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「イタリアにおける児童相談所と養育里親の連携による、家庭生活が困難な児童及びその保護者に対する支援のありかたについて」(その3)は、ローマから列車に乗ること6時間で到着したピエモンテ州トリノ。そこではいろいろな形での里親制度の啓発が行われていました。トリノ市に本拠を置く民間団体ANFAAによる広報・啓発活動等の取り組み 里親制度の普及・啓発のためには、県民に対して社会的養護観の醸成を促すための、具体的な広報の方策が必要である。その参考とするために、イタリアにおける里親制度の発祥の地、といわれるトリノ市に赴き、当地の民間団体が行政と連携しながら実施している広報・啓発の取り組みを学んだ。トリノ市の属するピエモンテ州では、児童福祉のサービスは、市(comune)の職員が中心になって、実施されている。里親支援についても、市から資金が出される。ピエモンテ州のメンタリテイーは民間も動くが、公も動かなくてはならない、というもので、民間団体と市は、協力してより児童の権利を高め、保護をする、という考えに基づいて連携を行っている。トリノ市と、その近郊によって形成されているトリノ県の人口は100万人弱。それに対して児童に限らずソーシャルケースワーカーとして登録をしているのは1万5千人程度である。養育困難に陥る家族の実状としては、トリノ県では、経済的困窮よりも、ドラッグ、アルコールの問題がからみ、精神面や感情面で弱く、虐待を行ってしまう、という相談が多く、何年たっても元の家族が育てることのできない、長期化したケースも少なくない。里親制度・養子制度のための全国組織であるANFAA (Associazione Nazionale Famiglie Addotive e Affidatarie)の歴史は1960年代にある男性が、養子制度を施政・制度に位置づけをさせたい、と要望したことから始まった。ANFAAは、会員が支払う年会費で成り立つ民間団体で、イタリア全土にネットワークを持つ。唯一事務所を構えているのがトリノで、その他は会員の家が連絡先になっている場合が多い。近年力を入れているのは、養育里親を法的にどう位置づけていくか、という取り組みである。 ANFAAでは、各種経験を学び比較する、という作業を行った。元の家族、里親、専門職が共同してケースの勉強を行い、そこから見いだした改善点・問題点のPRのために会議を開催。併せて色々な手段で広報を行った。国会への働きかけをした結果、2001年には法改正がなされた。2001年までは、里親委託に関しては、裁判所の決定によってなされたが、法改正後は、決定に際して里親になる人の意見も聞くようになった。条例改正の問題が出てきた時には、市の上層部に働きかけていく。その結果、市の担当者や上層部とのディスカッションや調査を行う。条例改正、ということになった場合は、ANFAAも市と一緒になって話し合いを行う。トリノ市では、各民間団体の力が強いので、市への働きかけが可能である。ANFAAではトリノ市の条例を元に、里親のためのガイドや、児童や教員などに里親制度を啓発するための本を作っている。 一般向けの啓発の方法としては、義務教育の学校や幼稚園へのPRが必要との考えを持っている。子ども達の親が若く、将来里親となる可能性も高い。先生達が学校で子どもに教えるための本や、親が子どもに読み聞かせることのできる絵本も作成している。また、広報の一環として、ビデオテープも作成している。皆が協力する、というボランティア精神が強いが、広報の初期の段階では、顔の分かっている人物を捜して「里親になった人の一日」のような感じでPRすることが大切である。現状では全ての児童に里親宅での生活の保障はできていないが、まずは小さい児童からスタートする、ということで、幼少時から大規模の施設で生活することの悪影響なども伝えながら、0~6歳までの児童は、なるだけ施設に入所させないよう、取り組んでいる。 里親になってくれる人を捜すためには、「2~3人の子どもが、ある人が現れなければ施設に入ってしまう」といった内容の広告を Cerco di Famiglia(日曜に出るカトリック系の新聞)、L‘avvenireという2つの新聞、Donna Moderna(女性週刊誌)、Famiglia Cristiana(カトリック系の月刊誌)などに掲載。最初に女性を巻き込み、心に届くように、との広告を行っている。問題点を語るだけでなく、スポーツセンター、チェスクラブ、クリスマスシーズンに家族で行くショッピング・センターなどにも持っていく(例えばIKEAと言う大きな家具屋さんにも持って行った)。ある家庭のもう一つの家庭への支援「頼れる家族がもう一つ」というような考え方に立っている。焦らずに、数は少なくても、良い里親を養成していくことが肝心で、中途半端なことで里親を養成してしまうと、悪い結果につながってしまう。 トリノ市の里親ガイドと子どもに読みきかせるための里親の絵本 イタリアでも、日本同様、里親の抱え込みの問題はある。里親家庭でのハネムーン期を過ぎると、子どもたちは真の自分を出して、試し行動を始める。そういった問題に対して、心理学者やセラピストの協力は欠かせない。里親と専門職(心理学者やケースワーカー)のグループワークが重要である。里親同士、共通の課題は必ずあるが、里親のみのグループで集まって話をする場合、はけ口になってしまう恐れがあるので、必ずスーパーバイズが必要である。里親がグループとして集まる時は、パイオニアとして集まり、なぜ里親になったか、ということを考える場とすることが肝心である。 ANFAA統一の時も、里親制度のすべきこと、養子制度のすべきことを分けることが大変な作業だった。まずは、子どもから出発することが基本である。子どもは家庭を持たなくてはならない、ということが出発点であり、状況調査の後、その子にとって、養子か、里親か、という最善の選択がなされるのである。まとめとして研修成果を踏まえて、以下の5点について本県の施策に対する提案を行う。点目は、里親制度の啓発策についてである。里親の不振の原因のひとつに、一般住民に対する制度の周知が不十分であることや、血統を重んじるわが国の家族制度に端を発する個人的養護観が強いこと、養子制度との混同、などがあげられている。そして、そのことが原因となって、実親が子どもを取られるのではないか、という不安を抱き、里親よりは施設にあずける事を好んだり、里親や里子が、地域社会や学校などで、先入観による負担を感じながら生活をしている、という事態につながっている。里親制度に対する理解と配慮がなされるめには、里親制度が、児童福祉法に基づく社会的養護の一翼を担うものである、ということを広く県民に周知させることが必要である。平成15年度には、テレビ、ラジオを通じ、県民に対する養育里親制度の広報や、「里親制度の手引き」の作成による福祉や教育など、関係機関に対する情報提供を行なった。オーソドックスではあるが、今後も関係機関や県の他の部署との連携を深め、NPOなどにも呼びかけ、研修や、マスコミによる広報の機会を捉えて、養育里親に対する理解を深め、地域の中に根付かせていくための取り組みを続けていくことが必要であると考える。2点目は養育里親の養成に向けた具体的な取り組みについてである。平成14年度の制度改正の際に、わが国においても養子制度と里親制度の分離についての議論がなされたが、養子前提の試験養育期間としての里親委託は現存することとなった。児童の永続的な家庭の保証、という点での意義は認めつつも、今回の研修における訪問箇所の関係各位が口をそろえて語ったとおり、養子制度と里親制度を明確に分けて考えることは、制度の適切な運用のためには必須であると思われる。現在、高知県における、里親登録に向けた手続きは、児童相談所で申請を受け付けた後、「里親の認定に関する省令」及び「里親が行う養育に関する最低基準」に基づいて担当者が調査を行い、児童福祉審議会の審査を経て県知事が認定、県に登録、という手順を踏んでいる。各里親は、登録をされた後、県や里親連合会の実施する研修への参加により、資質の向上や児童との交流をはかり、実際の委託に備えているが、個人によって参加状況にはばらつきがある。一方、平成14年度より、被虐待児に対応するための専門里親制度が新設された。専門里親については、認定の要件として、福祉現場等における実務経験や、国の定めた研修の修了などの要件が定められているが、高知県にはまだ、専門里親の登録者はいない。一般の養育里親についても、登録前研修を実施し、制度に対する理解と認識を深めた後、本人たちが納得をしたうえで、里親登録を進めていくことが、里親の裾野を広げ、より良い里親の養成につながるのではないかと思われる。 また、専門里親を含む里親養成の実習の場として、中央児童相談所に併設されている児童支援ホームの利用を提案したい。児童支援ホームは、最長3ヶ月を期限に、家庭復帰に向けた児童のケア、親子の再統合を行なうために設置されている。ふれあいサポーターとして県から委託を受けた夫婦が実際に子どもと生活を行なっているため、施設よりは家庭的な環境でのケアを行なえることや、児童相談所スタッフとも頻繁に連携が取れる、という利点がある。児童支援ホームでの実地研修を通じて、児童のケアの実際を学ぶことは、里親にとってまたとない実践の場の提供であると考えられる。 3点目は児童のケアに際する児童養護施設、里親と児童相談所の連携についてである 児童養護施設入所措置の後、保護者の面会や、週末帰省の機会のない児童が、少なからず存在することが、アフターケアを通じて確認されている。これらの児童に対するケアの方策として、施設職員の協力も得ながら、里親委託へとつなげていく取り組みが必要であると考えられる。平成15年度より、高知県里親連合会に週末や長期の休暇に児童に家庭生活を体験させるためのボランティア里親として、「フレンドシップファミリー」が登録されている。また、里親登録をしているが、児童の委託を受けていない里親についても、フレンドシップファミリーへの登録を呼びかけている。この制度を利用して、児童相談所・里親連合会・施設の確認のもとに、該当児童と里親の関係がうまく築かれたものについては、里親委託を勧めるためのケースワークを行なっていく。また、家庭の同意が得られない等の理由で、里親委託が困難な児童についても、児童の福祉を増進する、という観点から、フレンドシップファミリーの利用を勧め、児童に家庭体験の機会を与えることにより、施設と連携をして自立支援を図っていくことが、必要であると考える。4点目は司法との連携、特に家庭裁判所との連携についてである。今回の児童福祉法改正の中で、要保護児童に係る措置に関する司法関与の見直しがされた。親権者又は後見人である保護者の同意が得られない場合に、児童福祉法第28条第2項により家庭裁判所の承認を得て都道府県が行なう児童福祉施設への入所措置の期間は2年を超えてはならないこととなり、必要な場合は延長される。その場合、家庭裁判所は都道府県に対し、期限を定めて、保護者に対する指導の措置に関し報告及び意見を求めることができ、指導の措置をとるべき旨を都道府県に勧告することができることとなった。難なケースの処遇の中で、児童相談所が適切な相談、調査に基づき、28条承認を家庭裁判所に申請することによって、事例を通じて保護者に対する指導の措置のありかた=親業支援のシステムが構築されていくことに期待したい。そのことが、イタリアで実施をされているような司法の関与による家庭復帰プログラムの確立に向けて、今後、法律改正が行なわれていく突破口となるころを望むところである。 5点目は市町村合併を控えた今後の高知県の福祉施策の中での児童相談所のありかたについてである。今後、市町村が児童相談業務を担うこととなり、専門的知識、技術を必要とするものは、児童相談所の援助を受ける方向性が打ち出されている。一方、高知県下の市長村合併の状況を勘案すると、やはり、市町村の相談窓口としての役割が大きく問われることになってくることが予想される。元来、在宅福祉支援の担い手市町村であり、さまざまな支援策を講じても困難な虐待ケース、一時保護や施設入所の必要なケースについて、児童相談所に適切な引継ぎが行なえるような、システム作りが大切である。ローマ市における「チェントロ・ポリチーノ」のように、各市町村の業務のコーディネートを行い、施設も含めた福祉職員、里親の資質の向上を図るための研修や、家族の再統合を行うためのセクションを担うなど、スーバービジョンを行う児童福祉の拠点センターとして機能することが問われている。現場の実態を踏まえた企画立案、政策提言を行う、児童福祉の司令塔としての役割が、今後の児童相談所に求められる責務である、と考える。<参考文献>「高知県児童虐待防止のための取組指針」「イタリアの社会」早稲田大学出版部 馬場康雄・奥島隆康編「イタリアの政治」早稲田大学出版部 馬場康雄・岡沢憲芙編「2003 資料で見る新しい里親制度」 財団法人全国里親会「里親制度の拡充・整備に関する研究会報告」 財団法人全国里親会イタリア共和国広報 2003年3月28日の法律第149号~1983年5月4日の法律第184号「児童の養子・里親制度についての規律及び民法代三巻第8章の改正」~「里親家庭における児童と青年」I BAMBINI E GLI ADDLESCENTI IN AFFIDAMENTO FAMILIARE 児童・青年のための資料研究センター Centro nazionale di documentazione e analisi per l’infanzia el’adolescenza Aneddoto~こぼれ話~<la vita e’ bella/ライフ・イズ・ビューティフル> 雨上がりに訪れた「チェントロ・ポリチーノ」はローマ市郊外のお洒落な建物。イタリアでは、公共の建物の写真撮影は困難、とのことでしたが、せめて外からでも、と頼むと、特別に許可がおりて美しい外観を撮影することができました。中に入ると、事務所の前のフロアではパーティーの準備がされています。何でも、今日これから結婚式があり、もうすぐカップルが到着する、とのこと。ポリチーノの建物は、もともと貴族の持ち物を借りているもので、小さな教会が併設されており、市民が結婚式をあげて、区役所に届けを提出するために利用しているようです。この教会で結婚式を挙げた第一号は、ローマ市長。人の結びつきと分かれる時に相談に乗る、この建物は、まさに人生を応援しているのだな、と感じました。<sciopero generale(ゼネスト)>研修2日目にあたる10月24日、イタリア名物(?)ショーペロ(スト)に遭遇。出生率1,19と、日本以上に少子高齢化の深刻なイタリア。年金問題に頭を悩ます各国同様、政府が受給年齢の引き上げなどを含む年金制度改革案を提案し、それに反対する労働組合がゼネストを決行したため、この日はイタリア全土で公共機関はすべて閉鎖、ということにあいなりました。我々も午前中は、仕事にならない、ということで、正午過ぎに少年裁判所前でローマ市の責任者の方と待ち合わせをすることになり、交通機関の麻痺のために、宿舎から現地まで、徒歩ででかけたのですが、途中ナボナ広場を通りかかった所、ストの集会が開催されていました。前の方ではリーダーの人がマイク片手に演説をしているのですが、集会参加者は、まるでサッカーの試合に集まったサポーターのごとく、横断幕や旗を持ち、子供づれでうろうろ、がやがや。そうした光景を眺めながら、名所旧跡から締め出された観光客たちは、広場脇のカフェでゆっくりとコーヒーを飲みながら集会を眺めています。とんだローマの休日でしたが、いかにもイタリアらしい光景でした。<日本びいき>ローマからトリノへ移動する列車の中でのこと。我々が日本人だと知った子ども連れの乗客に話しかけられ、旅行の目的を紹介しつつ、すかさず一般人の里親周知度について、インタビュー。(結果は後述)お礼に日本語を紙に書いてくれ、とのリクエストがあり、中でも漢字が大人気。中学生の女の子は、名前を漢字で当て字してあげると、その紙を大切そうに持ち帰っていました。また、イタリアでは日本のアニメが大人気のようで、「マジンガーZ」「釣り吉三平」「ポケモン」「アルプスの少女ハイジ」「ルパン三世」など、タイトルを言う度に大盛り上がりを見せ、知る人ぞ知る、日本文化の輸出に驚いたところです。なお、里親アンケートの結果は以下のとおりです。<回答者>性別 男性1人 女性 4人年齢層 20代 女性1人 30代 男性1人 女性2人 40代 女性1人 <質問事項>1 あなたは、里親制度を知っていますか? 知っている 3人 知らない 2人2 里親について、どう思いますか?・ローマ市では、取り組んでいる所があると、知っている程度(ローマ近郊在住・30代の女性)・自分も老人介護の仕事をしているので制度について知っていると言い、他人にも説明をしていたが、養子制度と混同しているような所もあった(40代女性)・内容については良く知らない 2名(20代女性、30代女性)・イメージとして知っているのみで、詳しい内容は知らない。児童福祉の増進のための取り組みを進めることは大事なことだと思う(30代男性)<マンマの味>美食の国イタリア。ピッツァにパスタと、レストランにも足を運んだけれど、一番おいしかったのはトリノで体験談をお聞きするために訪れた、里親さん宅でご馳走になった手作りのリゾット。(お米を使ったイタリア風“おじや”)トリノは高級キノコ、トリュフが特産だったらしく、家庭料理でもふんだんに使われており、感激しながらご馳走になりました。なんとも贅沢だが、素朴な味わいのマンマの手作り料理の味。里親の持つ家庭的な雰囲気の大切さを、身をもって感じた一幕でした。<とにかく食べて、しゃべる>イタリア人は、とにかくおしゃべりが大好き。研修1日目のローマでのこと。ラ・ブッソラへの訪問時間は11時で、ドン・ボスコは17時。移動時間があるにしても、夕方まで何するの~という当方の心配はまったくの杞憂でありました。待ち構えていたのは、区のお偉方まで含めた総勢15名の福祉専門職軍団。・・・しかし、お堅い所は無く、とにかくディスカッションしましょう!というアットホームな雰囲気。日本、イタリアの児童福祉をめぐる話題がふっとうし、区のお偉方からは「これをきっかけに高知と姉妹都市提携をし、共同研究ができないか?」と真顔の申し出も。昼過ぎにはスタッフの一人が作った手づくりのお菓子やピッツァがふるまわれ、エスプレッソのコーヒーブレイクの後にも、えんえんとおしゃべりが続きます。彼らの児童福祉に対する熱意に脱帽するとともに、その連帯感と、もてなしの心にすっかり感銘を受けたのですが、議論をしながらのコーヒーブレイクと食べ物は、この研修期間中、すべての訪問先で続くこととなりました。
2016.09.21
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「イタリアにおける児童相談所と養育里親の連携による、家庭生活が困難な児童及びその保護者に対する支援のありかたについて」(その2)は、実際のケアが行われている現場からのレポート第1弾です。まずは首都ローマの模様から。圧倒的な人口と多様な人種を抱えるイタリアの首都では、民間機関の共働による取り組みが印象的でした。ローマ市の現状 ローマ市の里親・養子および遠距離支援のためのセンター「ポリチーノ」イタリアの首都であり、ラツィオ州の州都であるローマ市には19の区が行政単位として設置されており、区の福祉担当部署に人口1万人に対して1人のケースワーカーが配置されている。児童担当のケースワーカーは、生活保護や薬物など、他部門を担当するケースワーカーと連働しながら家庭支援にあたり、在宅での支援が限界になった場合に、児童の保護を行う手続きに入る。近年、近隣の外国からの流入人口が増加する中で、養育困難に陥った人々への支援や、貧困、麻薬など、市として対応しなくてはならない問題が深刻化を極めたため、ローマ市では、「チェントロ・ポリチーノ」(Centro per L’afiddo l’adozione ed il sostegno a distanza)という里親・養子制度を支援するためのセンターを設立した。元々は養子制度を支援するためのセンターとしての設立が考案されていたが、実働部隊である各区の業務の調整や、民間団体とのコーディネート、里親制度の啓発、専門職の資質向上のための研修などを担うためのセンター機能を持たせることに重きを置くこととなった。従って、「チェントロ・ポリチーノ」は、従来の機能の他に、ローマにある全センターのスーパーバイザー的役目も果たしていることになる。虐待の予防につながる妊娠・出産、医療・保健等の相談を行う家庭相談所(consultorio familiare)は、別組織として機能をしている。なお、ローマ市では、国に先立ち本年2004年には旧来の大規模施設は全廃されるとのことである。民間の親業支援団体 「ラ・ブッソラ」の行なう支援 ローマ市19区にある、親業支援のための民間団体、「ラ・ブッソラ」 ラ・ブッソラ(LA BUSSOLA ”Centro di sostegno alla Genitoriarita”)はイタリア語で羅針盤の意味を持つ親業支援のためのセンターであるが、ローマ市の19区と同じエリアを対象としてボランティアとして活動していた2つの団体が統合する形で、2001年に発足。区役所と共同して事業を実施している。センターには、社会福祉部門だけではなく、医療機関、弁護士なども関わっている。1999年に、里親制度などの充実(元の家族と里親家族の支援、問題を抱えている家族の支援)のためには、区役所の中に従来から配置されているケースワーカーだけではなく、精神面のケアを担う心理職の配置が必須である、と要求をあげたことが設立の起源となった。 19区のゾーンは人口20万人。ローマ市のはずれの方にあり、低所得、外国人の居住など問題を抱える家族が多い。区役所としても、あまりのケースの多さ、深刻さに、もともと里親制度を担当していた部署が対応しきれなくなり1997年に、資金を出してプロジェクトを組み、組織再編を検討した経緯がある。従ってセンターが機能するにつれて、区役所とのネットワークが単にケースに関するインフォメーションのやりとりだけではなく、ケース処理のためのミーティングや提案作業を通じて、共同して問題解決にあたっていく、というスタイルが確立されていった。「ラ ブッソラ」のスタッフは以下のとおりである。1名 責任者(心理職・心理治療士)1名 プロジェクト指導者(ケースワーカー、心理職、心理治療士)5名 心理職(心理治療士業、システム説明者、関係づくり)1名 ケースワーカー1名 文化の調停者1名 法律相談者。弁護士2名 スーパーバイザー特筆すべきは、心理スタッフの数の多さであるが、これらのメンバーによって、地域に対する情報提供や、家族支援、里親委託に際するマッチング、里親への支援など、区との連携のもとに、多彩な取り組みが実施されている。 LA BUSOLLAのメンバーとともになお、2001年に、里親制度の啓発のためにローマ市が「チェントロ・ポリチーノ」を中心に、大キャンペーンを実施している。キャンペーンの内容は広告を描いたバスを走らせたり、地下鉄など、色々な場所にポスターを貼り、コールセンターを設置して、所管している地区を問い合わせてきた人に教える、とうような内容で、1000人以上が応募してきた。里親になってもらう前に、応募してきた人に講習を受けてもらい、講習終了後に、里親になる意思の再確認を行い、新たに40組の里親が誕生している。 実際の里親制度を利用して親子のケアについては、以下のとおりである。「ラ・ブッソラ(親業支援センター)」は子どものケアを中心に行うが、区役所の方が、各種の福祉施策も講じながら元の家族の支援を行い、連携を図っていく。諸般の事情で子どもが元の家庭に戻れない、という事態が生じた場合は、裁判所がケースワーカーから情報を受けて、養子縁組を行うこともあるが、担当者はあくまで、養子縁組と里親家庭は別のもの、という意識をもってのぞむこととなっている。子どもを家庭から切り離した際に、家庭復帰を誰がどのような基準で判断をするのか、という当方からの質問に対しては、ケースワークの流れの中で、ケースバイケースで判断されていくものであるので、論理上で決めていくことはしていない。家庭復帰のためのマニュアルは無く、元の家族の状況と気持ちを第一に判断していく、との答えであった。また、親のケアに関わる心理職(セラピスト)の存在が、親業支援のためには重要であり、心理職が最も心がけていることは、親との信頼関係を築くことである。里親に預けたい、と言ってくる家庭の問題を受け止め、セラピーを行っていくことが重要であり、家庭環境が混乱している中では、子どもにも色々な症状が出ているので、子どもの状況から、その裏にどのような家族の問題があるのか、ということを常に念頭に置いて対応している、とのことであった。里親制度が機能し、家族の再統合がうまくいくのは、里親家族と元の家族のコミュニケーションが図られたケースであり、そのためにケースワーカーとセンターの協力は避けて通れない。 面談の中で再三聞かれたsostegno(支援)という言葉であったが、親子の心に寄り沿い、まずは家庭支援を基本に家族に介入していく、という姿勢は、日本の児童福祉の考え方からも、非常に参考になるものである、との当方からの感想に対して、対応したスタッフ一同、共感の意を示してくださったことが、印象的であった。LA BUSOLLAの親子カウンセリングルームグループホーム「ドン・ボスコ」の取り組み一方、ローマ市では諸般の事情で里親委託が困難な児童に対しても、大規模施設に代わるものとして、グループホームのネットワークを構築し、永続的なケア実施している。里親とも連携をしながら、地域に根ざした取り組みを行なっている事例としてグループホーム「ドン・ボスコ」の視察を行なった。グループホーム「ドン・ボスコ」の入り口 少年たちのためのグループホーム「ドン・ボスコ」(“una casa famiglia al borgo ragazzi don bosco” )は、ローマ市の7区にあり、元はサレジオ会派の経営する施設であったが、現在は男女それぞれのために8人用のグループホームを一つずつ有し、14歳~18歳までの児童が生活している。各グループホームには、6人(男性3+女性3)のケア職員(educatori)がいるが、アットホームな雰囲気を作るための、専門職の養成をしていくことが急務であると考えている。地域における認知度は高く、区とボランティアや里親との連携・調整や、里親家族に講習をするなど、区のセンター機能も持っている。また、地域の児童がスポーツなどを通じて交流できるスペースの提供も行われている。(17時頃の訪問であったが、グラウンドでは子どもたちがサッカーに興じていた)グループホーム入所の経緯としては、区役所から、ケースの連絡とリポートがあり、それぞれの児童の実状を把握したうえで、入所となる。入所児童の特徴としては、両親がいない、外国人である、などの問題を抱えている場合がほとんどである。また、思春期になると、里親との濃い関係をいやがる児童もおり、実態として、里親家庭での不適応により入所に至ったケースもある。現在入所している児童全員が学校へ行けていない状態であるため、18歳で自立をするまでの間に、どう力を蓄えていくかが課題で、地域のボランティアネットワークに依頼して、公園の清掃やパン屋の配達など、将来的な就職につながる職探しにも協力をしてもらっている。 また、里親との連携により週末里親や、短時間里親などの制度により、グループホームの子どもや、ホームから地域に出た後の家族支援を行っている。やがては自分自身の家庭を持つようになる子どもたちであるが、一つの家庭に入ったときに、なかなか落ち着けない事例が見られたことから、グループホームの専門職の意見も聞いて、退所後の家庭支援の方策を考えた。 ドン・ボスコとしては3つのタイプの里親を考え、実行している。一つは、週末や長期休みの時に2~3人の児童が帰省できず、ホームに残された時に家庭体験をさせる里親。(高知県で本年度より実施を始めたフレンドシップファミリーと同様の考え方によっていると思われる)二つ目には、その子どもが18歳になった後も中心的に関わってくれる里親。三つ目に、子どもは元の家庭で生活をしているのであるが、日中など、2~3時間預る短時間の里親で、親が共働きや長時間労働、精神的な問題などを抱えている場合に、提供されるというものである。区役所のソーシャルワーカーから子どものケアについての要請があれば、ドン・ボスコとして提供できる方法で援助を行っていく。里親に求められているのは、家族内のもう一人の父親、母親としての存在であり、例えば育児困難に陥っている若いカップルや、たくさんの子どもを抱えながらも働かなければならない家族を他の家族が支援する、というイメージであるため、そうした里親は近所の人であることが好ましいとのことであった。ドン・ボスコには、同じ地域に住む里親7~8家族で家庭支援をコーディネートするグループを形成しており、年の初めにプログラムを作って対応している。また、里親として登録をしている家庭は、元々は若い人たちとの関わりを行うボランティア活動をしていた人たちであるため、徐々に子どもたちとの信頼関係を築きながら、現在の形に近づいてきたものである、とのことであった。Don bosco のスタッフのみなさんとローマ市少年裁判所と福祉職の連携 今回の児童虐待防止法改正の中に、要保護児童の措置に関する司法関与の見直しが盛り込まれている。本研修において、裁判所の決定による里親委託が全体の7割以上を占める、イタリアにおける司法と福祉の関与の状況を学ぶため、ローマ市少年裁判所の視察を申請していたが、ローマ市福祉部署の尽力により特別に認められることとなった。イタリアの少年裁判所においては、法律に対する尊厳を持ちつつも、事務的な処理に流れない、という精神に則って、児童のケースや少年犯罪に対する取り扱いが行われている。結婚をしていないカップルがつぶれたときの結びつきの仲介役としの機能を果たす場合もある。14歳~18歳の少年の犯罪については、日本の少年法にあたる法律を適用している。歴史的に見て、少年裁判所の裁判官の大半は女性である。今回面談を行ったローマ市少年裁判所の副会長Isabella Foschini氏も女性であったが、会長も女性とのことである。そのため、少年事件の辞令を出す場合も、単に裁く、というのではなく、子どもを護り育てる、という精神が尊重されてきた経緯がある。ローマ市少年裁判所においても、4人の裁判官制を採用している。現在ローマ市の少年裁判所には15名のプロの裁判官と、15名の一般から選出された特別裁判官がおり、特別裁判官は6人が男性で9人が女性である。また、54人のソーシャルワーカーなどのグループがおり、特別裁判官はこのメンバーから選出される。ケースワーカーが通報を受けて児童を緊急保護した場合、その行為を行ってから10日以内に裁判官に報告を行い、裁判官が30日以内に実行された行動を認めることとなる。従って、認められない場合は、元の家に帰るというケースも存在する。ケースワーカーが家族支援をしている段階で、状態が悪化した場合に、裁判所にレポートを提出して、家庭からの切り離しの判断とその後の支援策を示してもらう、ということも可能である。少年裁判所とケースワーカー等福祉職が集まって、ケースを通じて講習を行う、という連携も行われているが、この4年間に法律が2つ改善されるという成果もあり、互いに理解しあい、説明しあうことを継続している。今回の研修に際して、少年裁判所への橋渡しに尽力をいただいた「チェントロ・ポリチーノ」 の責任者である、Stefano Vicini 氏はローマ市の公務員であり、心理職であるが、同時に少年裁判所の特別裁判官の職を有している。Vicini氏の存在からも分かるように、裁判所と福祉職が集まって会を持つことは、この特別裁判官制度に依るところが大きい。裁判官にとっては、ケースワーカーの書いたことは良く理解できる、とのことで、児童虐待の場合も、どのようにアドバイスをしていくか、という視点で見ていくこととなる。4人の裁判官のミーティングは、ごく普通のテーブルで行われる。一方で、家族、子どもの支援を行うための辞令の決定がケースワーカー不在で行われることへの指摘や、イタリアの法律は、親を守りすぎている、という声が、弁護士サイドから上がっている。裁判官の決定する元の親への改善命令の辞令は、期間を定めてなされる。ケースワーカーは、辞令に基づいての指導が可能であり、保護者が指導に乗らない場合は、再審査と再度の裁判も実施されるが、再審査は別の4人の裁判官によって行われる。また、支援策を講じても家庭復帰が不可能である場合には、養子縁組も検討されるが、その際4人の裁判官の中には会長が含まれる。(その3)に続きます↓http://plaza.rakuten.co.jp/ciclismofelice/diary/201609210000/
2016.09.20
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2003年10月、ケースワーカーとして児童相談所に勤務していた当時、師事していたイタリア語の先生、マッシモ・スッチさんご夫妻が、出身地であるローマで里親として児童福祉専門職とともに取り組んだ体験を聞き、ぜひ実地に研修したいと希望したところ、先方に橋渡しをしていただき、ローマとトリノの児童福祉の現場を視察させていただく機会を得ました。以下の文章は、その時の研修後に提出したレポートの中身です。13年の年月を経て、変わってしまった部分は多々あるとは思いますが、かの地で目の当たりにした、「子どもは家庭的な雰囲気の中で育つ権利を持つ」という信念の元に様々な分野の専門職の人びとが連携して行っていた取り組みの数々を思い起こすたびに、イタリア人の根底に流れるハートの温かさ、懐の深さ、連帯の力に今でも胸を熱くし、我々もかくありたい、という思いを強くします。なお、私にとってこの研修が、趣味のひとつであったイタリア語学習がライフワークとなり、それによって多くのイタリア人の友人を得ることとなり、人生を大きく変える転機となったことは、言うまでもありません。―目 次―はじめに日本における里親制度の歴史と課題イタリアにおける児童福祉施策と里親制度の現状ローマ市の現状民間の親業支援団体「ラ・ブッソラ」の行う支援グループホーム「ドン・ボスコ」の取り組みローマ市少年裁判所と福祉職の連携トリノ市に本拠を置く民間団体ANFAAによる広報・啓発活動等の取り組みまとめとしてaneddoto~こぼれ話~<訪問先>2003年10月23日(ローマ市)Centro per L’affido l’adozione ed il sostegno a distanza 所在地:piazza cagliero n. 20 00181 ROMA (里親・養子及び遠距離支援のためのセンター“ポリチーノ”)“LA BUSSOLA”Centro di sostegno alla Genitorialita’ 所在地:via andrea angiulli.1 CAP 00135 ROMAラ・ブッソラ(イタリア語で羅針盤の意/19区にある親業支援のための民間のセンター)“una casa famiglia al borgo ragazzi don bosco” (少年たちのためのグループホーム ドン・ボスコ)所在地:via prenestia 468 Roma 001712003年10月24日(ローマ市)Toribunale per i Minorenni (少年裁判所)訪問2003年10月25日~26日(トリノ県)25日 14:00 里親経験者宅訪問 26日 翌日の打ち合わせ 2003年10月27日(トリノ市)ANFAA (Associazione Nazionale Famiglie Addotive e Affidatarie)所在地:via artisti ,36 TORINO 10124 養子、里親制度のための全国組織(民間団体)訪問casa famiglia villa santa maria母子のためのグループホーム ビラ サンタマリア 訪問トリノ県の児童ケースワーカーと面談はじめに 少子化や核家族化、離婚の増加など、近年我が国の家族の形態は大きく変化をしており、そうした中で、虐待・非行等に代表される、児童をめぐる問題も深刻化をきたしている。特に、児童虐待に関しては、平成14年度において、全国で24195件(高知県:59件)とこの10年間で児童相談所の相談処理件数は20倍をこえることとなり、大きな社会問題となっている。国においては、平成12年に「児童虐待の防止等に関する法律」(以下「児童虐待防止法」)が成立・施行され、わが国において初めて法律において「児童虐待」の定義行い、早期発見、通告の義務、児童の保護などの規定がされた。虐待に対する関心の高まりにより、児童相談所への相談や通告の数が増加。法の施行により早期発見、早期対応に関しては一定の成果は見られたといえる。しかし、同時に、多種多様な相談と、権限の集中した児童相談所業務の見直しをはじめとした、新たな課題が噴出することとなった。そうした中、高知県は、平成14年12月に「高知県子ども虐待防止のための取組指針」を策定した。指針では「虐待の予防」、「虐待の早期発見・早期対応」(「発見・相談・通告」「保護・指導」)、「虐待の再発防止・心のケア」を児童虐待防止対策の3つの柱とし、行政、学校、地域など、関係機関・関係者が連携して、子どもと家庭への支援を行うための基本的な取り組みの方向が示されている。中でも「虐待の再発防止・心のケア」と言う点に着目をすると、虐待を受けた子どもはもとより、虐待を行った家族に対する心のケアと、家族の再生・再統合を行うためのシステムの構築が急務であることが謳われている。それは、不適切な養育環境から保護をされた児童が実際に生活をする、児童福祉施設や里親による養育家庭が心身ともの癒しの場となり、児童の成長や自立の場となることが、家庭の再生・家族の再統合の第一歩であり、真の意味での児童の福祉、権利擁護とつながることを、意味している。「児童虐待防止法」は、施行後3年目にあたる平成15年度に見なおしがされた。また、それに伴う、児童福祉法の見直しの中で、従来、事務次官通達によっての位置づけでしかなかった里親制度が、初めて法的な根拠を持ち、里親対しても、児童福祉施設長同様、「受託中の児童で親権を行う者又は未成年後見人のあるものについても、監護、教育、懲戒に関し、その児童の福祉のために必要な措置をとることができる」とされた。社会的養護観に基づく新しい里親制度を推進することが、行政の責務として、ますます重要な課題となっている。本研修は、共和国憲法第31条の2において、「母性、児童及び青年を保護し、この目的に必要な制度を助成する」と謳い、近年旧来型大規模施設に代わる、里親やグループホームのネットワークを構築しつつある、イタリアの里親制度を現地において学ぶことにより、本県の施策に反映させ、また、本県に登録された里親の組織である、高知県里親連合会の活動の活性化に資することを目的に計画したものである。日本における里親制度の歴史と課題里親とは「保護者のない児童又は保護者に監護させることが不適当であると認められる児童を養育することを希望するものであって、都道府県が適当と認める者である。」と児童福祉法に定められている。里親制度の運営機関としては、特に児童相談所が中心になることを定めており、各都道府県・指定都市、各児童相談所のそれぞれの施策、方針に基づいて制度が運営されている。日本における里親制度の起源は日本書紀に記載のある5世紀の「ちいさこべむらし」(小子部連)の史実にさかのぼり、以後時代とともに、皇族や公卿がその子どもを預ける、という貴族的風習から、次第に武家、商人、一般庶民層にも及んだと言われている。 その後、明治時代になって社会事業家の孤児院、育児員の経営に併行しての里子養育がなされ、第二次世界大戦後の里親制度に引き継がれたといえる。 1948年(昭和23年)に、新憲法下で実施された児童福祉法により、現行の里親制度と事業が出発した。当時は、戦後の一般社会経済の困難、住宅難や家庭事情の逼迫にも関わらず、多くの戦災孤児、引揚げ孤児等に対する国民の支援感情には強いものがあった。 そして1955年(昭和30年)から1962年(昭和37年)の間には里親制度が全開となり、日本全国で登録里親数、委託里親数、委託児童数は最多となったが、この時期を頂点として、すべての数字は下降に転じることとなった。一方で、児童相談所に対する養護相談の件数は増加の一途をたどっている。また、我が国では要保護児童のほとんどが、児童養護施設に代表される、児童福祉施設で生活をしているのが、現状である。厚生労働省の統計によれば、平成14年度、要保護児童35,471人のうち、里親の元で生活をしているのは7.1%にあたる、2,517人であり、高知県においても、平成15年7月1日現在、要保護児童364人のうち里親の元で暮らしている児童は14人であり、3.8%にしか満たない。このことは、養子制度と里親制度の混同や、制度の周知がされていないこと、血縁関係を重視する我国の子育て観などが要因となり、結果、実親が施設に子どもを預けることを選択していることを表しているここ数年、児童福祉施設の入所定員に対する入所率は、80%から90%と、常に満杯状態である。そればかりか、虐待等により、深く心に傷を負った子どもたちの入所児童に占める割合も年々高くなり、現行の施設の体系では、不適応行動を起こす児童の対応に追われ、施設内の処遇に困難をきたした事例も多数出てきている。そうした中で、国においても、「養育里親」に注目をし、施設と里親が連携を取り、協働して「児童の最善の利益」を目指した子育て支援を行うための、それぞれの機能の充実を図ることが進められることとなった。そして、里親制度については、平成14年10月に、「里親の認定に関する省令」と「里親が行う養育に関する最低基準」が改正され、「児童の最善の利益」を目指した子育て支援を行うため、機能の拡充を図ることとなり、平成16年2月の児童福祉法の改正において、里親が法に名文化されるに至った。家庭的な雰囲気の中での児童の自立を保障する。里親制度の充実は、児童の健全育成のため、重点的に取り組むことが必要な課題であると考えられるが、そのためには、養育里親自身の資質の向上を図ることや、地域住民の中に、里親による子育てが当然のこととして受け入れられる意識づくりが必要である。それと同時に、行政が中心となって、として、そうした取り組みをバックアップするための組織作りが必要であることは言うまでもない。次項より、イタリアにおける児童福祉制度の現状をふまえ、イタリア・ローマ市において実施されている、官民共働による里親、グループホームを中心とした親子のケアのためのネットワークの実例と、トリノ市において民間団体が実施している里親制度の啓発の取り組みを紹介することによって、我が国及ぶ本県の現状との比較・検討を行うこととする。イタリアにおける児童福祉施策と里親制度の現状イタリアの人口は、5784万人(2001年)。地方自治の基本構造は15の普通州と5の特別州(regione)103の県(provincia)8102の市(comune)からなっている。Comuneは人口、面積、地域性に関わらず、同一の法的主体であり、日本のような市町村の区別はない。人口300万を抱える大都市から人口100人足らずの小さな市があるが、規模の大小に関わらず同一の行政権限が与えられている。近年、ヨーロッパ諸国では、合理化やネットワーク化の流れの中で、市の合併や統合が進められ、イタリアにおいても、合併の可能性が検討されており、そうした中で、県のあり方が、適正規模の政策単位として注目をあび始めている。イタリア共和国憲法第117条は、医療及び福祉を州の管轄としている。それに基づき、福祉分野は1970年代に権限の地方委譲が行われ、原則として実施は市の、計画及び監督は州の管轄となっている。イタリアの要保護児童施策は、日本と同様、第二次大戦後の戦災孤児対策として発足したため、終戦当時は家庭で生活できない子どもたちは、修道院のような大規模施設に保護されていた。しかし、1970年代頃から、心理職が中心となった取り組みの中で、大人数の施設では、対人関係の取り方がうまく育たないなど、子どもが大人へと成長していく段階で、いくつかの不十分な点が明らかになり、大規模施設からサポーティブ家族=里親への転換を図ることが必要である、という動きが起こることとなる。一方、紛争や戦争状態にあるヨーロッパやアフリカの国々から逃れてきた子どもたちの問題は、近年、ヨーロッパ全体が抱える深刻な問題になっており、イタリアでもアルバニアや北アフリカなど、近隣の外国からの流入人口が増加している。国内で養育困難であったり、身よりの無い外国人の子どもが発見された場合、母国の調査を実施して、両親が不在であったり、不適切な養育が予想される場合には、未成年としてイタリアに在住させる。それらの子どもたちのために、養子縁組も検討されるが、多数の兄弟姉妹やハンディキャップを持っている場合には、養子や里親として受け入れられる人が限られてくるため、南部を中心にグループホームは常に満員の状態である。外国人の中にはイスラム教の子どもたちも多く、文化や習慣の違いを理解することも課題になっている。児童虐待への対応に関しては、14歳以下の子どもを対象に全国共通のフリーダイヤルを設定し「青い電話(telefono azzuro)」などの民間救済機関を介して当局に通報されることが多い。司法機関による親権介入は、年間数千件から1万件に及ぶ、と言われている。そうした状況を背景に、2001年3月28日に「児童の養子里親制度についての規律(1983年の5月4日の法律第184号/以下「法律第184号」という)」及び「民法第三巻第八章」の改正がなされた。1975年には約30万人が大規模施設で生活していた、と言われる子どもたちは、年齢が6歳に満たない場合には里親に委託すること(famiglia affidataria)が原則となり、里親に預けることが困難な場合(兄弟姉妹が多い、ハンディキャップがある、外国人である、家庭の事情など、理由は様々のようである)も、定員6名~8名(最高定員10人)のグループホーム(casa famiglia)で生活ができるよう、施設面でも人員面でも体制整備が進められている。なお、現在施設(グループホーム)で約2万6千人(2001年資料)、里親の元で約1万人(1999年資料)の児童が生活しており、旧来の大規模な施設は2~3箇所しか残っておらず、2006年にはイタリア全土で大規模施設は閉鎖されることになっている。「法律184号」では、第1章第1条において「児童は自らの家庭に育ち、教育される権利がある」と規定している。そのため、養育困難に陥った家族への支援策として、児童担当のケースワーカーは先ず市(comune)の他部門のケースワーカーと連働して家庭支援を行い、在宅支援が限界になったと判断された場合に、初めて児童の保護、すなわち里親やグループホームへの委託の手続きにはいることとなる。委託に際しては、保護者の同意による場合(consensuale)と、裁判所の決定による場合(Giudiziario)の2つのケースがあるが、里親委託の約7割が裁判所の決定によるものとなっている。ケースワーカーは、里親委託に際して少年裁判所に「子どもや家庭に対する企画(家庭復帰につながるためのプログラム)」を提出し、裁判官の判決辞令を受けなければならない。イタリアでは、大半のケースワーカーは公務員であるが、たとえ公務員であっても、裁判所の承認なしに子どもの権限(自らの家庭で生活をする権限)を侵すことはできない、という法の精神に則り、決定機関(司法)と援助機関(行政)の役割分担を行っている。このことにより、ケースワーカーの支援が行いやすい、という利点がある。少年裁判所では、心理学や教育など、色々な視点を併せ持って判決辞令が出される方が好ましい、ということで4人の裁判官制を採用している。内2人はプロの裁判官であるが、後の2人は心理学者、精神科医、ケースワーカー等の資格を持つ一般から選出された特別裁判官で、4人は同一の権限を持ち、男女の人数も2対2で構成されており、3年間同じメンバーでチームを組むことになっている。ケースワーカーが提出するプログラムには、委託が必要となった理由、その期間と里親の権限のふるいかた、面会の取り決め等、両親や親類の者との関係をどのように維持するかが記載されていなければならず、該当地区の福祉センターは、委託期間中のチェックを行い、半年ごとに支援プログラムと元の家族の各問題の経過報告を少年裁判所に提出する義務を負う。里親委託の期間は、2年以内であるが、家庭復帰により児童に危険が及ぶことが予想される場合は委託の延長が可能である。この規定は、グループホーム等施設に入所している児童にも応用されている。里親家庭は、委託期間中の児童に必要とする養育、教育、愛情を保証で着る家庭でなくてはならず、子どものいる家庭が理想的であるが、単身でも差し支えない、とされている。なお、里親には親族里親(intra familiare )と親族以外の者がなる里親(etero familiare)の2種類がある里親手当など、里親への経済保証もされており、法律第184号の第80条―3には、「実の親に認められている仕事に関する権利、病欠休暇、日中の休暇等の権利は、委託親にも認められる」との規定があり、里親が就業している場合には、子育てに必要な育児休業などの諸権利の行使も認められている。司法省と社会支援省は、法施行後から2年後、それ以降は3年ごとに、国会にレポートを提出する義務を負い、国に置いて法律の実効性をチェックしていく体制を取っている。このように、イタリアにおける里親制度は、元の家族から一時的に他の家族に預かる、ということが原則となっており、里親は単に子どもを育てるだけではなく、子どもが家庭に帰ることができるよう、元の親とも信頼関係を築いて、精神面なサポートをする、という役割も担っている。彼ら里親は、市(comune)の公募に応じてきた人一般の人であるため、市のケースワーカーが複数回の研修を実施し、研修終了後に意思の再確認をして、里親の登録を行う。また、実際の委託に際しては、心理職が親の支援とともに、里親の支援、里親と元の親が信頼関係を結ぶための支援を行うことになっており、両者を支えるために、心理職とケースワーカーの連携がはかられている。一方、養子縁組に関しては、少年裁判所が希望するカップルの調査・決定を行い、該当の子どもが現れた場合、何組かのカップルを呼んで子どもの名前を伏せて聞き取りを行い、養子縁組の決定を行う。イタリアでも、養子を前提とした里親制度が存在しており、一般的には里親制度よりも養子制度の方が認知度は高いのが現状である。しかし、里親を希望してくる家族と養子を希望してくる家族では、その精神が全く異なるので、双方の制度については明確に分けて考えたうえで、実施されている。イタリアの里親制度に対する取り組みは、40年前にトリノのある男性が養子制度を施策・制度に位置づけさせたい、と要望したことから始まった。里親制度、養子制度のそれぞれがなすべき事を分けることが大変な作業であったが、「子どもは家庭を持たなくてはならない」という理念を出発点に、その子どもにとって、養子か里親か、という最善の選択がなされるために、福祉職や、民間団体、里親自身が主体的に行った幾多の取り組みを経て、現行の制度へと改正がされている。(その2)に続く↓http://plaza.rakuten.co.jp/ciclismofelice/diary/201609200000/
2016.09.19
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