅れるとか)パフォーマンスだった。完全にデジタル時代のキーボード弾きのはずなのに、器用さを見せることができなかったのは残念だ。Oliver Wakeman Bandとしても活動しているけど、イエスと同じ編成のバンドでキーボード担当となると、主役にはなりえない。音楽もロックなんだかよくわかんない。あ、そうか。息子は父同様、ヴォーカルやらないんだもんな。これでシンガーとしてもうまかったら、また別の活動領域ができるだろうに。https://www.youtube.com/watch?v=lDkPLtokq-0▲30歳くらいの頃のオリバーのアコピ(といってもデジタル音源)のソロだけど、なんかパパリックのヘンリー八世のマイナーアレンジみたいなフレーズがあったり、ジョージ・ウィンストン風だったり、いろんな要素が出てくるんだけど、なんかはっきり言ってプロのレベルではない気がする。テンポや曲調にメリハリがないせいか、ただピアノの試弾きをしているようにしか見えない。鍵盤弾く時の手つきは、指は跳ねるわ無駄に手首が動いているわで、あんまり脱力できていない感じがする。左手はかなり不自由そうだな。ウエイト鍵盤だろうけど、音の粒が揃わないのがわかっちゃうんだようね。それと、音楽の方向性としては、全体として中高年のためのコンソレーション的な音楽をやっているのかと思う。でも髪を後ろで縛ってオールバックにしていると、面長な顔つきの額からこめかみにかけてのラインがきれいなのがわかって、本当に品がある。そしてきれいな英国英語を話す。Live from Lyonのドキュメント映像でも、まあわかりやすい英語だったけどこれほど美しくはなかった。客層に合わせているのかもしれない。音の圧が強いところは父に似ている。でも本当に音に強弱ないのでのっぺりしている。なんとかならんかのう。一方、アダムは、兄のほうが絶対にハンサムだと思うんだけど、なんだか笑顔がかわいくてくったくがなく、愛すべきキャラクターという感じがする。目がクリクリしてて、ちょっとエラが張っていて、いつも口元が笑っているのもいい。無精ひげでも汚い感じがしなくて、オリバーがほとんど笑わず時折厳しい表情をするのにくらべ、天真爛漫なキャラのように見える。そしてあんまりリックと似ていない。自らベジタリアンだと公言していて体型も気遣っていることがわかる。いや、オリヴァーも十分スリムなんだけど、この人は自分から「ベジタリアン」とか公言しなさそう。一緒にアルバムつくったりツアーに同行したりと、アダムの10~30代はリックとの仕事が多いけど、いまはサバスやオジ―のサポートキーボーディスト。ハードロックやヘヴィメタルは全然聞かないからわからないけど、パープルのジョン・ロードみたいなのを目指しているのだろうか。自分名義のソロアルバムとかに興味がないのは、己の実力を客観的に判断してのことかも。でも10代から父と競演って、ほとんど一緒に暮らしたことはないと思うんだけど(少なくとも記憶にはないはず)、たまに会ったときに「自分もショービジネスの世界で仕事をしたい」と相談したのかもしれない。単に、息子たちを構いたいリックが、オリバーにはすげなくされてアダムをおもちゃにしているだけかもしれないけど。私はリックの本に出てきた、南米をツアーで回っていたとき、19歳のアダムがアテンドした1日観光のエピソードが大好き。We will go to the butterfly farm!■最後に泣かせるリック本そうそう、Grumpy2冊目、ゴルフのところは半分飛ばしたりしたけど、ほぼほぼ読み終わった。最後にまたサインの話になって、プロローグとちゃんとリンクするつくりだったんだけど、最後に亡き父親とのサインをめぐるエピソードが紹介されていて、道徳の教科書に載せたくなるようないい話で泣きそうになった。なんというか、教育がうまくいった労働者階級らしいエピソードなんだ。リックは一人っ子で、父親は信心深い音楽家。両親に愛され、ロックスターとして成功した息子に母親が電話するとHi, dear! と電話に出るリック。いかに両親を尊敬しているかがうかがえる。リックはストローブスに入って最初にもらった給料で、両親に特別な夜をプレゼントしようとステーキハウスに連れていく約束をしていた。レストランの予約はライブが終わったあとの11時くらいからで(日本の感覚ではちょっと信じられない)、ステージが終わるとサインを求めるファンが殺到したので、レストランの予約に遅れると思ったリックはその場を逃げ出してきた。でも父親はそんなリックを叱って「戻れ」と言う。「たとえ1人だろうが10人、100人だろうが、お前のサインを欲しいといってくるファンを失望させてはいけない」と。いいお父さんだね。父亡き後、南米でのコンサートで数百人のファンがサインを求めて殺到したとき、プロモーターは「裏から逃げて」と言ったけど、リックは父の言葉を思い出し、わざわざ戻ってサインに応じている(トニー・フェルナンデスも一緒に戻っていた)。自分の仕事が、ファンあってこそ成り立つものであることをちゃんと理解している。リックはアーティストではなく、スターなんだなあと思わせるエピソードだ。Yesspeakにも公演後、バックステージにつめかけたファンがサインをせがむのを、大きな鉄の扉ごしにプログラムやノートを受け取ってメンバーたちがサインしている様子が映っていて、ああこれだなと思った。ハウもいつも気軽にサインに応じていて、なんか微笑ましい。なんだろう、テレビで人気のスター、というのは全然違うし、ヒット曲だって誰もが知っているのはロンリハぐらいなのに、ファン一人ひとりを大事にするという姿勢は、イエスメンが労働者階級の出身だからかもと思ったりした。ビルだったらそこまでしないかも。「やってらんないよ」とか言って。
2016.04.28
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■あああついにクリムゾンにまでこの2カ月、イエスのアルバムやDVDを買いまくったせいか、密林からは勝手に70年代プログレ作品のおすすめメールが頻繁に届く。いや、クリムゾンもELPもフロイドも当時から大好きで聞いていたけどさ、これ以上広げてどうすんの、ただでさえ引きこもりの人生なのに。それに今はまだイエスで手いっぱいだっつーの。でもフリップ・ビル・ウェットンの三人の顔がモノクロの闇のなかにぼんやり浮かんでいるREDのスリーブを見ているうちに、私ってば無意識にポチってた。そして当時はリズム隊にはまったく関心がなかったけど、今思うと、イエス→クリムゾンと、ビルのキャリアを追っていたんだと気がついた。40年ぶりに聞いたRED。クリムゾン体験は、リアルタイムでは太陽と戦慄からで、そのあと暗黒の世界、 REDと聞いて、その後私はロックから離れたけど、ほぼその頃一旦解散しちゃっていたようだ。アルバムは戦慄を最初に聞いて、REDの前に宮殿を買って、あとリザートと、もう一枚くらいあったかな。精神異常者とエピタフとスターレスは今でも歌える。宮殿のG・レイクの甘い声には悩殺された記憶がある。暗黒の世界の毛羽立った加工(紙の質)の手触りや、 REDはツルツルのPP張りの手触りも覚えている。ところで、好きだったStarless and the Bible blackって、暗黒の世界のタイトルなのに、なんでREDに入っているんだろう。というのを、当時も思った記憶が。聞こうとして暗黒の世界をかけると、思ってたのと違う曲がかかったんだよな。→Wikiで可決。フリップの気まぐれ。なんてこった。当時、プログレはすでに私の頭の中では細分化されていて、クリムゾンとフロイドは暗い曲が多かったから陰で、イエス(と混ぜても らってもいいならムー ディブルース)は陽だった。フロイドやクリムゾンのインストゥルメンタル流しながら宿題やっていたんだよなあ。おせっかいとか1面20分あるので、丁度 漢字の書き取りが終わるとか、そんな感じ。あとジェスロタル、カーヴドエア、PFM、タンジェリンドリーム、トリアンヴィラッド、フォルムラトレ、マイク・オールドフィールド(チューブラーべルズ)あたりをとっかえひっかえ聞いていた。クラシカルな旋律と甘いヴォーカルが自分のツボだったので、そのうちオランダ、イタリア、ドイツあたりのUK以外のプログレは駆逐されていった。甘い声といえばジョン・アンダーソンと ジャスティン・ヘイワードとグレッグ・レイクが御三家だったけど、ギルモア 声も私にとっては「甘い声」だった。なんつうか耳元囁き系で、大人への入口、 みたいな(笑)。クリムゾンの曲は全体に男くさくて、ブラスもガンガン入って来て、女子ファンは少なかったと思うんだけど、実際私はなにがよくて聞いていたんだろう。クラスメートの男子はただひたすらパープルとかGFRをコピーして喜んでいるおばかさんばっかりだった。うおおおお~最初の曲REDと最後の曲Bible blackはしっかり覚えている。このゆがんだ音が中学生の脳にアドレナリンを出させていたんだな。REDはチョーキングとディスト―ションの嵐。スターレスはクリムゾンの中でベスト3に入るくらい好きで、この不安感を増幅させる暗いストリングスにかぶさってくる、こもったような心もとないギターは、クラシックでいう「泣き」の旋律だ。ビルのパーカッションも控えめだし、クラシック脳には気持ちよかった。で、当時、ブラームスの室内楽曲のなかにむせび泣くクラリネットが聞けるレオポルド・ウラッハの歴史的名演「クラリネット五重奏曲」があって(こういうのは父の刷り込み)、ちょっとゆがんだ音でテンポルバートする感じが子ども心にも切なく哀愁を含んだ音に感じられて、スターレスは同じ種類だと思ったのだった。40年ぶりに聞いても、それは間違ってないと思う。ショパン的なアーティキュレーション(要するに溜め)を、すでにクリムゾンから感じていたわけだな。あらら時代が壮大に逆だけど。今この曲を改めて聞くと「ああ、ジャジーな曲だな」と思う。クリムゾンが本来はジャズのアドリブをやるバンドだなんて当時は全然思いもしなかったな。ところで、このときの正式メンバーは3人だけど、メロトロンやらブラス(サックス?)やら木管楽器やら、いろんな楽器の音がするんだけど、サポートがいたんだろうか。→追記:Wikiで確認したらいっぱいサポートがいたそもそもプログレのジャケ写にはメンバー写真とか載っていないものが多かっ たし、当時読んでいたミュージックライフや音楽専科にもクリムゾンは古いモノクロ写真ぐらいしかなくて、アルバム出すたびにメンバー変わるというイメージだった(これは間違ってなかった)。イエスのように見た目を意識した衣装や、エマーソンのような派手な(狂暴な)アクションはなかったので、中学生の女子の食指は動かなかったはずだ。フロイドさえも私はギルモアのルックスが好きだったんだから、ビジュアル系でないのはクリムゾンだけだ(笑)。だから本当に音楽だけで好きになった例だな。でもメンバーチェンジが多すぎて、フリップ以外さっぱり覚えられなった。名前だけはレイク、 ビル、P・シンフィールド(作詞担当?)、イアン・マクドナルド、マイケル・ジャイルスあたりが思い浮かぶけど、誰がどの時期にいたのかはよく覚えていな い。それだけ当時からもう、ザ・フリップ・バンドだったんだろう。フリップ、レイク、ビル以外は顔が認識できない(すまん)。ウェットンもいつから在籍していたのか記憶にない。スターレスのあのひしゃげたヴォーカルはウェットンの声なのか。私はレイクのほうがずっと好みだけど、嫌いじゃない。私の好きな「湿度」のある男の声だ。1曲目のREDやスターレスの重くて鬱陶しい音は澱のように体にからみついてくる。なので、厄払いも兼ねて聞き終わった後すぐにフィッシャー= ディースカウのシューベルト歌曲集を聞いたら、溜まっていたどろどろしたものがスーっと晴れて行くのがわかった。すごいなシューベルトの浄化力。 昇華力、といってもいいかもしれない。この歌曲集も実は20年ぶりくらいに聞いたけど(ウォークマンに入れようとしたらジャケ写が表示されなかった。それぐらい古い)、三大歌曲集以外の地味な曲、しかも短調が多いのに、やっぱりクラシックの威力ってすごいな。フィッシャー=ディースカウは結構晩年の頃なので、声自体はかなり不 安定で心もとない。でも、そこがラシック演奏家のすごいところで、そんな声でも聞き手の胸に迫ってくる。もおおキュンキュンする。発声をコントロールできる人にのみ許された表現の極致。実はスターレスを聞いているうちになんだか泣きたくなったんだけど、シューベルトで毒消しができた。それにしても、ウェットンがビルと同い年、フリップですら46年生まれ。イエスもELPもそうだけど、プログレの多くはリーダー格が20代後半、 あとは20代前半で歴史に残るアルバムつくっちゃったってことか。すごいなー。まあビートルズやストーンズの例を見るまでもなく、ロックってのはみんな早熟なもんだ。一生回せるヒットを出したあとの対応がその後の人生を決めるみたいだな。 聞いている当時は10代前半だったから、20代前半の彼らでも私のなかでは十分大人だったけどな。頭と終わり以外の中の4曲はほとんど覚えていなかったのと、クリムゾンってインストが多かったんだというのと、当時はフリップしか認識していなかったけど、今に連なる大物が大勢在籍していたんだな、というのが40年ぶりの感想。 あと、断片的に聞き覚えのあるフレーズは多くて、CMとかに使 われていたのかもしれないと思ったり。■クリムゾンvsイエスウォークマンではREDのあとにリレイヤーがかかるんだけど、比べてしまうとクリムゾンはどうしたって「昔のプログレ」だと感じる。イエスの曲 は、閃光は チャラチャラした80年代ぽい音が使われているけど、それでもまぎれもない の好きなイエスサウンドだし、好きなアルバムだ。そして70年代のほとんどのアルバムは今でも古く感じない。なぜ、クリムゾンには時代を感じて、イエスには感じないのかをちょっと考えてみた。クリムゾンにはそもそも人工的な(歪められた)電気音が多すぎる。電気的に歪められた音や暗く内省的な歌詞や曲調はどうしてもそれらが生まれた時代を引 きずってしまう。それはもう音が古いとかメロディーの新しさとかいう問題ではないんだよね。多分イエスにはジョンの声とコーラスという生身の人の声とアコースティックな楽器の響きが入っているからなんだろう。比類ないジョンのヴォーカルとハウのアコースティックギターというのは、イエスを現在まで延命させた大きな要素 だと思う。打ち込みとか機械に頼った音楽が誕生してもクラシックが廃れないのと似ている。人のぬくもりとか手触りとか。ミスやリズムのズレや音程の不安定さすらもいとおしくなるのは、それが人の手によって生み出されるからだ。 リックが「イエスは自分たちが死んでも歴史に名を残す」みたいな名言を吐いていたけど、まさにそれ。普遍化して定着する音楽になってくるのかもしれない。とっくに言われているけど、ロック・クラシックなんだよね。クリムゾンもそういう聞かれ 方をしているんだろうか。一緒に楽しく歌えない曲って、難しいような気がする。あとはひたすら超絶技巧で攻めるとかしか道はないのだから。とりあえず、レイクのヴォーカルが聞きたくなったので、宮殿まではポチろう。実家にあるLPのデジタル化は諦めた。今更一枚一枚、クリーナーかけてターンテーブルに載せて…という作業を延々実行する根性が、今の私にはないわ。週末に数枚のLPをデジタル保存できたとして、何年かかるんだよ。老後はLPジャケット眺めながら買い直したデジタル音源聞いて過ごすことにする。ところで4月の訃報はプリンスだった。マイケル・ジャクソン並みの急死でテレビでも報道していたけど、それでもキースの死に方に比べれば・・・。 プリンスはほとんど聞いたことがないけど、結構年齢いってて驚いた。マドンナと言いプリンスといい、50代後半で体系もルックスもキープしているって、自然に反していてかなりな妖怪。そういう意味ではイエスメンは頭髪疑惑はあるものの、 加齢が及ぼす影響については自然にまかせっきりだったな。重畳。■追跡! リック・ウェイクマン~ストローブス時代あああもうこちらもドツボにはまってるな。だってリックの映像なんてyoutubeにはほぼ無尽蔵にあるんだもん。彼のちょっとコクニーっぽい英語も、早口でなければほぼ聞きとれるようになってしまったよ。母音に特徴があるけど、本物のコクニーのように子音が落ちることはない。テレビだとちゃんとBBCイングリッシュを意識して話しているような気がする。そしてスピーチ映像だと海外のファンもほぼ「スタンダップコメディアン」とかコメントしていて、そういう立ち位置なんだと知る(まあコメディアンとしは三流だけど往時の音楽的実績を踏まえたうえでの存在感なんだろう。 堺正章みたいな)。This is your lifeでストローブスのオリメン(?)4人が登場したときに、 ちょっとだけ在籍当時のリックの映像が映ってて、なぜかハモンドオルガン(ほとんどエレクトーンに見えた)の前で、粘着テープのコロコロクリーナーみたいなものを左手に持っていたんだよね。なんだろう、鍵盤を掃除しながら演奏してたの か?とか思って映像探したら、ちゃんと出てきた。コロコロクリーナーではなく、どうやらペンキ塗るときのローラーで、これでクラスター音やグリッサンドやっていたらしいとわかって爆笑した。そしてこのときのリックは、 オーバーオールジーンズを着ていた!超珍しい。てか、似合わない(笑)。ストローブス加入前の1969年、リック20歳の頃のストローブスとのギグの様子もあった。学校辞めた頃だね。ぼろぼろでホンキートンクになった、状態の悪いピアノ(ほとんどかすれたような音しか出ない)を、それでも一生懸命弾いているリックがかわいい。リック独特のターンやモルデントが、 頻出というほどではないが既に聞くことができる。 まだ髪が肩くらいまでしかなくて、顔なんて丸くて少年の面影が残る。でも左の薬指にはもうしっかり指輪をしていて、ロズとは既に所帯をもっていたことがわかる。そしてさすがに他のメンバーの中では存在感が薄い。私はストローブス時代のリックは全然知らなかったので、 やっぱりストローブスの純朴なフォークロックに、彼のきらびやかなキーボードプレイは合わないと思ってしまうけど、リック参加の「骨董品」「魔女の森から」は今でも人気があるらしい。ストローブスでは、リック脱退後のヒット曲、Part of the unionはシングルレコードを持っていて、今でもメロディーラインを覚えている。なんかのどかな田舎のフォークソングみたいな曲。同時にリンデスファーンのMeet me on the cornerまで思いだした。これは結構最後までちゃんと歌える。中1のころ、彼らが来日してNHKの音楽番組に出たんだよね。それで、フォークロアの不思議な衣装を着て、馴染みのない民族楽器をもって、この曲を歌った。インタビューで、自分たちのバンド名はイギリスのリンデスファーン島からとったと言っていた。 43年前の記憶。これもシングルレコードもってたな。そして3曲目。静止画像に音源を載せたものだったけど、その「骨董品」に収録されているリックのソロ(ライブ)がすごかった。その後、イエスでのソロパートや、アコースティックイエスでのピアノでも弾いていた、サイレント映画での「逃げる」イメージの付帯音楽風のパッセージをすでにここで 弾いていた し、クラシックのフレーズが瞬時にしてブルースになったり、ジャズっぽかったり。そういえば、番組では14歳くらいのリックがジャズバンドで弾いていた 時のメンバー(みんな年上で1998年当時既に老人)が登場していたから、イエス や自分のアルバムにはあまり表面化していないけど、ジャズもお手の物だってことがわかる。ブルースも、その後のリックの演奏では、乞われて弾いたブルージーなラウンドアバウトのピアノ伴奏(2003年ころ)まで聞くことはなかった から、本人はあまり得意じゃないというか、好きじゃないのかもしれない。そもそもリックには黒っぽい要素や、黒っぽいものにあこがれた片鱗もまったく感じられない。リックが子どもの頃聞いていたラス・コンウェイは、白人(もしかしたらユダヤ系) の、アメリカでいったら映画「愛情物語」の主人公、エディ・デューチンみたいなピアノ弾きで、ビッグバンドでの華麗な演奏からラグタイムまでなんでもござれというタイプの、音楽家というよりは芸人枠っぽい人だった。若者が喜ぶ音楽ではなく、田舎の大人や年配者が喜ぶ音楽なんだ。そうそう、ストライド奏法満載の演奏。私はハリー・コニックJrを思い出すけど、リックの本格的なストライド奏法も見たいなあ。ミラー紙のサイトで、リックの幼少期の思い出を語った記事を読んだら、大体、最初の本に書いてあったようなことだったけど、自分いつもクラスメートの誰よりも大きかったこと、10歳くらいのとき学校のコンサートでクレメンティを弾くようにいわれたけど、ラス・コンウェイのサイド・サドルを弾いたこと、ジャズバンドに参加して、背広を後ろ前に来てコスチュームっぽくしたことなどなどを話していた。リックが早くから音楽活動できたのは体が大きくて子どもに見られなかったからだと思う(笑)。いや本当に。そういうわけで、今度はストローブス時代のリックのCDを買うことにした。ああもう無間地獄に近くなってきたわ。GWは旅行に行く気力もないので、日替わりで友達と飲み、食べ、ひたすらプログレを聞きまくろう。そしてさらなる地獄へ落ちるのさ。
2016.04.26
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最初にリリースされた時のアルバムタイトルがわからないけど、R・ディーンの デザインで統一された企画もの「BedRock Series」から リリースされなおしたリックのアルバムを聞く。Bedrockって、寝室で聞くロックというわけではなく、もっと素直に考えて、基盤層の岩盤という意味なんだな。ようするに教養だから聞いとけよ、ってことか。ラインナップは微妙にプログレで、ゴングとかキャラバンとか私のしらないプログレもあれば、ユーライアヒープ、ウィッシュボーンアッシュ、リンデスファーンとか懐かしい名前もある。ソロではスティーヴ・ハウの名前もあるな。もうリックの平均点以下のアルバムをさんざん聞いた後なので全然期待していなかったけど、これはすごく出来がいい。音源と同じ時の映像もついていて、これがまたピーク時(1990年頃)のリックの指さばきがたくさん見られて眼 福じゃ。思えばABWHのライブでのソロパートがニコ動で「神キーボード」としてあがめられ、2年後の8人イエスのライブでのソロではトレヴァー・ラビン とスリリングな応酬をみせてくれた。もっとも指に脂が乗り切った時期(指に脂って字が似てる)かもね。もおお楽しい楽しい。そしてトニー・フェルナンデスとディヴィット・ペイトンとの息のあったプレイと、彼らをちゃんと立ててソロのパートも作っているところや、アシュリー・ ホルトのヴォーカルも堪能できる。リックがいくつもの印象的なフレーズをいかに違和感なくつなげて、本来大曲である地底探検やヘンリー8世をコンパクトに、より一層魅力的な音楽に 仕上げているのかよくわかる。私が好きなのは、異なるフレーズの繋ぎの時に一瞬変拍子になったり、調性ががらりと変わるところ。全編アップテンポで切れ目なく、しかも自分だけじゃなくてアンサンブルって、通常かなりリハーサルしないとうまくいかなそうだけど、リズムもほぼ狂うことなく、つくられた当初よりもずっと洗練された曲になって演奏される。お見事。初めて聞くエリザベス・ロックがかわいくてまたいい。これが入っているアルバム、Time machineが全部聞きたくなる。こうして泥沼にはまっていくんだよ。もう人生何十回目だっつうの。懲りない。あと、右の3-5でメロディー弾きながら リズムコードを1-2指で取っている曲があって、こういうことができればいいよな~(実はショパンにもシューマンにもいっぱいでてくるけど、ポップスのようにリズムを取るわけではないので楽しい)。ところでアシュリー・ホルトはイアン・ギランタイプのヴォーカリストで、私は なぜリックがこういうヴォーカリストを選んだのか常々疑問だった。 70年代に地底探検とアーサー王を手に入れた時は、このヴォーカルが苦手で、あまり聞かなくなったように覚えている。たしかに声量はあるけど、 シャウトすると潰れるし、そんなに美声なわけでもないよね。体はごついし(笑)。イアン・ギラン にはなれなかったんだろうなーと。当時、ハードロック好きのピアノ友達が、「本当にうまいヴォーカリストはイアン・ギランとロッド・スチュワートだけ」と言っていて、私はあんまりそっち 方面には興味がなかったので「そうなんだー」と思ったくらいだったけど、ギランのヴォーカルがものすごくブレがないのは私にもわかったし、 同じタイプでポール・ロジャースも好きだった(バドカンやフリーは何枚かアルバムを持っていた)。ホルトが限界までシャウトしているのを聞くと、 たしかにイアン・ギランそっくり。なんでリックのおめがねにかなったんだろう。地底探検の歌部分を聞いていると、リックの流麗なメロディラインには、普通にしっとり歌い上げるシンガーのほうが合っているような気がする。んーたとえばシナトラとか (死んでる)、布施明とか(日本人じゃ)、スタンダードをきちんと歌える歌手。でもリックは多分ロック・アンサンブルというところにこだわりたいんだろうね。あと、結構美系で気になっていたベースの人(ギターを弾くこともある)、 David Paton。初めて名前を認識した。ごめんなさい今まで知らなくて。ERAにも毎回いるわけではないっぽいので、正式メンバーではなさそう。70年代にパイロットというロックバンドにいて、その前はなんとベイ・シティ・ローラーズにいた!もっともBCRがはじける前に脱退していたみたいだけど。 リックと同い年で自由に活動しているらしいから、声をかけやすいのかもね。自分のアルバムもたくさん出している人で、日本にもちゃんとファンがいた! ロックファンも本当に懐が深いなあ。ベース、普通にうまいです。リックとデュオでやっているDVDもってたので、今度ちゃんと見てあげなくちゃ。あああポール・ロジャースなんて思いだしたら(実はクイーンのコンサートで彼のヴォーカルを聞いているので、大昔ってほどではない)、当時の彼の妻が野添ひとみのいとこだったことを思いだした。80~90年代、よく一緒に遊んでいた友人(すごい資産家の娘で、ちょっと別世界の人だったけど、なんかなつかれてた)が野添ひとみの付き人(ていのいい話相手)をしていて、私も何度か川口アパートメントに遊びに行ったっけ。私は大映映画はまったくしらな いので、野添さんのこともほとんど存知あげなかったけれど、女優はとうに辞めていて、ご主人の川口浩さんにも先立たれ、失意の渦中にいたので、芸能人のオーラは申し訳ないけど感じられなかったな。当時は何頭かの馬主になっていたので、自分の馬のレースを見るために友人を秘書がわりに同行させて地方競馬に行くのが仕事だったようだ。私は当時、しょっちゅう仕事や旅行で欧米に行っていて、その都度いろんなトラブルに巻き込まれた話が面白いから、ひとみさんの前でしてあげて~とかいう、なんか芸人枠で呼ばれた気がするよ。フリーには山内テツという日本人のベーシストがいたし(どうしてUKで仕事ができたんだろう)、P・ロジャースって日本に縁がある人だった。なんかいろんなことがよみがえってくるな。
2016.04.23
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昨日みたThis is your life、データベースを見ると放映日は1998年12月らしい。この年の夏に大病しているので、あのすっきりスリムないでたちは病み上がりでまだ体重が戻っていないときだったのかも。番組自体は1969-2003年まで続いた長寿番組。日本だと人に歴史ありみたいな、なんだっけ日曜の午前中に日テレでやってるやつ。ほとんど見たことないけど。登場したリックはスーツの中で体が泳いでいるほどスリムで、仕立てのいいスーツがよく似合ってエグゼクティブみたいでかっこよかった。痩せてると顔と同じぐらい手が大きいのがわかって、顎に手を当てるしぐさがサマになる。手と指フェチなので目が離せない。2冊目のGrumpyに掲載されている写真の何枚か(いちばんスリムだった頃とか、 腹が邪魔しないからボールが見える!とキャプションのあったスイングショットの写真とか)の頃だと思うんだけど。192センチで体重70キロ切ってた頃かもね。あの番組、とにかく登場するゲストが多すぎて、あんなに出て来てほとんどしゃべらなくていいわけ?なんて無駄に贅沢な番組なんだ。芸能界の友達やらストローブスの4人(デイヴ・カズンズとか何十年かぶりに観た)、イングリッシュロックアンサンブルのメンバー、ご近所さん やゴルフ仲間まで20人くらい登場していたけど、ほとんどの場合、司会進行役の男性がリックとの関係を紹介するだけ。登場するとリックが出迎えて「わざわざありがとう」とか言って、たまに司会者がゲストに短い質問をするけど、なんかすごくもったいない。30分番組っぽいけど、2時間くらいに引き延ばせると思う。家族も子供たちはアマンダ以外全員登場してたけど、別に父についてなにかを語るわけでもない(アダムがちょっと話してたな。あとジェンマが生まれた時の話になって「や~め~て~」みたいない。ジェンマは母の遺伝子受け継いではっきり美人だな)。ニナ・カーターは結構地味なスーツ姿で、いい母親を演じていたのかも。最近のほうが何倍もケバい。リックとは2歳違いで、173センチでヒール履いてもまだリックよりは小さい。大体、次々登場するゲストでリックより大きい人がいなかった。子供たち3人がほぼ同じくらい。遺伝子おそるべし。当時20歳くらいのベンジャミンを写真以外で観るには初めてかもしれない。 86年生まれのオスカーはまだ12歳で小さくてかわいかった。オスカーが必死にリックに抱きついていたのが印象的で、あれれニナとの子なのに、当時既に別居していた?とか思った。 ああ仮面夫婦・・・。■あと一人でヘンリーに並ぶ前後関係を調べるためにRWCCのクロニクルにざっと目を通してみた。Wikiと異なる記載もあるし、なんか本当に知りたいことが抜けていたり、イエスについては勝手に契約されていたとか契約関係でのもめごとなどが結構厳しい表現で載っていて驚いた。なんつうか全然整理されていないし理路整然としていないバイオグラフィーで、あんまり参考にならないな。とりあえず都合の悪いことは書いてないし(当たり前だ)、ネガティブな事実も、事実として述べているだけで相手を責めているような感じではないな。1998年は、時間軸は示されていないけど、やっぱり8月に集中治療室入院となった後にテレビ出演という感じだな。そしてリックが痩せたのは病院の飯がまずいからだった。(103キロ→83キロ)本では70→108だったけどな。もしかして70キロというのは、入院前のことかもね。それで20キロも落ちるなんて、私も入院したいw。それより、リックの5人の妻たち(ヘンリー八世まであと1人!)。ロザリンとニナとの生活が長かったのはわかった。書類上はロザリンが10年、ニナが20年。でも実際には離婚に時間がかかっているので、夫婦でいたのはもっと短い。ちょっと整理。1)ロザリン 69年、つまりリック20歳の時に付き合い始めて70年に結婚。イエスメンはアラン以外、本当に結婚が速い。でも77年ころにはリックは家を出て別居状態。80年に離婚成立。2人の息子はロザリンが引き取っていて、長男オリヴァーが「僕がピアノの練習を始めると母はいやがった」と語っていて、未練なのか恨みなのかわからないけど、円満離婚ではなかったようだ。2)ダニエラ 1977年頃、つまりリックがロザリンの元を離れて、スイスで生活を始めたころに付き合いはじめて、78年にベンジャミン誕生とある。80年誕生としているデータベースもあって、混乱する。78年だったら、まだロズとの離婚が成立していない。そしてダニエラとは80年に結婚したものの、1年もたたずに破局している。スイス人だったからね、リックの性格を理解するのは難しかったろう。ベンジャミンがどこで誰の手によって育てられたのか気になる。3)ニナ・カーター 81年ころから付き合い始め、83年にジェンマ誕生。正式な結婚は84年。86年オスカー誕生。 彼女自身がゴシップの世界にいて追っかけまわされる人だったので、なんというか過剰に華やかな夫婦だったようだ。チャリティーとか信仰とかゴ ルフとか、みんなニナとの結婚中に始めている。テレビ界進出も彼女の進言だったのかもね。98年にはThis is your lifeに家族で登場。円満ぶりをアピールしていたけど、ニナとは2000年以前から関係が悪化していた。正式離婚は2004年だが、最後の数年は口も聞かず、メールとFAXだけという冷えた関係だったようだ。ダニエラとの子ベンジャミンと、ニナの長女のジェンマは、付き合っている頃に妊娠・出産し、その後落とし前つけて結婚している。本能に従った行動は速いが法的な手続きは面倒くさいっぽいな。そして鍵盤の魔術師だけあってとりあえず手が速い。4-1)デニース 事実婚だったガールフレンド。彼女はファッション界で活躍するお針子で、リックの最初のマントをリフォームしたりしていて、70年代からの付き合いだったらしい。でも付き合っていた期間が問題。Denise Gandrup was dating Rick Wakeman. They started dating in 1985 and split up in 1987 after dating for 2 years. They had 1 child, Manda, their daughter, is 29 years old.って、完全にニナと結婚した直後じゃないか! そしてアマンダは86年生まれ。ニナとの間の息子、オスカーと同い年。なにやってんだリック! これは完全に浮気認定。この人は妻認定していないんだな。RWCCのバイオでは、2004年ころのワールドツアーのところに、娘のアマンダはアメリカに住んでいる、とある。早くから向こうで教育を受けていたと考えるのが順当かな。4-2)Yesspeakに出ていた、2003-2004年のワールドツアーに同行していた女性は、ウェルチによるとイタリア人アーティストのアリーナ・ベンチーニ。この頃リックは左薬指に指輪をしていない。彼は若いころから結婚指輪はちゃんとつけてる人だったから、していないのを見るのは初めてかも。5)レイチェル・カウフマン 出会いは2009年とある。つまりフルサークルツアーと35周年ツアーの時点ではまだ出会っていない。 今年43歳だから、頑張れば子どもを作れるかもしれないけど、残念ながらリックが手術済だ。いくらなんでもこの年で子供をもうけたらやばいと思っているんだろう。さすがに結婚はもういいとニナと分かれた時点で何度も公言していたけど、結局女性の側がほうっておかないのかもしれない。70年代からのつきあいの会計士(彼の本に何度も登場する)が今も現役だとは思わないけど、リックには優秀な会計士がついていて、妻たちへの配分や養育費などは彼任せと言う気がする。もちろん優先順位は上位にあるから、残りをリックが使う。会計士はリックのその年の収入予測から必要経費を按分しいるのだろう。破産のときだって「破産しといたほうがいい」という感じじゃなかったのかな。だって生活レベルはそんなに落ちていな気がする。そして65歳から受け取っている年金なんてきっと家の維持費ぐらいにしかならなくて、若い妻との快適な生活を維持するためにも、今年も全英を回るツアーをやるらしい。子どもたちが成人してお金がかからなくなったのだけはよかった。なにしろ、別れてもWakeman姓を名乗らせていたということは、認定&面倒みてたということにほかならない。オリヴァーが、銀行で働きながら学費を払ったとか書いていたから、成人後の資金援助はなさそうだが。これだけ道徳的に問題があっても、テレビで愛されるリック。女性が放っておかないリック。なんか彼といると楽しそうだと私も思うわ。ただ生きていくのにプロを使い倒すからランニングコストが膨大にかかるw。とりあえず働き者&働かなくちゃならないリックに乾杯!ARBにはハウとアランも呼んでほしいな。イエスのクラシックナンバーならハウをたて てラビンはバックに徹するからさ。最後の全盛期メンバーのギグはぜひ観たい。クリスのためにも。そして本当に日程が許すなら、100万くらい おろしてイギリス行ってやる(ぐらいの覚悟が今、ある)。リックの孫は、アダムが2000年に結婚した奥さんテリーとの間に子どもが2人、まで書いてあった。オリヴァーにはいないのかな。■リックの子どもたち(おさらい)オリヴァー b.1972(母ロザリン)アダム b.1974(同上)ベンジャミン b.1978(母ダニエラ)ジェンマ b.1983(母ニナ)オスカー b.1986(同上)アマンダ b.1986(母デニース) 一番下が30歳か。全員、子どもがいていい年だな。リックの波乱の人生のなかで、家族の意味ってなんだろう。あれだけ仕事していたら、ほとんど家にいなかったと思うけど。でもとりあえず金銭的な援助とクリスマスに家族が集うという責任は果たしている。えらいぞリック。 Wakeman家の繁栄を祈ろう。■スターになるということすごいなもう。IMDbというデータベースサイトでは、妻の名、子どもの名や生年まで全部載ってるわ。これは嘘つけないね。ハウ師匠は ディランとヴァージルの他に、80年代に2人の娘をもうけていた(82年ジョージア、86年ステファニー)。2人の息子にとっては年の離 れたかわいい妹だろう。養子とは書かれていないから、奥さんも40代ちかくでがんばった。若い娘がいたから21世紀になっても頑張らない とあかんかったのね。奥さんのジャン(Janet)はマルタ共和国のハーフと書かれていた。▼こっちはクリス。最初の妻、ニッキーとの間にはもしかして双子の娘がいる?70年生まれだからもう中年だけど。チャンドリカのFBには結婚式に出席したクリスとキスしている写真がアップされていた。 二度目の妻メリッサはアメリカの女優さんで、えらい美女だった。2000年に生まれた息子がいるけど、話題に上ったことはないな。妻が引 き取ったかな。あれれ、35周年ツアーの頃は、まだメリッサと結婚中だな。キーズの頃のマンハッタンの朝食会のテーブルで、クリスの隣に いたのもメリッサだな。たしかに美女だった。そして、誰もが心配しているスコッティーと の間に生まれたキリアン、2008年生まれだからやっと8歳。オリヴァーが同行した2009年ころのツアーでは、スコッティーが妊娠中で、母親も一緒に来 てツアーに同行したとあったから、このころの 写真に写っているのはスコッティーだな。Melissa Morgan (8 May 1993 - 2004) (divorced) (1 child) Nikki Squire (1972 - 1987) (divorced) (2 children) Scotland Squire (? - 27 June 2015) (his death) (1 child) Had two daughters from his first marriage to Nikki (Chandrika and Camille, born in the 1970s), a step daughter (Carmen Squire) from Nikki's previous marriage, a son with Melissa (Cameron, born in early 2000) and a daughter with Scotland (Xilan, born in December 2008). ▼こっちはアラン。他のメンバーに比べたら遅い結婚で、離婚歴もない。きれいなもんだ。息子と娘が一人ずついて、息子はトレバー・ラビン のとこ ろで働いている。97年にジョンが再婚したとき、ベストマンを務めている。さすがいい人アラン。Gigi (1981 - present) (2 children) Has two children; son Jesse and daughter Casse.Son Jesse works as a ProTools operator for Trevor Rabin.Was best man for friend and fellow band mate, Jon Anderson, at his wedding in Hawaii, Spring 1997. ▼ほい、そしてジョンJane Luttenburger Anderson (1997 - present) Jennifer Baker (1970 - 1995) (divorced) (3 children) インド系?の奥さん、ジェニファーとは四半世紀連れ添って子ども3人もうけて離婚かあ。でも子どももきっちり成人して、いちばんいい時代 に贅沢な暮しができてよかっ たな。あ、いや二女のジェイドは1980年生まれか。長女は歌手、次女は女優、長男(72年生まれ)は作曲家なんだな。He has three children. Youngest is the multi-talented singer Jade Anderson. Eldest is singer and photographer Deborah Anderson. Son Damion Anderson is also a musician. ▼ご存知リックRachel Kaufman (2009 - present) Nina Carter (10 November 1984 - 2004) (divorced) (2 children) Danielle Corminboeuf (1980 - 1981) (divorced) (1 child) Roz Woolford (1970 - 1980) (divorced) (2 children) ■映像に映っていた関係者たちだらだらとユニオンツアーのドキュメントをみていたら、トーマトの録音セッション映像にブライアン・レーンが映っていて、リックの情熱大陸に出ていたのもレーンだと判明。デヴォンって日本でいったら広島とかの感覚だから、レーンが大好きな電話で済ませず、わざわざリックに会いにいった時のシーンだってことか。レーン、結構大きいな。少なくともハウやアランよりは大きい。トーマトの後、ジョンとリックが脱退して、スタジオで途方に暮れていたところにバブルスの2人がレーンにマネージメントを頼みに来たらしく、クリスとレーンにとっては飛んで火にいる夏の虫。「もちろんだとも。君たちの取り分の20%でやろう じゃないか」とかクリスがレーンの言葉を伝えていて爆笑した。レーンに操られるイエスメンたち・・・。で、ホーンが辞めてイエスが再び窮地に陥って空中分解すると、今度は ハウに「ねえ、ウェットンが暇こいてんだけど、ちゃっちゃっと曲作ってヒットとばさない?いまならダウンズつけとく」とかささやく絵が目に見えるようだ。マンハッタンの路上でラウンドアバウトというとんでもないイヴェント(keysto~のプロモーション)でのホテルで朝食会の映像も見直した。マペットと一緒にはしゃぐアンダーソン夫妻のどこまで天然なのか演技なのかは別として、アランの奥さんGIGIがかわいい。そしてクリスの左側に座っている黒髪にちかいブルネットの女性は、やはりクリスの2番目の奥さんのメリッサだな。ハウとリックはUK在住だから妻は同伴せず。ハウの後ろ髪がすごく長くて、私は 頭頂部がいっちゃってからは床屋すら行ってないと思ったよ。でも2000年頃はすっきり短くしてサイドを後ろにながしていて似合ってたなー。何度みても、リックの「and this is my wife, Steve」が笑える。
2016.04.21
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■Rockumentary 1970年代、リックが文芸3部作を発表し終え、ケン・ラッセルの「リストマニア」を準備していたころの人物密着ドキュメントを見た。6~8分もの×4本に分割されていたので、もとは30分番組だったと予想されるUK版情熱大陸w。画質は最悪だけど、あちこちロケをしていたり、当時のデヴォンの自宅(4ベッドルーム。日本の感覚だとかなりの大邸宅)でのロケが興味深い。イエスを脱退してソロでも成功し、リックが当時からミュージシャンとしてかなり注目されていたことがわかる。そしてイングリッシュ・ロック・アンサンブルの面々が、当時からみても古臭い感じのむさくるしいロックンローラー(スタッズ付きのベルボトムとか胸毛とかカーリーロングヘアとか)ばかりで笑った。リック自身が本当はこういうスタイルにあこがれていたんだろうか。ストローブスやイエスはちょっと上品すぎたかも。当時のプライベートライフがこれだけ映っているのは貴重。おそろしいことにRoyal college of musicに通っていた当時の副科(クラリネット)の先生、チャイコフ教授まで登場していて爆笑した。入学時と入学後のクラリネットの爆笑試験については、リックの最初の自伝に書いてあった。私も俄然チャイコフ先生のファンだったw。チャイコフ教授、どんなおじいさんかと思ったら、当時でも50歳くらいにしか見えなくて、リックが学校を辞めてからまだ5、6年しか経ってないんだなと思うと、本当にさっさと学校辞めて仕事始めたことは正しい選択だったと思うわ。卒業するまで待っていたらイエスに入っていなかったと思うし、プログレのピークからはずれてしまうもんね。そして、こんな真面目そうな紳士のところに、リックはベロンベロンに酔っ払って試験を受けにいったかと思うと…やっぱり行動そのものもexcessだったんだな。幼少時のクラスの集合写真や音大時代の正装(蝶ネクタイ姿)の写真が紹介されていて、やっぱり頭一つ大きくて、髪が短いと10代とは思えないほどおっさん臭い。まあもともと老け顔だったから、逆に年をとってから相応に見えてよかったのかもしれない。3歳くらいのオリヴァーと1歳未満のアダムがママと一緒に映っていたから、まさに1975年当時だろう。赤ん坊の頃は2人ともブロンドだったんだな。そうそう、番組はリックの赤ん坊の頃の写真から始まるんだけど、ナレーションで「生まれたときからロングベイビーだった」と言ってて、要するにでかかったことがわかる。4キロ超えだったかも。若き日のリックを支えた当時の妻・ロザリンは写真では何度か観たことがあるけど、動画は初めて。ブルネットのショートヘアで美人という感じではないけど、しっかりもののお母さんという印象。他にナニーとロックテイスト(つまりむさくるしい)の30歳くらいの男性(秘書兼リックを起こす係)が一人いた。このナニーがまたプロポーション抜群の若い女性で、その後のリックの女性遍歴考えたらいやこれ問題あるでしょうと思った。うわあ後半、広い敷地を一緒に散歩している男性はブライアン・レーンではないのかな。紹介はなかったけど、何度か写真で見たことがあるレーンとそっくりだ。ブライアン・レーンという名前はビジネス上の名前で、本名は全然違っていた。色黒でヒゲが濃くて、見た目、ちょっとアラブっぽいので、そっちの出自なのではと疑ってみる。■Composer Wakemanリックがリストマニアのサントラ用に作曲しているシーンが興味深かった。すでに頭のなかに音があるので、楽器のないところでスコアを「縦に」書いていた。楽器なしで総譜が書けるということはおそらく絶対音感の持ち主。私は悲しいほど和音感覚がないので、耳コピで採譜するときはまず主旋律だけの音符を書いて、それから和音をつけていくんだけど、リックは12段くらいの総譜の全楽器のパートを小節ごとに縦に割って書いていた。欄外にクラシックで使う和音記号(VとかIとか)が書いてあって、ああリックはこっち使うんだなと思ったり。最近、ジャズとかポップスの演奏に興味持って理論書みてるんだけど、使う用語がクラシックとあまりに違っていて(音階名も調性名も音程名も違う。おまけに日本でクラシックやるとドイツ読みと和名があって、さらにドレミはイタリア語…)、もう今更呼び方変えられないとか、コード覚えられないという挫折感にとらわれているんだけど、リックはそんなことなかっただろうか。スコアは普通は上から木管・金管・打楽器・弦楽器だから、それぞれの楽器の音域と音をイメージしながら和音を分解して空でスコアを書けるって、芸大作曲科なら普通にいると思うけど、カレッジ中退にしてこの実力は10代半ばからアンサンブルで演奏していたおかげかな。あとはおそらくセッションマンのころに相当鍛えられたんだと思う。しかもリックの場合、いかにも苦労してますとかどや顔で自慢するでもなく、自分に期待されている仕事だからと、関係のないジョークを飛ばしながらも、裏仕事は割と淡々とこなしていったと予想される。そしてexcessな人だから人の倍仕事が速い。こういう地味な仕事をちゃんとやっているからこその、その後の成功だったんだろう。リックのスタジオにはグランドピアノとエレクトロニックピアノ、シンセとミニモーグが4台くらいあった。ハモンドオルガンがあったかどうかは未確認。それで、同じバロック時代の舞曲風のフレーズを次々楽器を変えて弾き続けるシーンも印象的。縦2段ならわかるけど、右のグランドを体は左手側に向けたまま弾いていた。イエスのソロではたいてい逆(左のコードはソラで弾く)ので、音型が頭に入っているって強いなと思う。あと、リックだけじゃなくロックキーボーディストのほとんどがそうだけど、なんで立って弾けるのか私には謎。リックはイエスのライブでペダル踏みながら遠くの鍵盤に手を伸ばすというアクロバティックな動きを見せることがあったけど(特に燃える朝焼け)、ペダルだって本来サスティンだけでなくいろいろ踏みたいはずだ。リックのピアノがきらびやかな音で鳴っている時はたいがい座っていて、あれは上半身全体使って弾いているからあれだけ鳴るんだろうけど、ライブでは鍵盤の高さもいろいろだし、自分の胸より高い位置にあるモーグとか速弾きしているときって、腕だけの力とか手首から先の力だけだよね。たしかにあのキーボード要塞で、ピアノ鍵盤は下に配置していたような気がする。少しでも上半身使って弾くためなのかも。そしてリックのあのキーボード積み、私には高すぎて手がとどかない鍵盤があるかもw。リックは13歳頃、チャーチオルガンも習ったと言ってたな。オルガンといえばキャメロン・カーペンターが自分のための可動式パイプオルガン(5段鍵盤)を、片手で上下2段の鍵盤を同時に弾いている(親指で下段を弾き、残る4指は上段を弾く)シーンをみた。この人は足技だけじゃなくて手でも常識超えてるわと思ったんだけど、リックは足芸は無理でも、あの手の大きさなら上下二段弾きできそうだし、リックこういうの好きそうだw。ショウが盛り上がるからぜひやってほしい。この番組見てたら、ウェルチの評伝でも紹介されていた、90年代終わりころのThis is your lifeの映像まで出てきた。おおお~お宝映像!イエスのメンバーもアメリカからビデオレターでメッセージを送っていて、ジョンの「ハイ、ウェイクアップ!」と懐かしいニックネームで呼びかけたり、クリスがまたぞろカレーのエピソードを持ち出したり、そしてスティーヴが「君のソロと僕のギターは最高のコンビ。また一緒にやりたいね」って言ってて、なんかうるうるした。クリスの隣にいたのはビリー・シャーウッドかな。やたら美形で女性かと思った。それより、これ97年?98年? リックがすごく痩せているんだけど、例の病気の後だよね?司会者が肺炎とか腹膜炎のこと話していた。ウェルチの本とは時間軸がずれてる。うーんまた謎が・・・。あー、最初のGrumpyに出てきた、注文された曲を1曲忘れてて即興で作曲して1テイクで上がったって、ホワイトロックの最後の曲か!結構いい曲だと思っていたのに、そんなやっつけ仕事だったのか。でもその後気に入って、自分のコンサートでも弾いているのを聞いたな。■イギリスのワーキングクラスってBBCの他のドキュメンタリーでもリックが主役の番組があって、ナレーターがはっきりと「ワーキングクラスの両親から生まれた」と言っていて、日本の感覚だとワーキングクラスはブルーカラーだけど、イギリスはかなり事情が違うからなあ。イエスメンでいうと、リックやアランの父はピアニストだったけど、ビッグバンドなど非クラシックの分野だから、これはエンタテイメント枠。エンタメというだけでおそらくワーキングクラス認定。ハウも親は料理人みたいなことを言っていたからワーキングクラス。ビルの父(獣医)は息子をパブリックスクールに入れているので、経済的には多少裕福なアンダーミドルかミドル・ミドルクラス(ややこしいが)。イギリスだとワーキングクラスとミドルクラスがさらに細かく分かれているけど、ブリティッシュロックのミュージシャンのほとんどはこの両方のカテゴリーの出で、実は本当に貧しい層(アンダークラス)出身の者はほとんどいない、みたいなことを大昔、ロックを聞いていたころに読んだのを覚えている。まあみんな自主的に学校やめて、ちょっとだけ仕事してあとは失業保険で生活しながら、楽器買ったりできるんだから、食うに困っているわけではない。クリスもハウも当時の20歳くらいの若者が買うには高額すぎる楽器を買っている。リックだって高額なピアノやクラリネットが家にあったわけだし、裕福とまでいかなくても貧しかったわけがない。で、結局ワーキングクラスは成り上がるのが夢なんだよな。階級は超えられないならせめてリッチになって世の中に影響与えたい、みたいな。だって這い上がるしかないから、わかりやすい人生だ。ミドルクラスのほうが落ちてく恐怖があるから大変だと思うわ。リックの英語は私は聞きやすいけど、時々、かすかにA=iになるよね。=ワーキングクラス認定。成り上がりの常としてリックはロールスロイスが大好きだ。最初のロールスは2000ポンドの中古で、その時のやりとりも面白い。雑誌の広告で一目ぼれして、早速会計士に電話。「ねえ、車買いたいんだけど、いくらまでなら使える?」って聞いている。賢いわ。リックがFragile carriage companyを作ったのは20代前半だから、20台集めたところで始めちゃったんだろう。ちゃんとイエスのアルバム名とポンコツ車を掛けているところが面白い。ロールスはその後、ハウを除くイエスのメンバー(アラン、ジョン、クリス)も買った、とあって笑った。あらら、英文Wiki(かなり詳細なバイオグラフィーが載っている)では、アーサーオンアイスの借金でロールスロイスも会社も手放したとあるな。76年にはもう破産していたのか。だから究極のセッションに参加したわけね。イエスファンにとっては不幸中の幸いだった。リックがいなけれはAwakenはああいう曲にならなかったような気がする。あとWonderous storyもヒットしなかったと思うな。常々感じていたことだけど、イエスメンバーで経済的に苦しい家庭で育ったのは本当にジョン・アンダーソンだけで、農場での乳搾りとか運送業とかアンダークラスの仕事をたくさんやっている。そして楽譜が読めない。でも音楽のアイデアだけはたくさんもっていた。本当の才能というのはこういう人のことをいうのかもしれない。リックは才能あふれた優等生だけど天才じゃないしね。■口先男を見て連想した人UK情熱大陸を見つけたら、次々、リックのテレビの仕事の映像が出て来た。スポーツ番組でフットボール選手にインタビューとか、パープルのイアン・ペイスへのインタビューとか、トークものに並々ならぬ才能を発揮していたことがわかる。80年代の苦境をこれで乗り切ったのかも。口から生まれてきたようなおしゃべりで、なおかつ音楽の才能(作曲も演奏も)もexcessな人って、絶対長生きしなさそう…とか思ってたら、不意にハネケンさんを思い出した。ずっとアレンジャー&ピアニストとして活躍してきて、晩年(といっても40代以降)はテレビ番組で司会やったりバラエティに出たりしていたハネケンさんは、リックと立ち位置が似ている。前田憲夫さんもそうだけど、24調自由自在なアレンジできて指揮もできて自らのピアノの腕前もすごい人たち。ハネケンはクラシック出身(桐朋ピアノ科)だけど、憲夫さんは独学の人だったはず。日本人2人はスターミュージシャンではなかったけど、リックはセッションマン→ロックスター→タレントだったわけね。リックはクラシックの素養の本領発揮して「異なるきれいなメロディーをうまくつなぐ」のが得意。ソロでアーサーやヘンリー八世からの抜粋をうまくミックスさせて弾いているのを聞くと、つくづくそう思う。調もリズムも違うフレーズを上手につなぐのはイエスの本骨頂だけど、リックも実は超得意。普段はあんまり転調もせずにC- dur,G-dur,D-durあたりでお茶を濁しているけど、やる気になったら全調自在に展開できるだろうと思う。イエス参加時は、バンドの決めた調だから結構黒鍵が多くて、リックは黒鍵弾くとき指が伸びる(まあ速弾きの時は私も伸びる)からすぐわかる。私がおおお~と思ったのは、アコースティックイエスでの余興の即興ジャズだった。リックはジャズは弾かないと思っていたから、普通にうまくて驚いた。あれリズムだけでなく、アクセントもうまくつけないとかっこよく聞こえないよね。手癖こそいつものことだけど、延々アドリブでやっていながら、同じパターンがほとんど出ないのもすごいと思うんだよね。意図して入れてる場合もあるけど。海洋の1曲目、中間部で生ピアノの速弾きアドリブがあるんだけど、スタジオ録音時はモチベーションゼロでほとんどワンフレーズくらいしか弾いてないのに、ユニオンライブではすさまじいプレイを見せてくれている。ここ、実はすごく感動した。燃える朝焼けのイントロ部分をさりげなく入れながら疾走するピアノは実は他のメンバーとはなんら関係ない「装飾」として弾いている。なのにすごく印象に残る。あとナーサリーライム協奏曲聞いていると、あれはアドリブじゃなくて細部まで作り込まれた曲だとわかる。リックにとってラフマニノフ風だろうがモーツァルト風だろがショパン風だろうが、味付けなんてお手の物なんだけど、私が唯一見せてほしいと思って いるのが、左手の技。平均律やバッハのフーガはどれくらい弾いていただろうか。よもや革命弾けなきゃ笑ってやる。リックは小さいころからコンクール(小規模なものだろうけど)に出慣れていて、1位をとるのが当たり前で(多分体が大きかった=手も大きかったから子どものコンクールでは有利だったとい思われる)、8歳でソナチネ終了(これは今ではすごいわけではない)だった神童は、このままでは慢心してしまうと考えた音楽教師のはからいで、上のクラスのコンクールに出されて3位に終わる。1位でなかったのがショックだったリックはまた猛然と練習に明け暮れる。でも13歳頃になるとフットボールとクリケットのほうが面白くなり、レッスンをさぼるようになる。先生は父親に進言する。「あなたの息子さんは私の時間とあなたのお金を無駄にしている」。で、お父さん、そのままリックにそれを伝える。そして「もうやめてもいいぞ」という。そこでまた音楽に目覚めるリック。いい大人に囲まれ、環境に恵まれたことが彼の才能を引き出したんだね。リックが大学を辞めた理由として「音楽家を“生産”してなんになる?必死に勉強して出たって(クラシックの世界じゃ)仕事なんてないんだぜ」てなことをユニオンツアーのドキュメントで話していて、そりゃ才能ある人には学校必要ないけどさーとか思ったよ。
2016.04.19
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2冊目のGrumpyではお父さんが亡くなった詳しい経緯とか自分の病気の話とか、シリアスなエピソードもあって、やっと真面目な彼の一面を知ることができると思っていたのに、初めての手術前に自分で剃毛することになったら、突然“he”が出て来て、え、このheは誰?ナースは美人だって書いてたのにと思ったらリックってば自分の分身と脳内で会話してた(爆)。もおおリック~~中学生レベルの内容だよwリックかわいいよリック。というわけで、前回も少し書いたけど、リックの70年代のアルバムを聴き始める。ウェイクマンファンの多くが、この時代が最も充実していたと語るし、その後の粗製乱造ぶりを見ると、創作意欲も発想力もこの時期がピークだったろうと私も思う。とりあえず文芸三部作は手元にあるので、それ以降のものを3作品聞いた。リックはこの時期、お酒と煙草をガソリンにしていて、それで現在まで飯のタネになってる作品をつくった。でも85年頃、体を壊してから辞めてしまったのでガソリンが足りなくなったことに加え、80年代はプログレ衰退で、コンサートやライブをやってもお客がこなくて大変だったようだ。つまり収入が途絶えがちになる。今は余裕でベタなバラエティ番組とかテレビでも大活躍だけど、この時代はまだロックミュージシャンとしての自負もあっただろう。でも基本的にこの人は奥さんと別れるたびに家ごと置いて出て来るので、その時点で文無しだと思う。それでもいいといってくれる女性が次々現れるところがすごいんだけど、仕事人間なので、やりっぱなしみたいな散漫なアルバムを大量に制作しつつ、仕事があるところへはどこへでも出かけていく。その結果が150枚近い(今はもう超えているかも)アルバムにつながる(ライブも多い)。えーっと、70年代の文芸もの以外のアルバムは邦題がさっぱり覚えられないので、原題で通す。・No earthy connection(録音:’76.1-3、リリース76.4)・White Rock(録音:76.7、リリース77.1.21)・Criminal Record(録音:77.4-6、リリース'77.11.1)70年代の開発途上にあるシンセのピロピロ音源があったからこそ、その後のテクノがあるわけで、存在は否定はしないが、私自身は電子音だけの音楽はどうも受け付けない(それでも中学当時、リリースされたばかりの富田勲のアルバムには夢中になった)。まあ音楽成分の8割がクラシックでできているから人工的に増幅されたり作りだされた音はもともとダメなんだ。むしろプログレを受け入れられている自分に驚いているぐらいだ。でね、No earthy~はリックのロックなテイストが強調されていて、地底探検とアーサーのようにロック隊とロックヴォーカルがまざってた。ん~リックらしいクラシカルな旋律とロック隊が合わないよ。ホワイトロックはすごくいい。リック、サントラ作るのうまいんじゃん。冒頭から電子音ピロピロ~全開だけど、テンポといいリズムといい、映像が浮かんでくるようだ。スポーツの記録映像の付帯音楽の王道という気がする。たぶん鳴っている音の種類は、No earthy~とそう違わないと思うんだけど、この受ける印象の違いはなんなんだろう。サウンドトラックということは完全に委嘱作だよね。76年インスブルックオリンピック(オーストリー)。フランシス・レイの「白い恋人たち」は68年グルノーヴるオリンピックか・・・。68年、72年は音楽の記憶も映像の記憶も、えらい大昔という気がするのに、ホワイトロックを聴いたら結構新しい感じがする。音は昔のシンセの音なんだけど、なんつうか音楽がロックテイストで若い。リック25歳くらいの作品だもんね。若々しいはずだわ。国家的・国際的行事の記録映画サウンドトラックなんて、普通大御所に委嘱しそうだけど、考えたら選手たちの年齢と近い若者に委嘱するほうが、選手の気持ちに沿った内容のも のができるからいいのかもしれない。それまでが大仰なオーケストラ音楽主流だったから、当時はさぞや軽快で刺激的な音楽にうつったことだろう。Criminalはクリスやアランが参加していたり、シンセありアコピありオルガンありコーラスありロックヴォーカルありとにぎやかだけど、コン セプトアルバムという割には、元ネタを知らないと散漫な印象を受ける。これも私はもう聞かないかもしれない。■経済状況を推測してみるホワイトロックの録音は76年7月とある。74年5月にイエスを辞めて(正式発表は6月)、その翌日だかに地底探検がチャート1位になって得意満面のリックは、一層ソロに力を入れていくことになる。レコードの印税すべてをぶっこんでも足が出るような、気の遠くなるような大掛かりなコンサートの計画。ここが何事もexcessなリックの面目躍如というか、止めても無視して進めるところがさすがだなー。本にも当時の様子がリアルに再現されていた。アーサー王on iceの時のこと(75年)。「リック、その会場はその時期は使えない。アイススケートリンクになっていてアイスショーをやっている」「だったらスケータを雇って、氷の上でコンサートをやろう!」「は?」と周囲は理解を示さない。普通そうだよなー。どうしてそういう発想になるかな? 予算が…とか考えていたら、絶対に思いつかない。人並みはずれた人の発想だよね。周囲からはすごい勢いで止められたけど、どこ吹く風である。さすがリックさま。アーサー王は日本にも来ていたらしいが、オケとコーラス雇ったら日本でのギャラなんて ふっとんじゃったんじゃないのかなあ。で、76年ころというと、地底探検とアーサーの金のかかったコンサートのツケが回ってきて、首がまわらなかった頃だと思う。たしか家も抵当に入っていて破産している。究極のレコーディングに参加(同年秋)したのも「楽して金がもらえる」からだし(ユニオンのドキュメンタリー)、毎年1枚ソロアルバム作るのにも疲れて来てて、またバンドでツアーに行くのもいいかと思っていたかもしれない。私生活では、ほとんど家に戻らず、オリヴァー、アダムの母親とは関係が終わっていた頃。ロズとの正式離婚は80年。家を出たリックはスイスに移住。移住中に父が心臓発作で亡くなっている。そして受難の80年代。プログロックはすっかり古臭いものになり、今日流行ったものは明日には忘れられるようなロックの世界で、この時代、リックは完全に世の中から忘れ去られていたようだ。30代になったリックはエンタテイメントの分野でアレンジャーやなんかで生きていくことも可能だったと思う。でも彼はロックにこだわった。自らのバンド、イングリッシュ・ロック・アンサンブルを率いて、世界中でドサ周りをしていたんである。その頃の悲喜こもごものエピソードは彼の2冊目のGrumpy~に詳しい。80年代前半には、それまでのでたらめな飲酒生活から肝硬変になり、余命半年と告げられている。そして35歳の時に、完全断酒に成功。そういえば、80年代は89年にABWHで結集するまで、イエスとのかかわりはない。イエスはイエスで、バブルスイエスがアルバム1枚で終わっ て、トレバ―・ラビンが加入し、ポップに変身して最大のヒットを生むものの、「これでいいのかイエス」と世界中から突っ込まれて(推測)方向が見えなくなっていた頃だ。そしてこの時代、イエスを問わず今見ると恥ずかしいPVが大量につくられる。まるでリックのアルバムのように。90年代は、ABWH~ユニオン、Keys to~で、リックは都合3年くらいイエスに関わった。しかしもちろん、「こわれもの」や「危機」のような作品が生まれるはずもない。それどころか、ユニオンあたりですっかりやる気をなくし、自分のパートまで差し替えられたnot union butonionまでできてしまう。また往時のような作品を生み出す推進力はもう残っていなかった(リックがどこまで作曲に関わったかはわからないけれど、それでも「閃光」は時代に合ったちょっとチャラいプログレだったと思う)。このころリックの私生活は84年に結婚したニナとの関係が安定。するとまた過去の作品をほじくり返し完全版を作ったり、コンサートを計画したりし 始める。なので、同窓会的なKeys to~の成功で復活を果たしたイエスの97年以降のツアーには参加を拒否。マネジメント(つまり金問題)がイエスはグズグズだからという理由もあったらし い。もちろんメンバーからは「リックまたかよ、いいかげんにしろよ」とハブられる。しかし自分のソロの予定が優先されるのは当然だろう。本来だったら、ここでイエスとはもう仕事をしない、と言っていたはずだった。でもまた彼に転機が訪れる。99年に一時は命まで脅かされる重病にかかる。献身的に看病してくれたはずだったニナとの関係が冷めていき、彼は有名 なスタジオももっていたマン島を後にする。病気のためにキャンセルしたツアーなどもあり、ミレニアム~2002年頃のリックはかなり経済的に苦しかったはずだ。■キーボードの進化と二人の貢献えー、リックの初期のアルバムについてだった。電子音楽とロックの出会いって60年代後半のサイケデリックロックの時代に、ハモンドオルガンやメロトロンが多用されたことから始まるんだろうけど、その後モーグ、シンセの時代になって(70年代)、シンセはさらにアナログ時代からデジタルへと変貌を遂げた(らしい)。コンピュータテクノロジーと音楽が合体して、サンプリングだの打ち込みが登場し、楽器が弾けなくても、楽譜が読めなくても、もっとすごいのはパソコン一台で音楽が作れる時代になった。それが80年代後半くらいからかな。イエスのアルバムもトラックダウンを「マック一台でつくっちゃったぜ」と言った人がいたけど(誰とはいわないがかつてイエスに在籍していたマルチな人)、私的にはどんなに金がかかろうと、「生オケとコーラスも使いたい」「オーケストラにロックンロールを合わせたい」と人の力を信じるリックのやり方のほうが、音楽が生き残るためには好ましい方向性だと思う。思い通りにならないもの(他人)に敢えて信頼を託すってコミュニケーションの基本じゃん!とか思う。人を信じないで機械でつくった音楽はやっぱり伝わってこない(古い人間だからね)。もちろん便利なテクノロジーは最大限に利用すべきだし、昔はスタジオに行って切ったりはったりしないとできなかったのが、遠くに住んでいてもデー タで送ってミックスダウン、みたいなことができるのはすごい時代だと思う。けど、みんなでつくる音楽って、そうじゃないような気がするよ。こんなにテクノロジーが進んでも、クラシック音楽が衰退しないのも、音楽の可能性は本来テクノロジーの影響を受けない、というところにあると思う。そういえばリックの本を読んでいたら、「ムーグ博士にコルグの創業者加藤さんを紹介できたことは存外の喜び」と2人ともが鬼籍に入ったからこその述懐があってしんみり。加藤会長とは親しかったようで、リックはコルグの開発のために何度か日本に来ているし、コルグUKのサイトには一般ユーザー向けデジピのデモ映像なんてものもあった。これ欲しい(笑)。たしかキース・エマーソンも加藤会長とは親しく、デモ用に「Katoh-san」なる曲まで書いているらしい。二人ともコルグとエンドースメント契約結んでいたと思うけど、同じロックキーボーディストでありながら、まったく方向性の異なる二人に協力してもらっていたというのはすごい武器になったと思う。それにしてもLP-380、安くて多機能だな。コーラスやストリングスにピアノやギター音を混ぜる機能は欲しいなあ。一人フルオケ付きリサイタルができる。あとはタッチが好みかどうか だけど・・・。電子音楽の発展は、そのまま楽器の進化とシンクロするから、メーカーの開発に貢献している2人は称えられるべきだと思う(一人は過去形にしないといけないのが悲しい)。ただしリックはエレクトロニクスには実は弱くて、アメリカのファンが、シンセの構造やら構成についていろいろ聞いてくるけど「ぶっちゃけ、俺よく知らないんだよな」みたいなことを書いていた。よくリックは音選びのセンスが悪いとかかかれているけど、そもそも自分でつくろうという気がないんだと思う。ほぼプリセットのまま(笑)。
2016.04.16
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■父と子リックと息子たちに関する好奇心から、彼らの音楽的バックグラウンドについて調べてみた。英文Wikiには、アダムが音楽教育受けているのは学校名まで載っていたので明らかだが、オリヴァーのバイオグラフィーにそういう記載はない。そしたら、オリヴァーのサイトにファンの質問に答えているコンテンツがあって、そこに知りたかったことがみんな書いてあった。「5,6歳から音楽の勉強をはじめて10代前半まで続けた。その後いろんなバンドでギグをしながら、カレッジではグラフィックデザインの勉強をしていて、空き時間にピアノを弾いていた。次のカレッジで演奏技術を学び直すために、ピアノと音楽理論を高名な先生について学んだ(リックではない)」とある。銀行で働きながら学費を工面したようなことが書 いてあって、20代中ごろまではバンドと音楽教育の両方かけもちだったらしい。子どもの頃はママが悲しむからあんまり練習できなかったようなので、大人になってから学び直したのか。あのちょっと生硬そうな手の動きは、大人になってからのレスナ―のそれだったんだな。イエスメンバーの子どもたちとの交流や共演はあるか? という誰もが知りたいけどくだらなすぎて聞けない質問にもちゃんと答えている。「ディラン ハウはいいドラマーなのは知っているが共演はない。他の子弟との交流もない」とそっけない。そして「父とはほとんど共演したことがない。自分は自分の能力だけで認められたかったので敢えて父との共演は避けていた」とある。無邪気なアダムとは大違い。でもイエスでプレイすることは最大級に父の名声を利用したことになるんじゃ・・・。まあ、失敗に終わったけど。質問の3割以上はリックが絡んでいたりして、彼も偉大すぎる父の名前は相当負担だろう。「Wakemanの名前はときに自分を助けてくれるけど、 自分は自力でキャリアを築きたい」と言ってももう44歳だよ。キャリアはもう後半戦ですがな。大丈夫なのかオリヴァー。そしてSNSでママの誕生日を祝うオリヴァー。やっぱり君は香川照之なのだな。大丈夫だ、そのうち市川猿翁を襲名できる(いや無理か)。リックは何度も奥さん替えてるけど、子どもたちのことは本当に愛していて、クリスマス行事なんかでは全員集まっているようだ。でも長男はパパを避けているのかあ…別に嫌っているわけではなさそうだから、たまに一緒に小さなセッションやったりはしているみたいだな。アダムが無邪気なパパっ子でよかった。しかし、アダムのアルバムはどれもプロにレベルに達していないとの評もあって、父ちゃん、息子たちに才能まで引き継がせることはできなかったのかと百万回…w。■アンダーソンの声イエス2枚目のライブアルバム、Yesshowsを聴き始めた。いや買うつもりはなかったんだけどね。モラツとリレイヤーには興味ないし。モラツのライブ音源は珍しいけど、錯乱の門と儀式なんだよなー。儀式ではキーボードはあんまり活躍していないし、錯乱の門は私はそもそも「スーン」の部分しか好きじゃない。モラツの音選びはかなり独特だけど、リックのポリムーグのほうがまだ好きだ。でも、聞いてみたら「このころのアンダーソンはすごい!」ということに気付いた。まさに絶頂期だったかもしれない。高く繊細なトーンも、少し低めのしっかりした堅いトーンも自由自在にコントロールしているのがわかるし、まだまだ声に余裕があるのもわかる。かすれが強まって(それでも十分美しいが)、声のトーンが単調になってきた90年代以降とは明らかに力強さが違う。だってここ20年くらいのジョンは、もう伸びしろがない「すべてを出し切っている」声なんだもん。そこがまた好きだけどね。超初期のイエスの曲や、イエス加入前のカバー曲なんかを聴くと、3rdあたりからのジョンの声とはかなり違っていて(初期はもっとキーが低い)、あれが彼の本来の地声かと思う。誰もが絶賛するあの彼の声は天然なんじゃなくてかなり意識的にあの比類ないトーンで自由に歌えるように作り上げたんじゃないかと思っている。もちろん、他との差別化のために。あれ、ミックスヴォイスだと思うんだけど、そういう評価はないのかな。へヴィーなシャウト唱法は自分には向いてない、イエスはハーモニーを大事にしたい、クリスの天才的なハーモニーラインを活かしたい、高い声は比較的楽に出せる、ということで残った選択肢があの声なのかもと思った。ちなみにクリスの高い声もミックスヴォイスに近いと思っていて(だってファルセットとは思えないほど安定している)、あれも意図的。子どもの頃に発声法は相当仕込まれたはずで、声変わりの影響がどのくらいなのかは分からないけど、声門の開き方をコントロールできていると思う。あとすごいのは、ジョンの声がブレることはほとんどないこと。ロングトーンでの安定ぶりもすごいし、普通、5度以上音が上がるところでは、低めの音で外れることはあっても、ジョンの場合はより高い音のほうにずれる。こういう箇所がライブなんかだといくつかあって、初めて聞いたときはかなりびっくりした。彼らが技術を磨くために、それぞれが普段どんなトレーニングをしているのかというのは、ほとんど伝わっていないけど、少なくともジョンは見えない ところで相当練習している気がする。■クリスがボスなんだ私がリアルタイムでイエスを聴いていた頃は、クリスがボスだなんて思っていなかった。ベースメンは大抵、目立たず静かにしているものだ(ジョン・ ディーコンしかりジョン・ポール・ジョーンズしかり。あ…でもレイクとギルモアは目立ってた)。←あれ、ギルモアはギターだったかも。でも、数十年ぶりにイエスファンになってみたら、クリスはもうこの世に存在しておらず、そして彼はずっとイエスのリーダーだったという。ウェルチの評伝でも、ジェフ・ダウンズが「イエスのリーダーはクリスだった」とはっきり明言していた。彼は途中からイエス加入で人事権やらなにやらクリス の采配ぶりを目の当たりにしていたんだろう。実際、メンバー勧誘係はクリスだったようだけど(リック←真夜中に電話、連れてきたのはジョンだけど アラン←バンドに入らないなら窓から放り出す、等)、当初は体が大きい奴が言ったほうが成功率高い、ぐらいだったろうと思う。では、いつからクリスが明確にリーダーとなったか?70年代でみると、マネジメントやレコード会社との「大人の」交渉ごとができるのは、やっぱりジョンではない気がする。スティーヴも面倒事は避けて通る人っぽい。ビルがいたらよかったけど、とっくにクリムゾンに逃げている、アランは常識人すぎて世渡りが下手そう、リックはもとから契約社員。見渡したところでやれそうなのはクリスしかいない。少なくとも普段表にでない分、なんとなく「奥にいて最終的に意見を取りまとめる係」、くらいではあったと思う。でも明確に主導権を発揮したのは、79年末にジョンとリック(二度目)が抜けた時からなんだと思う。覚悟を決めたというか。リックはともかく、イエスを象徴するヴォーカリス トが脱退したことで、クリスは相当焦ったに違いない。どうにかしてバンドを継続しなくては――。それからの展開がパッチワークのようなイエスのメンバーチェンジの歴史なのだが、音楽面の主導権はジョンだったかもしれないが、イエスをこの世に 存在たらしめるために不可欠なビジネス面の交渉ごとはクリスに全権委任だったのかもしれない。ああこれ既に書いたな。いまだにクリス=ボスがピンとこないので、きっとまた書くわ。■なぜあんなにたくさんアルバムがあるのだろう80年代以降、どうでもいい曲と演奏ばかりの時代が長く続いたリック・ウェイクマンには、彼名義のソロアルバムが2008年時点で136枚あるらしい。彼の本のなかで、おばあちゃんファンとの会話として「まあ、アルバムが100枚も!」「…と36枚です(にっこり)」というくだりがあった。適当に手に入りやすいものを買って聞いてみたけど、アレンジ物は総じてひどいやっつけ仕事に思える。C-dur、G-durばっかりで、ミスタッチがないだけの平凡なアレンジだ。誰にでもできるかというと、それは違うけど。時折、本来のイメージを180度覆す荒業を発揮していて (バーバリアンな曲をロマンティックにとか、その逆もある)そういうのは面白かったけど、だからといってそれがいい曲になっているかどうかは別物だ。小原孝のほうがまだいいよ。ただ、生ピアノ音は例によってきらびやかで美しく、メロディーラインと手癖とともにすぐにリックとわかる演奏に なっている。70年代には今に残る文芸三部作を作っているし、いくつか評価の高いアルバムもあるので、聞いてみることにした。「Criminal Record」犯罪記録をテーマにしたコンセプトアルバムなのかな。歴史上の犯罪者(ユダからなぜか飲酒感知器まで)がタイトルになっていて、これはイエ スの「究極」レコーディング後、引き続きマウンテンスタジオで録音されているので、クリス・スクワイアとアラン・ホワイトの2人がリズム隊として何曲か協力している。1曲目の冒頭、なんだかとってもフリージャズ。びっくり! リックは昔風のジャズテイストは弾くけど、フリージャズは嫌いなのかと思っていた。でもすぐにいつものリック節になって、ところどころにアーサーのテーマ―が顔を出したりする。ああそうか、ワグナーのライトモティーフ方式なのか。後半、コーラスありロック調ヴォーカルありとなかなかにせわしない。どうもやっぱり私はシンセとかモーグとか、電子音だけのものは苦手なんだけど、ヘンリー8世なんかは1曲のなかでもクラシック調のメロディが顔を出したり、生ピアノが聞こえてきたりと変化があるのがよかった。彼の2冊目のGrumpyはお笑いネタだけじゃなくて、お父さんの死とか自分が駆け出しセッションマンだったころの話があって興味深い。まだ10代のリックがセッションに2時間遅刻し(ママのせい)、フィクサー(マネジャーみたいな手配師)から「君とはもう二度と仕事しない」と言われたけど、リックのテイクは1発OKだったので予定より2時間早く終わったので首がつながった話とか、10代のころからその才能は広く知られていたようだ。80年代の大量生産は、プログレが衰退し、彼自身も経済的に苦しい時代があって(客が3人だけとか、サイン会に誰もこないとか、クラブのドサ回りとか、いろいろ大変だったらしい)、とりあえずアルバムは数打ちゃ当たる方式だったのかもしれない。原曲を自分流にアレンジするなんて、彼にとっては簡単なことで、アルバム1枚なんて数日で録れたかもしれない。あ、でもホワイトロックはおもしろいわ。これすごく若々しくてサウンドトラックとしては極上品だと思う。こういうのにたまに巡り合えるからやめられないんだな。
2016.04.13
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■Live from Lyon CD編期待していなかったベノワとオリヴァー在籍中の唯一の公式ライブ、予想に反して私には面白かった。CDのほうは、なんたってコーラス(つまりクリス)がやたら頑張っている。クリスは、ジョンと同等まではいかなくても、ベノワのヴォーカルをなんとか支えて、ファンを失望させたくないという思いが入っちゃっている気がする。リードヴォーカルより目立つバッキングコーラス!マシーンメシアではベノワより高い音で交代でリードヴォーカルまでやっているし、And you and Iなんて、ここまでクリスの声が冴えわたっているのをかつて聞いたことがない。オリヴァーは別にとちったりしていないけど、平凡でみるべきところがないという印象。おいこらユニゾンばっかり弾いてんじゃねえぞ!とうちゃんみたいに飾り入れろ!とか思って聞いた(笑)。 ・サイベリアは平たんでのろくてついていけない。ギターもキーボードももたれてる。・Tempus fugitもリズムが全然軽快じゃなくて、のったりしている。学校で習う唱歌みたいな感じ。オリヴァーはダウンズを完コピ。・オンワード。youtubeで観た時はベノワの歌がつまらなかったけど、これ意外によかった。違う会場かな。自作だけにクリスの声がでかい。・アストラル・トラベラー 初期の作品ではケイのオルガンワークを完コピ。でもやっぱり全体に平坦な印象。なんでだろうなあ。メリハリっちゅうも んをどこかに置き忘れている。楽しいかといったら楽しめなかったけど、メンバー2人が若返ったのに演奏は老化しているという珍しい例だなと思って、興味深く聞いたわ。なんつうか、音だけ聞いているとメンバーの前に指揮者がいて、メトロノームのように正確に指揮棒振っている感じがする演奏。ベノワの声は、イヤホンで聞くと、明らかにジョンとは違う。もっと堅い。そして語尾をタイで延ばすようにして終わるので、なんか全体にしまりのな い歌唱になってしまうことが多い(冬山遭難の冒頭部とか)。師匠に関してはそんなに手を抜いているようには思えないけど、もうこの時代になると、マスターワークスツアーに近くなっていて、古参メンバーは淡々と過去の曲を弾いている、という感じになっている。テンポも遅いしね。つまりスリリングさと疾走感はない。そう言う風に熟成して年をとったんだからいいんだけど、直前にYesshowsを聴いてたもんだから、30年という時の結 果をいやがうえでも突き付けられてしまった感じがするわけ。■同上 DVD編そしてやっと会えたよオリヴァー・ウェイクマン。…と思ったらDVDはどうやらメイキングのようで、曲は部分的にしか入っていなくて、途中にメンバーのインタビューが入っている。特に今回の強行人事の釈明会見のようにクリスがいっぱいしゃべってる。クリスと爺のシャツは初めて見るな。爺は菜食だけあって植物柄のシャツを着ることが多い。ベノワはあのスタイルがもしかしたら一番似合っているのかもしれないと思うようになってきた。なんか真面目な体育会系の学生みたいでつまんない。髪型が問題なのか?でも彼の顔には合っている。つまりイエスのヴォーカリスト向きのルックスではないということか。かわいそうに。あははクリスがメンバーチェンジは俺のせいじゃないとか言ってる。意図してはいないと。うっそだろー。ベノワの起用はジョンの復帰を待てなかった(小さい子供もいて金が欲しかった)からじゃないのか。それともジョンがフルステージ歌えない、ハードなツアースケジュールこなせいないと条件を提示してきたのを受け入れなかった結果か。ラウンドアバウトでは特に破たんもなく無難なプレイ。しかし次のスターシップで、ハウのソロの後のシンセ音が基音じゃないのに音が大きすぎて浮く。ハウもとっとイラッとしてキーボードのほうを見てたな。プレイの稚拙さもあるけど、こういうセンスのなさが嫌われたのかもしれない。このメンバーのなかでは一番かっこいいんだけどなあ(笑)。うわああトルゥーパー後半のインスト部分のオリヴァーの演奏、変。インタビューに応じるオリヴァーをまじまじと見ると、鼻から下が若いころのリックに似ているかも。話しているときの口元、ちょっと突き出す感じで話す感じは昔のリックそのものだ。唇もちょっとぽってりしていて父親似。この人も190超えの長身で、手も大きくて、環境条件だけは備わっているんだけどなあ。どうも音色を選ぶセンスとか、全体のバランスを見て音量を調整する能力が足りない気がする。リックもよくプリセットのままの音だとか、音色選びが下手と言われるけど、その遺伝子なのか。カートゥルの中間の印象的なハープシコードのソロは音が小さすぎてもったいない。 オリヴァーはイエスの歴代鍵盤担当者のプレイを一応研究はしていて、トニー・ケイやダウンズのプレイも上手にトレースしてみせてくれた。この程度にはちゃんとこなせるのに、自分のオリジナリティはどこ?ドラマからの曲【マシーンメシア】は、疾走感あるアップテンポな曲に対して、オリヴァーの弾くチャーチオルガンの音が重すぎる。途中のバロック時代のプレリュードみたいなオルガンのソロは印象的だけど、オリヴァー、コーラス始まったら音量は抑えるんだよ。後半、ハウ爺とのユニゾンでも、ハウが気にしてオリヴァーのほうを見ながらプレイしているのがわかる。21世紀にドラマの中の曲をやるのは初めてきくけど、マシーンメシア、かっこいいじゃない。べノアがアコギをライフルみたいに突き出すところとか、クリスの最後のキメポーズとか。この時代になるともう、アリーナとか万単位のオーディエンスが入る会場ではなく、普通の小さい小屋を回っている感じなのね。私はこのぐらいのほうが好みだな。ローディーたちの仕事もラクだろうし。■楽譜が読めないってブラフだろうと推測してみるこのおまけDVD、イエス結成のきっかけとかメンバーチェンジの理由とか、おそらく何百回も聴かれているであろう内容が大半ではあったけど、アラ ンとクリスが自分の音楽原体験を語っている部分が面白かった。それによって、かねがね疑問に思っていた「イエスメンは本当に楽譜が読めなかったのか」のいくつかが解決したからだ。リックが、イエス加入当時に「加入したときイエスには楽譜を読める奴がいなかった」と発言しているのをなにかで読んだけど、たまたま楽譜がなかった(必要としなかった)だけで、本当に楽譜が読めなかったのはジョンだけ、というのが私の予想。加入後、ライブに際して、過去曲をマスターしなけ ればならなくなったリックが、ジョンに「スコアはある?コード譜だけでもいいけど」と聞いたら、ジョンが「僕らは楽譜なんて使わないんだ」と言った、に10円賭ける。アランが子どもの頃ピアノを習っていたのは知っていた。あまりに打楽器みたいに弾くので、伯父さんにドラムを勧められたというエピソードは35周 年ツアーやユニオンツアーのメイキングで確認済み。そしたら今回のインタビューでは、アランは祖父も父もピアニストで、祖母は合唱団員というサラブレッドで、ピアノは6歳から習っていて音楽理論もマスターしたし、当時はありとあらゆるクラシック音楽を聴いていたと言っていた。そうなんだ!普段地味で目立たず、ドキュメンタリーでもあまり発言 していないから、ここまでちゃんと勉強していた人だとは知らなかったよ。スタジオ録音ではアランがピアノを弾いている部分があるらしいし、ライブ でアランのセットにキーボードがあるのも見ている。もともとセッションマンは譜読できないと仕事できないだろうと思っていたから、別に隠そうとしたわけじゃないだろうけど、この人はクロ。そしてクリス。「音楽理論は子どもの頃聖歌隊で習った。4声の関係性もね。だからロックミュージシャンになるにあたってベースとヴォーカルを対位法的に合体させることにした」とはっきり言ってる。ほーら、真っ黒じゃないか。やっぱりなー。クリスが楽譜読めないはずはないと思ってたんだよ私。聖歌隊なんて毎回ほとんど初見斉唱だろう。しかも平均律とは違う旋法でハモらないといけない。相当厳しく鍛えられないと身につかない技術だよ。私はこの人は絶対音感もあったんじゃないかと思っている。ただ、15歳でビートルズを知ってからは、「ロックは楽譜なんて必要なくね?簡単なのにかっこええ!」とか思ったんだろう。あとちゃんと理論勉強していても譜読が苦手な人はいるので、そっちかもしれない。彼の見事なハーモニーと独特のリードベース(笑)は、少年聖歌隊員の音楽知識と経験が数百年の音楽史を飛び越えていきなり現代のロックに移植された結果だと思うわ。もちろん誰にも真似できない。そうそう、あと2ndアルバムでオーケストラと共演したとき、誰がスコアを書いてオケに渡したんだろうというのも私の中では謎の一つ。トニー・ケイかな。あと本人は楽譜は読めないと雑誌のインタビューとかで言っているけど、スティーヴ・ハウだって怪しい。絶対伝説づくりに加担している確信犯(笑)。あの人は「読めない」んじゃなくて「読まない」んじゃないかと思っている。ハウ「正規教育は受けていないし、自分は耳コピできるから楽譜は必要ない」(私の推測)。したがって普段楽譜を目にする機会がないから面倒な調のおたま じゃくしは読めないし、自分では書かないと思うけど、絶対知っているよな。だってバッハとかマルチェルロとかバロック時代の音楽を古楽器アンサンブルと一緒に録音するのに、楽譜が読めなかったら団員に指示出せないと思うわ。少なくとも一度は楽譜を取り寄せて原曲がどうなっているかは調べて いると思う。ジャズやコード弾きの譜面に比べたら、バロック時代の楽譜なんて簡単だ。だからスティーヴ・ハウはグレー。旧メンバーだけど、ビルだってあれだけ研究熱心でクレバーな人が、理論を知ろうとしなかったわけがない。実際、ユニオンツアーのステージで自分のセットを紹介してくれた時に、「こんなにたくさんのスコアを覚えきれるのか」とか言って楽譜を見せていたし、電子ドラムのセッティングには絶対ス コアが必要だろう。オタマジャクシではないかもしれないけど(まあリズム隊はもっとも楽譜を必要としないパートではある)、ビルも少なくともジャズ理論は知っていた。だから彼も真っ黒。ということはよ、ビルを除いても、リックを入れると楽譜が読めるのは4/5で、理論を知っているのは3/5ということだ(ジョンとハウを除く)。 ロックの曲を作っていくのに理論なんてクソの役にも立たないとみんな思ってたのは正しい。だから常に斬新なアイデアにあふれていて、楽譜の読めないジョンがバンドのコンセプトリーダーだったところがイエスの面白さだと思うわ。セッションマンだったリックが、よく楽譜なしで付き合ったなあとは思う。Going for the oneのセッション風景でも、ほとんど楽譜がなかった。あれ見たとき、本当に信じられなかった。それとも撮影用に隠してしまったかな。オリヴァーのかわいそうなお話は明日!
2016.04.12
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ヘンリー8世のDVD(音のみ)におまけの映像がついていた。発売当初、BBCの音楽番組(よくyoutubeにあがってる司会者のやつ。タイトルなんだっけ)に出て、キャサリン・ハワードを弾いた時の映像。多重録音のところもあるから後から音をかぶせているのは明らかなんだけど、若い頃の手のアップが多くて眼福。リックはすべての指が均等に長くてうらやましい。子指ですら私の中指より長いと思うわ。せっまいスタジオにロック隊4人(Ds,Bass、アコギまで確認できた。隠れて見えないけどもう一人いるっぽい。エレギかな)、そしてイエスライブでのトレードマークになっていたキラキラマントを羽織って登場。いや、スタジオでそこまでしてもらわなくても…しかも隅に設置されたモニターまで映ってるし。ピアノは年代ものっぽいベーゼンドルファー。スタジオの備品かも。キーボードマジシャンのアップを見せようと意図しているのかもしれないけど、ハワードでは大した技巧はないよね。ただ自分がピアノ弾くのでわかるけど、立ったまま複数のキーボードに瞬時に切り替えるってすごい運動能力だと思う。同じ長身さんでも、リックはクリスより数センチ高いと思うんだけど(リックは6’4”=192センチ)、クリスは一般の小動物(我々)が考える、大きい人=スローモーな動きというイメージそのものなんだよね。話し方もそうだし、遅刻魔、居眠り魔というエピソードもそれを裏付けている。でもリックはフットボール大好きで、ユニフォーム着て興じている写真を見たことあるし、明らかに体育会系で敏捷。テレビでサーキットでラリー走行しているのも見たことある。燃える朝焼けだったかな、瞬時にはなれた位置にあるキーボードに移るシーンが頻出するけど、あれすごい動体視力だと思うし。そしてリックの髪はこの頃が一番長かったかもしれない。腰まではいかないけど、異様な長さだよね。そして本当に黄色に近いブロンド。彼は眉毛やまつ毛まで金髪でしかも骨太という北方ゲルマンの血が濃い感じがする。毛髪はアップで見ると結構切れ毛がピンピン飛び出しているな。逆にキューティクルつやつやだったら引くから、意外と手入れしない感じでちょっと安心。リックは大学時代に実際には耳の下くらいの長さだったのに、女教師から「あの髪の毛が(長すぎて)我慢ならない」と言われたことがきっかけで、その後5年間切るのを止めたと自伝に書いていたから、24歳くらいのこの頃が一番長かったかもしれない。70年代はさ、このマントとブロンドの神々しさから、彼は無口な芸術家だと思っていたのよ。まさかあんなにおしゃべりだとは…。スティーヴ・ハウもインタビューなんかみると割と饒舌で見た目と相反するから、まあ何事も見かけで判断しちゃだめってことだ。今のリックは見た目は確かに好々爺だけど、割と若いころと印象が変わらないんだよね。こうなるだろうと想像できる通りに年をとった。だって数十年ぶりにみたらクリスは「この人誰?」ってほど変わっていたし、スティーヴ・ハウはすぐにわかったけど、往時が美青年だっただけにあまりの変貌ぶり にショックを受けた。でもリックはなんつうか想定の範囲内だった。ABWHとユニオンの頃は、まだ40ちょいくらいだからおっさんくさくなかった けど、97年のキーズトゥの頃はさすがにでこが後退してきて、重役みたいになっていた。そして2003年に5度目にイエスに復帰したときは、髪の毛こそ染めているかのような金髪で肩まで伸ばしていたけど、顔には険しいしわが刻まれ、なん か頑固爺一歩手前ぐらいになっていた。首回りに肉がつくと、人間って人相変わるのね。色白だと思っていたのが、皮膚の下の毛細血管拡充したような赤ら顔の怪人になっていて、またお酒始めたのかと思ったくらい。このころは、実年齢より老けてみえたけど、なんか堂々としていて、少なくともクリスの ようにダブダブした感じではないので、かっこよかった。若いころはゴリラ顔で、遠目とアップのギャップが激しい人だったけど、この頃は全体に堂々として貫禄があってよかった。あれから12年。今は太ったせいで、好々爺っぽい。無精ひげも素が金髪だから気にならないし、汚い感じにならないのは得だな。お腹周りの脂肪だけじゃなくて、首がなくなってくると要注意だよ。健康には気を付けてね。
2016.04.11
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地底探検のかなり初期のライブ映像を見た。解説がないので全曲なのかわからないけど40分くらいだった。場所はロイヤルアルバートホールかな、明らかにクラシック向けの劇場。なんかいろいろと微妙だ。リックの文芸三部作はほぼリアルタイムでレコード買っていて、ヘンリー8世はすごく夢中になって聞いたけど、地底探検とアーサーはほとんど印象に残っていないんだよね。たぶんナレーション付きの劇音楽ロックバージョンみたいなものだったから、中学生にはしんどかったのかもしれない。あと、オケ付きだとピアノやシンセのソロが薄まっちゃうので、印象に残るフレーズが少なくなる。ヘンリー8世はロックのレコードから生ピアノの音がするのも新鮮だったし、数年後、大学で西洋史を選択することになるほどヨーロッパ史、とりわけイギリス史が好きだったので、テーマそのものがツボだった。このあたりは多分、 山本鈴美香の「7つの黄金郷」の影響もあるな。あと漱石の短編に登場するレディー・ジェーン・グレイとか。当時はネットなんてないし、中学の図書館レベルでは知りたいことが書いてある本なんてなかったから、ブリタニカに頼るしかなかった。で、どんどんはまった。ちなみに英国好きのルーツはストーンズと父のオーディオ好き(イギリス製のスピーカーだった)に拠る。小学校の時、文化祭でサティスファクションを歌いながら踊っていたのは私だ。父がタンノイのスピーカーを買ったときに、業者の人がおまけにくれたタンノイの金文字が入った手帳(今考えると、単なるスケジュール手帳みたいなもんだったろう)にロンドン地下鉄の地図が載っていて、東京の地下鉄にすら乗ったことがない小学生は、いつか行くんだと心に決めてその路線図を暗記したものだった。そして実際に行けるわけではないのに、72年のストーンズの来日予定が、キースとミックの麻薬所持の過去から入国できないことになって、小学校の公衆電話から法務省に「ストーンズを入国させてください」と電話をかけたのも私だ(笑)。「ほうむしょう」がなにするところか知っていたんだろうか。なにやってたんだろう私。ラジオと音楽雑誌に影響されていた。高校になるとロックは聞かなくなってしまったけど、イギリス好きはさらに進化を続け、かの国の音楽と美術が不作だと知ると文学にのめり込んだ。逍遥のシェイクスピア(擬古文体!)とか図書館から借りて読んでいた。とりあえずシェークスピア全集は全部読んだし、ホームズもこのころかな。あ、音楽ではグールドがダウランドとか弾いていたので、イギリスはバロック以前の音楽が面白いと知った。古楽を集中的に聞いていた時期もあった。トレヴァー・ ピノックとか、あー名前度忘れしたけど自殺しちゃったリコーダーの人とか…思い出した!デヴィッド・マンロウ!、イギリスはクラシック演奏家が豊作。マンロウは(おそらく)ゲイでそれを苦にして自殺したんだよね。時代だなあ。アルバム何枚も持っていた。これも「音が小さく少ない音楽」だな。ヘンリー8世作曲なんて曲も知ってて歌ってた。そうそう、テューダー朝が好きだったのよ!(なんか久しぶりに書いた「Tuder」)なんで突然マンロウを思い出したかというと、彼も来日予定の直前に亡くなったんだよね。エマーソン…。えー何を書こうとしていたんだっけ。そうそう、リックの地底探検。なんかいろいろと恥ずかしいわ。40年も前だもんね。恐竜が笑えるレベルのバルーン仕立てでかわいすぎる。このあたりのことはリックが自分の本にも書いていたな。大陸でやった時は穴があいて膨らまなかったとかなんとか。で、ナレーションはデヴィッド・へミングス。この人も一種エキセントリック系のヘンタイ俳優さん。なんかちょっと伊丹十三っぽい。彼が座っていた籐椅子はリックの本に載っていたのと編み方が違うから複数あったことがわかる。真ん中にフルオケがいてリックが右側、左側フロントにロック隊がいて、奥にコーラス隊もいて、ヴォーカルも2人(一人はアシュリー・ホルト?)。なんだかやたら人口密度の高いステージ。準正装のクラシック隊とベルボトムに胸をはだけたロックンローラーが一緒にいるというのは、リックの中ではクラスの融合という意味もあったかもしれない。クラシックの教育を受けて非クラシックの音楽をやっていることへの一種の落とし前みたいな。でもお客さんはおとななく2時間聞けるクラスの人たちだな。つまりロックじゃない人たち。ヴォーカルがイアン・ギランばりの熱唱で、なんだかそれも浮いているように私には見える。ロックってさ、やっぱりステージとオーディエンスの一体感だと思うんだけど、ステージの上ですらすでに醒めている人たち(オケ&合唱)とロック隊とではベクトルが乖離している。だってクラシックって醒めてないと演奏できないから、難しいよね。時々しか出番のないヴォーカルが、歌わないときは立ったまま客席に背中向けてるってどうなの。なんか踊るとかパーカッションでも打つとかできなかったんだろうか。全部リックが仕切っていて、総合演出家がいない気がする。ナラティブストーリーが入ってきたらそれはもう音楽とは別ジャンルだから、別の監督が必要だ。リックのなかではあくまで「音楽」であって、踊ったり演技したりという要素は排除したかったんだろうけど、これやっぱり付帯音楽だよね。それにしてもリックのリズム感半端ない。オケにまで気配りして全体見ながら演奏するって弾き振りに近いな。でもリックはモーツァルトじゃないしね。彼の70年代はほとばしる才気が漲っていた時代。勉強になった。時を経て、地底探検もアーサー王も完全版を出し直している。死ぬまでには見てみたい。そうそう、ナーサリーライム協奏曲のキラキラ星の部分だけ耳コピしてみた。C-durなので楽だったけど、あの速弾きアルペジオはオクターブなので、あの速さでは手首移動が私にはしんどい。そしてわかってたけどリック、手がでがい。あと左手がやっぱりクラシックじゃなかった。「○○風」の部分が、どこがそうなのかほとんどわからないんだけど、リックが弾くとどれも同じになっちゃうのか。トレヴァー・ピノックがハープシコードで弾いていたバッハはもっと超速だったけど(そんで弾き振りしてた)、まあ跳躍オクターブではないからリックとは比べられないか。
2016.04.08
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今、毎日通勤時に聞いている32Gのウォークマンにはイエスのアルバムだけでも30種類以上入っていて、曲目をアルファベット順にソートすると同曲異テイクがずらずら並ぶという大変好ましい状態になっている。今日は朝からAwakenだったんだが、この曲の、天に召されていくような高揚感は、全体としてはどうよと思ったユニオ ンツアー版が実はダントツにいい(他に聞いたのは、スタジオ録音盤、keys to ascension版、70年代後半のライブ版、ディヴィソン版)。ダブルギターとダブルキーボード(果たしてトニー・ケイがどこまで仕事していたかは不明)、ダブルドラムス(ビルはパーカッション担当)で音が分 厚くなった分、ジョンの声もヴォーカルマイクが いい仕事していて(音響さんの仕事かな)どこまでも伸びやかに反響するし、リックのキーボード、なかでもチャーチオルガンが冴えわたっている。スタジオ録音盤は本物のチャーチオルガン使っているし、いくらでもミキシングできるけど、ライブでコーラスとかチャーチオルガンの響きとかキリスト教的な響きを再現するには、やはり90年代を待たねばならなかったかな。ユニオンライブの5年後のアセンション盤はなぜかオルガンがピロピロ人工音っぽくてしょぼく聞こえる。映像も何度か観ているんだけど、そんなにすごさは伝わってこなくて、音だけで聞いた方が良さがわかる曲の一つだな。ただ、意外にもベースの聞かせどころが少なくて、途中の静寂感のあるところでずっとシンコペーションで拍をずらしまくっているのが目立つくらい。 クリスはこの曲好きじゃないだろうな(笑)。私はこの曲に約40年の時を経て最近出会ったばかりだけれど、プログレ最盛期が70年代中ごろということを思うと、これはまさにプログレの白鳥の歌なんだと思う。イエスファンの中にも、ここまでが全盛期で、トーマトは衰退期、その後のジョンやリックを欠くイエス)は別のイエス、という意見は多いようだ。本来ならそうして約10年で輝かしい歴史を閉じてもよかったのに、クリスの頑張りでその後35年以上もひっぱった。最近のセルフコピーバンドとしての活動はどうかと思うけど、プログレが古臭くなり見向きもされなかった大変な時代も、スタイルを替え助っ人を頼りながらもなんとかライブを行ってバンド生命を繋いできたのは、聴衆 といううつろいやすいものを相手にどう仕事したらいいかを冷静に考えられたクリスなのかもしれない。なにしろジョンは社会性を無視した自己完結型だからビジネスには向かないし、ハウはギターさえ弾ければエイジアだろうがGTRだろうがどこへでも行っちゃうし、リックはパートタイマーだしね。あ、アランがいたっけ。アランはクリスの中に抱合されているのよ。【イエススピーク】Yesspeak、届いたけど私の発注ミスで英語字幕がなかったorz。仕方がないのでもう一枚、字幕つきをポチる。とりあえずざっとみたところ、まあ7割方わかるんだけど、やっぱりちゃんと正確に知りたい。今回なぜかリックの話が聞き取りにくく、一番わかったのはアランだった。あああこうしてまた無駄に同じディスクが増えて行く。でも後から出たディレクターズエディションより一人ひとりのインタビューが長くて、こっちのほうが私はいいなあ。大型バスで大陸を移動するツアーの様子もよくわかって楽しい。リックの衣装が入っているパーソナルバゲージがたんす1棹分(というか大型冷蔵庫)くらいある巨大なもので驚いた。 小柄な日本人なら3人くらい入りそうだ。ヴィトンのを見たことがある旅行用クローゼットをさらに大きくしたようなもので、衣装を吊るせるスペース と引き出し部分に分かれている。外装は楽器ケース並みに頑丈そうだった。あの引き出しにはたためる衣類のほか指先周りのグルーミングセットとか 大量の薬とか血圧計とかが入っているに違いない。まあ、数カ月の間移動しながら生活するわけだから、荷物は多いんだろうな。隣にあったのが多分アランのやつで、リックの2/3ほどの大きさだった。ところで、リックに同行していた女性は誰だろう。この時期、もうニナとはうまくいってなくて、でも今の妻のレイチェルでもない。間にもう一人いたっけ。あ、籍を入れてない妻がいたな。離婚後のニナ・カーターのセレブ生活ぶりを向こうの雑誌記事で読んだら(立派なコテージも多分リックが買った)、わりとあけすけとなんでも話していて、「リックは落ち着かない人で最初から別居婚のようだった」とか「最後の数年は口も利かずメールとFAXでやりとりしていた」と結構もめた離婚だったようだ。リックは私の家族を悪く言うみたいな物騒な発言もあって、おおおこんなん書いちゃっていいのかと。まあリックはそういう人だよね。悪気はないんだよきっと。今でこそ家庭菜園やったりして好々爺みたいだけど、基本、動き回って仕事するのが好きな子どもだから。リックみたいな人には自分の感情は殺して秘書のように始終べったりくっついて回る女性か、ちゃんと仕事を持ってい て放っておかれても平気な人でないとだめだろう。あとライブ会場で、メンバーそれぞれの個室がない時は、リックとアランとクリスが同室だった。さもありなん。だってジョンは冥想しなくちゃだし、ハウも本番前は一人で過ごさなくちゃ、だもんね。そういうこだわりのないでかい2人とドラムのおっちゃんは、やっぱりアーティストというより職人なのだろう。朝はABWHのclose to the edgeを見ながら支度していたんだが、まだ細くて美しかったリックの指さばきがたくさん拝めて眼福だ。このときのライブのソロが、ニコ動では「神キーボード」として登録されていて、「インテルめりこんでる」「ラスボスきた~」とかニコ動世代の人たちの書き込みに笑ってしまう。今は指も太くごつくなってしまったけど、丁度40歳くらいのリックの手はすらりと長くて、理想的なピアノ弾きの手をしている。なにしろ人差し指が 薬指より長い。私は逆なのでうらやましい。1-2指の広がりはレパートリーに影響する。そして中指の長さ=黒鍵の長さ(約10センチ)だった。うわあああ。鍵盤からの掌のはみ出し具合から、私より全体3センチは大きいと思っていたけど、指だけで2.5センチ長いということは、手全体では4センチ以上違うと思うわ。 【どりーむしあたあ】あと昨日、初めてドリームシアターのライブをニコ動で観てしまった。なんなのあの人たち。プログレ雑技団?曲芸?プログレッシヴメタルなるジャンルがあるのも初めて知った。プログレなのはわかるけど、これがメタルなの?でも実はああいうの好きだ。ああいう変態的な曲は俄然分析したくなる。あれ即興じゃなくて全部計算されつくしているし。全員音大出身で、要するに理論を知った上で遊んでいるテク自慢のヲタク集団なのね。ただ私はテクをひけらかされるとどうしてもクラシックと比べてしまうので、「ほおおやるなあ」ぐらいで「すげえ」ってはならないんだけど。それに聞いたのはインストだったので飽きるな。声ありもあるのかな。イエス人気といい、アメリカでプログレが人気ということ自体、私にはピンとこないんだけど、こういう一部とんがった集団がアメリカから出て来るのはわかる。人工的に極限までつくりこまれた全知的な環境で育成される頭脳、みたいな。MITとかハーバードロースクールとかと同じだよね。とりわけ優秀な頭脳は外国人だったりするけど。よくリックの速弾きと比較されるジョーダン・ルーデスさんはこのグループにいる人だった。でも比較できないほど対照的だと思う。そもそもイエス的な音楽にはルーデスさんは興味がないだろう。速弾きなど肉体機能に依存する技量は加齢とともに失われていくのは避けられないけど、クラシックの場合、若いうちは技術でブイブイ言わせて、でもその間に内面をしっかり磨いて音楽性を深めていけば生き残れる。リックの70年代の遺産みたいなマスターピースがあればいいんだけど、こういう人たちは年をとったらどうなるんだろう?クラシックでもホロヴィッツのトランスクリプションとかアクロバティックな演奏家は大好物だ。最近だった らランランもそうだし、ユジャワンとかガブリリュクとかリシッツァとかブニアテシヴィリとか。おおお~何気に女流が多いわ。ああそうそう生は聞いたことないけどヴォロドスとか。感動はないけどびっくりはする演奏。音や技量には感動するけど音楽には感動しない、みたいな。若いころのプレトニョフもキレがあって速弾き超人だったな。ヤングポゴレリチもこのカテゴリーに入れよう。あーそういえばガブリリュクくん消えちゃったな。10代の頃はまださわやか青年だったけど、すごい汗っかきで鍵盤が汗でぬれて、指が滑ってコケる ような弾きっぷりだったもんなあ。あの汗がアクション部分に入ったら部品が錆びるに違いない。スティーヴ・ハウの枯れ妙技というのも、あのよたれ、もつれも味のうち、と思ってくれるのは一部の熱狂的なファンだけで、一般的にはやっぱり「下手になった」でおしまいだと思う。それは年齢的に言っても致し方のないことだし、イエスやスティーヴのファンなら容認してくれるからいいのよ。半ば神格化されているから(ザ・スティーヴ・ハウなんである)、生きて目の前で弾いてくれるだけでいいと思われている。でも欲を言えば、彼はもうイエスでの活動は停止して、アク―スティックで好きな音楽をやってほしいと思う。もうね、痛々しくて見ていられいられんのよ、本当に。【婆の昔語り】あー昔ね、アルトゥーロ・ベネデッティ・ミケランジェリという変人として知られた天才ピアニストがいてね。私の中ではグールドと双璧で、ドビュッシーの前奏曲集はこの人のしか受け付けないんだけど、自分に厳しいあまり、ベストなコンディションでないとリサイタルをやらないのよ。でも何年 前に予定は決まっているから、本来だったらその日のために周到に準備してステージに立つべきなんだけど、準備していてもやっぱり妥協できなくてキャンセルしてしまう人なのよ。80年代にリサイタルでやってきたときは3回中2回キャンセルし、その一回も途中で放りだした。私は奇跡的にもこの時代に彼の演奏を2回聞くことができたんだが(一回はチェリビダッケとのシューマンというこれまた歴史的な珍演!)、リサイタルはプログラムの半分で終わってしまった。彼は自分のピアノと専属の調律師を連れて旅をする人だったが、日本に来たら湿度のせいでなかなかピアノが思うように鳴らない。それでまず開演が1時間以上遅れた。彼の演奏を聞きたくて仕方がない聴衆は、ホールの中に入ることも許されず、ロビーやホワイエで待ちぼうけ。妥協許すまじ!の精神を尊び、みんなじっと待つ。結局、自分のピアノではベストな演奏はできないと判断し、選んだのはヤマハのCIII(当時)。で、弾き始めた。もう夢にまでみたミケさんの演奏だった。ところが、前半のプログラム終了後、アナウンスが流れた。「ミケランジェリ氏はこれ以上の演奏を断念しました」。完全なるパフォーマンスを提供できない限り、客の前に立たないというあっぱれな人だった。またファンがこれを許してしまうんだ。みんな盲目。こういう人は20世紀のクラシック界にはたくさんいて、先のチェリビダッケ(リハーサル魔。どんなオケも共演を嫌がる天才)とかカルロス・クライバーとか。当日ドタキャンだから遠方からやってくるファンはそりゃたいへんだったろう。指揮者ではクライバーが大好きだったが、結局キャンセルされて私は生を聞きそびれている。そしてあっさり若死にした。これらの人たちに共通するのは「超狭いレパートリー」だった。同じ曲を何十年も磨き続ける。これはクラシック演奏家に許された試練であり喜びなんだと思う。そしてまた客は、その「毎回ほぼ同じ演奏」を聴くために、何度キャンセルされようと執拗に会場に向かう。だって音楽は時間芸術だからね、「今この瞬間に目の前で演奏されている」ことが実は何より重要。記録はあくまでアーカイヴだから。今で言うとポゴレリッチがそうで、私は10回以上彼のリサイタルに足を運んでいるけれど、ガスパールやショパンのロ短調はもう10回以上聞いている。でもいいの。で、何を言いたかったというと、クラシックのほうがファンは天才に振り回されているから、イエスのステージがどんだけひどかろうと、キャンセルしないのは偉いという話だ。
2016.04.07
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close to the edgeの断片だけ聴いてオリヴァー・ウェイクマンを残念と決めつけるのはフェアじゃないと思い、CD+DVDセットのLive from Lyonを買ってしまう。駄作の烙印を押されている、今世紀に入ってもっとも評価の低いイエスのライブ。ああこうやってファンは自らの意思でいばらの道を歩んでいくんだな。既に駄作であればあるほど聴きたくなっている状況なので、あとはブートに手を染めるか、アナログLPのデータ化にいそしむかしか道は残されていない。どちらも根性と金と時間が必要だ。アマゾンのレビューではベノワとオリヴァーより、古参3人のやる気の無さ、老化に言及していて、特にスティーヴ・ハウがひどいらしい。いや、ひどいハウ爺も聴いてみたいんだが。オリヴァーに関しては父の完コピ、目立たないというレビューはあったけど、あからさまに下手だと言っている人はいなかった。あれ? 私の聴き違い? リヨンでは調子が良かったのだろうか。どこまでを完コピというのか、判断基準があいまいだけど、close to the edgeでは後半のチャーチオルガンのソロがかなり違って聞こえたけどなあ。それより、リヨンのライブではないかもしれないけど、動画サイトでみたオリヴァー参加のライブで彼が着ていたのは、2004年にリックが着ていた蛇柄のコートジャケットそっくりなんですけど。色を重ねて染め変えたように見える。お下がりの証拠に、オリヴァーの体に合ってない(ぶかぶか)。 父からのお餞別だったのかな。「髪も長いしこれ着れば、きっとおれに間違えられるw」とかなんとか。オンワードを歌っている動画を見たけど、ベノワくんは「斉唱」しすぎてヘンだった。【ラヴェルからコードを理解する】最近、属七和音を理解すべく、ジャズの理論書を読み始めたら、和音は1オクターヴ内で完結するものだと思っていたのに、完全11度とか短13度とか普通にあってびっくりした。11度=完全4度じゃなくて、あくまで11度。なにが違うのか私にはわからない。だって間に他の音がはさまっていたらそもそも届かないから弾けない(笑)。不協和音そのものじゃなくて、その音が次にどういう経緯で解決するかはジャズとクラシックでは違うんだな。ジャズはクラシックほどNGがなくて懐広そう。しかしいまだにバッハマンセーの自分にはそこが難しい。サイベリアンの冒頭、キーボードがc、d2度の不協和音で始まって三連符で上下するところとか、awakenの6/8+5/8の最初のモチーフの後、音が下がりながら調が拡張(逸脱?)していって、一種の高揚感や浮遊感が得られるところとか、ロマン派までのクラシックしかやっていない脳みそにはすごく刺激的で、俄然分解してみたくなる。モーツァルトあたりだと聞いているときの脳波や自律神経、神経伝達物質がどうなるとかすでに研究があるけど、ロックで、しかもイエスの曲だとどうなるのか、曲ごとに検証したい。soundchaserとawakenでは脳から出る物質が絶対違うと思うわ(笑)。ちなみに私の関心はセロトニンからオキシトシンへと変わった。人が最後に行き着く幸福感はオキシトシンがカギだと思う(適当)。イエスは年をとってからも聞けるロックなのかもしれない。サイベリアンの分析はじめたらパートごとのリズムの組み合わせだけでも面白くて、勢いあまってスコアをつくろうと思って冒頭のベースラインを何度も聴いたけど、あまりに音が多くて拾うのがめんどくさくなってやめた(笑)。これ以上はまるとMIDI音源を楽譜にしてくれるソフトとかに手を出しそうで怖い。そして古典的な音楽理論からは説明できない逸脱がいっぱいあって目が回りそう。そこがいいんだけど。しかもそれに輪をかけて複雑怪奇なベースをからませて、ファルセットでカウンターメロディをとるクリスとか、なんだかとてつもない怪物だったんだな。クリスの聖歌隊仕込みのコーラスワークはもっともっともっと評価されていい。イエスが他のプログレと明らかに一線を画す理由の一つがヴォーカルハーモニー隊だと思うんだよね。いろんなライブの同じ曲を聴いていると、割と毎回微妙に違ったりしているのでクリスなんかはしみ込んだ感覚で歌っているんだと思うけど、クリスが歌っているパートを譜面に起こしたら、専業コーラス隊でも雇わない限りジョンと一緒に歌える人はいないことがはっきりすると思う。例えばベースだけはマネできても(トニー・レヴィンかな、キンクリにいた人が西太后の爪みたいなの付けてクリスのパートを弾いているのを見てぶっとんだ。たしかHeart of the sunrise.をアコギ3本でプレイするCGAに混ざって冒頭のベースソロを弾いていたけど、すでに打楽器だった。かっこええ~がキワものっぽい。こういうギミックは今のプログレには必要ないと思うわ。まあ70年代はそもそもキースがギミックの塊だったが)、あれだけ忙しいベースラインを弾きながら時にジョンより目立つ声で歌うなんて。つくづく先に逝ってしまったことが悔やまれる。3声目をハモるスティーヴ・ハウのからみは絶対量が少ないし、彼のとるハーモニーは誰でも思いつく3度下とかがほとんどだから、誰でも代替可能。私もイエスを歌うときは、ジョンのラインについていけずに3度下をとることがある。ところで向こうのテレビ番組かなにかに出演したスティーヴが、リードヴォーカル不在のまま3度下の声でroundaboutを堂々と歌っているのを見て、恥ずかしさのあまり思わず音声をオフにしたのは私だけではないはずだ。あれはないだろう。サポートにベース弾きがいたから、もともとその人がリードヴォーカルをする予定だったのではないかしら(途中からこれはまずいと思って歌いだしていた)。ギター至上主義のスティーヴの行動は時に常軌を逸するな。でもジョンもリックと2人だけで歌う同志は、中間部の調性を変えて全然違う楽曲のようにアレンジしていた。あまりにも原曲と違うのでちょっとびっくりしたけど、ハーモニーありきでないと曲として成立しない曲がイエスにはたくさんあるからなあ。今、ほぼ毎日ラヴェルのクープランの墓を弾いているんだけど、属7和音がすごく気持ちよくて、9度とかも普通に使われているから、 この理屈がわかればジャズっぽいほうへ行けそうな気がする。フォルラーヌとメヌエットにはリックがよくやる装飾音がいっぱい出てくるけど、 これは指先で鍵盤を軽く奥に向かって弾くようにするときれいに弾けることを発見。バッハ時代のターンやモルデントとも全く違う弾き方なので慣れるまではちょっと面倒。調べたらクープランは1次大戦前後に作曲されているので、実はジャズの影響はまだないのだった。
2016.04.05
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オリヴァー・ウェイクマンのイエスでのパフォーマンスをずっと聞いてみたかった。2008年(40周年)ころのワールドツアーの際、リックがドクターストップにより不参加となり(100回のツアーはNG,25回くらいならと打診したらしい)、代わりにオリヴァーを推薦したとある。しかし、文字情報だけだと、オリヴァーは途中で解雇されて(?)ジェフ・ダウンズに代わったとかで、本当に参加していたのか確認できなかった。私はずっと、リックの遺伝子を受け継いだ息子の演奏によるイエスの曲を聞きたかった。この時期に出たスタジオ録音のアルバムではキーボードは曲によってジェフとオリヴァーの両方がクレジットされているらしい(FFHかな)。で、アメリカでのライブで演奏されたClose to the edgeの一部を聞いたんだけど…これはまずいでしょって出来だったorz。下手ではないんだろうけど、馴染まなさすぎる。がちがちに緊張しているのかもしれないけど、なんだか 一人だけ外部と遮断されて仕事している感じで浮きまくっている。あまり広いステージではなかったので挙動不審な様子は他のメンバーからも丸わかりだろうし、なによりそのパフォーマンスはイエスのキーボードとしてはかなり残念な出来だった。そりゃあね、父親が長年出たり入ったりしていたプログレ史に残るバンドへの、いきなり父親からの代打指名参加、覚えないといけない曲は膨大だし、本人、いやだったのかもしれない。それが演奏にも態度にも表れているような気がした。特にClose to the edgeみたいなマスターピースは、途中のチャーチオルガンの響きとか、バロックチェンバロの部分とか、ファンは「さあ、次くるぞ、リックのあの分厚いオルガンの音、あのバロックのフレーズ!」って期待しているから、スティーヴ・ハウのアドリブ以外、もう何一つ変えちゃいけないと思うのよ。それはこれまでの代打キーボードが証明している(モラツの演奏も批判が多かったらしい)。必要とされているのは、オリジナル(リック)のそっくりさんであって、装飾音が入りまくるリックの手癖まで正確に再現できてこその代打を期待されているんだよね。なのにオリヴァーのプレイは、即興的なフレーズも父親ほど指が速くは動かないようで、音は抜けるし、リックのきらびやかなアルペジオやスケール、装飾音を聞き慣れている耳には、かなり不出来なものに聞こえる。音色の選び方もおかしいし、音量のバランスも奇妙だ。出だしの音も本来アランの合図と同時に響かなくてはならない音が、合図を待ってから弾いている感じがする(実際にはコンマ何秒というわずかな瞬間だけど)。ああこれは誰が聞いても解雇だろうという演奏だった。プレイ中にキョロキョロする挙動不審も気になる。周到に組み立てているであろう次の準備を、さらに「次はまずこっちで弾いて、ここからこっちに移って…」みたいにいちいち頭でシミュレーションしている感じなんだよね。まったく余裕がない。なんかすごく残念。オリヴァーってこんなもんなの?というのが実感。クリス・ウェルチのイエス本には、1999年頃?イゴールの入国ビザ問題でイギリスでのライブ参加が危うくなったとき、急遽二男のアダムが代打を 務めるべく一夜漬けで父親のプレイを覚え、代打出演しかけたエピソードが紹介されている。リックの子どもたちはそれまで、イエスの曲はほとんど聞いていなかったようで(彼らが育った時代はプログレはとっくに過去の音楽だったんだからまあそれは仕方がない)、「危機は持っていたけど、お兄ちゃんのフット ボールと交換したんだ」という無邪気なアダムにぞっこんだ(笑)。イエスの曲を泥縄で覚えようなんて所詮無理で、必死で覚えてメモった楽譜を車の中に置き忘れたり、音源を入れたCDをローディーのミスで壊された りとアクシデント続きで散々だっ たようだが、結局ギリギリでイゴールは間に合い、でも頑張ったご褒美にと、アダムは1曲だけプレイを許された(燃える朝焼けだったかな)。つまり、2歳違 いの兄弟のうち、弟のほうが先にイエスデビューをしていたことになる。ちなみにこのデビューで、ジョンはオーディエンスに対して、ちゃんと「リックの息子のアダムだよ。時間がないのに全部覚えてきたんだ。えらい子だよ~」と紹介している。ジョン、グッジョブ!ところがアダムは、自分のソロパートを自分なりに考えたアドリブで弾いたらしく、終わってからスティーヴに「そこはそうじゃないでしょ」と注意されたらしい。アダムは「24小節のソロ部分でさえも好きなように弾いてはいけないんだ」と思ったという。これがイエスの歴史の重みだろう…というのは大袈裟で、多分スティーヴが、いつもと同じでないと自分のプレイに影響出るから気に入らなかっただけかもしれない。なにかのライブで、ジョンがいつもより抑揚付けて歌ったら「そんなじゃハモれない」とばかりに顔をしかめ、あからさまに手を耳に宛て自分の声を確認してた彼を確認している。そしてその後のソロプレイで仕返ししていたシーンがあった。それぐらいスティーヴは神経質なんである。そんなことがあって、その後、ロンドン公演でもバッキングスタッフとして詰めていたアダムに、クリスやイゴールは「一曲弾いて行けよ」と好意的 だったが、ジョンとスティーヴが許さなかった。まあ、ロンドン公演はおおとり、千秋楽みたいなものだから、失敗は許されないというのもあるだろうけど、バンド側からしたら、正規に雇っているリックのそっくりさんがいるのに、わざわざパートタイマーのリックの息子のお披露目なんてする義理はないわけで、アダムがちょっぴり残念そうだったのはかわいそうだけど(またそのうちチャンスがあるかも、と思っているらしいが、多分ない)、ジョンとスティーヴは正しい大人の判断をした(そしてこういうところではクリスは実に鷹揚でいい奴だ)。この兄弟、アダムはえらがちょっと張っていて目がクリクリしていて、リックよりかわいい感じ。オリヴァーのほうがリックに似ていると言われるけ ど、 オリヴァーは奥目で小さく見え、父よりずっと知的な感じがする(笑)。 身長は父親くらいあるけど、太っていないからかっこいい。 どっちも似ていないと思うのは、金髪でないからかも。そして父親よりゴツさがないから、日本人の元女子の感覚からすればずっとハンサムだ(笑)。しかし どっちも金髪でこそないけれど、ある時期から超ロンゲにしていて、絶対父親をトレースしているだろうという気はする(アダムは今は肩より少し短い ぐらい)。子どもの頃、父親は不在がちだったろうし、彼らが6~8歳くらいの時、リックは母親と離婚しているから、そんなに一緒に暮らした時間は長くはない はずだが、リックとはとても仲がよさそうだし、2人ともプロのミュージシャンになったのはたいしたものだ。特にオリヴァーは自分のサイトで音源も公開していて、いくつか聞いてはみたけど、なんかイージーリスニングとヒュージョンがまざったみたいな微妙な音楽だった。アダムはブラックサバスな どのレジェンドバンドのサポートプレーヤーとしても活動しているらしい。サポートなんだ?え?とちょっと引っかかってはいた。結構プライベートな スタジオとかも公開していて、キーボードだけじゃなくギターとかさまざまな楽器も手掛けるようだ。でもクリエイティブな要素はどうなんろう。ソロの時は父の名前とセット売りのほうが多い気がする。気になるのが父・リックの2人に対する評価なんだけど。リックはアダムとは大分早い時期(アダム20代)に一緒に4枚のアルバムを作成しているし、何度も一緒のステージに立っている(海外公演にも同行している)。リックの大掛かりなライブで、アダムと一緒にフロントに降りて来てショルダーキーボードを演奏する様子はいくつも動画が出て来る。今でも時々ライブで共演しているようだし、父が息子にインタビューするという番組も見た。ちなみにアダムは結構肝の据わったベジタリアンだ。一方、2歳違いの兄、オリヴァーとの共作はないようで、これまで私は、オリヴァーは一人でも十分やっていける才能があるけど、アダムはそうじゃないから手助けしているのだと思っていた。バカな子どもほどかわいい、みたいな心境で。でも、このイエスでプレイするオリヴァーを知って、違うんじゃないかと思い始めた。この2人、リズム感は明らかに父より劣るのは、短い動画を見ただけでもわかった。たぶん経験不足なんだろう。リックの才能は、どんな他人の曲でも一瞬にして構造を理解し、瞬時にして自分に求められている「華麗なアレンジ」を提供できるところだ。それは4年間の2000セッションという膨大なプロとしての仕事が証明している。でも40を過ぎている息子たちには、そういう経験の蓄積が絶対的に足りない。追記:オリヴァーのインタビューを聞いていたら、リックは自分が5歳くらいのときに家を出ていったから、彼から教えてもらったことはなく、母は自分がピアノを練習していると不機嫌だったとか語っていて泣けた。そうかあ・・・基礎を築くべき幼少時に十分練習できなかったのだろうか。もしかしたら無邪気なアダムと違ってオリヴァーは長男ということもあり、母を守らなくちゃという思いから、父への反発みたいなものもあるのかも。石田純一といしだ壱成、市川猿翁と香川照之みたいな(笑)。でも見返したいならもっと腕を磨かなくちゃ。リックの最初の妻・ロズ(ロザリン)との正式離婚は1980年だけど、1977年には破局していたと何かの記事で読んだから、時間軸は合っているな。【アンダーソンの声】リレイヤーあたりを最高傑作に位置づけている熱狂的なイエスファン(ほぼ男性)にとって、ジョン・アンダーソンのメルヘンな作品(「不思議なお話 を」や 「ザ・ミーティング」「ホーリー・ラム」など)は駄作扱いなのね。密林のレビューを読んでちょっとショックだった。私は上記3作はくり返し何度も聴いても飽きない。ドラムもベースもハウのギターもなくてもいい。35周年ライブではアク―スティック部分だけ何度も繰り返し見てしまう。リックのピアノだけのLiving Treeも大好きで何度でも聞いてしまう。ということはよ、私が好きなのはジョン・アンダーソンの声>>>>>イエスなのかもしれない。そして同時に私にとってはジョン=イエスなんだ。だから、上記3作を駄作と言われると悲しい。ああいうのも立派なイエスの楽曲の一つだし、大げさな大曲の間に箸休め的に置かれていたらほっとする。「ビートルズになり損ねた」といわれるイエスのポップな部分は、ジョンのシンプルな楽曲であり、プログレバンドとしてのイエスの一つの側面として必要不可欠な要素になっているんじゃないのかなあ。少なくともこういう曲もイエスだと認めてほしい。ジョンの声は聞いていて「あ~きれいなだあ~きもちいなあ~」と思う。たしかに曲はポップスとしては平凡なのかもしれないけど、ジョンの声だよ? この声でシナトラやビング・クロスビーのナンバーを歌われても嬉しくない。ジョンの曲だからいいんだ。値千金でしょう!そう考えると、私がなんでラビンイエスがだめなのか、理由がはっきりする。答え:ジョンじゃないから。そしてジョンの声が活かされるような楽曲じゃないから。バグルスイエスやFFH、H&Eは、あれはイエスじゃなければ、すごくいいアルバムだ。でもイエスのアルバムとしてはやっぱり平凡だと思う。なにしろジョンがいない(結局ここ)。ジョンとリックの2人ショーLiving treeのライブ、高性能イヤホンで聞いていると、リックのデジピ(シンセのピアノ音?)は、鍵盤叩く音まで聞こえそうほど圧が高い。やっぱりなー。粒立ちが半端ないと思っていたけど、やっぱり打鍵の力がかなりあるということなんだろうな。手も、クリスよりは小さいとか勝手な想像していたけど、ユニオンツアーくらいまでのリックは指が細くてきれいだったのよ。だから勝手に手も小さい(それでも11度は届く)と思ってた。でも、キーズトゥのライブ映像みていたら、左で和音抑えるときに、そんなに必死に開いていないのに1-5で10度触ってた。こりゃきっちり広げたら12度は軽いと思う。それで、メドレーなんかだとジョンは途中でインターバルがあるけど、リックはずっと弾きっぱなし。イエスのソロみたいに細かい速弾きなんて求められていないから、緩めのテンポで、その中にも例の装飾音を入れながら、ほとんどミスタッチもなくずうーっと弾いていられる。楽しいんだろうなあ、ジョンとの仕事。アンダーソン・ラビン・ウェイクマンって、例によってブライアン・レーンが手掛けるプロジェクトらしいけど、ジョン的にはラビンでいいの?と思う。ラビンの書いた楽曲はジョン向きじゃないのはわかっているはずなのに。あと、リックがラビンとの仕事を熱望しているのは、自分に足りなりロックな部分を補いたいんじゃないかと思ったり。イエスの過去曲を演奏するのは確定しているだろうけど、3人プラスバックサポートで、長い曲もやってくれるだろうか。でもラビンだっていまや大御所映画音楽作曲家(プロデューサー?)らしいし、なんかバグルスのホーンといい、イエスとかかわったミュージシャンはその後結構大成してるな。
2016.04.04
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【メディアでの発言】 欧米のサイトにアップされているリックの過去のインタビューをいろいろと読んでいる。彼の話は本と同様、本当に平明でわかりやすい。もちろん編集の手が加えられた文なんだろうけど(そして本人は校正なんてしていない)、それでもすごくわかりやすい。陽気な彼の性格そのものかもしれない。下ネタさえなければ中学の教科書にしたいぐらいだ。とっても生きた口語英語。スラングも実際には下品なものは使わない。Bloody hellは口癖みたいなもんだろう。形式主語構文とか使わず、一文がとにかく短い。これでいいんだ~と日本人としては安心する。単語も平明なので、基本の意味とイディオムさえ知っていれば中学英語で十分わかる。あとはフィーリングで感じとれる。2004年にすでにボウイの偉業について話しているのを見つけた。ボウイが亡くなった時にコメントしていたのは、かねてから言及していたという実績があったんだな。なんでもリックはトニー・ヴィスコンティの采配で19~22歳くらいまでの4年間で2000セッション以上やっていたと話している。ストローブス時代ともイエスの初期とも重なっている。驚いたことにマーク・ボラン(T-REX)のセッションには全部参加しているという。もちろんクレジットはない。T-REXの盤面が赤いシングルとか何枚か家にあるな。ピアノの音なんてあったっけ。あ、オルガンかメロトロンかもしれないのか。あーやっぱ りレコードプレーヤーを直して、デジタルコンバーターを買うはめになりそうだ。あと、ボウイについては音楽だけでなくすべてが先をいっていたと称賛している。最初にステレオシングルをイギリスで発売したのもボウイらしい。当時はシングルはまだモノラル主流だったので、レコード会社が強硬に反対する中、先を見越して闘ったそうだ。そうだったのか。ボウイは準備万端でスタジオにやってきて、何事も抜かりがなかったそうである。リックが最初にボウイに会ったのは19歳の時。ティーンエイジャーのリックとか想像できないんですけど。でも多分髪はもう長くて、人前で演奏してお金をもらう仕事は14歳のときからやっているから、仕事として割り切っていたんだろう。当時の写真がみたいなあ。ザ・プロフェッショナルなボウイのお言葉。楽しそうではないなw。"Never waste time in the studio. Studio time's really precious. Whilst you might have the money to waste in the studio now, there might be in years to come a time when you might wish you had that money. You'll look back at the time you wasted."Whilstという気取った英国英語がいいね。■Ravel 1875-1937La tombeau de Couperin 1914-17 1)Prelude e-moll 12/16 2)Fugae e-moll 4/4 3voices 3)Forlane e-moll 6/8 4)Rigaudon C-dur →c-moll 2/4 5)Menuet G-dur 3/4 6)Toccata e-moll→d♯-moll→e-moll→E-dur 2/4クープラン時代のフレームで作曲されているから、拍子はわかるけど、調整が思ったのと全然違ってた。プレリュードからフォルラーヌまではまさかの短調。長調ではない気はしたけど短調には聞こえない。
2016.04.01
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ちょっと前にWOWOWでやっていたバート・バカラックLive in Londonを見る。すでに伝説になっているヒットメーカーがまだ元気なのに驚いたけど、もっとびっくりしたのが、シンガーの一人にジャスティン・ヘイワードが混ざってた。えええ~っ!ムーディブルース好きだった。プログレかと言われると微妙だけど、フロイドやELPにつかれると、ムーディーズのやさしいメロディーに逃げていたような気がする。ただ、日本にはほとんど活動の様子が伝わってこなかったので(マイク・ピンダーとか年嵩のメンバーもいたし、若者受けしなかったのかも)、長い間、グラビアで眺めるだけの存在だった。アルバムは、Days Of Future PassedからSeventh Sojournまで全部あるな。歌詞に口語では使われない難しい単語がいっぱい並んでいる曲があって、1個ずつ調べた記憶がある。ジャスティンはギターがすごくうまいという話も聞かないし、ましてや歌だって、ムーディーズの曲、彼がつくった曲だからこそいい感じで聴けるけど、今回のこのシチュエーション、専業ヴォーカリストの面々の中では、平凡すぎて印象に残らない。どういう人選だったんだろうなあ。でも、それなりに枯れた味があっていいわ。ジャスティンはハウ同様、ギブソンのアコギを抱えて歌う人だった。変わらずダンディで足が細くて長くて、いい年のとりかたをしたものだと思う。69歳かあ。若く見えるよね。昔の彼の造形は痩せていたころのグレッグレイクに共通するソフトな感じがあって、大好きだった。Wikiには15歳でギブソン335を買ってもらったのがキャリアの始まり、とある。ハウはギブソンE175だっけ?この人はムーディーズにキャリアのすべてをささげた人だけど、数年前、2000年頃のライブ映像を放映していて、このとき、なんて素敵なおじさまになって!と思ったものだった。その頃からさらに10年以上経っているけど、こうしてステージに立っているのを見られた。彼の甘い声はプログレ向きではなかったかもしれないけど(アンダーソンは別格。あそこまでキーが高いと逆につきぬけてしまう)、元気でキャリアを重ねてきたようで、なんかうれしい。幼馴染に数十年ぶりに会ったような気がするわ。ムーディーズの中にも歌える曲はたくさんある。ジャスティンの声は、美声というのとは違うけど、ちょっと陰りがあって、私の好きなウェット感がある。そしてプログレのなかではポップなんだけど、曲も湿り気があって明るくなかった。そこが好きだった。イエスと違って、歌詞にはちゃんと意味があった(笑)。75年で私のプログレ史は止まっているので、その後、イエスを脱退したモラツがムーディーズに入ったことも知らなかったよ。びっくり。モラツのアヴァンギャルドな風味(ヒュージョンっぽい)は合わないだろう。80年代以降、クラシック漬けのなかでもポツポツロックのCDは買っていて、ウォークマンに入れようと探して見たらスティングとU2が何枚か出てきた。コンサートにも行ったな。両者に共通するのは「暗さ」だ。根暗なロックが好きだったのか。でもたぶんどっちも声が好みなんだ。スティングはマルチにすごいと思ったし、クルト・ワイルをアカペラで歌っているを聞いて泣きそうになったな。なに~スティング、ドイツグラモフォンからアルバム出してる!いつからクラシックに!ななななんで~!聞かなきゃ…とかようにして音楽放浪の旅は続くのであった。
2016.03.30
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■すっかり慣れてきた口語体英語平田牧場でとんかつ食べながらGrumpy~の2冊目に着手。こっちはペーパーバッグなので、バッグに入れて持ち歩ける。ハードカバーを取り寄せた最初のGrumpyは、どうでもいい過去の笑い話集(しかも下ネタ多数)で、一読一笑読み捨てするような内容ではあるんだけど、仕事以外で洋書を読むのは本当に久しぶりなので、口語英語を辞書に頼らず読み切る訓練にはなった。まあ下ネタといっても具体的に描写する わけではないからいいんだけど。ドイツのレストランでの、ポルノ白雪姫鑑賞の話は、結末が想像できるだけにニヤニヤしながら読んだ。リックの本はとにかく文章が短くて重畳。そして絶対気取らないのがいい。人気だった70年代も上から目線的な見方はしない人で、でも尋常ではない物量・質量でブルドーザーのように仕事をしていて、それを誇るでもなく、一方で高級車を次々集めまくったりと、ある種天然な超人なのだった。2冊目は最初のGrumpy以後の話が多そうだけど、写真を見て、音楽活動より社会活動のほうが多いのかなと思ってみたら、最初の偽ファンレターの話はピンとこなかったけど、次は2003年頃のイエスのサイン会の話で、やった~と思いながら読んだら、なにやらやっぱりちょっと色っぽい話なのだった。結局、そういうエピソードしか記憶に残らないんだろう。クリス・スクワイアが酔っ払ってサイン会でいびきかいて寝ちゃった話とか(机につっぷして寝ていたので無理やり起こそうとしたら今度は仰向けになって寝ちゃったとか。巨人は睡眠時間が長いという説があるが、クリスが時間にルーズなのは睡眠時間が長いから、に一票)、女性が胸をはだけて「ここにサインして」と迫ってきて、震える手で思わずミドルネーム(Christopher)まで書いちゃったとか、クリスは乳首をiの・に見立てて芸術的なサインをしてたとか、あほなロッカー丸出しでかわいい。だってこのときすでにみんな50過ぎw。リックは2009年にRick Wakeman's Grumpy Old Picture Show, featuring an evening of music and stories from his careerというシリーズのツアーをしている。これはおそらく先日DVDで見た、「ピアノとお話」のコンサートに近いんだろう。2冊のGrumpyは、そのネタ本なんだろうと推測してみる。今年3月10日にリックが出演した舞台(なにかのチャリティーっぽい)の映像が3分割されてアップされているのを発見。おおお~Fazioliを 弾いている。そして1月に比べて髪が長くなっている。客席からなので、遠くて表情とか手とかが写らないのが残念だけど、リックの最新の元気な姿が見られてうれしいw。お、上方に手元を撮っているプロ ジェクターがあるのに、よく見えないよ(涙 曲目は「いつもの」。 順不同だけど、1)ボウイのスペースオデッセイ(ground control to majour Tom~♪)とLife on Mars。チャリティー発売したシングルCDに入っているセット。聴きたかったからいいんだけど、原曲はメロトロン炸裂だった前者をピアノで弾くってどうなのと思ったら、案の定よくわからないアレンジでふんわりやさしいイージーリスニングになっていたw。元を知らないといい曲には思えないなあ。火星の生活はウォークマンに入れたので、あとで耳コピして自分でも弾きたい。時々音が抜けていたから万全とは言えない演奏だったかな。2)エリナーリグビーExtendedバージョン 曰く「プロコフィエフ風」のエリナーリグビーはとてもお気に入りのようで、事あるごとに弾いているけど(アダムとのセッションでも聴いたけどアダムが下手すぎ)、これもちょっと無理している感じがする。3)イエスメドレー(同士と不思議なお話を)同士の中間部がすごい。リックお得意の高速アルペジオ炸裂プレイ。こういうのを聴くとまだまだ衰えていないとも思うんだけど、やさしいところで音が抜けちゃうのは手抜きに聞こえてしまうよ。3本で20分弱の尺で、まあゲストなんだろうなという感じ。不鮮明だけど足元がサンダル履いているみたいに見えてちょっと気になる。糖尿病性の感染症とかになっていないといいけど。リックのSNSではよく「今日はスタインウェイを弾く」(おそらくフルコンサートグランドを指している)と書いているのを見かけるけど、Fazioli弾いているのは初めて聴く(一緒に移っている写真は見たことがある)。ただでさえも打鍵力が半端ないリックが、きらびやかな音が身上のFazioliを弾いたら、うるさすぎないだろうかと心配になる。過剰な装飾音はたっちをハンマー軽めに調整していないと弾きにくいと思うんだけど、 Fazioliはどうだったろうか。でもクラシックファンの傲慢を承知で書くと、ポップスに使うのはもったいないピアノなんだけどね。イエスの曲をリックが勝手に何度も人前で弾くことで、もちろんイエスに権利は発生しているだろうけど、イエスの曲の普及に貢献しているという事実。ソロピアノでも何度も弾いているようだから(レアらしくて高額で買えなかったけど、アルバムも2枚出していた)、そのうちイエスの看板が外れて独り歩きしてスタンダードナンバーとかになってくれるかもしれない。とくにwonderous storiesや the meetingはポップでいい曲だから、流行るといいのに。■21世紀のリック英文のWikiは彼の公式サイトと連動しているらしく、かなり詳細なバイオグラフィーが公開されている。「聴きたいことがあったらこれちゃんと読んでからにしてよね」って感じかも。Full Circle Tour 2002年7月~2003年10月35th Anniversary Tour 2004年4-9月2002~2004年 足掛け3年に2つの大きなツアー。これがリックのイエスでの最後の仕事になっている。もう12年も前か。2005年 カストロに招かれてキューバで公演し、チェゲバラの手袋をもらう。2006年 ジョン・アンダーソンとのツアー。→これはLiving Treeのことかな。2010年にもやっている。2008年 イエス40周年ツアーは、ハードスケジュールは無理とドクターストップがかかり、ここでオリバーを推薦する。FFHはこのあたりかな。2009年はRick Wakeman's Grumpy Old Picture Show, featuring an evening of music and stories from his careerでツアー。なるほど、MCと演奏のショウはこのころから定番化したのね。この年のイエスのツアーは断わっていて、翌年には大プロジェクトが控えている(ヘンリー)。たぶんこのころから体に負担のない仕事をするようにしたんだろう。2009年はヘンリー八世のハンプトンコート公演、ルガノのジャズフェスにも登場2010年 Classic Rock Roll of Honour Awardsを受賞2013年The Theory of Everything by Ayreon.で演奏 →これは知らない。ホーキングの映画?2014年~地底探検40周年記念国内ツアー(14日間)あとは半端ない量のメディアへの露出。視聴者がマスプロダクトやサービスにクレームつけて検証する番組にもレギュラーで出ていたらしい。私が見た Planet Rockはやっぱりラジオ番組のようだけど、ProgRockをリスペクトする若い人たちの番組にもひょうひょうとして登場するところが人気の秘密かも。2007年と2011~12年が抜けているな。こないだ見たスタジオライブは2011年じゃなかったっけ。■リックの健康問題(爆)リックはあれだけの図体をしていながら、20代から多くの健康不安を抱えていたようだ。その最たるものが20代に起きた3度の心臓発作(先の2回 は自覚症状なし)。これは過剰な飲酒・喫煙などの生活習慣に依るものだけど、この時代に彼はイエスでこわれもの、危機をレコーディングし、ソロでは文芸三部作とか、すごい量の「今につながる一生食える仕事」していたのも事実。若いころって次々いいアイデアが浮かんできて、寝なくても平気で、知らず知らずに体をいじめながら膨大な量の仕事をこなせる、みたいな時期って必ずある。リックのようにすべてが過剰な人は長生きできないのが通例だけど、余命宣告されたり死にかけたりしながらも、なんとか60台後半まで来られた。もうピアノが弾けなくなっても、昔話ばっかりでもいいから、あと10年くらいは人前に出てほしいものだ。彼はほかにも80年には練習のしすぎで手が関節リウマチと疑われたり(一大事じゃないか!)、85年には肝硬変になって断酒したり(Grumpy にあった「余命半年」はこれ)。肝臓はアルコール性もあるけど、A型とかじゃないのかな。最初の奥さんとの会話で「黄疸でてる」みたいなのがあった(インタビューだったかも)。80年代のイエスにリックの影がないのは、健康上の理由もあるのかもしれない。その後も99年に肺炎と肋膜炎(胸膜炎)で死にかけている。これはkeys to~の後だね。肺炎も肋膜炎も感染症だから、意外と易感染性体質なのかも。北ヨーロッパの人って、総じて体温高くて、冬でも半そでTシャツに短パンで東京の町を歩いていたりする。話していると確かに、対面しているだけで 熱が伝わってくることがあるw。そういう人たちが炎症で発熱した場合、どうやったら「熱がある」ってわかるんだろう。そもそも向こうには「平熱」って概念がないとも聴いている。自己申告の悪寒でしか判断しないのかな。リックはすでにやっている肺炎には気をつけてほしい。誤嚥性はまだ早くても間質性がやばい。とくにイギリスでは老人に抗生物質使わないみたいなので、一旦内臓機能が低下したら、まっしぐらだと思う。低栄養になっても日本みたいにIVHも胃ろうもしないみたいだから、食べられなくなってもたぶん終わり。看取りのシークエンスだったらそのほうが自然でいいけど、リックは今はちょっと太りすぎだけど、あんまり頑張ってダイエットしないほうがいい。リックは昔からがっしり体系で、痩せているというイメージは全然ないけど、少なくとも71年のイエス加入直後の10月のギグの映像と、76年暮れ のGoing for the oneレコーディングの頃は、お腹も出ておらず普通体系だった。その間にけっこうお腹がだぶついている時期はあったけどね。ライブではマントに隠れて見えなかったけど、腕とか意外なほど細くてキュンとしたものだ。90年代前半くらいまでは指も細くてきれいだった。指フェチ歴35年の自分が言うんだ から間違いない。しかし2003年ライブの映像でのリックはラメとビーズがびっしりついた重そうなコートを着ていたが、髪も長めだったこともあり、ニコ動では後ろ 姿が「巣鴨のおばちゃん」とか言われてたw。Mirror紙の2年前の健康インタビューでは、リックは「パンをカットして(糖質制限?)、夜6時以降は食べないで2ストーン落とした。目標は来年までに4ストーンおとすこと」とか話していて、ストーンとはどんな単位ぞやと調べたら、1ストーン6.35キロだった…あわわ。もう10キロ単位で増減しているということなのね。4ストーン=約25キロだよ。普通の女子なら半分なくなる量だ。いまSNSには野菜を収穫する様子やスープをつくるとかなんとか、涙ぐましい菜食の様子がつづられているけど、我慢がストレスになったら逆効果なんだけど。1月にボウイ追悼でBBCに出ていた彼は、顔はパンパンだし首回りもお腹もなかなか大変なことになっていた。これは4ストーン落とすどころか2ストーンさらに増強している感じだ。みため130キロオーバーだろう。もともと質量が大きいんだから、筋肉量維持するためにタンパク質はとってほしい。こわいのはロコモとフレイルとサルコペニアだからね。ハウさんは一時、自然食品の店を持っていたほど珍しく菜食が続いている人だけど、クリスやリックとは逆の意味で心配。体脂肪率1ケタ台の人って弱ったら余力がないからすぐダメになりそう。老人はちょっとメタボくらいが、病気になった時に体力温存できていいんだけどなあ。アランはストレスフリーなプライベートライフっぽいし、ジョンも好きなことだけやっているから、極端に太ったりしていなくて健康そう。もう一人欠けてしまったんだから、無理なツアーはしないで、たまに元気なことを発信してくれるだけでいい。1月G・フライ、ボウイ、2月にモーリ ス・ホワイト、そして3月キース。続いていてこわい。
2016.03.30
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■Rick in Lugano2009年6月2日のルガノジャズフェスでのリックのコンサートDVDを見る。おおお2004年のイエスのライブと同じ場所だ。フルオケ&コーラス付きの本格仕様だけど、ジャズフェス&野外だからなのか、オケ団員もTシャツと軽装。もしかしてDVDで見られるリックの最新映像かもしれない。まだこれだけやれるのならいいわ。いきなり始まるし、商品としてはなんの工夫もないDVDだけど、アングルと画質はいいわあ。鍵盤アップ真横から撮影しているので、どのくらい鍵盤を押しているかもよくわかる。手の甲の毛や毛穴までみえるクオリティに吹いた。リック様登場。いつもの黒のコートジャケットこそ、地紋入りの高級地で仕立てたものだけど、足元は白いスニーカー。この人、本当にTPOとか考えないよね。革靴履いたままゴルフしている写真もあったし。さすがに年をとってからシックにはなってきたけど、全体のスタイリングとか考えないんだろうなあ。曲の合間にペットボトルから水をごくごく。音はやっぱり圧倒的に圧の高いきらびやかな音。1曲目のアーサー組曲なんて、ほとんど弾きっぱなしのピアノ協奏曲だな。たいして汗をかいた様子もなく、体力半端ない。次いでヘンリーからと私の好きなgone but not forgetton、ビートルズ2曲メドレー、ホワイトロックからの1曲を挟んで、アーサーから魔術師。魔術師の例のラグタイム風はかなりゆっくり目でこのぐらいのテンポでなら私も弾ける…と思ったら2ターン目は早かった。あーやっぱりピアノだと少ししんどそうだな。まあイエスのライブでやっていたのはキーボード鍵盤だったからねえ。最後は地底探検。合間のMCで曲紹介するんだけど、「これは71年だったか72年に作曲して…あーまだみんな生まれる前だよねえ」とか相変わらずの軽口。そこがリックらしくていいけど。私のなかではオケをバックにしてフルコンがあると、それだけで「正装」モードなんだけど、ステージ上で水がぶのみって、ジャズでは普通なのかな。「ごめん、暑くて」と一応詫びていたけど。■Keys to Ascension(Live)やっとたどり着いたKeys to Ascension。1&2におまけDVD付きがあったので、それを購入。DVDは実はすでに手元にあったけど、リージョン1でPCでしか見られなかったので、クリスが曲解説をするモアおまけも気になったので、結局買ってしまう。でもCD4枚DVD1枚で3000円とか良心価格だわ。先にクリスの解説をざっと聞く。もう5人の声はすっかり聞き分けられるようになって、あの口ごもった感じのクリスの声は聞き取りにくいかと思ったら、多分ワールドワイドなファンのためにだろう、すごくゆっくり話してくれている(まあ、もともとこんな感じのしゃべり方だけど)。ディクテーションしやすいのはリックだけど、ダジャレが多くて中身がうすい。しかし、クリスがこれだけ長く昔話をするのは珍しい。でも聞いてみるとすでに知られた話が多い(笑)。96年というと、ユニオンツアーから5年か。みなさん(ジョン以外)間もなく50歳という壮年期のプレイですな。5年前と比べてもハウ以外、体積が増している。特にクリスとリック。リックもデコが後退してきて珍しく7:3分け。なんだかビジネスマンのようにも見える。そして普通の黒ジャケット。普段はTシャツのおっさんだから、これでも「衣装」なんだろう。あ、でもインの白シャツは開襟ぽい合わせになっていて(ダブル?)何気に凝ってる。ジョンの衣装がABWHやユニオン時の流れでさらにパワーアップしてたわ。レースが織り込んであるなかなか豪華なローブというかガウン。着物テイストで袖長し。デブ隠しの意味もあるかもね。この頃のジョンがいちばん太っている&髪が長い。こういうの着せて似合うロッカーはほかにいないw。ましてや白なんてをや。クリスはこの頃からもうすっかりスモック風のビッグシャツ。このブーツは70年代にニーハイで履いてたやつかもしれない。ルーズソックスよろしく、もうふくらはぎまでしか上がらない。足まで太ってくるって、やっぱり肉と酒だろうなあ。ハウさんは、頭髪の老化具合が悪化しているけど、お品のよろしいシンプルなスタンドカラーの白シャツ。学生みたい。あれ、リックの白シャツが途中で変わってる? ボタン止めただけ?ハウさんのシャツも変わっているように見える。あーやっぱり着替えてる。おんなじような白シャツにw。ハウのシャツは厚手で光沢もあってかなり高級そうな生地に見える。今回の衣装コンセプトは白と黒なのね。And you and Iからはジョンも中のシャツを着替えてた。どんだけおしゃれさんなのみんな。あ、衣装替えに見たのは、複数日のライブからセレクトしているからか。ジョンがまた最初の衣装に戻ってたんで、着替えているわけではなさそう。時間と言葉はアクースティックバージョン。ハウさんアコギ、リックも途中ピアノ音源。シンプルにするとフォークソングだったことがわかる。リックのピアノアレンジすごいな。リックのキーボード周りに楽譜やセットリストがいっぱい!楽器が自分の使い慣れたものでない可能性もあるけど、もういろいろ覚えきれなくなっているということか。ハウがピッコロギターみたいなちっちゃいので甲高い硬質な音出しているし、クリスのベースも見たことないわ。うっわーリックのキーボード、グラグラ動いて弾きにくそう。そしてなんだかジョンの声があんまり伸びない。海洋からの神の啓示のライブは初めて見る。このアルバムに批判的だったリックがすごくいい仕事してるのに驚いた。シンセの奇をてらった音じゃなくて、アコピの音でなかなかの超絶技巧プレイ。あ、でも中間部のシンセプレイ、音と映像が合ってないんですけど。音だけあとから差し替えたのだろうか。なぜ?Turn of the century、リックのピアノがうるさいんですけど。ラストのハウさんのアコギプレイにまでかぶせなくてもいいのに。スタジオ版のほうがいいわ。America、前奏のハウさん、ちょっと元気がない。サビのコーラスすごいなあ。クリスすごいなやっぱり。後半のインストはハウ爺ノリノリ。最後のリックの笑顔かわいいじゃないか。次、あれれクリスのOnwardがアコギで弾かれてる。いい曲だあ。シンプルな白シャツのハウさん観ていて、あっと気づいたことが。この頃の彼の顔の造形は、グレングールドに似てる…と思ってグールドの写真集を引っ張り出してみたけど、全然似ていなかったよ…なんだろう、造形ではなく醸し出す雰囲気が似ているんだろうか。恥ずかしすぎるほどインテリ顔が好きだけど、好きすぎると同じ顔に見えてしまうんだろうか。どっちも変人というところは当たっている。思えば、ハウの人生はブライアン・レインに操られっぱなしだな。ビルと同様、スキルの向上のための努力を惜しまない人なのに、ビルのように人生の将来設計まで考えて行動することができず、レインの口車に乗るかたちでエイジア→GTR→イエスを出たり入ったり。ドラマのあと、クリスとアランは「ハウはイエスを捨てた」と思っていて、ハウとダウンズは、「クリスとアランはページと組んで、僕らはイエスに取り残された」と思っていた。なんなのこの意思疎通のできなさは。気難しいから個性が強い面々とはすぐ衝突→脱退を繰り返しているような。ウェットンと本当のところ、どんな確執があったか知りたいところだけど、エイジアまでは自分の中に取り込めないわ。いくらハウがいるとはいえ。ブライアン・レインは70年代にリックのマネジメントもやっていて、リックの本にもBrian Deal-a-day Laneとして頻出する。どんだけ策士だったんだろう。リックはほっといても自分で仕事をつくれる人だけど、きっとハウの人づきあいの悪さのおかげで才能が放置されたままなのが放っておけなかったんだろうなあ。なにしろ8人イエスのときは、本番以外、一人で単独行動してたみたいだもんなあ。いやいややっている精神状態をget downするのに必死だったんだろう。■Glumpy old rock starその後えっと、リックの2冊目、あと少し。後半、どんどん下ネタになってきて下品すぎてあわわとなっていたところにいきなりポーランドとショパンの話になって(中身は例によってくだらない)、そのあとにやっと禁煙と断酒に成功した話がでてきた。若いころの鯨飲ぶりがうそのようだ。彼はベルリンの壁崩壊前の東側にも行っているんだな。ネットなんかない時代の東側は、南米同様怖かっただろう。今日3冊目(その後の話)が届いてパラ見したけど、もうすっかり実業家なのね。グリーンでクラブ握っている写真が複数あるし、ホワイトタイの正装とか、40年前に腰まで伸ばした金髪のロックプレイヤーだったなんて信じられない。ほかのメンバーでここまでソーシャルな活動している人っているんだろうか。ハウはギター一筋だろうし、アランはシアトルでヨット三昧?ジョンも音楽一筋。交友関係も含め、やっぱりリックの活動はいろいろと過剰だ。そしていろんな意味でリックにとってのイエスの歴史は2004年で終わったんだなと思うと、ちょっとさみしい。でもたくさんの名曲を残してくれて、幸せな時間を過ごさせてもらった(40年ぶりに再燃中)。もうツアーどころか、長時間のコンサートもやっていないみたいだけど、「またか」という内容で構わないから、時々は元気にピアノを弾く姿を見せてほしい。
2016.03.28
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なんかアップするのを忘れて、ジャック・ブルースの話が前後しちゃった。22日アップ分は24日より後に書いてたんだった。クープランのトッカータ、12小節弾けた(笑)。あの冒頭の連打は、15%くらい軽くペダル踏むといい感じ。あと指を上げる時にすこし奥に向かって力を抜くとか。基本的にはショパンのレチタティーヴォ装飾音弾く時と同じ。音源探していたらサンソン・フランソワのとんでもない演奏が出てきた。彼のラヴェル、ドビュッシーは子供の頃から聞いていたけど、当時はクープランの墓のおもしろさなんて理解できないから、初めて聴くのと同じかも。速いなかにニュアンスを出せるってすごいわ。プレリュード、速いなかに、え、ここで止める?っていう不思議な演奏で、これがフランスのエスプリというものかと(笑)。ペルルミュテールの演奏もWEBで聴いた。ラヴェル直弟子みたいな人だけど、晩年の演奏なのでちょっと苦しい。ソナチネを弾いたときの楽譜はペル爺校訂のもので、丁寧でよかったけどね。クープランの墓は昔、日本音楽コンクールのファイナルで弾かれた演奏がすごくて、誰が弾いたのか名前は忘れちゃったけど、見ているととても簡単そうに弾いていた。でも実際にはかなり手がしっかりした男性でないと難しい気がする。少なくともトッカータは右手1-2でオクターブつかめないと楽には弾けない。無理だ。リシッツァとかブニアティシヴィリとか、難曲ものともしない手の大きな女性ならいけるかもしれないけど、ニュアンスを出せる人たちじゃないしなあ。ユジャ・ワンも多分無理。モノラル音源のクープランとか聞いた直後に同じウォークマンに入れてたリックのピアノソロを聞くと、その圧倒的な音圧と音色の華やかさに驚かされる。元の音源のクオリティの差もあるけど、リックの弾くピアノ音が、クラシックで使うフルコンのアコピとはまた全然違う音なので、かなり調整されているんだと思う。調律の時点ではもちろんだけど、録音後もかなりいじっている気がする。でないとあんな、重いのにきらびやかな音は普通しないと思うわ。音圧というと伝わりにくいけど、リックの性格や人生同様、過剰なまでに「質量」を伴う音。ずっと聞いていると疲れる。なんか1音が「広い」んだよね。うまく言えないけど。その広さで高速で装飾音入れてくるから、面として重い。好きな人にはたまらないだろうし、私もそれが他の追随を許さない彼の演奏の特徴だと思うけど、もっと多彩なことができる人だと思うので、いつも同じパターンでアレンジするのはやめてくれ。あーなんか、ちょっと思ったのは、普段クラシックをあまり聞かない人たちが「ピアノの音、きれい~」と思う音なんだよなリックのピアノ。あと元から静かな音の少ない原曲に、装飾音入れすぎるのはやりすぎ。原曲の良さが損なわれる。あと無理やりな三度三連符のアルペジオとか。クラシカルアレンジを聞いていたら、いくつかの曲に拍子に合わせてドン・ドン・ドンと妙な振動音が入ってる。これ、リックの足踏み音じゃないかなあ。あの人、足でリズム取りながら弾くから、その音が拾われている。あるいはグルーヴしている膝が鍵盤下に当たってる音(笑)。なんかグールドの鼻歌を思い出してププッとか吹き出してしまった。技術さんにもなんともしがたかったのか。そういえば、ルドルフ・ゼルキンを生で聴いたときに、ペダルを踏む音がすごくうるさくてびっくりしたっけ。バンッとか上からたたきつけるように踏むんだよね。あれ、靴裏にフェルトでも張れば解決するのにと思った記憶が。あーでもいま聞き直したら、リックの振動音、どうやらピアノそのものから出ているな。なんだろう。ペダル踏んだ時にハンマーがずれてフレームの一部がどこかに障る音だろうか。打鍵の音でないのは確か。
2016.03.27
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自分のなかのイエスの歴史が75年で途切れていて、止まった(溜まった)歴史を反芻すること約1月半。ラビン時代は触れずにおくとして、全盛期メンバーを中心に大人買いを続け、音源でまだ聴いていないのはKeys to~だけとなった。実はツォンガスのライブを聴いていて、初めて聴くMind driveが気に入って、調べたらKeys to~に収録されていると知った。でも聴いたときに、冒頭ベースのbassoオスティナートはZepかもっと根クラのプログレっぽい(ELPにも似ている)と思っていたら、予想は当たっていて、バグルスイエスが崩壊した後にクリスとアランがペイジと組んだユニットで原型がつくられていたらしい。自分の音の記憶も案外信用できるかもとちょっと思った。30年前の埋もれた原曲を力技で録音しちゃったFly from~にも驚いたけど、こっちも15年は経っている。すごいな。バンドもさ、長く続きすぎるともう新しいものは生まれないから、昔捨てちゃった(つまり使えなかった)音源をなんとか再生して商品化しようと必死になるのかね。使い捨ての音楽業界で、数十年単位で時をさかのぼって曲が再生されると いうのもすごい話だな。メンデルスゾーンがバッハを再発見するようなものか? それとも生前は見向きもされなかったブルックナーの長い長い交響曲 が、70年くらい経って突然流行っちゃったようなもの?(ちがう)ZEPやELPが1日だけの再結成とかで盛り上げたのはニュースでも紹介されていたので、なんとなく覚えている。1日限りのプラチナチケットという付加価値で、何十年も演奏していなかった曲を衰えたテクニックで披露してもファンは許してくれる。まさに「元気な姿を見られてうれしい」状態だ からね。でもアルバムを出し続け、ツアーをし続けるバンドは粗末なものは見せられない。キースの残念な最期も、現役だった故の脳の誤作動なのかもしれない。そういえばクラシックの演奏家でうつで自死した人っているのかな。基本的にオーディエンスの期待より自分の研さんを優先するから、プレッシャーで鬱になる人って少ないような気がする。声とヴァイオリン奏者以外は結構死ぬまで現役で、指揮者やピアニストだと90歳台までステージに立ってた人も少なくない。第一、ピアノも弦も指揮者も、50すぎないと「円熟」とか言われない。かつて、80歳を越えたクラウディオ・アラウが、東京文化会館でのリサイタルのために楽屋入りするところを目撃したが、両側から支えられてやっとこさ歩いているヨロヨロの老人だった。それでもステージに登場すると90分のプログラムを弾いてのける。去年は車椅子に乗った、ほとんど即身仏みたいなイヴリー・ギトリスをラフォルジュルネの合間に目撃したけど、まあ彼は90過ぎてもヴァイオリン弾くなんてありえないことをしていて、もとより演奏自体がクラシック界では超異端なヘンタイさんだから、なんとなくあのままステージで事切れてもいい気はする。ギトリスは実は心はロックンローラーじゃないかと思ってる。彼に合わせられるピアニストはごく少数というのも目撃済で、何人もの才能豊かな若手ピアニストがステージで固まったのを知っている。あれさ、やっぱりグルーヴしないと合わせられないんだよ。グルーヴしていれば聞こえない音だって聞こえて来る。だからユジャ・ワンは偉かったね。彼女は衣装がロックンロールだから(パンツ見えそうな超ミニで難曲を弾く)、ギトリスとは交信できるに違いない。大体、クラシック界は70すぎないと巨匠と言われないけど、ロックンローラーはなあ、体力の消耗度が違うだろうし、ハウさんが老眼鏡かけるようになった(リックがかけているのも見たことある)ように、小さなピックを持ってこまかいリフを繰り出すのは限界がある(同様にヴァイオリン奏者も音楽家としての寿命が短い。難聴になるせいもあるけど)。アンプラグドじゃないというのも体に悪そうだ(電磁波とか聴力とかさ)。50過ぎまで新鮮なプレイができたら、それはそれで脅威だろう。それでも青春時代を共にし、現役であるだけでうれしいファンは、どうすればいいんだろうなあ。先日、WOWOWでジャック・ブルースのライブをやっていて、あれ、割と最近亡くなったよねと思ったら、1993年の映像で、彼の50歳記念ライブなのだった。そうなんだよ、ロックは50歳まで現役だったらたいしたもんだった。それがイエスは70に手が届こうとしている(ジョンはすでに超えている)。いろいろ家事をしながら片手間で見てたんだけど、ジャック・ブルースはピアノも弾くしウッドベースもたいしたもんだった。けっこうちゃんとした基 礎がある人に思える。ジンジャー・ベイカーも登場してかっこいい(しかしシンプルな)リズムを刻んでみせてくれていて、23年前ということを差し引いても、いいセッションにみえる。クリームはさすがにリアルタイムではなかったけど、ビートルズなんかと一緒に10~12歳くらいの自分の音楽的記憶に刷り込まれている。 Sunshine loveとかStrange blueとか、やっぱり歌ってた。あのサイケなジャケットで(たしかZepにも似たようなジャケットがあった)私はサイケと いうものを視覚でとらえていた気がする。LP、3枚くらい実家にあるわ。自分は黒っぽいリズムは苦手(「嫌い」とは違う「しみ込まない」という感じ)だけど、クリームはかなりブルースっぽかったかもしれない。歌は、意味もわからず耳コピしていたこともあるし、LPについていた歌詞カードを暗記したのもあるけど、意外と歌詞カードは当てにならないのだった。クラスメートにアメリカ人がいたりして8歳くらいから英語が好きだったから知らない単語は辞書を引きつつ、自己流で訳したりもして(たぶんデタラメ)、洋楽ばっかり歌ってた。ビートルズにはお世話になったし、ストーンズは聴きとりにくかった。変わり種はミシェル・ポルナレフ(フランス語)とジリオラ・チンクエッティ(イタリア語)の曲も歌ってたなー。愛の休日を歌う小学生…気持ち悪い。米国英語の口語表現、なんていうのも学校では教えてくれなかったけど、ロックから学んだ。もちろんスラングもね。ポールロジャースをヴォーカルに迎えてクイーンが来日したときTちゃんとさいたまアリーナまで行って、当時はロックとは無縁の生活を送っていたんだけど、初期の曲はみんな歌えた自分がいた。実はクイーンの初来日は生を聴いていて(ちょうどロックから離れる直前くらいだった)、ピアノ友達のYちゃんと、「ボヘミアンの前奏のピアノは絶対クロスハンドだよね」てなことを予想していたら、当たったのでうれしかった40年前の記憶。その前 年にワールドロックフェスティバルでジェフ・ベックを聴いたのが自分の意思で聴きに行った生のロックの初体験だったので、私の経験もなかなかのものだった。在京ではなかったから、それほど冒険もできず。でも野外フェスの経験は、後年F1にはまってサーキットめぐりをしていたときに、いろいろと役に立った。学校に行けば、ロック小僧のクラスメートがたくさんいて、何度か採譜を頼まれた。ハードロックは採譜が難しかったので、アンジーとかバラードっぽいのを中心に。フォークギターは少しは弾いてたけど、コードを書けないので、メロディーとベース音を書いて、そこに勝手に伴奏を載せてアレンジしたら「楽譜が黒くて(音が多くて)読めない」と言われたな。あの時、勢いにまかせて和声とコードの書き方をちゃんと勉強すればよかった。今になってラヴェルの属7和音で身もだえている自分。懐かしい思い出。あああ駄文終了。
2016.03.24
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■The other side of Rick Wakemanリックが最後にイエスで仕事をしてから1,2年後くらい(2005~2006年)に、小さなスタジオでヤマハの普通サイズのグランドピアノ1台き りで2時間のライブをしている映像。 しかし、35周年ライブから1、2年後なのに腹が出ているなあ。メタボを越えている。そして完全普段着。くたびれたTシャツ、膝の出たズボン、着古した感じのコートジャケットに薄汚れたスニーカー。外出着ですらないわ(笑)。ついでに髪もぼさぼさのまま。せめて櫛ぐらい入れろ!力抜きすぎ。ジャケ写に偽りあり。でも寝起きのままでもいい演奏(ファンは盲目)。MC長いなー。曲と曲の間に5分くらい、つまり1時間近く話してる。芸人リックの面目躍如だな。本当に饒舌。Grumpy~読んでいたら、酒量、たばこの量、車の所有台数、結婚の回数(笑)等、自分でも「なんでも過剰なんだ」と認めてた(それが好きだからというわけではなく、そうなってしまうらしい)。こういう人は得るものも失うものも常人には理解できないほど質量が巨大だよね。派手なツアーは丸抱え、離婚のたびに自分が出て行く形で移り住み、慰謝料・養育費も半端ない。一方で、好きで集めたクラシックカーをレンタルする会社をつくって成功したり、一時は好きなフットボー ルチームも持っていたらしい。このライブのMCでは、5歳でピアノを習い始めて最初に作曲(?)した曲とか(おまえはモーツァルトかと)、人生最悪のピアノは15歳くらいの時 結婚式で演奏するバイト先に合ったハンマーが一個しかないピアノだったとか(試し弾きの時の1音が偶然、音の出るキーだった)、イエスとの最初のセッションの思い出(Heart of sunrise製作秘話)とか、本にもあったとんでもない場所にあったリハーサル会場とか、コルグの仕事で来日中に遭遇した和式のトイレの話とか(日本語形態模写までしてみせる。ちゃんとLikkuとか言ってて似てるかも)、「嘘のようなホントの話」を延々と話し続ける。自分の恥ずかしい話だけでなく、息子や娘もネタにする。なんてたくましい。挙句の果てに、 オーディエンスに好きな音階を1音ずつ言ってもらって、6つ集めて即興作曲とか、おまえはシューマンか手品師かと。単に手前の音楽的能力を面白おかしく証明してみせているだけで、弾いてみせた曲は面白くもなんともない。Bloody hellすぎる。ああすっかり芸人(でもファンは盲目)。独り舞台のせいか、指のクローズアップが多くて、リックのピアニズムがよくわかる。キーボードの時は早いパッセージでは完全に指を寝かせて指の腹で弾いているけど、さすがにピアノではそれほど指を寝かせていない。でもやっぱり早いパッセージは指伸びてるなあ。あれだと親指くぐりはしんどいので、オクターブ以上の下降アルペジオでは肘が不自然に動く。あと黒鍵が多い時もなんだか肘が動くなあ。これはやっちゃだめって習わなかったのか(笑)。彼の選ぶ調性はC,G,D,Aとか白っぽいんだけど、もしかして黒鍵多用する調は苦手なんだろうか。なんか腕の力というより掌の力で弾いている気がする。あと、やっぱりピアノが小さく見える。だって膝が鍵盤下にぶつかりそうだよ。体が大きいと、体幹や肘をあまり動かさなくても、肩の移動だけで88鍵カバーできると思うんだけど、さすがにプロのクラシックピアニストのようには洗練された「無駄のない」動きではないのだった。それよりもキーボード要塞で立位でのプレイは複数キーボードを操作するためにいつも肘が伸び きっていたから、着座による正しい姿勢での演奏に慣れていないのかもとか、いろいろ妄想した。あと、指が伸びていると完全脱力はできないと思うんだけど、なんだか速弾きのパッセージはどうなっているのか速すぎてよくわからない(笑)。手はあまり大きくないと思っていたけど(少なくともクリス・スクワイアよりは小さそう)、おそらく自然脱力状態で8度、指も超長いわけではないか ら、12度は絶対つかめない。でも見ているとオクターブ以上はあまり使ってないな。後年太って、指も太くなっているようだけど、黒鍵と黒鍵の間に 挟まったりしないんだろうか。イエスの時はキーボード鍵盤なので、指を寝かせようが立てようが音に差しさわりはないけど、生ピアノで軽く速弾きしていてもリックの音はよく鳴る。もしリックが調律にまでこだわる人であれば、チューナーさんには「いちばんギラギラでたのむ!」とか粒が際立つチューンをオーダーしてそうだ。打鍵の際の圧力が高そうだから、軽く触れただけでもちゃんと音が鳴っているのはうらやましい。あとタッチした後すぐに元のポジションに戻る (指が上がる)。でないとあの速弾き装飾音は出せない。一応強弱も緩急もつけているけど、そこはそれ、クラシックほどの繊細さは見られない。そし てイエスの時から気づいていたけど、左はほとんどコードを抑えるだけ。もしかしたら木枯らしは弾けても革命は弾けないかもしれない(普通は逆)。 私としては楽譜もコードが書かれたメモも用意せず、10曲以上の曲をなんの準備もせず座ると同時に弾き始める「音楽的記録」のすごさに感心した。このライブではオリジナルとアレンジものをうまくミックスさせていて面白い。ボウイのLife on Marsは、最近の追悼シングルより完成度が低く、まだ完全に自分のものになっていない感じ。キャット・スティーブンスのMorning has brokenはフルで聴けてうれしい。これ楽譜欲しいなあ。イエスの曲も3曲弾いてくれて、これは先日見た映像ではメドレーで1曲として弾いていたけど、分けて弾いていた。And you and Iはオリジナルとは全く別個のイージーリスニング曲になっている。そういえばWonderous storyを一緒にレコーディングしたことがきっかけで、ジョンとはThe meetingでは本当に息が合ったというようなことを言っていた。ジョンとは仲良しだもんね。お互いいやな部分は目をつぶれるんだと思う(笑)。そして その端緒は、Grumpyにもわざわざ書いていたけど、最初の入院の時にジョンがお見舞いにきたからだ(妄想再発動中)。Wonderous storyの中間部のインスト部分はシンセのほうがかっこいい。お、The meetingの2ターン目で珍しく鍵盤位置探して止まりそうになっていた。ほとんどわからないくらいだけど。それでもリズムは崩れない。息子二人のリズム感に疑問を持ったと以前書いたが、リックのリズム感が人並み外れて優れているのかもしれない。ヘンリー八世は、珍しく全曲ハイライトをつなげたバージョン。これは聴きなれたオリジナルに比べても、ピアノならではのよさがあって遜色がない。 あとアーサーと地底探検からも少し。マーリンのピアノ版は速度を変えて二度弾きしていた。まだまだ指の小回りは衰えていないようだ。あのラグタイム風の早弾きは3+3+4+4だな。最後はビートルズの2曲で締め。これもWebで何度も聴いているけど、あのプロコフィエフ風のオスティナートは、原曲のチェロによるクラシカルなアルベルティバスとプロコのピアノソナタにある打楽器的作風から思いついたのかもしれない。行進曲風の連打音は、プロコというよりはショスタコみたいだが。最初に聴いたときは原曲となじまないような気がしていたけど、慣れたらこれはこれでいい曲に思える。リックのアレンジ力の高さを見せつ けられる作品だ。ヘルプもよもやこんなグダグダのイージーリスニングに仕立てられるとは、ジョンもポールも思わなかっただろう。ゆっくり弾かれると原曲の旋律がいかに少ない音符で出来ているかがわかりすぎる。原曲を知らない10代くらいの人たちが聴いたらどう思うんだろう。ソロDVDとしては、先に見た、ギタリスト/ベーシストとの2人ステージよりは楽しめた。ただMCでわからないところもあるので、また見なくちゃ。MC目的というのも本来の目的からは逸脱しているんだが、最近は芸人リックのファンなので。このぐらいの力の抜けたライブなら、イギリス行けば聴けるかなあ。彼が元気なうちに聴きに行きたい。■Fly from here経緯はいまだによく知らないのだけど、ホーン在籍時代の置き土産だった曲Fly from here(当時のホーンの心境だろうか)を、21世紀になってからベノワたんのヴォーカルで録り直すスタジオセッションのドキュメンタリーを見た。ジョンもリックもいないせいか、本当に番長はクリスなのだった。すごい存在感。だけどこの人は必要最小限のことしか言わないから、すっかりおっさんになったホーンがおずおずと尋ねる様子とか、なんだかパワーバランスが見えて来て面白かったわ。ジョンがいたら、仕切るのは彼だと思うし、リックがいると下手なジョークで脱線が続く。クリスだけが何を考えているのか(何も考えていないのかもしれないが)わからない鋭い眼光で指示を飛ばしている感じがした。でも仕事には遅れて来るし時間がかかるんだよね。変わったリーダー。なんかの古いライブ音源のプロデュース「をクリスが手掛けた時、ベースばかりがビンビンに響く音になっていたらしいけど、間が40年近く抜けている私には意外な感じがする。いまだに「クリスってそういう人だったの?」という思いがある。裏番長だから私が気づかなかっただけか。そしてセッションみていたら、古参の2人(ハウとアラン)はもう完全に「や、久しぶり。いっちょやりますか。そして早く終わらせましょうや。孫の相手せんといかんし」って感じのビジネスモードだし、ベノワは名プロデューサーと仕事ができることに舞い上がっているし、クリスだけがミキサールームで冷静に「30年前の曲をどう売るか」を考えているような気がする。あ、ダウンズもいたかな。覚えてないや。このアルバムに対するジョンの評価が面白かった。「ヴォーカルはいいね。でも曲は古くさくない?」事情を知っているからこそ言える懐深いお言葉でございます。古参2人はさ、この先新しいアルバムが出ることも、ジョンとリックが戻ることもないってわかっている感じだな。呼ばれれば仕事だからやってくるけど、もうプログレッシブなモチベーションはないというか新しいものを生み出す源泉が枯渇しているというか。「クラシックイエスのマスターピース、あんな演奏でよければ、体力の続く限りやりましょう。でもサポートつけてね。1時間以上のライブはやらんよ。それから 長いツアーももう御免こうむりたい」って思ってる。それから、この当時、一緒にツアーを回っていたはずのオリヴァー・ウェイクマンを引きずり降ろしたのはハウではないかという気がした。ハウは、アダムが1曲だけ参加したときのプレイを覚えていて、リックの息子たちを信用していない気がする。もともとリックとはステージ以外では共通の話題もなさそうだから、クロースな関係ではないしね。エイジアの仕事も暇になったダウンズがハウに泣きついた。そんでハウが強権発動(いつもあまり不平不満を言わないから、こういう時のわがままは通りやすいとみた)。おかげで、30年ぶりに「バグルス加入後イエス」みたいなのが出来上がった。ところで、今、バンドを引っ張っていってるのは誰なんだ? クリスがビリーに憑依でもしてるか?ハウは無形文化財級のギター職人だからフロントマンもリーダーもやらないだろうし、アランも人を引っ張っていくタイプじゃない。いないじゃないか!再現ツアーはアルバム4枚分のライブ映像を見たけど、お行儀のよい演奏、新ヴォーカルいいんじゃない?ぐらいの感想だった。Vo以外みんな70歳近いんだもんね。いいよもう。そして番長が一抜けしちゃったバンドには、年老いたドラマーと風が吹くと飛ばされそうなギタリストだけが残った。ジョンDも再就職先があるうちに次を探しておかないと、のちのち困ることになるだろう。イエスはどの時代のアルバムに夢中になったかで、求める音楽が違うんだろうな。Fly from hereもHeaven & Earthも、私は聴きやすかった。嫌いじゃないけど、イエスじゃなくてもいいという気がした。Dramaもいいアルバムだった。好きな曲がたくさんある。けど、これも私が求めるイエスではない。ラビン時代のイエスに至っては、絶対に認めたくないイエスだったりする。私のなかでは黄金期~全盛期の、つまり70年代のクラシックイエスがイエスなんだよなあ。それでも海洋地形学(リレイヤーまでは買ったが)で止まっていたのを、地形学がいいアルバムだったって気づいたし、なんとか究極まで受け入れた。Dramaもいいよね、イエスじゃなければ傑作だし。こういうファンは80~90年代のイエスにとっては迷惑だったのかもしれない。その頃を知らなくてよかったかも。これからは毎年毎年、あの人も逝ったかというニュースが舞い込むことになるだろう。私はその都度、懐かしい曲を聴きながらいい音楽をありがとうと 感謝して見送っていきたいと思う。
2016.03.23
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■Grumpy old rock starリックの2冊目の自伝は、“Say Yes”のその後ではなく、昔語りのうち、前著に入れられなかったこぼれ話集…と思っていたらかなり重複している。その話は知ってるよ、というエピソードが多かった(サルバドール・ダリをけり落とした話とか)。ああもう年寄りが同じ話を何度も繰り返す状態なのかも。1節が短いし、口語体でやさしいのですらすら読めるけど(知らない単語は無視して読んでも、前後関係でわかる)、リックの記憶力のすごさに舌を巻く。確か前著にも、はいはいしていた時期(1歳頃)に、前に進めず後ろに進んだ記憶があると書いていた。リックの変幻自在なアレンジ力と延々とピアノを弾き続けられる能力は、記憶力の良さによるところも多いのかも。日本人の礼儀正しいメンタリティと酒浸りの自分たちのデタラメさの対比とか、日本以上に未知の国、ブラジルでの怖い体験(ジャンボジェットに2人きり)とか、世界中を旅している中でのエピソードが多い。少なくともビビり度は限りなく低そうな体の大きいアーリア系がビビっているのは、「未知の国」がキーワードっぽい。もはや伝説の部類になっているカレーの話に1節割いてたのも笑った。カレーじゃなくてインド料理のフルコースだったわ(笑)。そしてジョンも持ってったことはもっと知られていい。家族写真なんかも多くて、リックのママとリックの5人の子供たち、みたいな写真があって、離婚後は前妻が子どもを引き取っていたと思うんだけど、定期的にこうして全員で会する機会をもっていたとしたら、なかなかの家族博愛主義者なんだな。おばあちゃんが孫のコンサートに招待されてきて、ピーター・セラーズに席を譲らなかった話とか、ほのぼのしていいわ~。地底探検のナレーションをしたデビッドへミングスが使った藤製のイス(エマニュエル夫人のあれ)に振り袖を羽織って座っている70年代中ごろの写真もあった。カラーでないのが残念だけど、これクリスと一緒に73年に日本で買ったんじゃないのか?で、この本はもうじき読み終わるので、昨日、ファミレスでごはん食べながらビルの自伝にとりかかった。…なんか、とりあえずイエス周りを拾い読みしているけど、難しいというよりわかりにくいなあ。大まかな流れはわかるんだけど、単語の使い方も独特だし、形式主語構文でだらだら続くと混乱する。彼の考えや感情を表現する単語にひねりを加えているので、読み取るのは大変。誤解したまま読み込みそう。リックの本が小学生向け(内容は18禁)だとしたら、ビルの本は大学生向けだ。英語圏の読者がインテリジェンスを感じるような本は、私にはハードルが高いわ。■モーリス・ラヴェルがおもしろすぎるクープラン時代の様式による追悼曲(と最近はいうらしい。通称「クープランの墓」)を弾いていたら、ギミックだらけであることに驚いた。この曲は「ソナチネ」の延長上にある曲で、もっと拡大された組曲形式になっているけど、プレリュード、メヌエット、トッカータは曲調もとてもソナチネに似ている。ソナチネは弾いたことがあって、最後のトッカータはグルーヴできるし、2楽章の長7とか未知の和音はおもしろかったし、楽しいかった。だからクープランも楽しく弾きたいものだけど、こっちのトッカータは全く弾ける気がしない。指がつりそう。自分の中で弾きたいテンポは決まっているので、その速さであの同音連打を軽く同じタッチで弾きとおすのはほぼ不可能だ。シューマンにもそうやってあきらめた曲が数曲ある。理想と現実のはざまでアマチュアはいろいろと大変なんである。いやでもトッカータ、プロでも本番で弾くのは怖いだろう。絶対。プレリュード、弾いていて楽しい。これも無窮動的な曲だからバッハ同様グルーヴできる。その前に暗譜しないと途中で止まるけど。形になってきたのはフォルラーヌとメヌエットだけど、この簡単な曲の中にさえ、左右の拍子感が違う、左右の調性も違う箇所があったり、途中からいつのまにか拍が変わっている、主題を解決しないまま次のテーマに入る、主題Aが全く性格の違う主題Bに突然かぶさってくるetc・・・とかあって忙しい。様式は古いし、技法的には別に目新しいことではなくて、バッハにもこの要素は全部あるんだけど、短い曲の中に全部詰め込まれている。こんな凝った曲だったっけ?アコースティックイエスの冒頭で、リックが弾くThe meetingの序奏のアルペジオ、三連符で降りて来るところとか、プレリュードに似ていると思う。あとフォルラーヌ、メヌエットとも装飾音だらけんなんだけど、リックの手癖とラヴェルのそれと激似だ。バッハにもあるけど、よりラヴェルに似ていると思う。間の200年はどうした!フォルラーヌ。和音進行がミラクル。この和音は絶対アナリーゼできないと思ったら、ちゃんと分析している人がいた(ジャズにも詳しい作曲の先生のようだ)。が、どれもが見たこともないようなヘンタイコードだった。そもそもコードで和音を感じる訓練はされていないので、五線譜使って解説してくれるのはうれしい。ラヴェルの属七和音の使い方は大好きなんだけど、それを左右違う調でやられると自分のソルフェージュ能力の限界を越える。感覚で弾ける曲なのにアナリーゼが難しいという罠(笑)。フォルラーヌの属七和音はたまらなく不安定で美しいと思うんだけど、そう感じられるのは20世紀以降の人間だと思う。どうしてこんな和声を思いつくのか不思議でならない。教会音楽から発展して多少の西欧の民族舞曲なんかが混じったとしても、19世紀までは安定していた音楽に、ジャズとか新大陸のリズムや音形が入ってきた。それをロシア人がやるとプロコやストラヴィンスキーだけど、フランス人がやるとラヴェルでありドビュッシーになる。バッハの構造美もいつも驚かされるけど(これは数学)、ラヴェルはもっと感覚的でエクスタシーがあるわ。メヌエットも中盤、属七しか出てこない。これをちゃんと声部がわかるように弾き分けるのは私にはしんどい。でも美しい。一生弾いていたい。幼少時からこういう響きに慣れていれば、ジャズとか簡単なのかなあ。クラシック漬けの生活だったのに、突然ロックに戻ってきたので、ちょっと整理。自分の嗜好がもともと「音の少ない・音の小さい音楽」にあるのは自明だから、あの時代、ロックにはまっていたのは我ながら信じられない。でも当時(小学~中学)はパープルもツェップも聴いてて(ハードロックは音がでかいのになんでだろ)、特にZepは1STからフィジカルグラフィティまでLPは全部持っていた。いちばん聴いてたのはストーンズだったけど、12歳くらいになったらプログレに転んだ。高校になったら結局クラシックに戻って行って、20歳くらいまではオペラを必死になって聴いて(スコア取り寄せたり時代背景調べたり、かなり勉強した)、在京オケの定期会員を3つぐらいかけもちして聴きまくった。その結果落ち着いた先が、オペラではなくリート、シンフォニーではなく室内楽だった。音が少ないのと音が小さいのとは違うから、ピアノはペトルーシュカやコンチェルトも聴くけど、本当はカスキとかシベリウスとか音が少なすぎてラジオでかかってたら放送事故みたいな曲が好きだ。行間を聞く、みたいな音楽。どうも少人数でやる音楽が好きなことも分かった。リートも長い間嵌っていて、昔のロックの名曲以外にもシューベルトの3大歌曲集(白鳥、水車、冬の旅)やシューマンの愛三部作(詩人、女の生涯、リーダークライス)の中の多くも、今も歌える。リートで言えば、シュワルツコップフやフィッシャー=ディースカウを生で聴けなかったのは心残りだけど、ペーター・シュライアーの引退公演は最前 列で滂沱の涙とともに聴いた。バッハの面白さを教えてくれたのは、グールドは別として、宗教曲に開眼させてくれたのはフィッシャー=ディースカウでありシュライアーだった。イエスの曲にはベースラインとバックが別に鳴っている中、後から(遠くから)ハウが関係のないアドリブ風のリフでギターをかぶせてくる曲があるけど(Heart of sunriseかな)、ああいうのが好きなのは、背景にあるクラシカルな要素を感じているのかも。室内楽に限って言えば、その中では音が多い(饒舌)な曲が好きだ。メンデルスゾーン、シューベルト、シューマンとブラームスのピアノ付きは鉄板。一時、毎年のように行っていた京都・奈良では、メンデルスゾーンの 3重奏曲、7重奏曲が旅のお供だった。おかげでかなり細部まで口コピできる(笑)。周囲では流行っては消えていく音楽に満ちていた。そういうのについていくのがしんどかっただけなのかもしれない。で、今年になって再びイエスに巡り合うまでは、寝室のCDプレーヤーには何年もの間、アルヴォ・ペルトの「鏡の中の鏡」がのっかっていて、寝しなに聴く音楽になっていた(彼が一昨年、高松宮殿下記念世界文化賞を受賞したと聴いても一緒に喜んでくれる友なんてもちろんいない)。音が少ないクラシックのなかでも格段に音が少なく、かつ音が小さい現代音楽。でもこれを聴いていて眠くなるかと思うと、あまりに音が小さくて聴きとろうとするあまり集中するので眠れなくなるのだった。そのまえはマイケル・ナイマンがやはり数年のっかったままだったから、ミニマリズムはそもそも性に合う。そんな寝室のCDプレーヤーには先週からリック・ウェイクマンの「ヘンリー八世と6人の妻」を飲み込んでいただいた。さぞやびっくりしていることだろう。ジャック・ブルースのお誕生日コンサート、こないだは途中から、ながらで見たので、頭から見直したら、冒頭いきなりバッハの無伴奏チェロだった。すげーびっくりした。楽器がしょぼいので音は悪いけど、弾けちゃうわけね。すごいわ。すとれ~んじぶる~とかサイケなことをやっていた人が、チェロでバッハを弾いたりウッドベースでジャズを弾いたり、ピアノ弾き語りというのは、「なあ、俺こんなこともできんだぜ、すげーだろ」という感じなのかな。グランドピアノの弾き語りとか聞いていると、リックのピアノの音が際立ってきれいなのがわかるわね。基礎にクラシックがあるジャズの人は往々にしてクラシックに戻っていくけど(ジャレットやコリアのバッハとか、山のようにあるよね。最近では小曽根真のフルオケとのガーシュインとか)、いまさらクラシックレーベルから出せるものを演奏しようとか思わず、リックみたいに自分流でアレンジしてくれたほうが、ファンとしてはうれしいかな。リックは手抜きのアレンジも多いけど、アコピの音もすごくきれいなのが最近わかってきた。もとからピアノで鍛えた人だから、コントロールできているのかもしれない。どんよりだなあ。天気。夜は予定があるけど、なんかインドカレーを食べに行きたくなってきた。リック!
2016.03.22
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■究極&3rdアルバムツアー2014 BD半端ない画質だなジョン・ディヴィソンの頑張りは評価する。70年代のアンダーソンを意識したようなフォークロア調の衣装と髪型。まるでフラワーチルドレンの申し子のごとく時を止めた青年(当時44歳)。声は若いころのジョンよりはるかにクリアで澄んでいる。好みの問題だけど、私はこの声も好きだ。高い音がきれいに伸びるのは年齢を考えたら脅威的。しかしダウンズ下手すぎ(そのせいかキーボードの音が目立たない)、ハウさん力抜きすぎ遊びすぎ、クリスさん出張りすぎ。ホワイトさんが一番安定しているかも。アホなキーボード奏者を除くベテラン3人は、もう寝てても弾ける大昔の曲を惰性で演奏しているだけで、若く(あくまで相対的な問題。物理的にはおっさん)みずみずしい歌声の新しいヴォーカリストが一人で頑張っている感じ。あとクリスのコーラスな。しかし噂には聞いていたけど、ダウンズは壊滅的に下手クソだな。音楽的なセンスに著しく欠けている。リズムもタイミングも悪いしあからさまに誰の耳にもわかるごまかしが目立つ。Awakenは特にひどくて、入りのタイミングすらつかめていない。こういう複雑な曲は理解すらできていないのかもしれない。A ventureの後半でジャズっぽいアドリブをやってみせていたけど、これも重くてのろくてアマチュアの演奏のようだ。さらに衣裳のセンスたるや、目も当てられないとはこのことか。ハウさんがなんとなく手抜きな感じがするのは、好敵手のリックがいないからか。プライベートでは水と油かもしれないけど、ステージにリックがいると燃えるタイプだもんね。ちょうど10年前の35周年ツアーでは「彼が戻ってきてうれしい」と心から語っていたのに、エイジア仲間だからとダウンズを引っ張り込まなくてもいいと思うんだ。もっと腕のいいキーボディストはわんさといるよ。ビリー・シャーウッドの演奏はまだ聞いたことがないけど、ついでにキーボードも変えてもらえないだろうか。あああノリのわるい善人。遅い。パペチュアルチェンジもなんだか四角四面で、楽譜通りやってます、みたいな感じ。なんで紙吹雪が舞うんだ?意味不明。この推進力のなさ、停滞感はさ、温泉街のすたれたボールルームのバンドみたいだよ。この面子で同年11月に危機&こわれものツアーで来日しているんだけど、旧来のイエスファンは本当に満足したのだろうか。それとも、もうご尊顔を拝するだけで満足なのか。何年か前、現代美術のインスタレーションで、養老院のスーパーヒーローたち、というのを見た。バットマン、スーパーマン、ワンダーウーマンらが年老いて、あの衣装のまま寝たきりになったり車いすに座っているものだった。衣裳も経年劣化し、破れたりしていた。こういう長く続きすぎたバンドもそういう運命だよね。昔からのファンはとにかく生きていていさえすれば満足。そのうちハウさんは車いすで登場、アランさんは手足が動かせなくなってロボット代理、とかになりそう。クリスは残念だったけど、最後まで元気で現役だった姿をファンに見せていたんだから見事な生涯だったと思う。■Live in Philadelphia 1979ちょっ、このライブすごい。音も映像も劣悪だけど、ノリノリの熱気と迫力が伝わってくる。映画として編集しまくりのYessongsより全然いい。50分と尺が短いのが残念だ・・こうしてブートに嵌っていくんだな。クリス・ウェルチが出てきて「イエスの全盛期の映像です」とイチオシ。まだ鉛筆みたいに細かったクリスはスワローテールのフロックコート、ハウさんは素肌にパイピングのあるショートジャケット(ハウのはだけた胸は初めて見るかも)。大きなギブソンかかえてピョンピョン飛ぶ飛ぶ!なんてかわいいんだ(35年前ならかっこいい!と言ってたけどね)。リックの白のサテン地にピンクの縫い取りのある妙にファンシーなショート丈のベストも初めて見る。しかもまさかのマッシュルームカット。この頃は70年代前半より痩せてみえる。2度の心臓発作をやって、酒量やたばこを控えてヘルシーになっているころだね。ジョンはギリシャ風のひらひら衣装だけど、品があって素敵。それよりラメ入りおばちゃんサンダル履いてたよ!ここはグラディエーターサンダルでしょ!トーマト発売直後のツアーだそうで、初めて聞くトーマトからの曲もあった。とにかくハウさんのキレッキレのアドリブがすごい。会場も終始大騒ぎで、おめーら演奏聞こえてないだろうってくらい興奮のるつぼ。のちの8人イエスでもやってた円形ステージという趣向も、この時が最初らしい。もおお最初のサイベリアンからしてハウが一人盛り上げ番長だ。飛ばすなあ。Starship trooperの長い長いコーダがハウとリックのジャム合戦で、リックがショルダーキーボードかかえてハウとジャムったりクリスに絡んだりするのも素敵。これは貴腐人の心をわしづかみだろう(笑)。肩掛けキーボード、確かに70年代からあったけど、リックが持ってるのは66鍵、1.2メートル、15キロとかありそう。私じゃ持つこともできないわ。あれ、リックが出張っている間、珍しくジョンがリックのキーボード要塞に入って鍵盤叩いてる。しかし、クリスほっそいなー。ハウさんもクリスも細くて足が長くてかっこいいなあ。70年代のロック女子は彫の深さと足の長さと金髪・長髪にあこがれたもんだ。そんなロックスターの造形だけをパクって主人公にした少女マンガとか山ほどあったなあ。この頃のライブを生で聞きたかったな。ラウンドアバウトのコーダがなかなか終わらないというのも初めて見る。そしてアランはいつものことだけど、この頃はクリスがほとんど映らない。やっぱりそうだよね。リアルタイムで聴いていた頃も、よもやクリスが番長で人事部長で後年、あんなに目立つジジイになるとか思っていなかったものね。一体いつごろからクリスがすごいってことになったんだろう。でもカメラが映さないだけで、実はいろんなアクションしているようだ。ジョンのマイクが天からぶら下がっているなんだこれ。・・・ここから1年もたたずにジョンとリックが抜けるんだな。なんか未来を知っていると見方も違ってくるな。
2016.03.21
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Grumpy old rock starおもしろすぎる。まだ3章しか読んでいないけど、悪意のない暴露ネタ満載だ。特に自分以外のメンバー全員がベジタリアンだった70年代イエスのツアー中、シェフがリックのためにターキーローストを作って、ハウ以外のメンバーがコソコソもらいに来る場面は最高。一緒にオーブンに載ってるポテトなんかの野菜をもらおうとするメンバーに「や、でも七面鳥の脂ついてるしだめでしょ」とか言って牽制(笑)。地底探検で来日したとき、フライト中に飛行機に積んである酒を全部呑みつくして、日系キャリアのお偉いさんがお詫びにとシャンパンをダースで届けて挨拶にきたときにはそのシャンパンはすでに全部空だったとか、メンバーが酔っ払って本場中におもらししたとか、酔っ払ってBBCに出演した話とか、どれだけ大酒のみだったか、自分の過去を面白おかしく描いてみせる。そういえば先に出した自伝でも、副科のクラリネットの試験の時にべろべろによっぱらって気を失ったエピソードがあったな。10代からうわばみのごとく酒を呑み続けて、肝臓じゃなくて心臓にくるあたりがリックらしい。まあ断酒に成功したからこそ言えるエピソードかも。後半には余命宣告された話とかもあるから楽しみ。しかしリックの音楽は彼の体格を象徴するかのように総じて大味だ。80年代以降、大量のアルバムをリリースしているけど(おそらく100枚以上ある)、評価は芳しくない。20代のころに作曲した「ヘンリー八世」「地底探検」「アーサー王」を手を変え品を変えただけで一生やっていけてる気がする。最近のリマスター版や編曲しなおしたヘンリーも聞いたけど、初出のインパクトはなかった。ほかにもアレンジものを中心に10枚くらい聞いたけど、私にはどれも同じに聞こえる。心地よいイージーリスニング、シンフォニックロック風の附帯音楽。調性もごく狭い範囲でしか展開しない。アレンジ力が半端ないから面白いんだけど、装飾音のつけ方はもうリックの手癖みたいなもので様式化されているし、演奏には丁寧さが感じられない。まあキーボードがメインのひとにデュナーミク求めちゃいけないんだけど。それでもなにか独特の魅力があるからファンを続けられる。それより人前でMC交えてパフォーマンスしているリックが楽しそうで好きだ。もうミスタッチがあろうが「いつものやつ」であろうが構わない。彼が人を笑わせ楽しませることが重要なのだ。よく指が回る芸人、というくくりでいいよ。芸術性はないもんな。いろいろラヴェル風とかラフマニノフ風とか言ってキラキラ星をアレンジして弾いてみせているのを聞いたけど、そのクラシカルな風味は残念ながらかなり希薄。そして左手はコードのみで右手の半分もパフォーマンスしない。ロックの名曲をピアノで弾いたりもするけど、イエスを離れたリックの仕事はロックではない。それよりちょっと発見があった。ショパンを弾くのに飽きてきたので久々にラヴェルに逃避してクープランの墓を弾いていたら、リックがイエスの曲で担当するソロのパートとよく似ていることに気が付いた。もちろんリックがラヴェルを取り入れているんだが。メロディーや和音が、というよりコード進行とかアルペジオの展開とか転調とか、フレームをうまく利用している気がする。これ、他にだれか指摘している人いないかな。どの曲のどの部分とか探すのが面倒だけど、パッセージの組み立てとか、半音階で崩れるように降りてくるところとか、かなり似ている。リックはバロックと古典派のフレームでアレンジすることが多いと思っていたのでちょっと意外。それともラヴェルはジャズの影響もあるから、ジャズには疎い私が気づかなかっただけかな。クープランは相変わらずリゴドンとトッカータは歯が立たない。プレリュードはいけそう。好きで弾いているのはフォルラーヌとメヌエットだなあ。でもラヴェルの和音は楽譜見ながら弾くのはかなりむずい。暗譜が苦手だとフレーズの形で覚えるしかないんだよなあ。
2016.03.20
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来客の予定がキャンセルになったので終日、自分の時間。ブラボー!さっそくツォンガスのライブをじっくり見る。ああ幸せ。そしてこれがこの全盛期メンバーの最後のパフォーマンスかと思うとさらにセンチメンタルな気分が上乗せされる。【衣装】・ジョンの襟と胸元に星と太陽のエンブレムが付いた黒ラメのジャケット。占星術かよ。でもこれは好き。巨大会場向きではないけどシック&ゴージャス。パンツの裾にも★マーク。後半は今に至るまでお気に入りのようでよく見かけるジャクソン・ポロック風のジャケット。・クリスの黒いロングジャケットも好き。この頃のクリスはまだ太もも付近も細いし、最晩年ほどには太っていない。シャツはパンツインでちゃんとベルトしているのも見える。インナーは濃いピンクのサテン地に黒の曲線模様のビッグシルエットのシャツ。うーむ…やっぱりお腹のラインは気になるかな。後半は淡いブルー系のぼかし柄っぽいビッグシルエットのシャツ。これもサテン系。昔から気づいていたけど、クリスと師匠は足が長いよね。年をとってもかっこよく見えるのは全体のバランスが変わらないからか。・師匠は妙なペイズリーとローラアシュレー小花柄ミックスのシャツ。ブランドかもしれんが既製品ぽい。じじ向けの抑えた色合いがナイス。ボタンは一番上のみ外している。後半、ニコ動で体操服と言われていたシンプルな白の丸首シャツで登場。でも実は袖周りとサイドに切り替えがあって和柄布と青色のカラーブロックになっていて、すごいおしゃれなシャツなのだった。・リック、どうしたリック。黒Tシャツの黒パンツ。お着替えなし。クリーニングが間に合わなかったか。でも実はリックはただのTシャツがいちばんにあう普通に見える。だってリックのまつ毛まで金色なところは日本人からもっとも遠いところにある遺伝子だから、さらにマントとかオンされると架空の人物みたいになっちゃう。それにしても76年当時は腕もまだ細かったけど、二の腕までたっぷり太くなったなあ。髪は肩にかかるやや長め。あ・・・おっぱい出てるわ。でぶ加速中(笑)。・アランはてかてかのナイロン製シャツ。汗かいたらしんどうそう。下はバミューダパンツに白靴下。なんか優等生。後半は細いボーダー柄のTシャツ。【セット】ロジャー・ディーンのセットは、大がかりで幻想的ではあるけれど、さすがに21世紀では色あせて見えるな。サーカスとかのショーみたいだ。リックの周辺は子供遊園地みたいでちゃちい。ステージセットはABWHのがよかった。でもビルじゃないとなあ。Going for the oneSweet dreams師匠が珍しくストラトを弾いている。ボディ赤でネックは黒。All good people師匠はいつものギブソン。Mind Driveかっこいいなあ。クリスのベース、リッケンじゃないベースだけどびんびん響く。Yours is no disgraceかなりゆっくり目のテンポではじまる。後半、師匠のソロではちゃんと次の展開に行くときにアランに合図を送っているのがわかる。ジョンはその間、ちっちゃなパーカッションを叩いていた。大好きなアコースティックのパート。リックが弾いてるミニグランド、クラヴィノーバかローランドのグランド仕様のデジピだと思うけど、リックが座るとすごく小さく見えるな。鍵盤上のパネル部分にはいっぱいボタンがついている風だったから、ピアノ鍵盤のシンセにもなるのかも。ジョンは黒のパーカーに着替えて登場。そうか、ジョンも無精ひげが似合うほどに大人(おっさん)になったんだな。ジョンの放浪癖や神秘的なものへの嗜好はそのうち自伝で読みたいけど、絶対脚色しそうだからなあ。ああ、リックが楽しそう。ジョンは足が下につかないので不安定。クリスは黒のタートルネックにでっかいストーンがたくさんついたペンダント。そしてなぜかサングラス。怖いよかっけーよ。クリスのアコースティックベースはなぜかプラグインしているけど、ピックアップはついてないんだよね。ボディの共鳴音を拾って音を増幅するタイプかな。アコースティックイエスは何度聞いてもいいなあ。CDではカットされていた合間のジョンのMCもほのぼのするわ。リックのソロでのMCは笑かそうとする意図ありありだけど、ジョンは自分のことしか話さない(笑)。リックのブルースピアノも珍しい。彼のパフォーマンスに対する世の評価の多くが「ブルース要素は皆無」というものだけど、自伝を読むと10代のころブルーノートに嵌っていたことが書かれていた。そして私もブルースはまったく理解できないので、よもやのドドンパだと思っていたという(恥)。そうか、この三連譜のノリがブルージーなんだね。アコースティックイエスを聞いて、もしかしたらこれはアレンジなのではなく、より原曲に近いのではという疑問が浮かんできた。プログレになる前の原石みたいな。ジョンがもってきた単音だけのシンプルなメロディーとハウのコードだけの段階みたいな。そこにクリスの不思議ベースラインとリックの分厚い和音とアランのドラム、そしてハーモニーが加わって初めて世に出せるイエスの曲になるんじゃないのか。ユニオンツアーのドキュメントで確かビルが、your is no disgraceの元は西部劇の主題歌だったみたいな話をしていたような。そういわれてみればあのイントロは確かに西部劇っぽいよね。Ritaulの映像は初めてみる。特に複雑なリズムではないけど、メインは5拍子。アランのドラムにジョンとクリスがパーカッションで合わせるところは圧巻だな。なんか全体にハウのアドリブが多いから、リックがいないとハウばっかり目立つんだな。やっぱりキーボードはリックでこそのイエスという気がする。それより、一時スニーカーばっかりだった足元ダサイエスだったけど、このコンサートでは革靴目立つわ。どうしたんだろう。21世紀はスニーカーじゃないと思ったんだろうか。500人くらいの小さな会場でアコースティックイエスを聞きたいなあ。
2016.03.19
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なんか今回の数十年ぶりのロック回帰は、70年代を走ってきた人たちの最期を見届けろとどっかから指令が着てるような気がするわ(笑)。60年代~70年代に輝いていた人たちが次々と鬼籍に入るのは時のさだめでもあるし、それを見送るのは残された者たちの義務だろう。そして次は自分たちだぞ、という。プログレの一番いい時期を経験し、その後はクラシックばかり聞いてきて、そりゃベームやグールドが逝ったときは泣きはらしたさ。特にグールドは聖域だったし。今やカラヤンもリヒテルもゼルキンもアラウも生を聞いている、結構骨董ファンになってしまった。最近ではアバドの逝去がショックだった。ああもうこの世代の番か、と。ユダヤシンジケートの人たちが逝ってもなんとも思わなかったけど、次はムーティの世代だな。でも考えたらポリーニやアルゲリッチ、ムーティらと60年代から頭角を現したロックンローラーは同じ世代なんだな。復帰した直後のキースの死でそれはより一層はっきりした。クリスの死を知ったのは半年以上経ってからだったから、まだ冷静でいられた(それでもイエスの脳内情報を更新するために20万ぐらい使ってしまった)。ELPの音源はまだ聴く気分になれない。イエスに比べて歌える曲が少ないというのも理由の一つだけど、あんな亡くなり方をされたら、不意打ちみたいで喪失感が半端ない。大豊作の44年組は今年72歳。イギリス人の平均寿命は日本人より数歳短いはずだから、寿命ですらあと10年弱というところか。さすがのミック・ジャガーももうステージを縦横無尽に走れはしないだろう。■Rick Wakeman in Hampton Court2009年Hampton Courtでのヘンリー8世在位(?)500年記念のリックのライブを鑑賞。36年ぶりに叶ったコンサートだそうである。オーケストラ、コーラス、バックバンドを従えた、なかなかに大掛かりな仕立てで、聴衆も半端ない。リックは90年代あたりからTVショーでも活躍している人気者だったらしいから、イエスを聞かない人も聴きにくるのだろうね。6人の妻のコスプレ姿(アルバムジャケ写と同じ)の女性や、ナレーションの男性(有名人?)も登場し、いつものリックのストーリー仕立てのコンサート。かなり書き直して(新たなテイクを加えて)アンサンブルに仕立てている。リックすごいよ。巨大なサンタクロースかと思った。なんだあの真っ赤なマント。お着替えも2回ほどやるし。でっぷりお腹の出た体にマントをはおると、倍ぐらいに膨らんで見えるよ。バンドでキーボードを担当していたのは、最初オリヴァーかと思ってて、アコギのお兄ちゃんをアダムだと勘違いしてたけど、実はキーボードがアダムだった。ギターは全然別人。この兄弟、どっちも髪が長くて遠目だと割と見分けがつかないな。オリヴァーのほうが目が小さくて端正で、アダムはちょっと顎が張っていて童顔なのかな。アダムですら、このときすでに30半ば。ウェルチの評伝のなかに、ロシア人の入国問題でスタンばってたアダムが燃える朝焼けだったかサイベリアンを弾かせてもらってハウにいじられるシーンがでてきてかわいかったな。ソロのパートでちょっと自由に弾いたらすかさず「そこは違うよ」って。そりゃ同僚の息子が遊びに来て「光栄にも参加させていただいた」みたいなもんだったろう。オリバーが参加したベノワの時も、リックには及ばないというような評価を読んだな。トレースですらそうなんだからなあ。そしてあの兄弟のリズム感が父より劣るのは私にもわかった。あ、youtubeでちょっとだけ見られた、ショルダーキーボードで2人でジャムるシーンは このコンサートだったか。何気にローランド大活躍。■another book一昨日は、注文していた洋書が2冊届いていた。一冊はリックの「Say Yes!」のその後の話(Grumpy old rock star)。ツイッター のIDにも使っているタイトルに成りきっているので、口調も軽やかでわかりやく、面白そうだけど信憑性やいかに。初めてみる写真も多くて楽しい一冊。もう一冊は、待望のビルの自伝。おおお~りっぱな装丁だがのどが開きにくい(笑)。フラットに開くと折丁がバラけてしまいそう。イエス時代の話は少なそうだけど、これはじっくり時間をかけて読みたい。3連休は1日しかオフがないけど、どれだけ読めるかチャレンジ。洋書を買うのも20年ぶりくらいかも。イギリス人記者が執筆したもう一冊のイエス本(翻訳)も入手。一応赤岩さんが監修しているようなので安心。これはストーリー仕立てではなく、時系列に沿って、メンバーを含む関係者のコメントを収集しただけのもの。コメント自体もかなり後から聞いたものが多く、本人の証言でも記憶違いなどはかなりありそう。昨日はいつもより早く帰宅できたので、風呂につかりながら読み始めて、危機のあたりまで読んだ。P・バンクスが2ちゃんで叩かれていたのは、この本が原因かな。バカな俺様野郎なんだけど、でもオリジナルメンバーだという自負は大きかったのね。さて、アルバムや曲について、各人のコメントを読まされてもなあという感じだし、内容もそれほど目新しい事実は今のところないけど、曲づくりについて、誰がどこをやったかとか、どうやって曲を構成していったかは貴重な証言だ。人間関係より曲作りに焦点を当てた本なのかもしれない。そしてやっぱりクリスは遅れるうえにいろいろ時間がかかり、ビルを苛つかせていた。ビルの記憶がクリアなのは相変わらずだな。あとオリジナル曲やイエスのなかでのソロでも大体想像はついていたけど、リックが大雑把なこともわかったわ。彼が十分いい出来だと思っても、ジョン、クリス、ハウがこだわってなかなか曲が完成しなかったらしい。ビルはキレるタイプだし、あんな複雑な音楽をつくる割には、イエスのなかで神経質なのはハウだけかも。ジョンはハナから気まぐれでぶっ飛んでいるしね。(3つしか知らないコードで曲をつくってみせて、他のメンバーがああだこうだと手をいれて「そう、これが僕の音楽だよ」となるらしい。そりゃたいへんだ。そういえばユニオンライブのドキュメントでも、ラビン始め複数の人間が「ジョンの気まぐれで…」と指摘してい たな。どんだけ自由人なんだ)ジョンの証言は、イエスの歴史を正当化するためにいろいろ粉飾していそうで(ラウンドアバウト作曲秘話とか)、信用できない気がする(笑)。クリスはやっぱりぼんやりさんで、発言の数自体も少ないし、ジョンとの初対面の記憶も「何とも思わなかった」とか言ってる。たぶん覚えていないんだと思う(笑)。えと、21世紀になってからの活動をちょっと整理しなくちゃ。2005年より活動休止。40周年は2008年に予定されていたけど、リックは翌年のハンプトンコート公演等、ソロが多忙を極めていたからイエスには参加できず、代わりに長男を差し出したんだな。結局、ジョンのキャンセルでツアーは延期、クリスの強権発動で無名のコピーバンドのヴォーカルをyoutubeで見つけてスカウトするという荒業にでる。そして使い捨て。このときのツアー延期について、「誰かやりたくない人がいた」というのは、リックがオーバーブッキングなのはみんなも了解しているだろうから、やっぱりジョンということになる。喘息とか言っているけど、前後にも自分の公演は精力的にやっていた。もうさ、いろいろ面倒になったんだろうね。 いつもいつも昔の曲ばかり期待されて。パフォーマンスは明らかに落ちているのもの自覚しているだろうから、彼は残されたパフォーマンスでもっと前に進みたかったんじゃないのかな。■クリスのソロアルバム海洋地形学の後ぐらいにクリスのソロが出て、それはリアルタイムで買った記憶がある。バンド活動もやってないし、演奏よりルックスに興味の矛先を持って行かれそうなお年頃だった割には、私の趣味は渋かったな。イエスのなかではハウ>ジョン>リック>ビルがお気に入りだったからクリスは欄外扱いだったんだけど、多分レビューがよかったのかもしれない。でも1、2度聴いただけで放っておいたような気がする。ちなみに、ジョンとハウのソロは出ていたことも知らなかった。当時も、今聴いても、このソロアルバムは歌がうまいとか曲がいいとかそれほど思えないんだけど、密林レビューはほとんど絶賛だ。ベース好きの人にとっては神に近いのかも。でも面白いことに、評価は「イエスっぽい」という人と「イエスとは全然違う」という人に分かれる。あとあのジャケ写は、当時お菓子作りにもはまっていたので、ロールケーキの仕上げで、パラレルに絞り出した複数のチョコレートラインを、竹串でヴァーティカルに横断するとできる模様だと思った記憶が(笑。振袖を羽織って歌ってたPVはこのソロアルバムの曲なんだな。あの着物は日本で買った本振袖だと思う。紫に吉祥紋だったからかなり格の高い柄だけど、サテン地のようにも見えるから、もともと舞台衣装とかそういう手のものかもしれない。腰のあたりにおはしょり様の切り替えがあったのは、丈が足りなくて別布を足したのか、長すぎて本当に端折っていたのかはわからない。買ったときからああだった、というのが一番ふにおちるな。向こうの人に着物の裾上げができるわけないしね。そして当然ながら裄はまったく足りてない(笑)。まあ長いよりは弾きやすいだろうけど、ステージで動き回るには袖が邪魔すぎるので、結局PVで着ただけだったのかな。何年か前にオークションに出品されたそうだ。リックとジョンが抜け、バグルズ風味も1枚で終わった時、誰もがイエス解散と言っていたんだな。でも、クリスの中では開店休業であって、イエスの財産(曲)とブランドを守りたかったんじゃないかなあ。もちろん出て行ったメンバーが戻ってくればいつでも門戸は開くつもりで。曲作りに貢献していたジョンとハウの痕跡のない、クリスとアラン風味のイエスはイエスじゃないから、他の名前を考えていたみたいだし(ラビンのイエスもイエスじゃないけどな)。いずれにしても残った者勝ち。ABWHが訴えられたのは当然で、ジョンが事を軽く考えすぎ。それが1982年頃かな。私は大学生だったが、このころはもう年に30回くらいクラシックのコンサートに出かける生活を送っていて、この年グレン・グールドが亡くなっているのでロックのロの字もなかったな。
2016.03.18
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■イエスの曲をソロでも!止まった時間を30年ほど進めて、主にリックが参加している期間をメインに聴いて、やっと現在のイエスにたどりついた。あとフォローしていないのは、キーズトゥのころだな。90年代中ごろのイエス。考えたらリックは70年代は途中、モラツの時代が抜けているけど10年間のうち6、7年在籍 し、あとは10年~12年に1回、2年くらいいる、というローテーションだな。マネージメントの不手際でツアーの連絡がこなかったなんていう、なんだか情けない理由でドロップした時期もあったみたいだけど、究極~トーマトでジョンとの結束を固くしてからは、基本は「ソロの仕事も忙しいけど、空いてたら参加するから声かけてね。でもジョンがいない行かないよ」っていう感じか。ソロでも多忙を極め、離婚だ結婚だと私生活も忙しいし、その合間に(経済的に厳しくなると)イエスに参加する、ということを繰り返してきた人だな。実際、パートタイム勤務みたいなものだから、イエスのアルバムの中に、リック名義の曲は驚くほど少ない(こわれもの、危機、究極、トーマトに少し。あとはABWH)。その版権さえも経済的な理由で手放したらしい。「暦」を見直していたら、この時代のPVにはほとんど参加していない(マドリガルのみ)リックが最後に登場し(コメントはユニオンツアーのときに録っているみたい)、セットリストを見ながら「これはおれがいない曲、これもいない、これも俺じゃないな・・・」と言いながら、びりびりと曲名を 破り捨てていくシーンがあって爆笑した。こういう受け狙いの映像も嫌がらずにやってくれるリックが好きだ。ハンガリーかどこかで、リックが一人で、しかもコルグのクロノス1台で50分らいソロをやっている映像を見たけど、ちゃんとイエスの曲をメドレーで15分くらい弾いていた。これ、2012年のライブだけど、宝物になりそう。なんだかうれしいなあ。なんだっけ、同志に始まって、不思議なお話を、ミーティング。組曲形式の同志が、なかなかいい感じの上質のイージーリスニングになっていた。そして、3曲がメロディーになっていて、最後にまた同志に戻って終わる。私のなかでは、もうリックとジョンはイエスに参加することはないと思っているので(あるとすればクリスのトリビュートかな)、多分に感傷的になっていることもあるけど、こうしてバンドを離れてからも、思い出深い曲をソロで演奏する、彼のサービス精神はありがたい(ジョンもそうだけどね)。何度けんか別れしようと、 歴史に刻まれる曲を残し、何度も一緒にツアーをしたバンドへの愛着はあるんだよね。イエスを知らない人には、知ってもらういい機会だし、リックが弾くのは自分が好きな曲だろうしね。 (ブラジルかどこかへ出かけた時のインタビューで、イエスのアルバムで好きなは?と聞かれて、当然だけど、こわれものと危機、そしてGoing for the oneを挙げていた。あら、awakenじゃないのね。)次の曲に移るときに、「えーっと、どうすんだっけ」とかつぶやきながら「ええっと、カプチーノのボタンはどれだ」とか言ったりしながらぽちぽち押して、音の設定に手間取っている様子も愛きょうがある。ちゃんと自分でやるところが偉いと思うのよね。そし てここでも「ヘンリー8世は6人の妻だけど、俺は4マリッジ5ワイフだ」と言って笑わせていた。もう鉄板の自虐ネタだな。子どもたちとのステージでも、オリバーとアダムはそれぞれ「妻は一人だよ。とうちゃん、ごめん」とか言われていたし。リックはどこでもどんな環境でも陽性で前向きなのがいいなあ。イギリス人には珍しいかも。そして、キーボード1台でもこれだけの演奏ができるなら、もうかつてのようなキーボード要塞は必要ないかも。日本でもスタインウェイ1台で東京フォーラムを埋めたらしいし、アコースティックでもキーボードでも1台あればいいなら、リックは安上がりに呼べて客がとれるアーティストだ。2011年に結婚した5人目の奥さんは25歳下だとゴシップ紙で報道されていたから、まだまだ女ざかりの妻を満足させるためにも、仕事は続けないといけないね。糖尿は生活習慣を見直せばいいから、ウォーキングして菜食だな。・・・皮算用をしてみる。東京フォーラムを@8000円で埋めると、それだけで4000万だ(満員ならね)。3割リックの取り分として、2回公演 で2400万(20万ドル)。悪くないんじゃないかな。まあ、実際には1回10万ドルどころか、2,3万ドルでも仕事しそうだけど。だからまた来てほしい。ポゴレリッチだって満員にできるんだから、リックのファンならもっといると思う。そうえいばイエスにはユダヤの陰が希薄だ。ハウはスペイン系らしいし、リックはぜったい北方系(もっといえばバイキング)だし、クリスもアングリカンチャーチで歌ってたんだから違う。可能性があるのは見た目的にもジョンだけど、神秘思想とか冥想とか言ってるから、信仰はなさそう。クラシックだと厳然としたユダヤシンジケートがかつてはあったんだけど、ロックにはないのだろうか。■35周年ライブWebで断片的には見ていたルガノでのライブ映像を見始めた。音源CD3枚ついてて、映像はメインのツォンガスに加えて追加収録された半野外ライブ。BDだと映像も音もクオリティが半端ない。ヨーロッパの古都によくある市庁舎前みたいな、古い建物に囲まれた広場のようなところに設営したス テージ。生憎の雨模様で傘の花が咲いていたけどイエスファンはくじけない。一発目からジョンが飛ばしてるし、みんなの衣装のセンスもなかなか。TV放映だとやっぱり力の入り方が違うのか。リックもジョンもこの年 (2004年)以降は、イエスとしては活動していないから、70年代全盛期のメンバーでの最後のツアーということになる。2004年だと、ジョンが還暦、あとはみんなまだ50代半ばか。まさに最後の働き盛りだね。クリスはまだ顔が面長だ。この後10年でムーンフェイスになっていく。セルフコピーバンドになった現在、ここで真正イエスの歴史を閉じてもよかったんだな。クリスも、「もう5年ごとでいいか。おまえら、それまで生きてろよ」って感じだったと思う。でも5年後は計画はされたけど、ジョンがキャンセルして実現しなかった。ジョンは誰よりも年上だし、もうフルステージ歌い切れる状態ではなかったと思う。リックとのデュオはキーボード1台だから歌えるけど、フル音響のバンドをバックに高い音を出すのはいくらなんでも無理っぽい。と、私のなかではそういうことになっていて、このライブは、全盛期イエスメンバーのラストを飾るにふさわしい、すばらしい演奏だと思う。理由その1 まず衣装。ジョンは途中で例のジャクソンポロック風のジャケットに着替えたけど、最初に着ていた細かいラメの入った黒のジャケットもシックでよかった。クリスがいつになくセンスがよく、黒地に襟やセンターベンツ、縫い合わせのところなんかに黒のアップリケ風の縫いとり(刺繍)をほどこしたロングコート。これ、 見たことがあるデザインだけどセンスがいい。そうだよ、こういうのが似合うんだよ。それともヨーロッパの大人の聴衆を意識した設定なのか。中は淡いピンクのサテンシャツで、すてきなコートジャケットはすぐに脱いでしまったようだったが(笑)。リックも堂々たる体躯にふさわしい、往年のマントを思わせるロングコートジャケットで、しかも蛇柄。12年前のユニオンツアーではまだ青年の面影を残した雰囲気があったけど、今回はさすがに髪は長くてもおっさんになっている。 師匠・・・ごめん、覚えてない。上3人の衣装が印象的すぎて。アラン…さらに覚えてない。曲については来週。■ユニオンライブ(CD)朝、出勤の支度をしながら30分ほどルガノのライブを見た後、ユニオンライブを聴きながら出勤。2枚組CDの2枚目はいきなりラビンのソロだっ た。…すごいよラビン。どうしようファンになりそう(爆)。音がクリアで濁らず、正確で速い。漲る疾走感とグルーヴ感!これだよこれ、ロックンロール!ってか。スルメのように味があるのは師匠の演奏だが、 これを聞かされてしまうと、師匠がいかにこのツアーがいやだったかわかるわ。目指す方向が全然違うから比べちゃいけないんだけど、若いロックンロール小僧なら誰でも夢中になるバカテクのラビン。イエスに来なくても引く手あまただったろうに。師匠…仕方ないよね。一回りくらい違うんだし。採れた畑(ジャンル)も違う。おそらく師匠はラビンの演奏、聞いてもいないと思うわ。バックステー ジで耳栓してたかも。師匠、ラビンのアンプのコードにつまづいた振りして抜いてもいいよ。でも目の覚めるようなソロを聴いて、私の中にあったラビンイエスとオリジナルイエスを隔てる大きな壁に亀裂が入ったのは確かだ。クリスは頓着しないし、時代を生き抜くためにこうするしかなかったのか。それすら80年代…遠い昔のことだけど。師匠のクラップを含むアコースティックソロはさ、アメリカ南部のタンブルウィードが転がる埃っぽい田舎町で、暇な老人が寄り集まってベンチで聴くような枯れっぷりだからね。ジャンル:スティーブ・ハウが確立していないと、イエスのライブですら違和感があるんだよ。本当はね。このライブではラビンカラーが強くでているから、むしろ師匠のソロのほうが浮いているという悲しさ。■ボウイの時代そもそも数十年ぶりにイエスに回帰したのは、ボウイの死がきっかけだったと、以前書いた。ボウイ→リック(おっ、元気じゃん)→イエス(えっ、ま だやってたの!)→クリス(えっ、死んじゃったの?)という流れだった。そして70年代前半に夢中になって聴いていた曲をまだ歌える自分がいた。 あとは怒涛の大人買いである。今月のカードの請求額は20万を越えたぜ(ふふふちょっと嬉しい)。ボウイの音楽自体は、私は特別ファンだったわけではなかったけれど、70年代のとんがった時代、独自のスタイルを持っていたボウイは常に注目の的だった。で、BBCが2013年に制作したドキュメンタリー「デヴィット・ボウイ 5つの時代」を真剣に見た。2008年ごろから聴衆の前から消えたとあ るから、もしかしたらこのころからがんを患っていたのかもしれない。そして癒しをもとめて、バリ島で暮らしていたのかもしれないね。リックがLife on Marsの曲としての出来の良さを解説していたのは、この映像だったか。「40年前だから・・・」と言いながらも、弾きながら、「この進行だと普通は次は こうくるけど、ボウイがつくったのはこうなんだ。そしてもっとすごいのは次の展開でさ…」とコード展開の尋常ならざる奇抜さを証明してくれてい た。ハンキードリーに収録されているオリジナルを聴いても、リックのピアノが結構長く聞こえていて意外だった。そしてボウイは「リックはピアノ パートを彼独自のメロディで飾った」と記録を残す。つまり作曲に加担している。なるほど。この時点(撮影は2012年あたり?)で、リックはLife on marsを全曲ピアノで弾きたおしている。だから追悼のときに素早く対応できたんだな。たしかにこの曲は、ボウイの曲とは信じられないくらいメロディアス で聴きやすい。リック効果かもしれない。ブライアン・イーノとの関係で、ボウイがロバート・フリップとも仕事していたのは知らなかった。まるで大学教授前とした完璧なスーツ姿のフリップ が出て来て、表情も上唇もほとんど動かさずに(でもほんのり薄笑いを浮かべて)話すんだよ!まさにEnglish gentlemanって感じで! なんだこの「ププッ」感。ビルがそんなフリップの話し方を真似してたよね。クリムゾンに入れてくれって押し掛けて行った 時のエピソードで「うん、それも悪くないんじゃない」ってフリップ特有の言い回しで返事されたって。(たしかユニオンツアーのドキュメンタリー映像)。これだこれこれ~と笑ってしまった。きっとスタジオ収録でスタイリストもメークもつけているに違いない。で、そんな恰好で最後にいうのがfour letter wordなので、大した狸なのだった。しかも「今の使える?言い直そうか」って、撮影クルーを手玉にとって楽しんでる。私にとってこのドキュメンタリーはリックとフリップを見るためのものだな。60年代末(つまりまだ10代)の頃から、スタジオミュージシャン として活動していたリックが、ストローブスの薄給に音をあげて、プロデューサーのところに行って、「またスタジオで仕事をしたい」と申し出たら、あっという間に半年先まで予定を入れてくれた」というエピソードがすごい。どれだけ重宝されていたかという証だよね。ロックンロールの世界には楽譜が読めてコードが書ける人材が不足していたのかもしれない。あと、商品化するに値する音作りに貢献するだけの力を備えた人材ね。ボウイとの関係はトニー・ヴィスコンティを通してだと言われている。リックはそれ以前に、70年にもボウイと仕事をしている。ボウイのドキュメンタリーにはトニー・ヴィスコンティも登場していて、なかなかのダンディでハンサムさん。幾多の名盤を世に送り出した名プロデューサーだよね。当然、ルキノ・ヴィスコンティに繋がる名門貴族の出自かと思ったら、アメリカ人じゃないか!そしてメリー・ホプキン(懐かしい)と結婚していたこと もあった。44年生まれは豊作だが、トニーも最初はミュージシャンとして頭角を現し、そのうちスタジオでアシスタントをしながら、グラムロックの 開花に手 をかすことになったんだな。Life on Marsのレコーディングは71年8月、と英文Wikiにある。リックがクリスからの夜中の電話を受けたのはいつだったんだろう。6月か7月じゃなかったかな。 確か、電話をもらう前に、ボウイからバンド参加を請われて「即決しないでいいから、少し考えてみて」と猶予をもらったんだよね。そうこうしている うちにクリスから夜中の電話→翌日、ブライアン・レーンとクリスから留守電に複数の伝言(とにかく一回話したい)→ジャック・ワイルドを餌にレーンの事務所に行ったらジョンとクリスがいた→そのまま売春宿の二階にあるスタジオでセッション突入→楽しくって帰りにハウのアッシーを願い出る→翌日もハウをピックアップという流れだよね。リックはイエスとの最初のセッションでは、誰も話しかけてこなかったと証言していた。何の説明もなく、でも音楽はどんどん出来上がってきて、こりゃすごいバンドかも、と掛け値なしに感じたんだと思う。「僕たちのバンドはこうなんだ」とか余計な説明をしなかったジョンの勝利だな。※ハウのアッシーの件は、「送ってくれる?」と言われた説と「送ると願い出た」説がある。どっちもリックの証言だけど。まあ方向が同じだからどっちでもいいけど、翌日の件に関してはハウが「明日は11時からだから、また拾ってくれる?」と言ったという方が、リックがぼんやり「イエスに入ったみたいだ」と思ったのと符合する。より正確に再現すると(もちろん妄想)ハウ「明日は11時からなんだ」リック「じゃあ拾ってあげるよ」ハウ 「よろしくね」という感じかな。私がもっていたボウイのレコードはRCA(オレンジ色のレーベル)だったと思うけど、リックが契約していたのはA&M(黄色)、イエスはアトランティック(赤と緑)。???謎が残る。キャット・スティーブンスは覚えていないけど、A&Mだったかなあ。これもシングルで持ってるんだよ。やっぱりPCに直結できるプレイヤーを買わないとだめかなあ。このときリックはまだ22歳くらいで、もう結婚していた。自立していたから、家庭を構えることができたんだよね。それにしてもなんでみんな、結婚が早いかな。ビルも20歳くらいで結婚していたし、ハウも長男は69年生まれだ(ハウ22歳)し、ジョンの長女も70年生まれだ。バンドマンなんて不安定な生活していても、早くに 家庭を持つのが当時のイギリスでは普通だったのか。
2016.03.15
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Yessongsは中学当時、毎日のように聴いていた。すでに3rd~危機の3枚は宝物になっていたので、ライブで聴く意味があるのかと思いつつ、リリース直後に手に入れた時はずっしりとした3枚組の重みと、すべて小口から出し入れできるスリーブ設計のジャケットに関心した。それまで3枚組のレコードなんてもってなかったので、ちょっとドキドキした。そして表面は地味目なのに、開くと見開きサイズのロジャー・ディーンの幻想的なイラストが2点掲載されていた。こわれもののデザインは、まだ今に至るディーンワールドにまで至っていない感じなので、あの宙に浮いた盆栽小島との初対面でもあったと思う。今だから白状するが、ロジャーディーンをパクッた作品を美術の時間に描いて、市の絵画展で展示されたことがあった。幻想画みたいなテーマで。水彩でマネしやすい絵だったし、当時はSFも好きだったから、あの世界はあこがれでもあった。恥ずかしい思い出。ついでにいうと、前がイエスのロゴ、後ろがストーンズのベロ出しのロゴのTシャツを自分で描いて染めたこともあった。40数年前の自分はいろいろ忙しかったんである。さて、それよりプロジェニー、ダイジェスト版を買ってしまったよ。YessongsはLPが実家にあるし、Webでも聴ける。映画のほうもリマスター版を買ったから、あんな枚数の日替わり収録セットは必要ないと思ったんだけどなあ。結局DVDの収録時間が短いこともあって、出来に満足できず、移動中に聴けるようにとCD2枚組のダイジェスト版に手を出してしまった。イヤホンで聞くと細部がわかって面白い。立ち位置ははっきりわかるけど、全体に音量のバランスは悪くて、ジョンの声よりクリスのファルセットのほうが目立つ部分も多い(本当にこの人は歌うのが好きだったんだな)し、一方でベースはあまり聞こえない。まあ40年以上まえの音源だから仕方がないけど。粗さがしするつもりはないけど、これはベストテイクを選んで収録しているわけではないのかな。2枚目のCDの危機の後半、リックのチャーチオルガンが響く間奏部分で、アランの合図が一瞬遅れたせいで、ハウのギターがリックのコードとわずかにズレたまま3小節ほど進行する部分がある。一呼吸にも満たないタイミングだけど、すごい気になる。リックとハウは物理的に離れているし、当時は イヤーモニターなんてないから、ハウはアランのドラムスの合図でリフに入っていくと思うんだよね。だからアランが修正しないとズレたまま。ここだけ気になった。私はステージ上でのアンサンブルの経験がないのでなんとも言えないけど、こういう3すくみ状態のときって、最初に誰がイニシアチブを握るか決めておけば、すくなくとも2小節目には気づいて修正可能だと思うんだよね。おそらくリックはアランの遅れに気づいて、オーディエンスのことを考えたら当然自分に合わせて修正してくると思っていたけど、アランはアランでハウが入ってきたからリックが気づいて修正してくると思っている。ハウは一旦アランの合図を確認したら、自分のなかでリズムを刻んでしまうのでリックの音なんて聞こえない。そんな感じで、結構私的には手に汗にぎる10数秒だった(笑)。アランはリックのソロでも控えめにリズム入れてくれていて、やさしくて(笑)センスある人だと思うけど、こういうこともあるのね。しかし、すべてのテイクで少なからずこうした瑕疵があるのだとしたら、やっぱり毎回完璧ではなかったことに逆に少しホッとする。だって今の演奏と比べるとさ。あと、スタジオ録音盤にはない音で、聞こえるか聞こえないかの音量でリックが実に細かくキーボードで彩りを添えているのがわかる。目立たないよう、でも確実に音に厚みを加えていて、イエスのハーモニーやメロディの美しさを引き立たせることに貢献していると思う。「俺が俺が」じゃなくてバンドに貢献できるのは、セッションミュージシャンとして一流だったからか。こういうことがアドリブでできるのがリックの最大の強みだ。ダウンズなんてみてても決まったパート以外は、一応鍵盤触っているふりはしているけど、なにもしないもんな。この頃のリックは、ソロパート以外でもちゃんと仕事をしていて、よもやカレーを食べる暇はなかっただろう。彼のソロを披露する部分は、毎回趣向を凝らしていたようで、映画版ではクリスマスのライブだったのでジングルベルを弾いて、その後、ヘンデルのメ サイヤ、プロジェニー版はサイレント映画の宛て弾きみたいな口語的な表情豊かなフレーズをみせ(同じことを30年後のアコースティックライブのリハーサルでやっていた)、その後、ハレルヤコーラスに繋げていた。まだアーサー王は出てないから、魔術師マリーンの華麗な指さばきのパートはな かったんだな。ダイジェスト版ではその後、ataccaでラウンドアバウト、一旦終わってgood nightと言ってから謎のジャズっぽいジャムセッションがはじまって、それがall good peopleに繋がっていく。この曲でのハウのアドリブが長いこと。もう好き放題。当時は当然だけど、ものすごく切れもあって多彩なフレーズをたくさん見せてくれていたんだな。これ聞くと、ハウは18年後のラビンのとんがったアドリブを責められない(笑)。キースが亡くなって、リックは「3大キーボーディストの最後の一人」みたいに言われているけど、リック自身は自分がロックのキーボーディストだと いう自覚はないかもしれない。ソロ活動では、ロックの楽器と共演はしているけど、中身は違う。うまく言えないけど、ロックテイストの付帯音楽(劇場音楽)だよね。ライブハウスで踊ったりする音楽ではない。劇音楽だったり式典のテーマ曲だったり、フィギュアの曲だったり、注文生産が基本。そんな、本来、徹底して裏方の作曲家兼プレイヤーなのに、本人が出たがりだから今のリックの名声がある(笑)。彼のオリジナル曲を聴いていてあれれと思っていたんだけど、彼はCdur、Gdur、Ddur、Adur、Fdurぐらい、つまり白鍵の多い調が多いよね。このぐらいの調なら、即興でもあの早引き広音域アルペジオが可能だし、コードだけ鳴らす左手は見なくても弾けると思った。それぐらいすら、イエスの他の奏者はできていないということだよね。モラツはわからないけど、少なくともトニー・ケイとジェフ・ダウンズは。実はリックがクラシックの名曲をアレンジして収めたアルバムを聴いたんだけど、みんな同じ調だった(笑)。「自分が弾きやすい調でしか弾かないよ。だって面倒なんだもん」というのが直球だったから、わかりやすい個性だなあと。私は高速広音域アルペジオは黒鍵が多くなるほどミスしやすくな るんだけど、リックもそうなんだろうか。息子たちとの共演ではちゃんと楽譜も使っているし、なんでもお手のものではあるけど、オリジナリティと演奏の激しさはキースにはかなわない。キースのソロは、電子楽器でなければ現代音楽そのものだし、ジョン・ケージ以降のミニマルミュージックに影響されているのがわかる。あとジャズね。リックはエンタテイメントのあらゆるジャンルを網羅しているけど、彼の基本はクラシカルなイージーリスニングだ。マドリガルとか5分でつくった曲だろうって感じがする。聴いているときはいい気分だけど、聴き終わった瞬間に忘れるわ。イエスに残されたリックのみがつくった曲ってほかにあるん だろうか。【追記】Classical Variations 聞き直した。10曲中7曲がG-durだった。あとC-dur、D-dur、g-moll。ほらね、白っぽい(笑)。平坦に聞こえる理由はこれか。転調も少なくてなかなかに退屈。弾いたことある曲もあるので知ってるけど原曲は違う調なんだよねえ。調整によるキャラクタ付けはしない人なんだな。きっと本人もbloody shitなアルバムだと思ってる。【追記2】アランの汚名を晴らさなくちゃ。プロジェニー2枚目の危機、チャーチオルガン後のズレはアランじゃなくてリックだった。リックの右手と左手がずれている! リックってリズムは完璧な人だからもしかしたら意図的にずらした(ポルタメント)可能性がある。とにかくアランホワイトは無実でした。【追記3】さらに聴き直したら間奏部のチャーチオルガンは2種類あって、先に登場する音量の軽いほうはリックが弾いていて(当時はメロトロンかも)、2回目のより壮大なパイプオルガンの音色は、どうもテープ(録音音源)っぽいことに気付いた。ズレていたのはこっちのほうなので、これは誰のせいでもなくて(もしかしたらonしたのはリックかもしれないけど)、テープの頭出しが悪かったということか。そうじゃないと、あのタイミングでアランとハウが気づかないはずはない。本来修正しなくちゃいけないオルガンは修正不可能だったんだな。なんでテープを使ったかも謎だけど、サイベリアンのラストのユニゾンと最後の終止も、なんかちょっと音源も聞こえてくるように聞こえる。
2016.03.14
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えええええ~88年のクリスはまだ細い。髪が短かったころで、強面にはなっているけど、まだまだ細身の衣装を着ていた。ということは、ユニオンツアーまでのわずか3年であんなに太って老けたのか? やっぱりABWHがショックでやけ食いでもしたかな。クリスがいつごろから巨大化していったか、オフィシャルPVで検証するという暇なことをしてみる。BigGeneratorからのシングルカットでは、Love will find awayは少なくとも3パターンのセットのつぎはぎで、シチュエーションも衣装も違う。みんなこの頃、苦労させられたんだろうね、PVのために。この頃のジョンはかわいそう。そしてクリスはオールバック+ヒゲで、ジャンルの違う怖いお兄さんになっている。髪は金髪。この頃から白髪が出てきて染めたと思われる。ヘアスタイルも含めたスタイリングはスタイリストさんの仕事だろうか。航空機をバックに格納庫で野営(意味不明)のシーンでは、ベージュのギャバジンのロングコート。これはとても身幅が広く見える。もしかしてお腹が出てる?スタジオ撮影ではテーラーカラーの黒のレザーコート。丈は膝上くらい。中も黒。これは痩せてみえる。もひとつ、黒白でテーラーカラーのマドラスチェックのジャケット(膝上丈)もある。うーん…70年代に比べれば、腰回りに肉がついているかんじだけど、まだ顔はたるんでいないし、おなかは…微妙だなあ。ベースで隠れてよくわからない。同じアルバムのrhythm of loveのPVはヘンテコすぎてみる気になれない。84年のドイツでのライブ映像では、マタギの上着みたいな、なんだかいろいろぶら下がった変なコートを着ていて、体型はわからない。でも背中を見ると身幅は確実に広がっている。2004年ルガノでのライブでは、おなかは出てきているけど、シャツはパンツインなんだよね。からだはすでに巨大化してる。顔もおじいさん顔で、このときまだ55歳だと思うんだけど、老けすぎだよクリス。水気がなくなって枯れてきた師匠とちがって、病的な肥満に見える。 それよりこのときジョンが着ているジャクソン・ポロック風の黒のジャケットは、去年のライブでも着ていた。ほかのライブでも見ているし、案外物持ちいいな、ジョン。80年代に散々ヘンな服着せられていたから、懲りたかな。おおお84年のツアーのバックステージドキュメンタリーがあった。ハウとリックのいないイエス。どうもラビン加入後のイエスは、レーベルの戦略としてラビンで若者を取り込もうとしていたようだ。だからプログレの看板を下ろしてわかりやすいロックンロールにして、バンド小僧も取り込むラビンのテクと歌って踊れるポップなメロディにギュンギュン風味を入れた。これはジョンでなくてもいいよね、やっぱり。ケイもいらない。当時すでに30代半ばだったが、健康的で出身がいろいろとイギリスにとってはカタルシスなラビンは、その精悍で愛嬌のある笑顔とバカテクで、アランが「女の子がラビンに夢中で」とか言ってたし、イエスの中では浮いているけど、売り上げには貢献した。PVも一番映っているのがラビンだし。それでも私の中では、ラビンイエスは別のイエスだな。カナダでのギグの様子だけど、ロンリーハートの大ヒットで、再び自家用ジェットにリムジンでお迎え生活。飛行機から降り立つところからというのは珍しい。リックが言ってた、アーメット・アーティガンが滑走路にマーチングバンドを送り込んだのはいつごろの話だったんだろう。さて、当然だがラビンとトニー・ケイがいる。ステージ衣装に着替えるまえの私服姿では、カットソー着たクリスがものすごいなで肩だった。これじゃジャケット着ないと、ベースのストラップが肩から落ちちゃうわ。コーカソイドの肩は張っていることがほとんどなので珍しい。そして、お腹は出ていない!腰に皮のステージ用ベルトを巻いているカットが見えたけど、まだでぶじゃなかった。でも顎がすこしたるんでいる。ここから7年で大変なことになるんだな。それにしてもトニー・ケイはなにげにおしゃれだ。ノミで掘ったみたいなシャープな顔面だけど、音楽家というより美術方面の人っぽい。ジャケットもシワひとつなくてぴんとしている。体も鍛えているっぽい。おそらくすんごいナルシストだから、たるんだ自分は我慢ならないんだろう。ラビンはランニングかジャケットの二者択一なのか。ジョンは相変わらずSFテイストの謎の服。広めの部屋の壁に沿ってケータリングのビュッフェが並んでいた。やっぱりこういう食事なんだな。ハウがいないから、もう菜食にはこだわらないのかな。終了後の楽屋にはビールの空き瓶が並んでいた。ダウンズのセンスはリックに輪をかけて最低。リックは柄もののセンスが悪いけど、ダウンズはそもそも自分に似合わないものを着ている。Into the lensのPVで真っ赤なジャケット着てボイスチェンジャー使ってたけど、あの色が自分のキャラクターカラーだと思っているんだろうか。そして演奏は遅れる。本当にへたくそ。トニー・ケイのほうがまだ、バックステージでもミニ鍵盤持ち歩いたりしている。ケイはきっと、リックとは違う種類のお祭り野郎なんだろうなあ。リックの冗談やいたずらは笑って許せる範囲だけど、ケイは度が過ぎるんだろう。ほかの人のインタビューにもからんでくるあたり、ウザそう。なにしろナルシストだからオレサマだし。それでハウに嫌われた。ハウがエイジアに逃げなければ、ケイの席はなかっただろうな。■以下は究極+こわれものツアーの印象耳で聞いていた時はそれほど感じなかったけど、映像で見るといろいろ粗が目立つ。歌うだけじゃないジョンDの頑張りには関心した。そりゃ、親の世代に囲まれて主役を担うようなもんだもんな。ストレスで潰れないといいけど。それにしてもジョンDは自分が生まれた当時(70年代前半)で時間を止めたような衣装だな。結構お気に入り。ハウ爺の桜柄のシャツは、このツアーで着ていたのか。絶対日本で手に入れているな。パラレルはこのテンポで歌われると、なんだかつまらない曲になるな。音も迫力がないわ。でもまあ、この会場はオペラハウスみたいだし、聴衆の反応を見ても、このぐらいが合っているかもしれない。アリーナとか野外だったらもっとテンポ上げるのかも。それにしてもジョンDのawaken、なかなかいい。ジョンAみたいに「自分で作った」わけでもなく、歌い慣れているわけでもないからこそ、とっても丁寧に心を籠めて歌っている。高音の伸びの美しさには、アンダーソンはまた違う魅力がある。これまで耳コピでは限界だった、呪文のように聞こえるところ(じぇんじぇんますたっち)、ジョンDの映像で初めてgentle strong mass touchだってわかった。どうしてもgentle strongがこれまでわからなかったんだよね。あとダウンズの下手さ加減も。音が違う、遅れる、音を飛ばす、テンポも悪い。年のせいで弾けないなら本当にご辞退ねがいたい。エンディングにむけてのチャーチオルガンがなるところのお粗末さに泣きたくなった。
2016.03.13
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ユニオンツアーのDVDを見る。ABWHからわずか1年半後かあ…。東西イエスがよもや合体するとは。会場がABWHのときの倍はありそうだから、ドラムスが二人いてもいいのか。音が多すぎる・・・。ジョンのコスチュームはABWHの時のアレンジ。リフォームなのか複数あるのかはわからないけど…あ、違うな。肩の金モールだけ流用で全然別のコスチュームだ。このデザインは、バブルのころに多くのホステスが着ていたスタイルだ(笑)。ラビンに合わせてか、ちょっとワイルドに胸をはだけさせてると思ったら、なななんとうっすら胸毛がある。ジョン・アンダーソンに胸毛…男だったんだなあ。クリスの変形ストライプのコートは、明らかに10年ぐらい前から来ていたやつのリフォームだとわかる。身幅が出てきたから、前合わせをやめてはおるだけにして、襟を黒の別布に付け替えて半袖にして、カットした襟と袖で袖の幅を出す大がかりな仕立て直しをしているな。裾にも襟と同じ黒の共布でブロッキングして丈を出している。お気に入りの柄だったんだな。ビルの福寿の縫い取りのあるカンフー衣装はABWHの時のまんま。師匠の袖口がゴム編になってるカラーブロック(ブルー基調で赤と蛍光グリーン)のサテンシャツもどっかで観たな。そしてトニー・ケイの存在理由がない。オーバーアクション鼻につくわあ。本厄、後厄の人がいっぱいいるぞ。い■yours is no disgraceだめだわやっぱり。ラビンやりすぎ。この人プログレじゃないし。師匠かわいそ。あのアドリブは別のジャンルだわ。師匠は調もはずれないし、ちゃんと曲調とリズムに合わせて繰り出すけど、ラビンは途中からヘビメタプレイヤーの自慢大会のようになっている。一人だけランニングシャツだし、イエスのもつイメージからは逸脱している。・・・でも師匠の速弾きは実はラビンには全然かなわない。猫背で大きなギブソンかかえて頑張っているが、世代の差は歴然。ラビンのネック弾き、フーみたい。ケイうざい。あと、ジョンの声が十分出ていない。1曲目からこのアドリブ合戦はきつい。でも場内を湧き立たせるには効果的ってわけか。■rhythm of loveおおおこの曲をライブで聴けるとは。師匠には関係のない曲だ…えっ、ラビンの曲かと思ったら、作詞作曲は全然別人。誰?知らない人だ。そうかあ…産業ロック。前奏のコーラスは音源か。ブラスみたいな音はトニーか。うるさい。おや、クリスとラビン、楽器持ち替えたけど、形がおソロだわ。クラシックイエスの音ではないから楽器も変えるわけだね。師匠、珍しくテレキャスもって、一応ぴょんぴょん飛んだりしてるけど、遅いよ(笑)。演りやくないだろうなあ。Bメロはラビンがヴォーカルだし。■Heart of the sunriseおおお前奏のギターのキメフレーズが3度進行している!ラビングッジョブ!珍しく序奏~間奏部分のクリスのベースが途中で2回ほど途切れる。どうしたクリス!ジョンの声が精彩を欠いている。楽器は1曲目と同じ。なんか、クリスはこの頃から急に老け込んだな。バグルスとやっていたころはまだかっこよかったけど、10年で白髪になって顎のしまりがなくなって、当時着ていたコートの前が締まらない。この間、途中でいろんな人とセッションもしていたみたいだけど、ストレス多かったんだろうか。ああ、リックが考えた印象的なキーボードのフレーズが2種類あるんだなあ。忘れない。■師匠ソロ clap師匠!clapの間奏にヴィバルディの四季(冬)入れてるわ。これ初めて聞いた。ソロアルバムではこういうの弾いているんだろうか。今アコギだけのソロアルバム取り寄せ中だけど、もうさ、500人くらいの小さいホールでソロリサイタルやっていけばいいと思うよ。ファンはついていくよきっと。■Owner of a lonely heartあれ、師匠がいない。ああそうか、90125には参加していないんだな。おおおリックがショルダーキーボードかかえて客席まで降りてきた。そしてクリスとジャムってるときに耳元でなにかささやいているぞ。おおおリックがクリスに攻め寄っていく。後ずさるクリス! このシーンだけでもこのDVD買ってよかった。歩き回るリックをステージで観られるなんて。」リックもこの曲は関係ないのに、偉いなあ。ビルがやたら嬉しそうに叩いているんだが、こういうビートの聞いたものはそれはそれで好きなのかも。■善人あ、リックが着替えた。ズボンまではき替えて、全身真っ白。師匠のシャツの色も違ってる。デザインは同じだけど、赤基調に黄色と蛍光グリーン。やっぱおしゃれ番長だな。リックかラビンの肩に手をかけてマラカス振ってるし。なにこのリラックス感。何度か場を白けさせるへんなサンプリング音はケイのせいらしい。おいっ(怒)。最初にジョンが、みんなで歌おう。キーはE(ホ長調)だよ、っていうんだが、これE-durなのか!いや、ジョン、その音で始まってないし!歌えないよ!そしてラビンが師匠に近づいて、ジョンを囲んでダブルコーラス。やな演出だなあ。ラビンのランニング=しまむらで390円師匠のシルクシャツ=オーダーで20万円ジョンの衣装=モールの果てまで無駄にシルクで50万ビルの上着=香港のモールで8000円アランのランニング=実はブランド物で2万円リックの白い上下=よく見ると袖口に金の歯周パイピングしていあるので10万円■ラビンのソロクリスがラビンが座るスツールを拭いてる。うまいよ。わかったから年寄りをいぢめるな(笑)■全然知らない曲だわ。結晶の曲か。アメリカの古いポップスのようだ。ラビンと二人で楽しそうだなジョン。スツールに座ったラビンとジョンの高さが同じだ(笑)。ラビンもクリスとリックほどではないにしろ、185以上あるなあ。途中でラビンのギターとスツールを取りに来た、上半身裸の超ロングヘアーのかっこいいローディーは、もしかしてまだティーネイジャーのオリバー・ウェイクマンなんじゃ?リックがにやにや笑ってるんですけど。きっと、「あいつ、わざわざ髪ほどいて出てきやがった。目立ちたがりやめ」とか思ってる。そりゃーおめーの息子だもん。■フィッシュ~テンパスフーギット~アメージンググレイスいつものゴリゴリベース。ベースの音をゴンゴン鳴らすのがいかに大変なのかは少しは分かる。中学の頃、アンプにつながず弾いていたから。でも、クリスの死がなければ、こんなにベースに注目することもなかった。ベースソロなんて前代未聞だし「つまんない」と思っていた。けど、いろいろなライブ映像を見ているうちに、毎回毎回工夫を凝らしているのがわかる。でもやっぱりしつこいよクリス。「つまらぬものを弾いてしまった」とポーズする姿は、おまえは石川五右衛門か。はっ、このコートは新撰組かとも言われているし、もしかして日本の侍を意識してますか?アメージング~でジョンが斉唱はじめちゃって、国家的儀式の開会式みたいになってるわ。■リックのソロトレバーが超速パッセージを弾いてリックにからむのはこれだったか。聞きなれた構成で、いつもよりちょっと短いバージョン。トレモロパッセージはいつになく速い。■awakenこの曲を歌う時のジョンは本当に神がかっているな。やっぱりこの頃までのイエスが私にとってのイエスだなあ。そういやこの曲でのクリスのトレードマークのトリプルネックベース、35周年あたりの本番前取材映像で、もともとリックが自分のコンサートで使っていたやつだけど、重いので、これは日本製だといっていた。調べたらKidSという国産クラフトメーカーで、今は廃業しているらしい。ブライアンメイのギターは出てたけど、クリスのトリプルネックはないなあ。あまりにもキワものなので、歴史に残したくないのかも。でもちゃんと鳴ってるよね。一番上のはショートフレットのベースらしい。あ、91年時点ではまだ日本製じゃない。あ、謎のタントラみたいなエンブレムがおりてきた。こういうとこに宗教色とかスピリチュアル要素もってくる演出はやだなあ。音楽だけで十分神秘的なのに。あああ~エンディング近くのインスト部分でジョンが謎の回転、謎のポーズ。怪しすぎる。そしてラビンの細かいスケール弾き、すごいなあ。練習というか拷問みたい。そんなフレーズ、ケイに弾かせろよ、どうせ暇なんだから。■roundaboutそしてアンコールのラウンダバウト。クリスがついにあのコートを脱いだ。黒の半袖Tシャツ。こっちのほうがかっこいい。後半、同じフレーズを何度もハモって次第に高揚していくところで、ジョンがいつもと違う抑揚をつけて歌ったら、師匠がちょっと顔をしかめて耳に手を当てて「それじゃハモれない」って顔してた。正直すぐる。すぐに応酬して、アコギのソロが入るところで、いつもと違うフレーズを入れていた。笑える。この頃は、師匠はまだ自分でギターを持ち替えてたな。ランドアバウトだけでも3,4回あるから大変だ。今日は朝からキースの死に衝撃を受け、ボウイの死を教えてくれたTちゃんに朝っぱらから電話した。で、午後からBDの修理にソニーのテクニシャンが来たので、その間、PCでリックが子どもたちと共演しているクリップを何本か見た。すごいのは4ウェイクマンズというのもあった(パパと2息子、娘)。二人で足りるのに。で、息子二人とも、指は回るけど、リズム感がわるい。パパリックは絶対に遅れたりしないのに、けっこう面倒なフレーズだともたついているところがある。あれれれ。やっぱり父は超えられないのか。
2016.03.12
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数十年ぶりにプログレリスナーに復帰したと思ったら、キース・エマーソンが拳銃自殺。なんてこった。メタボにもならず頑張っていたようだったのに。来月のビルボード東京、気づいた時にはソールドアウトだった。アナログレコードプレーヤーを買いなおして、実家からLPを送ってもらわなくてはならないかも。ジストニアとかガンとか、いろいろ患った挙句のうつ自殺かあ。ロビン・ウィリアムズと同じだな。あああ~プレイできなくなってもいいから、長生きしてほしかった。
2016.03.12
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ABWHのライブ、楽しいなあ。90年の日本公演、行ってるはずなんだけど、当時はクラシックどっぷりだったから、ほとんど覚えて いないんだよね。ビルがいると場が華やぐ(笑)。なんつうか、アイドルのようだ。カメラワークもいい。リックはすでに貫禄の不良中年(衣装のセンスがチンピラなんだよな)の様相を呈しているのに、同い年のビルは清潔感あふれる学究肌の青年然としている。あああどうしよう。こまれでリズムセクションにはほとんど関心を抱いていなかったのに、俄然興味がわいてきた。自伝原書、早く来い!それにしても、アランはどうしてあんなに影が薄いんだろう。8人イエスの映像でも音はちゃんと聞こえているんだけど、目立っていたのはビルだけで (そりゃあの要塞みたいなシステムだけでも目立つけど)、40年以上も在籍しているのに4年しかいなかったビルといまだに比較される。きっと死後に「悲劇のドラマー」とか伝説になりそう。主張がなさそうなのがいかんのだろうな。で、1989年のライブなので、当然出たばかりのアルバム「閃光」からの曲を演奏する。あの時代に合わせて、音作りはビルの派手なシモンズとリックの管楽器系の甲高い音を多様しているので、ちょっとシャカシャカピヤピヤ小うるさいんだけど、曲の構成は70年代のイエスなんだよね。イエスは奇数拍が好きで、昔の長い曲にはインストの部分とかに絶対偶数+奇数の組み合わせとか、シンプルな5拍子とかが入っている。閃光の中の私の好きな曲も3+4の7拍子があって、こういう仕掛けはもしかしたらビルのアイデアじゃないかと思った。(この部分は 主旋律は7なんだけど、ここで師匠は関係ないとばかりに6でリフをくりだしている。一見気づかないけど、明らかにヘンだよ師匠!これも ポリリズムなのか)。ビル在籍中に、ジョンは何度もビルに著作権の権利を主張しろと言っていたけど(クレジットの有無ということだろう)、ビルは取り合わなかった(そして後で後悔する)。合作の場合は、なにもメロディーや構造だけでなくて、拍への言及も立派な著作権につながるのかもしれない。取り分20%と25%じゃ大分違うよね。ABWHでは全員の合作ということになっている。(そうそう、驚いたことに海洋地形学の儀式の歌詞はヴァンゲリスだった!)ビルとリックが在籍していたこわれもの~危機の曲は変拍子が溢れていて、「ここで1拍落とせばかっこよくなるぜ。なあなあやろうぜ」とか考えるのは、絶対ビルだと思う。だってリックのソロアルバムでは、3拍子以外、ほとんど奇数拍とか変拍子は出てこない。リックは根っこがクラシックだから、ジャズのように構造までは崩せないんじゃないか。メロディと和音で変化をつける担当のリック(そのアレンジ力がまた半端ないんだけど)は、最初の出戻り以降、ジョンと組んでたくさんの曲を書いている。ジョンが核となるような断片を考え出して、それをリックが肉付け、アレンジしていくんだと思う。空中分解しちゃったパリセッションでも、2人で曲を書いていたといっているし、2010年ごろ、2人だけでコンサートしたり、なんだからぶらぶなんである。でもさ、リックのメロディーをジョンの声で聞くのは気持ちがいいし癒されるけど、印象には残らない(すぐ忘れる、というほうが正確か)。一方、変拍子やられちゃうとずっと記憶に残る。少なくとも私はね。だからこそ、45年にもなろうとしているのに、当時一番若くてやんちゃだったビルの偉業がいまだに引き合いにだされるのかもしれない。70年代、大掛かりなツアーをしていたときにも、ツアー自体が金くい虫なのでそんなに手元に残らなかったみたいだ。そりゃ自家用ジェットやベビー シッターの果てまでファーストクラスで、何十人ものローディーを連れての移動だから、想像はつく。だからこそキャパも重要で、スタジアムとかア リーナとか、数万人規模の会場でライブをやっていた。そんなのやだな私。肝心のアルバムの売り上げは徐々に陰りを見せる。当時はまだグッズビジネスも本格化していないと思うし。NHKホールで4000人、東京フォーラム5000人か。私が許容できるのここまでだな。だって73年当時は厚生年金とか渋谷公会堂でもやってたんでしょ。2000人規模の。まあ、はるばる極東までやってきてコンサートするのは本当に移動だけでも経費がかかると思うけどさ、私の数少ない過去の巨大会場でのロックコン サート(武道館、東京ドーム、さいたまスーパーアリーナ)の経験では、後ろのほうだと反響のせいで音が遅れて聞こえる。これ気持ち悪かった。【追記】リックのオリジナルも変拍子は多かったわ。ただし奇数拍ではなくて、4+4+4+2とか、フレーズの最後の拍をカットするやり方が多いかな。これを連続することでズレ感と無窮動な感じを出している。魔術師マリーンとかがそう。キャサリンハワードは聞いてたら5+5+5+4だった。ということはイエスのあの独特の奇数拍の使い方はビルだけでなくてリックも貢献しているかも。
2016.03.11
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76年のマウンテンスタジオ(モントレー)でのレコーディングセッションPt1,2を見る(2回目)。5人集まって延々とステージのセッティングや衣装について語っているシーンのスティーヴがめちゃくちゃかわいい。もう乙女にしかみえない。76年ころまでのハウは、ステージでギターもってないと、ただの引っ込み思案の少年のようにみえる。夢中だった当時も、ハウのはにかんだようなぎこちない笑顔にぞっこんだった。でも当時、ディラン・ハウはもう幼稚園だけどね。ああ、オリバー・ウェイクマンも同い年くらいか。子持ちにみえねえええ。Toamatの時のセッション(自由の翼)では、結構長く合わせた挙句、クリスが途中でやめてしまうシーンがある。「ベースが気に入らない」って。おいおい自分のパートだろうと思うが、要するに自分の演奏に納得できない様子。おそらくほかの3人(ジョンは見てるだけ)は「おいおいここまで来てやり直しかよ」って顔をしていて、リックなんかはすかさず「そんなことないよ、よかったよ」と肯定してみせる。やり直しには違いないけど、ここでまたクリスが納得するまで時間をかけるのはうんざり、という感じか。でもこの頃は、こういうこだわりがイエスのサウンドにつながっていた。この直後にはもうその結束はなくなってしまったわけだが。WEBのおかげで、彼らが10代のころのブート映像とかも簡単にみられる時代になって、休みの日はネット徘徊(もうサーフィンはできんよげほげほ)している。20歳ころのジョンは、7:3分けのエヴァリーブラザーズみたいだった。クリスはなりの大きい子供。顔ちっさ! そしてスティーブ。18歳頃の彼はまるきり少女だった(爆)。70年代もビジュアル的には一番乙女受けしていたけど、あんなにはにかみやさんでどうするの!って感じで、40数年後の姿とのギャップに悩む。特に私は、ABWHからも四半世紀は間が空いているからなあ。まあ、クリスにはもっと驚いたけど。そうそう、初めてASIAのPVも見たけど、インディ・ジョーンズをパクッた映像に吹いた。ここでもまだハウは初々しい。30半ばくらいの時だろうね。何度も書いているような気がするけど、ハウは歯を治療して、顔のイボを取ってウィグつければ、肌はまだつるつるなんだからかなり昔の面影を取り戻せると思うんだよね。がんばれハウ爺さん!ところでリックは体の割には手はそんなに大きくないよね。クラシックのピアニストにはもっと大きな人はザラにいる。けど、ショウビジネスの世界なら別に10度以上つかめなくても問題ない。左手が右と同じように高速スケール弾けなくても問題ない。リックの指さばきで感心するのは、ごく自然にモルデント(非クラシックの世界ではなんていうんだろう)が入れられるところ。あれ、考えないで自然でやっているようにみえる。そして指先がきれい。指そのものも節が出ていなくて、いかにも「鍵盤しか叩いたことありません」みたいなきれいさなんだけど、さらに爪が大きくて形がいい! ちゃんと切っていても爪の長さはたぶん私の1節分くらいありそう。つま先はラウンドかと思ったら、割とスクエアに近い。手を鍵盤と並行に寝かせて、指の腹で弾いている。これを見ると指先は結構扁平っぽい。イエスの音源や動画は一通り手に入れて、やれやれこれで収まるかと思いきや、今度はウェイクマンのコレクションに走ってしまった。ちゃんとクラシックを弾いている音源や映像もあるし、目で見るヘンリー八世とか、ぜったい欲しいわ!というわけで、まだまだ止まらない散在。困った・・・。クリス・ウェルチの評伝は読み終わって2回目。いろいろ勘違いしていて、「この世界にいるべき人間じゃない」と言ったのはジョンで、対象はリックとスティーブだった。リックはわかるとして、スティーブはどの世界の人間だと思ったんだろう。あと、黄金期メンバーが5人で10人分になる、と言ったのはリック。ユニオンのころ、「イエスは21世紀になっても生き残る。ニューヨークフィルハーモニーのようにね」とも言っていた。記者会見で、「もう戻らないって前に言ったのになんで?」と質問されて「男でも女性の部分があって、それが発動したんだよ。心変わりしたんだ」とか言ってのけてた。さすがリック。2003年には「自分は最期を見届ける」とも。今のイエスはセルフコピーバンドだから、新作ができるとは思えないものね。それにリックはジョンがいないイエスとは仕事しないと思うんだ。だからリックはちゃんと2004年までお勤めして、黄金期のメンバーの最期を見届けたことになる。ごくろうさま。ジョンもね。そしてクリス、お疲れさま。
2016.03.09
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今日は半休とって税務署で確定申告。移動中と待ち時間の間にイエスのドラマを聞く。えーっと、まず整理。究極、トーマトまでが黄金期メンバー。そして70年代。トーマトの後、ジョンとリックがドロップ、クリスはバグルスを取り込んでドラマを作る。それが1980年。ジョンの声が聴けない初のイエスアルバム。このドラマ、あまり評価されていないけど、私にはおもしろかった。トーマトは繰り返し聞こうと思わないけど、ドラマは新鮮。イエスからジョンとリックというメロディー担当を引くと、ここまでギュンギュンのロックになるのかと驚いた。クリスとハウはほとんどへヴィメタルのノリで楽しんでいる。トレヴァー・ホーンのヴォーカルはジョンのようなやわらかさはないけど、高めでシャープ。嫌いな声ではない。で、マシーンメサイアとかテンパスフジット、into the lenzは、かつてのイエスのような、異なる断片のドラマチックな合体に思える。変拍子っぽいリズムがあり、ドキドキのベースラインとギュンギュンのギターがかっこいい。でもこの音にジョンの声が乗るかというと、ちょっと違う。もしかしたらクリスとハウは、ジョンがいるとできないことを、このアルバムでやっているのかもしれない。で、次のアルバム制作が難航するうちにハウが脱退。ダウンズを連れてエイジアを結成する。どうやらイエスのマネージャーでもあったブライアン・レーンが暗躍したらしい。その次がいよいよトレヴァー・ラビンのロンリー・ハートになるわけだな。トレヴァー・ラヴィンのいるイエスは、明らかに私の知っているイエスではない。クリスもアランもいるのに、たったひとりのマルチミュージシャンによって、こうまでサウンドって代わってしまうものなのか。ロンリ―ハート(90125)は当初、ジョン抜きで制作しようとしたけど、結局呼び戻して、ヴォーカルが2人になった。映像だと、トレバ―が歌っている時のジョンの所在無げな様子が涙を誘うわ。ジョンってたまにギター持っているけど、明らかにおもちゃ扱いで、最後まで弾かないよね。そして漂う産業ロック臭。まあ、そのおかげで、誰もが知っているビッグヒットを生み出すことになったわけだが、私は、ロンリ―ハートが流行っていた当時、それがイエスの曲だとは俄かには信じられなかった。イエスじゃなくてもヒットしたと思うわ。そしてあの痛々しいPVが作られる。当時、なんだか日に焼けてチャラくなったジョン・アンダーソンのPVを見て、「お前らヤンキ―に魂売ったな」と思ったのを覚えている。少なくとも私の知っているイエスではもうなくなったのだなと。実際に、成功したイギリス人ミュージシャンの多くは、税金逃れのために海外に拠点を移すのが倣いだったので、イエスですら西海岸の毒にやられてしまうんだなとか思って、ちょっと悲しかったのを覚えている。20125の中では、私はトリッキーなアカペラのLeave itが割と好きかも。PVは噴飯ものだったけど、これはトレヴァーとジョン、2人で歌っている。楽しそうだなジョン(笑)。こういうのはやったよなあ。死んじゃったロバート・パーマーとか、ブライアン・フェリーとか、スタイリッシュなやつ。当時の映画でもで、みんながみんなアルマーニのダブルのスーツを着ていた(笑)。体幹が薄い日本人には見事に似合わないビッグシルエットだった。とか昔を思い出していたら、ABWHのDVDでハウ師匠が全く似合わないクリーム色にストライプのビッグシルエットスーツでギターを弾いていた。このDVD、ジョンの服装も宝塚だし、リックはチンピラだし、ビルを見るためのDVDだ。かなり上段にしつらえられたプログラミングされたシモンズを腰を左右に振りながら軽快にはじく姿がかっこいいよ。イエス=ロンリーハートだと知って、シカゴ=Hard to say I'm sorryで腰を抜かしかけたのと同じくらい驚いた。2曲とも同じころだよね。これが産業ロックなのかしら。シカゴは長い夜と日曜の公園が鉄板で好きだったけど、アルバムは5枚くらいもっていたな。かわいかったロバート・ラムはどんな爺さんになっているこ とか。・・・およよ調べてみたらテリー・キャス死亡、ピーター・セテラ脱退で、ボビー・ラムしか残っていないのだった(ごめんよブラスセクションは名前は覚えているけど印象薄い)(画像検索中)うわっはあ~ボビーラム若いじゃないか! 老人萌え。ハウ爺見習えよ。
2016.03.07
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本人たちのコメント入りのビデオクリップ集「暦」を見た。・・・やっぱり、誰が見たってこの時代は封印したいだろ。特にPV関連は。映像処理も噴飯ものだし当時の衣装は恥ずかしすぎる。ジョンがドワーフみたいに見えるし、頭が薄くなりはじめたアランにCCBみたいな恰好させて、かわいそすぎる。クリスもSFに登場する戦闘員みたいだぞ。衣裳が異常。PVの演出も当時の流行とはいえ、まったくイエスらしくなくて、もうどうでもいい。見たくない。マドリガルのリックとかどんな道化かと(18世紀宮廷風。モーツァルトのつもり?)。音作りも、バグルズといいマルチタレント並みのラヴィンといい、これまでのイエスを愛する私にはやっぱり到底受け入れられるものではなかった。確かにアルバムのなかに1,2曲はいい曲もある。クリスは楽しそうにゴリゴリやってるし。師匠以上のフレーズを難なく繰り出すレヴィンのマルチっぷりはよくわかったけど、私はまだ彼の果たした役割を十分理解できていない。なんだかんだで彼も10年以上イエスに在籍していたというから、またびっくりなんだけど。思うに、90年代末から2000年初頭にかけて、断続的に集まった黄金期メンバーのライブパフォーマンス、ここまでイエスを存続させるために、時流に合わせて存在をたらしめた「つなぎ」の存在、といったら失礼なんだろうか。ラヴィン加入後のイエスから入った人もいるかもしれないけれど、黄金期のファンだった私にとっては、踊れてポップで短いナンバーはイエスではない(偏見)。評伝を読んで、大人の事情で(要するに金問題)混乱を極めたことがわかったけど、音楽的志向や性格が似ていたらそんなにもめないと思うのよ。みんなバラバラだったからもめる。でもバラバラが故のイエスの個性でもあったと、今ならわかる。もう歴史を閉じてもいいよ。私は70年代のアルバムのABWHだけで一生楽しんでいける。ありがとう。「暦」の前に、ユニオン(8人イエス)のころの2時間のドキュメンタリーも見て、これはビルとトニー・ケイという初期イエスのメンバーの貴重なインタビューがあって資料的価値も十分ある(そして思った通りビルがずば抜けて正直で頭がキレる)。おおむねクリス・ウェルチの評伝と同じことをみんな話しているんだけど(もしかしてウェルチの出典はこれか?)、本人の言葉の選び方とかしゃべり方とかで人となりがうかがえるのが私的にはうれしい。リックは常にサービス精神旺盛でおもしろく話そうとしているし、クリスと師匠はいろいろモゴモゴ言いにくそうなところもありそう。そしてジョンはどこまで真実なのかまったくわからない。要するに狸で、一番のクセ者かもしれない。このユニオンが、ABWHの後なんだよねえ。いわゆる東西イエスが合体した形での。ジョンは「自分のために集まってきた」と絶頂にいただろうけど、他のメンバーは釈然としていないよな。とくにギターとキーボード。トニー・ケイなんてなんでここにいるのか不明だし(リック一人で十分)、師匠は自分よりうまいかもしれないラヴィンとなんてやりたくないにきまっている。ビルはスケジュール空いてたし報酬ほしいからと割り切って参加していて、アランは相変わらず(^o^)しているだけ。クリスはこれで満足なのか?愛すべきアンサンブル、アンダーソン/ウェイクマンのTheliving treeについてたブックレットのインタビューが興味深かった。このインタビューはジョンが完全にイエスを離れた以降(2010年?)のもので、二人にとってはもうイエスは過去のもので、二度と戻ることはないとはっきり言及している。リックは「ジョンがいないイエスには戻らない」とまで。すでに長男オリヴァー送り済みだしね(これは結局、ジョンのキャンセルでライブは実現していないのかな?)。インタビューのなかで、ジョンの作りたかったイエス(メロディアスで革新的)と、クリスの作りたかったイエス(ロックンロールで革新的)が違った、というくだりがあって、この水と油の二人をつなぐのはハーモニーだったんだなと気づく。バグルズ風味、レヴィンテイストのハーモニーもあるにはあるけど、ジョン好みでないのは明らかだし、ゴリゴリのベースを鳴らしながら聖歌隊の対位法的裏メロでハモるクリスとの相性は良かった。そしてジョンはさ、リックのオルガンのようにクラシカルなメロディーラインの入った電子音は受け入れるけど、いわゆるギンギンのテクノっぽいものはNGなんだよね。で、このアルバムの経緯を知って、もと貴腐人としては、ジョンとリックに腐臭を感じてしまったのだけど(笑)。この二人は、何度も仲たがいしながらも、40年以上関係を維持して、いまさらながらに二人でコンサートしたりしてんのね。リックが自分のTV番組かなにかんで、さかんに年金生活者をアピールしていたけど、こういう小規模な活動も、老後の生活費の足しにはなるだろう。腐臭は、リックが最初にイエスを脱退した直後に心臓発作で倒れ、入院しているところにジョンがお見舞いにきたのが始まりのような気がする(妄想発動中)。リックは「海洋地形学ではもめたけど、ジョンは本当はいい人っぽい」と思い、ジョンは「だって自分の曲想を形にしてまとめてくれるのはリックが一番適任だしな」と思っている。もひとつ、Going for the oneのボーナストラックに、遠くでなっているチャーチオルガンに稚拙なハープの爪弾きが入った、まとまりのないフレーズの曲が入っていて、なんだろこれ、お粗末すぎるだろと思ってたんだよね。そしたら、当時のスタジオレコーディング風景のドキュメンタリーに、ジョンとアランがアドリブで延々とクラシカルなメロディーを繰り出すシーンがあった。ああ、これかと。これがヴィヴィエの教会のオルガンかと。このシーン、メロディーは斬新なフレーズや和音があるわけでも、凝った転調があるわけでもない、どこかで聞いたようなバッハ風の通奏低音とかモーツァルト風の伴奏にのって、ジョンが適当に単音でハープをつま弾くだけの、どうでもいいセッションなんだけど、二人が実に楽しそうで。とくにコーダに差し掛かって、一回和音が解決に向かうと見せかけて、もう1ターンあってゆっくりディミュニエンドしていくエンディングに、ちゃんとジョンが気づいて合わせていたところ。リックが振り向いて「やったね!」とジョンに笑いかけるシーンは宝物だ。ああ、これで二人の心はつながったと(笑)。リックはジョンといると気持ちが楽なんだろうなあ、リズム隊に合わせるのは正直、かなりの労力使うからねえ。師匠との代わりばんこのアドリブもしかりだ。私はもう、アコースティックイエスのThe meetingとwonderous storiesが、リックのピアノ込みで大好きになった。これは耳コピして自分で弾きたい。二人も実に息が合っていて、クラシックでなくても聞き手に訴えてくる演奏になっている。そしてリックのアドリブ風の導入部は、キャット・スティーブンスのMorning has brokenの前奏とほぼ同じだ。リックだとすぐわかる癖だよね。誰だったか「そもそもリックとジョンはロックンロールの世界にいる人間じゃない(のにイエスにいるから奇跡が起きた)」というような発言をしていて、私もずっと気づいていた、メロディーとアレンジ担当のこの二人は、一人で好き勝手やっている師匠と、リズム隊の二人とは全く異なる音楽的志向に基づいている。細かく言えばジョンはフォークやポップスで張っていけるヴォーカリストだし(それにしても詩は意味不明すぎるが)、リックはクラシックの世界では無理かもしれないけど、全志向性の優れたアレンジャーとしてエンタテイメントの世界で十分やっていけたはずだ。それが二人ともイエスにいることで妙な科学変化が起きた。複数の人間が「5人集まることで5人以上のことができた」と言っている。ああそうだ、確か師匠も言っていたな。80年代をざっとおさらいしてもなお、私が繰り返し聞きたいと思うのは3rdからGoing for the oneまで(リレイヤー除く)の70年代なんだけど、とりあえずこれまで好きでなかった「海洋地形学」とデザインからして無理だと思った「究極」は定着した。結局私の中のイエスは、ジョンとクリスは鉄板として、スティーブとリックがいて、あとはビル+アランのどっちかがいる時代、に限定してもよさそうだ。クリスのいないABWHも私は好きなのでね、2014年のイエスはジョンとリックを欠いているので、私にとってはセルフコピーバンド、という位置づけになる。それでも映像は楽しませてもらったけど。ウェルチの本もそろそろ読み終わるし、怒涛のようなプログレリバイバルもそろそろ終焉に向かいそう。結構高くついたけど。あ、でも80年代以降のロック界、産業ロックとかグランジとか、おばさんには知らないことがいっぱいありそう。
2016.03.06
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イエスのアンプラグドライブ(2004年)のリハーサル風景、買い込んでいたDVDの中におまけで収録されていたわ。リックのナレーションが面白いから、そこだけもう一回見ちゃった。「さて、準備は整った。メンバーは、自分たちがなぜここにいるのか、これからやることをちゃんと理解している。・・・クリス以外は」。とか、遅刻ネタを含め、結構クリスがイジられている。お客さんたちの高齢化ぶりも茶化している。リージョンフリーのDVDだけど、キャプションがついてなくて残念。まてよ、2001年がオーケストライエス。このときのキーボードは謎の若者だった(To mBrislin)。03年がモントルー、04年1月がアンプラグドライブ、同年5月が35周年ライブ。なるほど、21世紀の最初の4年は結構バリバリがんばってたんだな。俄か仕立ての会場でのライブは、本番のためのリハーサルの意味もあるんだろうな。あと小数ではあるけれど、観客の前でやることで、反応をうかがうとか。リックのピアノは冴えわたっていたけど、初めてみるアコギ風のベース(ボディはアコギなんだけど、ネックが細くて超長い。もちろん4弦)を弾くクリスの音は、他を凌駕する圧倒的な音量だったし(プラグインしてたぞ!)、たしかに、アンプラグドの楽器同士の響きのバランスとか微妙で、演奏内容も含め、出来はパーフェクトではなかった。ちょっと本気のリハーサルを公開してみましたって感じだった。1曲目ははっきりいって全然息が合ってなかった。黄金期のメンバーでのライブは2004年の35周年が最後で、40周年のときはジョンがキャンセルしたわけね。もしかしてリックは2004年がイエス最後の演奏かしら。最近の彼を見ていると、もう2時間ちかいステージでイエスの曲を演奏するのは無理っぽい。黄金期メンバーの中では若いほうだけど、それでも67歳になるんだもの。息子にバトンタッチしたい気持ちはわかるけど、息子たちはブラックサバスとかもちょっとごっついロックバンドにいるみたいだしなあ。それより、リックのツイッタ―が面白い。猫のジョージのこと、自分のダイエットのこと(糖尿病による栄養指導が入っているんだろう)、家庭菜園したり、お風呂に浮かべるアヒルのコレクションの話とか。自分の作品KingArtherをLingArtherとつづって、「おい、またミスっちゃったよ」みたいな一人ボケつっこみやってるし。ジョージ、画像挙げてくれないかしら。今はマン島じゃなくて、ノーフォーク州(北東部)に住んでいて、ボウイ死去のとき、ワイドショーで自宅から中継でコメント語っていた。それにしても、イエスのライブは映像ソフトだけでもかなり出ているな。リージョンコードが違うものは、もう何年も使ってないハードをつなぐのが面倒だから避けたけど、それでもポチった商品が毎日のように届いていて、すでに10種類くらいある。まだ2種類しか見ていないど。平日は時間がなくて見られない。土日も撮りためていたドラマや映画を消化しないと、HDがパンクする。いつ見りゃいいのよ。無理だ。でも、結成35周年記念ライブBDのおまけについてきたCD3枚組(get one,get three free!)をウォークマンに入れて聞いているけど、すごいね。ジョンのヴォーカルが冴えわたっている。私が知らない75年以降のイエスのヒット曲には、 ロックンロール風にシャウトするような曲もあるけど、すごくいい。ロックの人ではない、正統派の歌手が歌っているテイストにはなっているけど、ジョンはこんな歌い方もできるのかと、子どもの成長を見た気分。もうどこまでも声が伸びる伸びる。Rhythm of Loveとか、決して好きなタイプの曲ではないけど、ジョンの声が気持ちいい。ハウも最近のライブみたいに出遅れたり音が飛んだりすることもなく、すさま じく切れのいいアドリブを聞かせてくれている。大好きなアコースティックイエスのコーナーもあるし。私はこの音源だけでも満足だわ。もしかして彼らの 「円熟」のピークがこの頃なのかもしれない。だとしてもだよ、アコースティック版のラウンドアバウトに異を唱えた者はいなかったのかな。20世紀初期の南部のホンキートンクテイストがちょっとあるけど、私にはどうしても2拍目を引きずるドドンパのリズムに聞こえて萎えた。まあ、ドドンパは都都逸+ルンバだって聞いたことがあるから、完全国産のリズムではないけど。ラウンドアバウトは手拍子しながら聞く曲じゃないんだよ~(涙)。ウェルチの評伝を読んでいて、リレイヤー以降のイエスの変遷がわかってきた。まだロンリ―ハートの前あたりだけど。で、ジョンとリックが抜けた段階で、複数の人が「イエスはこれで解散」と思っていたし、残されたメンバーだってそう思って、ソロ活動や新たなバンドを模索していたのに、解散だなんて思っていない人がいたってことだよね。クリスだって、ボンゾ亡きあと解散したZEPのペイジと、アランと3人で組んでやろうとしていたらしいし(これはプラントに「曲が複雑すぎるんじゃね?」と言われて敢え無く潰えた。プラントのおバカさんめ)。なんとなくブライアン・レーンのフィクサーぶりが理解できた気がする。で、今となっては、バグルスの2人はとんだ災難だったとしか思えない。私は2人のことは全く知らないけど、トレヴァー・ホーンはイエス加入後、プ ロデューサーとしての才能を発揮しはじめたらしいし、ダウンズはその後、ハウに気に入られてエイジアに行く。決して悪くはない未来が待ってはいたけど、ジョン・アンダーソンとリック・ウェイクマンの後釜というのは、あまりにも大きなプレッシャーだったろう。ずっとイエスのファンだったホーンが、うかうかとクリスの自宅に招かれて「声がジョンに似ているね」とか悪魔のささやきに乗ってイエスに取り込まれるエピソードは爆笑ものだ。クリス、何考えてんだよ。ホーンはちゃんと、「自分の声はジョンより3度は低いし似ているとは思えない」と言っている。でもクリスはイエスの活動を止めるわけにはいかなかった。アメリカツアーの切符はすでに完売、その金もとっくに入って来て使ってしまったらしいし、クリスはなんとしてでもイエスとしてのツアーを続行させなければならない義務をも負っていたわけだ。80年当初、ホーンのギャラが1年で1万ドルだったらしい。「14000ポンドはもらえるとお もっていた」というから、見込みの半分だったのね。(貨幣単位に注意)そして職人ハウは、自分が気持よくギターが弾ければ、どこでもよかったような気がする。イエス解散→バグルズ吸収→脱退→エイジア結成の過程でも、まったく動じる風ではない。そんなエイジアにはジョン・ウェットンという大物がいた。この人も、クリムゾンにいたのは覚えているけど、人とな りはよく知らない。それにしても、イエスの活動が、完全にアメリカでの成功を軸に据えていたことが意外な気がする。重くて長くて難解なプログレはアメリカ人には受け入れがたいだろうとおもったけど、ポップス要素の強い(そして電波の入った)ジョンの声とメロディーがヤンキーの肌になぜだか合ったらしく、イギリスではとっくにプログレがすたれて、80年初頭になってもイエスは人気があった。実際に、アメリカのファンは、ジョンに魂や精神の開放について問いかけていたらしいし、そういうスピリチュアルにはまった人たちにとっての音楽的教祖の役割もあったのかもしれない。いやああの歌詞に意味はないんだけど。みんな騙されていたわけだ。リレイヤー以降の時間を進めて聞いているけど、Going to the oneまでは受け入れられた。それでも1~3曲目までは、従来イエスとは違う感じがする。フルコースの間のソルベみたいなwonderous storyがあって(この曲も大好きだ。アレンジがプログレなだけの上質のポップス)、大曲awakenへなだれ込む。この曲は大袈裟プログレの最後の光かもね。星の寿命が尽きるときの最後の輝きみたいな。こわれものや危機の頃に比べると、ロック臭が薄れ、より壮大な劇音楽風のテイストになっている。私はこういうのも好きだけど、スピード感は感じられない。それから、リリース当初つまらないと感じていた海洋地形学だけど、Ritualはライブでもたびたび演奏しているし、通しで聞くとすごくいい曲 だ。これは40年ぶりの発見。なんとなくawakenにつながる荘厳なゴシック建築風のテイストが垣間見られる。海洋地形学、リアルタイムで購入してがっかりした記憶がある。危機はクリムゾンやピンクフロイドに比べれば、まだ親しみのもてる作品だったけど、 こ、これは・・・。ところが、40年ぶりに聞いてみると、すごく聞きやすい。というか、ぬるいじゃないか!尺が足りずにうすめた、というのは本当かも。あーでもこういうの、クラシックでも同様の経験してるわ。子どもの頃不可解だったメシアンが、いきなりすごくわかりやすい曲に聞こえてきた経験(トゥランガリラ交響曲)。ライブでも時折演奏しているritualがいい。中間部の荒々しいガムランっぽいパーカッション(映像だと、クリスもジョンも叩いている)の部分なんかは、古代宗教の賛美と言うか、まるきりストラヴィンスキーの春の祭典へのオマージュだ。イエスソングズの冒頭、長い間ファイヤーバードがかかっていたけど(今はブリテンらしい)、当時は春の祭典の冒頭のメロディーをジョンがヴォカ リーズで歌うのではなかったかな。プログレいっても、20世紀初めにストラヴィンスキーそれまでの音楽の常識を木端微塵に破壊したほどの革新性はないのか。1曲目の神の啓示も、こんな邦題つけるから謎の宗教音楽みたいに解釈されるんだろうけど、ヴォーカルが入る部分はいつものメロウでポップなイエスだな。通しで4曲聴くと、2曲目、3曲目は退屈。wonderous storyは、ライブでのリックのトリッキーなキーボードに驚いた。中間部の間奏でうねうねと半音階で下がる伴奏がオルガンタッチのグリッサンドではなく 指で弾いていた!これは映像で見ないと気づかなかったかもしれない。リックのプレイは基本、音域の広い自由な高速アルペジオとモルデント、ターンなんかの装飾音で成り立っている。その展開には安定感があり、誰もが 「美しい」と感じる音型だけど、時折、共通音のない調への転調など、意表を突く仕掛けを入れる。和音は和声のルールからあまりはずれず、不協和音いっぱいの前衛的な作曲はしない。むしろバロック回帰みたいなゼクエンツを見せることもある。あとジャージーな感じの展開もある。けどブルース要素がない。リックの演奏に黒っぽさがあったら、きっとハウのギターとリズムセクションと喧嘩するような気がする。あ、でも、伴奏に裏拍を多様したりは普通にやっている。2014年の日本公演に行った人のレビューを見たりしている。演奏の乱れとか批判的なことを書くマニアは置いといて、あのメンバー、あの状態でのイエスをちゃんと受け入れて、粗さがしなんかせず楽しんでいる人のレビューはいいなあ。なんか、クリスがいなくなっただけでなく、他の古参メンバーの年齢や体力を考えても、2014年の来日が、イエスとしては最後なんだろうなあ。たとえ2年前にイエスを思い出していたとしても、ジョンとリックがいないのならと、きっと私は行かなかったに違いないけど、クリスがいなくなっても頑張っている2015年の様子を動画サイトなんかで観てると、もう一度、生で聴きておけばよかったという思いが募る。後の祭りだけどね。ニコ動でサイベリアンを見ていたら、複数の人がラストの断続的な多声のチャントが、合わせられた試しがないと嘆いていた。楽器でなくヴォーカルでやるのはイエスの真骨頂だよね。ああいう変拍子っぽいつくりは、クラシックの現代音楽には山のようにあるけど、楽譜があるわけでも、指揮者がいるわけでもない場で、何十年も息が合ったところを見せられたのは、ジョンがクリスに贈ったように「音楽的なブラザー」だからに違いないよ。あああ。 涙。それにしてもスタジオ盤での後半、ビルのタムがトレモロですげー暴れているところがあって快感。一昨日気がついた、LongDistanceの5 拍子もそうだけど、生まれて初めてドラムに興味を持ったかもしれない。
2016.03.03
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昨日、巷間聞くところの「ビルのヘンタイリズム」を発見したら、ブルフォードの自伝を俄然読みたなった。邦訳はひどいらしいので、ここはぜひ原 文で。そっちのほうが安いしね。今のところ、ビルの人となりはウェルチの評伝でしか窺い知れないけど、イエス在籍当時、ビルはまだ19~23歳くらいで、本当に若く血気盛んだけど、だれよりも冷静に状況を判断できていたし、今になってもその記憶がクリアなのがすばらしい。なにしろ大学で会計(経済学?)を学んで将来は企業のエグゼクティブの道も開けていただけあって、当時の支払い明細(要するに家計簿)をちゃんと 残していた!ウェルチのインタビューの時に、当時の手帳を見ながら話してくれたとあり、それにはお金のことだけじゃなくて、5WIHもしっかり記録に残しているようだった。ブラボービル!すごいよビル!何十年も経ってから往時の記録をたどるには、物的証拠があるのが一番信頼性が高まる。エビデンスは大事(笑)。ウェルチも、ビルがバンドの会計係だったらどんなによかったか、なんて書いている。60歳でライブは辞めるという選択も予定通りだと思うし、なにもかもが長期的な計画に基づいて人生を設計していたのかもしれない。どこかで、シモ ンズを叩きすぎで、関節に負担がかかりすぎ、とかいう記事を読んだ。ところで、彼がクリスらと知り合ってから一旦大学に入って、オーディエンスとして大学にライブに来たイエス(というかその前のおもちゃ屋さんとか いうバンド)の演奏を聴いて、ドラムの余りのひどさに交代を買って出た、というエピソードが大好きだ。そして、3rdあたりから火が付き、Fragile、危機の確かな手ごたえを感じても、ビルは自分のキャリア形成を考えて、フリップのもとに走った。目の前にイエスでの成功というニンジンがぶら下がっていても、それに溺れなかったのはものすごく冷静で的確な判断。理系脳なのかもしれないし、どのみちイエスではジャズはできないんだし、結果的にそれは至極正しい選択だったんだな。なのにクリムゾンは2年で解散してしまうんだけどね。流行に関係なく、自分のキャリアを考えられる人なんだな。そういう時期でもあったしね。 評伝では、アラン・ホワイトがあまり語っていなくて、ぼんやりとしか浮かび上がってこないんだけど、そういう点でも、いかにビルのあくが強かったかがわかる。思ったことをそのまま言葉にする直情径行さんでもある。だからいつも誰かとぶつかるし、クリスとは取っ組み合いになる(体格違いすぎだろう)。こんなところもかわいいなあ。スタジオではいつも体を鍛えたり練習している、というエピソードもあって、彼が金なんかよりまず優れたミュージシャンであろうと思い、 精進していたことがわかる。このあたりはスティーヴ・ハウと似ている。黄金期が終わって収入がなくなっても、ジョンなんかは湯水のごとくお金を使っていたらしいが、「ハウは倹約家で、使うと言ってもせいぜい自分のギターのコレクションが増えるだけだ」とあって、そうだろうそうだろうと苦笑してしまった。彼はたとえ地球外の惑星のバンドに呼ばれても、そこで自分が好きなように弾けるなら行っちゃいそうな気がするぞ。それから、80年以降、髪の毛が薄くなってきてからは美容院すら行ってない(笑)。70年代までヨーロッパの音楽業界は著作権についてぐずぐず、みたいなことも書かれていて、ビルが辞める時に、マネジャーが課した重いペナルティやクリスとのいざこざについてもサラッと語っていて、怨んでいる風ではないな。自分は何も知らない子どもだったと素直に認めているし、客観視できるのは大人だ。俄然ファンになっちゃうよ。アマゾンのレビュー(英文のほう)を観ていたら、多くの人が彼のインテリジェンスをほめたたえている。自著ではなくインタビュー形式みたいだけど、そのほうが読みやすそうだし、久々に原文トライしようか。でもなあ。Dsにはまったく興味がなくて、知っている名前もごくわずかだし、その後のクリム ゾンや音楽界の変遷についてはまったく情報がないので、飽きるかもしれない。ウェルチの評伝は、今、バグルス吸収~ドラマの当たりを読んでいる。 「トーマト」失敗の後(このアルバムに対するクリス・ウェルチの評価は非常にセンチメンタルで好意的だ。内部事情を知っているからこそだろう)、 ジョンとリックがバーで「もうイエスにはいられないね」ってトンズラ計画を話し合うところはちょっとしんみり。だって、イエスはジョンのコンセプトで成り立っていたようなものだったのに、音楽の流行が変わってしまったことで、おそらくジョンは大きなショックを受けたんだよね。このままの自分のコンセプトでは金が入らないって気づいて。流れに乗って変わっていこうとしているクリスやジョン(師匠はそんなものには動じない。どうにでもなる大駒)についていけなくなったというのが正解。そして、クリスは一応ショックは受けたようだけど、遺留の説得するどころか、「わかった。じゃあね。さて、誰でもいいからイエスに入れよう」という態度。すげえなクリス。で、その結果 がラジオスターの悲劇のあんちゃんたち吸収作戦。まじかよ。このあたりはもう全く知らない時代なので、本当に面白い。10年近く一緒にやってきて、一時はフラットをシェアして暮らしていたジョンとクリスが、結局人間的に違いすぎ、お互いを認め合えなかったというのは、意外な気がする。それでも折り合いをつけて行くのがビジネスだと思うんだが、自分がトップ(とどちらも思っていた感じがする)だと、譲歩して自分を曲げることはできないわけね。財政的に行き詰ったバンドに、投資をしようとハウが持ちかけて、金を出さなかったのもジョンだよね。バンドより自分のエゴを優先させた。最初から二足草鞋のリックと違い、ジョンの存在は別格だったのに、自分でつくったバンドを自分から辞めてしまった。2003年の記者会見の映像で、「イエスのメンバーは良く変わるけど、どうやって決めてるの」と記者に聞かれて、クリスは「リハーサルに最初に集まった5人がメンバーだよ」とか言って煙に巻いていたな。自分こそ、遅刻魔なんだから最初の5人には入れないだろうって! 昨日は夜、リックのテレビ番組なんかを観て、彼の芸達者ぶりに笑いながら関心していた。ラジオのDJよろしく、視聴者から質問を募り、それに対してリックが答えるという安あがりな番組で、目の前にはデジピが1台。ヘンリー8世の中の 1曲のさわりを弾くところで、オクターブがずれていて「あれ、なんかへん・・・あそうか自分が移動すればいいんだ」ととぼけて椅子をずらしたり、 途中で鍵盤が足りなくなってもはみ出して弾く(音は出ないけど)とか、茶目っ気とユーモア精神があって楽しい。「Heart of the sunriseをきかせて」「思い出せるかな。(ちょっとたどたどしく冒頭のトリル)パラララ・・・はい」「もうちょっと弾いてよ」「うーん・・・最後に弾いたの2005年なんだよ」といいながら、本当に中間部の素早いアルペジオを忘れたみたいで数回トライ。で、そのうち思い出して、「ああ、こうだった」って、ムーグで弾いてた短いパッセージを弾いてみせてた。目をつぶってコードを弾いて、というリクエストには、さまざまに転調しながら弾いてみせて(2ターン目には装飾音まで入れて)、「これでいい?」 という顔をしてから、「あ、終止音忘れた。(ジャン!)」これもおかしかった。このあたりの律義さは音楽教育の賜物ね。(アーサー王、地底探検のさわりのとこだったかも)もっと以前からリックのこういう仕 事を知りたかったよ。ロンドンに行く楽しみも増えただろうに、ちょっと残念。ていうか、このリックがイエスのリックと同一人物と言うのが、私のなかではまだ納得できていない(笑)。ビルは、どちらかというとイギリスインテリ層の伝統、ジョージ・バーナード・ショウみたいな皮肉屋さんに違いないので、言っていることにも裏が あってわかりにくい。けどリックは、ひねっていてもモンティ・パイソンどまりだと思うんだよね。リックは20~30代で数回の心臓発作を経験し、35歳でアルコールも煙草も辞めたとあった。今はお腹は出ちゃっているけど、あれはあれで健康なのかも・・・と思ったら、糖尿病らしい。英文のWikiでは私生活も細かく書かれていて、リックは4回離婚、5回結婚。でも次から次にではなく、結構独身期間が長かったりしている。ニナ・ハーゲンとがいちばん長くて20年。拒食症のモデルとはそりが合わないだろう。70年代から彼の衣装を担当していたデザイナーとも、正式にではないけど、結婚していrみたいだ。同じ年に違う女性との間にそれぞれ子どもが生まれている。合計6人。何気に子だくさん。クリスも2回離婚、3回結婚していて子どもは5人。みんな子だくさんだなあ。アングリカンチャーチもカソリックと同じ、子だくさん推奨なのかな。 しかし本家Wiki、元妻や子どもの名前、生年までばっちりだ(これ、いやだろう本人的には)。Going for the oneのレコーディングセッションのフィルムを、今度はプレビューをメモりながら見直している。1stの後半に、教会でのリックのパイプオルガンとジョン のハープのセッションシーンが出て来る。ここ大好きだ。こことか、ハウとクリスがディランの曲を歌うところは、撮影クルー向けのサービスカットな のかもしれないな。テイクも何度も録り直しはしているけど、同じフレーズを同じ演奏でやっているので、曲としてはもう完成しているんだろう。そういう意味では、紆余曲折を経ながら曲が仕上がってくるところではないので、ちょっと残念ではある。それでも貴重な映像だが。ハウ×クリスは3曲、多分コードが書かれているであろう歌詞カードを見ながらセッションしていて、最初の曲がちょっとわからないけど、ディランっぽい。次もディランのknocking on Heaven’s door。3曲目はByeByeLove。私が歌えるのはバイバイラブだけだけど、これ、オリジナルはS&Gじゃないのね。知らなかった。明日に架ける橋の中に入っていた一曲で、小学生低学年の頃から知っているから、ずっとS&Gの曲だと思っていた。クリスは3曲とも、一小節たりとも正当なメロディーラインを歌おうとはせず、高い音程でカウンターメロディーをとろうとしているのが面白い。リック&Jonのセッションでは、リックが3拍子で左手がアルバルティバス風味を弾き続けるモーツァルトっぽいアレグロのメジャーコード進行と、 4拍子系でバッハ時代の通奏低音をモチーフにしたコードを2種類を演奏。そこにジョンが自由にハープをつま弾くんだけど、特に明確な旋律があるわ けではなくて、同じ調子(調性)で合わせるのが楽しい、という感じだ。ジョンは正規の音楽教育を受けていないんだろうけど、曲作りのルールなんか は身についている感じがする。うらやましい。https://www.youtube.com/watch?v=v-Gp2ZqSTbshttps://www.youtube.com/watch?v=I8mh0ouBfosおおうacoustic YESのリハ映像が落ちていた。2004年頃かな。これ、コンサートの一部としてやっていただけじゃなくて、本当にアコースティックだけでライブやってたんだ。驚き。肝心のイエスの曲は○○の冒頭だけだったけど、ジャズのスタンダードナンバーをやっているのが興味深い。リック、ジャズも自由自在だなあ。本当に多才。ナレーションはリック。真面目におかしなことばかり言ってておかしい。笑いを録るためのちょっと下ネタ入れたりしてるし。もう私の中ではリックは「面白いことをいうピアノのうまいおっさん」に堕ちた。いいけど。 「・・・リハーサルは11時に始まった。クリスはいつもなら午後3時には来る。しかし今日はすでにいる。なぜなら彼は前の晩から寝ていないからである」とか始まって、盛り上がったところで一人ひとり紹介していて、「でもクリスはもうベッドで寝ている」とか。リハーサルも終わってみんな去ろうとしているのに「クリスはやっと始まった」とか、本当に遅刻ネタ多いな。なんかアドリブで付けたっぽいナレーション。リックは真面目そうに話すときは何気に端正な美声だな。そしてクイーンズイングリッシュではもちろんなく、ロンドンっ子のくだけた英語よりはきれいで、 BBCイングリッシュに近く、私にはとても聞きやすい。スタンダードナンバーとかやってくれちゃって、楽しそう。リックはジャズのフレーズも自由自在。ジョンのサービス精神もいいなあ。そしてやっぱりアランの陰がうすい。ビルの自伝のレビューに、イエスはビル(ジャズ)、クリス(ロック)、リック(クラシック)、ジョン(ポップス)、スティーヴ(カントリー)とい う異なる才能が・・・というようなことを書いている人がいて、スティーヴはカントリーだけじゃなくてクラシカルの要素もジャズやロックの下地もあ るから異論を唱えるけど、ほぼ合っている。イエスの黄金期と言われる70年代前半、彼らのライブを評して「レコードと寸分違わぬ演奏」とか言われていたのを覚えているけど、失礼な話だよな。イエスのあの演奏で、ロックのなかでは「高度な演奏技術」と言われるんだが、ちょっと違和感を感じる。クラシックの人たちはその比ではないもんね。あとはアンサンブルとして息が合っているところも重要なんだろうけど、自分たちがつくった曲を自分たちで演奏できるのは当たり前なので、イエスの長所を上げるなら、「卓越した音楽センス」ということになるんだろうと思う。でも、 緻密かというとそうではなくて、評伝にもくり返し書かれているように、曲のはぎ合わせはロジャー・ディーンの苦労の賜物だったりするようだ。なので、私が形容するならむしろ、「異なる音楽ジャンルの断片を力技で合体させて感動的な曲に仕上げる構成力と恐れを知らないミックスパフォーマン ス」ということになる。もう少しでビートルズに成りえたのに、なれなかった、わかりやすいプログレ。横紙破りなことを堂々としてみせていい曲を残した伝説のバンド。
2016.03.02
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げげげ、Long Distance Runaroundのリマスタリング版をイヤホンで聞いていたら、ビルの変態リズムが丸わかりだわ。今まで ドラムの拍とか気にしたことがなかったけど、あれれれだんだんずれて来る?と思ってカウントしてみたら、これが変態さんか!と納得。この曲はイントロに一カ所余計な拍があるけど、ヴォーカルパートに入ってからは変拍子なんかない平穏な4/4なのに、ビルが打ってるタムは5/8 だ!後半は3拍子で打ってる。なんだこれ。メロディ聞いてたら絶対こんなの打てないよね。これがポリリズム?普通リズムセクションが拍子を誘導するんじゃないの?もしかしてイエスの曲全部でもしかしてこれやってるんだろうか。危機もポリリズム満載だと聞いたことがあるけど、まだ意識して聞いたことがない。逆にわかったら怖いわ。とりつかれたように拍さがししそうだ。 ちょっ、これアラン・ホワイト盤も聞かなくちゃ。・・・とかようにして、スタジオ盤・ライブ盤・メンバーチェンジ後などの聴き比べに走るのだな。くわばらくわばら。イエスソングズの頃の、ライブ 会場別の音源ボックスとか、曲順もほぼ同じで会場が違うだけなのに、私には理解できなかったけど、こういう楽しみを発見してしまうと危ないね。クラシックばかり弾いていると、基本的に拍はほとんど変化しないし、そもそもピアノは一人で完結する楽器なので、カウントする習慣がない。これを ロックをやっている子にいうと驚かれるんだけど。代わりに緩急と強弱があるわけで。ついでに言うと、ロックには珍しくデュナーミク(強弱)が感じられるのもイエスが好きな理由の一つだ。アコースティックじゃないから、基本的には音を重ねていく、あるいははがしていくことで音の厚みを調整するわけだけど、シンセやハモンドオルガンでオーケストラの弦パートのような厚みを出すところは、まさにwktk。FOとは違うよ。ヘンタイで思い出したけど、ピアノで左右違うメロディーというのは、普通にある。ポリフォニーはバッハで幼少時から仕込まれるから、割と自然に身 につく。バッハをやっているとそのうち4声(わたしは5声まで弾いたことあり)フーガとかたくさん出て来るので、声部の弾き分けはできる。こうい うポリフォニーは西洋人でクリスチャンなら教会音楽でDNAに組み込まれているかもしれない。ヴォロドスのブルドーザーみたいなタ―キッシュマー チでも、Aメロを右で、Bメロを左で弾いているシーンがあったけど、あれはクラシックを知っている人間なら驚くところじゃなくて、「へええこんな 遊びもできるんだ、楽しそう」だもんね。そもそもショパンのエチュードをもっと難しくアレンジした練習曲(誰だっけ?)があるけど、あれはそんな の満載だ。右で木枯らし、左で革命、みたいな。テクニック自慢の音大生なら多分簡単。じゃあ、左右違う拍だったらどうだろうと考えてみた。あ、これもロマン派とか、楽譜上は上下おんなじだけど、弾いてみると右、左拍が違う、という のは割とあるな。そもそも3連符だらけの曲とかそうなりがちだし。でもクラシックだと、メインの旋律に合わせるのが基本だ。多分、やりにくいのが一方が奇数拍子の場合。3拍子系はまだしも、左が5拍子、7拍子で上が4拍子6拍子とか。いや、左右逆のほうがやりにくいか。ポップスの音楽用語はほとんど知らないんだけど、クリスの歌は、単にサビの部分をハモるだけじゃなくて、しっかりカウンターメロディーになってい るような気がする。スタジオドキュメントで、S&Gの「バイバイラブ」をハウとデュエットしている時、必死でファルセットで裏旋律を取ろうとして いるのが面白かった。カウンターメロディが自然にとれるというのは、対位法がわかっているからなのかもしれない。※よく知らないで使っているけどカウンターメロディって内声とは違う? 今、ショパンの舟歌絶賛復習中だけど、ショパンもノクターンやバラードは 内声が上の声部に出てきたりするから、カウンターメロディなんじゃないかなあ。もうはっきりとは覚えていないんだけど、中学のころどれくらいプログレを聞いていたか。記憶をたどってみる。◆ELP 恐怖の頭脳改革まで全部ある。ついでにナイス時代のも3枚持っている。チャイコフスキーの悲愴とか大真面目にやっていた。 展覧会と1stと頭脳改革が好き。※ムソルグスキーはキースエマーソンに教えてもらった(笑)。ロックにアレンジできるんだから、原曲ちょろいだろうと思って楽譜を買ったら マジで難しかった。◆ピンクフロイド 神秘ウマグマ原子心母おせっかい狂気※とりわけおせっかいが好きだった。狂気は、面白かったけど好きではなかった。◆キングクリムゾンクリムゾンキングの宮殿太陽の戦慄暗黒の世界RED※エピタフは毎日の宿題の友で擦り切れるほど聞いた。スターレス&バイブルブラックと頭の中でミックスされてる。 太陽の戦慄からREDまではリアルタイムゲットだった。考えたらこのアルバムのDsはビルなので、私はイエスとクリムゾン、両方でビルのリズムセクションを堪能していたことになる。◆ほかにフォーカス、PFM、フォルムラトレ、タンジェリンドリーム、ジェスロタル「パッションプレイ」があったかな。ソフトマシーンは聞いてみ たけどだめだた。ああそうだ、カーヴドエアは数枚持っていた。ヴァイオリン弾きがいて、ビバルディの四季とかロックテイストで弾いていた楽しかった。◆ムーディブルースプログレではないけど、1stから6枚目くらいまで持っていた。ジョンに次いで好きな声の持ち主、ジャスティンヘイワードがいい。日本では過小評 価されていると思う。
2016.03.01
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Heaven & Earth聴いた。嫌いじゃないけど、イエスだと思うとかなり残念。70年代前半の、私の好きだったイエスの片鱗はないなあ。コンセプトをつくるジョンが不在で、厚みのあるリックの音がないだけでこうなるか。師匠もクリスも、こんなぬるい音楽で楽しちゃってる感じなのかな。俺たちゃもうトシなんだから、激しいのはやらんもんね、という感じ。でも最後の曲(Subway Wall)は変拍子入ってたり、クリスのベースはイカしてたり、インストの部分は好きだ。ブートで流出しているモントルーのスタジオで「究極」を録音中のドキュメンタリーを観た。 合計3時間あまり。画質は最悪だし、時折切れたり乱れたりして、ひどい代物だけど、イエスの曲作りの過程がわかって、とても興味深かった。 曲作りについて話し合うとか議論しているシーンがないのは、すでに曲としては出来上がっていたからなんだろう。あとは細部の詰めと音合わせ、という段階。 昨日は夜、WOWOWでアカデミー賞授賞式を観ようとおもっていたのに、 TVの字幕を時折観ながら、約1時間×3本を通しで観てしまった。 休憩タイムに延々、衣装について話合っていて、色とかスタイルとか、 結構こだわりがあるのがわかった。口を出しているのはスタッフの一人で、それにジョンが自分の意見を言っていて、時折ハウが口出すくらい。 「揃いの衣装はどうだい。ここにこう線が入って、青とか緑とか」「靴を揃いにしたら」とか呑気な会話で気分転換しているのがわかる。70年代のあのちょっと風変わりな衣装は、あれはあれで計算されたものだったのね。それにしちゃテイストがバラバラだったけど。そういえば、やっとハウが登場したウェルチの評伝のなかでは、イエスに加入したての頃のハウが「どこ どこのなんとかいう店で50ポンドでオリジナルの素敵なジャケットを売っているんだぜ」とか言ってて、ハウは私のなかではすっかりおしゃれ番長だ。何日か分の映像だろうど、覚えているのはジョンのダサい青いチェック柄のシャツ、クリスのサテンっぽいテロテロの青いシャツ、リックの何種類かのTシャツくらい。ハウがシャツの袖のボタンもきっちり留めて演奏していて、性格がしのばれる。まあ、全員普段着は全然構わない、って感じがする。ところで、このころのリックがいちばん痩せているかもしれない。ステージでは着膨れするのかなあ。いや、絶対、70年代前半よりやせてる。腕が細いし、お腹も出てない。ちゃんと若者にみえる(笑。当時27歳)。下半身はクリスのようなスリムさはないけど、お尻が大きいという感じでもない。74年にイエスを辞めると決心した直後に心臓発作で倒れ、養生して食生活を変えてダイエットしたかな。ヘンテコなマントなんかより、ただのTシャツスタイルのほうがずっといいよ、リック。その後、究極ツアーの映像見たら、プレスリーみたいなラメ(しかも☆柄)のへんなコートxジャケット着ていて、そのうえ裸足になって足で弾いて いて(和音をぶっ叩いただけだけど)、もうアホかと。このツアーでクリスはバラの模様入りのキラキラサテンのコートジャケットで、これは何度か見たことがある。細かったのはこのころまでかも。 90125の頃になると、麻の葉を引き伸ばしたような変形ストライプのコートジャケットを着るんだけど、このころからひそかに中身がパンパンに なっていく。ジョンはこのころのステージではファンタジーに登場する王子になって、白い薄手のギリシャ風スモックにヒラヒラがついている。たしかに awakenの世界にはこんな架空の国の架空の時代(少し遊牧民テイスト)というのが似合っているかも。なんかアルスラーン戦記に出てきそうな感じ。 Going into the oneの冒頭に出て来るハウのじゃかじゃかの直後に聞こえる効果音を、アラン、クリス、ハウの3人がなんと鍵盤 ハーモニカで吹いていたことが判明。ピアニカではないのかな。例によって独特のリズムパターンなので、なかなか三人とも息が合わず、リックが指揮しながら何度もテイクを取り直すのが面白かった。ここ、最高に好きなシーン。楽しそう。こういう効果音が欲しいと、誰が決めて、だれがピアニカを用意して吹かせているんだろう(もちろんジョンだろう。しかも自分は参加せず)。リックが最初にセッションしたときに驚いたと言う「この人たち、巧い」というのは、あながちお世辞ではなかったんだな。どれだけ練習しているかだよね。ハウのアドリブは本当に何度も何度もテイクを録るんだけど、どうしてもきれいに弾けない(音が濁ったり拍が間に合わなかったり)ことが多く、ステージなら許されても、レコーディングではパーフェクトな演奏が求められるから大変そうだ。きれいに音を入れられるまで延々練習し、テイクを重ねるハウは、根性と辛抱と集中力の人だな。付き合ってたら疲れそうだ。それにしてもスチールギター好きすぎるよ師匠。ちょっとだけ触ったことがあるけど、あれ音が濁らないように弾くのは大変なんだから。大きく音をスライドさせて入れる部分で、ハウ自身も「なんでうまくいかないかなあ」と思いながら弾いている様子が興味深かった。普通、諦めるか弾きやすいように音を変えるとおもうけど、絶対替えない(笑)。だんだん「またかよ。フレー ズ変えろ!」とか思った。頑固なんだろうな。あと、セッションのなかで一人だけ自由に(というか勝手に)演奏していたのもハウだ。彼はいつまでたってもどこまで言っても唯我独尊の人だ。あとは大体2人セットでの長い長い即興演奏。これは本当にすごいシーンだった。究極とは全然関係のない、ジャズっぽい曲やS&Gとかたくさん聞けてうれしいよ。ハウとクリスがアコギでS&Gのバイバイラブを歌うところとか、アラン×クリス、ハウ×クリス、そしてリックのオルガンとジョンのハープ(アイリッシュハープかな)で、延々とメロウなメロディーラインを即興するところはすごく好き。ジャズの人たちもそうだけど、コードだけじゃなくて、こういう、ちゃんとメロディーのとれる即興ができるところが、イエスのすごさなのかもしれない。リズムセクションの2人や、ハウ師匠のアドリブに延々合わせるだけのクリスとのセッションとも全然違って、メロディー担当の2人のアドリブは、明らかにプ ログレではなくて、当時はやり始めていたヒーリング系のニューミュージック(スピリチュアル系?)に近い。この2人とリズムセクションと装飾係 (ハウ 匠)という、水と油の音楽性が合体していたところが、このころのイエスの面白さなんだろう。で、リックの巧みさは、ああそろそろ終わるな、と思わせておいて終わらないフレーズをもってくるところ。転調直後って解決しない音が多くなってなかなか調性が安定しなくなるんだけど、リックの転調は不意を突いていてそれでいてきれいにつながっていくところが好きだ。これは彼の才能。エンドレスで演奏を続けられて、しかも似たような長いフレーズがあまりない。 この不意を突く転調とメロディーラインが崩れないところがすごい。乗せられてジョンもワンパターンのハープを弾き続けさせられるというシーン。終 わった時のリックの嬉しそうな顔が印 象に残る。リックが心臓発作で入院したとき、ジョンはこっそりお見舞いにきて「バンドに戻りたくない?」ってやさしい言葉をかけたエピソードがあって、リックはとてもうれしかったんだと思う。2人はその後揃ってイエスを辞めているし、この2人は実はすごくウマが合うのかもしれない。リックは理論は知らなくてもgiftedなジョンを尊敬している。今年年末くらいに、ジョン、リック、トレヴァー・ラビンでコンサートやるらしい。これ聞きにいきたいなあ。いまやイエスのツアーよりジョンの生声を聞きたいよ。評伝でも丁度、究極レコーディングのところを読んでいたけど、このあたりからハウは冥想とか、体づくりに力を入れることになる。ツアー続きだと、 身体のあちこちが痛んできて肉体がぼろぼろになるらしい。でもね、それはタンパク質が足りてないからだと思うわよ。 譜面らしいものは、リックのキーボード周りに時折散見されるくらいで、あの長い曲をコード進行や構成を書いたメモもなく演奏していることにびっくりした。1本目の冒頭で、楽器担当の4人が延々セッションしている中で、ジョンが大きな模造紙みたいな紙に、なにかをずっと書いていたシーンはあったけど、あれはなんだろう。ちょっと絵のようなものもあった。レコーディング時点で歌詞は頭の中に入っているのか、声録りの時も、メモ的なものはなかった。誰かが書いていたけど、本当に音楽的記憶に優れた人たちなんだろうなあ。まさか20分ちかいawakenを通しで録ってはいないだ ろうけど、拍が安定しない部分でも、誰ひとり間違うことがない。記憶だけでなくみんなそれぞれにgiftedなんだろう。あえて変態拍で周囲を混 乱させるビルより、アランのわかりやすいドラムはずっといいと思うけどなあ。きっちり入りと止めの拍を決めてみせるのも、一つの才能だと思う。そうそう、珍しくクリスがパーカッションやっているシーンがあった。awakenかな、覚えてないけど、結構長くスネア叩いていた。あと全員で、 いろんなパーカッション持ってドンドンやるところ。アランが持っていた巨大な長い鞍にベルがついたようなものはなんなんだろう。男ばかりのスタジオに何日もこもるので、次第に髭を放置するようになるらしくリックは髭なしバージョンと髭ありバージョンがあった。アランホワイトもこのころから口ひげを蓄え始めたかな。劣悪な画像では他の三人はわからないけど、ジョンはブルネットだから髭が生えてくれば目立つはずだけど、そういうシーンはなかったから毎日剃ってるな。そういえばハウの髭面と言うのも見たことがない。クリスもこのころはまだまだツ ルツル。考えたら30歳超えているのはこの時点はジョンだけなんだよね。恐るべき集団だよ本当に。▼ここからはウェルチの評伝ねミリオンヒットが出てから生活が一変した彼らのアメリカツアーがいかにすごかったかのエピソードが面白かった。The WhoやZeppのようなご乱心ぶりではないものの、結構はちゃめちゃでホテルには迷惑をかけた様子だったことをウェルチが書いている。イエスがはちゃめちゃになる様子を、私は想像できないんだが(リックを除く)。当時、いかにすごかったかって自家用ジェット、コンコルド、ツアーの移動のたいへんさ。スタッフは何十人くらいいたんだろう。10人では済まないよね。20人以上?ハウ自身も語っていたけど、コンコルドにミスター・ギブソンの席(ギター専用)を用意した話を、ウェルチも証言している。ピンでスタジアムを満員にできるようになると、他のバンドと絡むこともなくなって、ある種の孤独に陥るのも問題なんだ。ビッグになりすぎたスター の孤独かね。で、一旦ゴージャスな生活に慣れると、売れなくなったときに借金生活が待っていると言う。これも全員体験しているらしい。当時のメンバーで、イギリスに住んでいるのはハウ一人かな。リックは税制優遇制度(?)があるマン島、あとの3人はアメリカ。アラン・ホワイトがなぜかシアトルという北西海岸に住んでいるらしく、親しみが持てる(日本人も多いしね)。ヨットをやりたかったからだろうか。今はどうか知らないが、当時はイギリス人は 1年のうち何カ月か(かなりの長期)を海外にいなければ、高額所得者には高額納税負担があったようで、そのためにも海外でのレコーディングや長期 ツアーが必要だったとウェルチが書いていた。録音風景では、4人がベジタリアンだったくせに、ブートのセッションでは明らかに草(ハッシシ?大麻?)を吸っている。ほぼ全員。ハウはこういう のやらないと思ってたわ。そうそう、ベジタリアン御用達の食料品店で働いていた人をツアーマネジャーにしちゃう話とか、イエスのスタッフの集め方 は独特。どんなに関係のない職種でも、つきあってみていいやつだと思ったら引き抜く。「どういう奴か知っている人間としか一緒に仕事をしない」というようなことをクリスが言っている。あとハウがやっぱり新メンバーとうまくいかない様子が書かれていた。師匠、デリケートすぎだろう。彼のことだから、トニー・ケイの時も本人に面と向かっては文句を言わず、落ち込んだ態度でジョンとクリスに心配させておいて「どうした?」と言われるのを待っていたに違いない(笑)。でも彼の 音楽全方向性のマルチさはイエスには欠かせないから、ハウが嫌えばさようなら、なのね。なにしろクリスと違って、生活態度に問題ないし(笑)。追い出したい相手の問題を探しだすのは簡単だよね。パトリックモラツが、才能はあっても結局イエスファミリーとしては受け入れられなかった理由もしっかり書かれていた。足掛け3年いて、アルバムは リレイヤー1枚だけ。優秀だけど「イギリス人じゃない」のが合わなかった理由だった。えっ、そこ?ジョンもクリスも根は保守的なイギリスの労働者階級だ。しかもセッションとかでたくさんのアーティストと演奏した経験があまりない。モラツは世界中でいろんな仕事をしてきたベテランだったから、サウンドだけでなく、合理性とかシステムとか、いろいろと新しいものを持ち込もうとしたのもイエスには合わなかったのかもしれない。ヴァンゲリスとやったからといって、うまくいったかどうかはもっとわからないけど。モラツがイエスに声を掛けてもらって、喜びの余り、ナイスの残党2人を捨てたというのは本当だった。ショックでその2人はミュージシャンから足を洗うことになったらしい。まあ、90年代末のプログレドキュメントで、リージャクソンがミッキーカーティスみたいなブイブイ言わせる爺になって登場していたから、音楽業界には今でもいそうだけど(調べたらジャズミュージシャンになってた)。で、モラツによるイエス評に思わず得心した部分があったんだけど、確か「イエスはビートルズの進化系」というような表現だった。そうか!そうだ よ!時折挿入される、やけにメロウなメロディーラインとか、クラシックを転用したようなフレーズとか、対位法的なベースラインとか、ロックに革新を持ち込んだビートルズに似ているんだ!そもそもSGPだって、あれはコンセプトアルバムだし、ヘンな曲多くてプログレだろう。そして何より親し みやすいメロディと歌声で人の心を打つところがイエスの最大の魅力で、ここが他のプログレバンドとは決定的に違う。ピンフロもクリムゾンも「寄ら ば切るぞ」という硬質なイメージだけど、イエスは誰もが歌えてハモれる音楽。そして明るい(あくまで他のプログレとの比較)・・・ビートルズじゃ ないか!リックがビートルズのヒットソングをアコピでメロウに(笑)演奏している動画があったけど、音色が1種類だと、ヘルプの最初の部分なんて旋律は4 つしか音使ってないことがよくわかる(Bメロも6つ)。ポップスはいいかに伴奏が大事かよくわかったわ。
2016.03.01
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