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カテゴリ: 陽明学


古〔いにしえ〕とても五等ばかりにては用達すまじきことと思われ侍〔はべ〕り。

 曰く。大綱は五等なれども、其の一等一等に類〔たぐ〕い多し。
天子ばかり只一人にておわします。日本の今にては大樹(※幕府の将軍)一人なり。
諸侯一等といえ共〔ども〕、公・侯・伯・子・男の五品あり。
外に又〔また〕附庸〔ふよう〕の国あり。
日本にても名こそ違いたれ、此の品〔しな〕あり。
四、五十万石の以上は公・侯のごとく、三十万石の少し上・下は伯のごとく、
十五万の上・下は子・男のごとく、十万石以下は附庸のごとし。
これ諸侯一等の内の品〔しな〕なり。
卿大夫一等とは、其の徳行役儀の同じき故に、大小高下おしなべて一等といえり。
其の内の品をいえば、天子の公卿・大夫は公・侯になぞらえ、大夫は伯になぞらえ、
元士〔げんし〕は子・男になぞらう。
諸侯の卿大夫は小身〔しょうしん〕なれども、人の臣として、君の命をつたえ国政にあづかる。
故に、天子の老・諸侯の老、共に大臣とも老臣共いうは、
行事〔こうじ〕(※徳行役儀)のかわりなきゆえなり。
一国にても、諸侯は其の国の君として、役儀なければ、人君の行〔こう〕(※徳行)あり。
臣なれども天子も客の礼を以て待ち給えり。
今、日本にても、諸大名の参府の送迎には、
老中を御使〔みつかい〕としておもくもてなさるると同前なり。
日本王代のむかし、上代と中世の時勢のかわりしを考えられず、
此の礼を行われざりし故に、天下を失い給いしなり。
聖人の掟に少しもたがうことあれば、長久ならざるものなり。
士一等とは、其の内ことにしなじなおおしといえども、徳行のおなじき故なり。
番頭〔ばんがしら〕并〔ならび〕に一人〔ひとり〕立〔だ〕ちの歴々を上士と云うべし。
物頭〔ものがしら〕・与頭〔くみがしら〕・組付〔くみつき〕にても、
千石以上の人は中士の品なるべし。
千石以下の平士〔ひらざむらい〕は下士なるべし。
所司代〔しょしだい〕は武宦〔ぶかん〕なり。中夏〔ちゅうか〕の士師なり。
代官は農に兵ありしむかしは上士の役儀たるべし。
日本の今は、兵が農からはなれし故に、下士の役となれり。
或いは庶人の官にあるものの役と成りぬ。
江戸・大坂の町奉行は中士の位にて、威勢は今の上士よりもおもきものなり。
国々の町奉行は大かた下士より出〔い〕でぬ。中士にして兼ねるもあり。
少しづつの物奉行はおおくは下士より出づるもあり。
それよりもひきき庶人は官にあるのたぐいもあり。
中小姓〔ちゅうごしょう〕と云うは、
大身〔たいしん〕の子も小身〔しょうしん〕の子もあれば下士の内なり。
歩士〔かちざむらい〕は庶人の官にあるたぐいなり。
物よみ医者などは、町よりおこりたるは、庶人の官にあるたぐいとも云うべし。
町医者は、庶人の内、工・商のたぐいたるべし。
禰宜〔ネギ〕(※神職の一種)などは庶人の官にあるたぐいなり。又神職に高官もあり。
天文道・楽道・医業などは代々其の家ありてなすもよし。心を用いてくわしきがゆえなり。
しかればとて、家となりて人のするをふせぐはひがごとなり。
尤もただ人〔びと〕にても其の道に得たる人出で来れば、其の家へ教うることもあり。
ただ道学のことばかり、史官・物よみの外〔ほか〕には、
それ者〔しゃ〕というもの、其の家と云うものはなき理〔ことわり〕なり。
其のゆえは、五等の人倫のあまねく学んで、人々の業において受用することなり。
人、幼年には学び、壮年には行い、老いて教うるは、古今の常なり。
誰〔たれ〕道者〔みちしゃ〕とあることはなく、親は子の師たるがごとし。
其の同じき人の内を以て、上〔かみ〕より大学・小学のつかさを命じ給うことなれば、
初めより人に教えむとて、学問する人もなく、人に教うる家とてもなき道理なり。
士というものは、小身にて徳行のひろきものなれば、上下通用の位にて、
上は天子・諸侯・卿・大夫の師と成り、下は農・工・商を教え治むるものにて、
秀〔ひい〕づれば諸侯・公卿ともなり、くだれば庶人ともなり、
才徳ありながら隠居して庶人と同じく居〔オ〕るを処士〔ショシ〕といえり。
大道を任じて志・大なるものは士なり。
公卿・諸侯の本地〔ほんぢ〕なる故に、賢なれば公卿・諸侯もくだって士を敬い給いぬ。
徳と年と位とを天下の達尊という。
朝庭(朝廷)にして上下の礼のある所にては位を尊び、常の交わりには年を学び、
世をたすけ人の長たるの道においては徳を学ぶ。
公・侯は士の賢をうやまい給い、士は公・侯をうやまい、たがいに相敬するの義なり。
志同じうして心を友とする時は、双方の尊卑〔そんぴ〕相忘るる義もあり。
道をしらざるものは、我が本地を忘れて、
一旦のうかべる富貴に奢〔おご〕りて、士を慢〔あなど〕れり。
然〔さ〕れば、才徳あるものは隠れて出でず、中人以下の者はいやめ(嫌目)になり、
心から下輩〔かはい〕になりて、天下によき士出で来〔こ〕ざるものなり。
扨〔さて〕庶人一等と云うは、農が本にて、工商は農をたすくるものなり。
工とは工匠〔こうしょう〕ばかりにあらず、
鍛冶〔カヂ〕・白がね屋・塗師〔ぬし〕屋・小細工師、すべて何にても職をする者を云う。
商はあき人〔びと〕にて、居ながらあきないするも、
国々ありきて有る所の物をなき所へ通ずるも、
手に所作〔しょさ〕なくて、金銀を以て世を渡る分は、おしなべて商なり。
まづ人の初めは農なり。農の秀でたる者に、たれとりたつるとなく、
すべて物の談合をし指図をうくれば事〔こと〕調〔ととの〕おりぬる故に、
其の人の農事をば寄り合いてつとめ、
惣〔そう〕の裁判のために撰〔えら〕びのけたるが士の初めなり。
在々〔ざいざい〕所々〔しょしょ〕ありて後、
又秀でたる者に、惣〔そう〕の士が談合しひきまわされて諸侯出で来ぬ。
又諸侯の内にて大いに秀でたるあり。其の徳四方へきこえ、
おのおの及ばざる所は此の人より道理出づる故に、
寄合てつかね(束ね)とし、天子とあおぎたるものなり。
扨〔さて〕士の中より公卿・大夫と云うものを立て、農のうちより工・商を出だして、
天下の万事備わり、天地の五行に配して五輪五等の出で来たるなり。





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Last updated  2019年09月06日 21時44分05秒


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