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Cape Town & Table Mountain
Photo by Moomba
images.jpeg


※画像はイメージであり本文とは関係ありません。




大藪作品『傭兵たちの挽歌』
U.S. GERBER Folding Sportsman II 用スキャバード製作企画
「悪霊は甦(よみが)える」Vol.17



   ( 前回 からのつづき)
廊下に出た片山は、エリカの部屋のドアを外側からロックした。上着の襟(えり)の内側に
  差していた、先端が鉤型(かぎがた)に曲った日本のピアノ線を取出す。
   それを使い、モロッコ系の女の個室のシリンダー錠を簡単に解いた。グリーン・ベレーは、









二本の針金を襟に戻し、そっとドアを開く。部屋のなかに身を滑りこませると、投げ繩を
  持った左手をうしろに回して、そっとドアを閉じる。
   (中略)
   二人とも無論素っ裸であった。男の拳銃はホルスターに入ったまま、ベッドのヘッド・ボー
  ドに掛けられていた。
   人間には第六感があるから、たとえ背後から忍び寄っても、あまり近づきすぎると気付かれ
  てしまうことが多い。だが片山は、数えきれないほどの実戦の経験から、巨体にも似合わず、

   幻影のように接近した片山は、男の首に投げ繩を掛けると、うしろに引きずり倒す。結合が
  外れてからやっと片山に気付いた女の脇腹を鋭く蹴った。
   脾臓(ひぞう)が炸裂(さくれつ)した女は、重苦しい呻き声を絞りだして気絶した。
   投げ繩に首を絞められた男は、悲鳴を漏らすことも出来ずにもがいた。両手で投げ繩の環を
  外そうと首に爪をたてながら、両足で片山を蹴ろうとする。(中略)

   ショック死に似た症状を呈して男は意識を失った。
   片山は男を浴室に運んだ。ガーバー・ナイフを使い、男のアキレス腱を切断しておき、椅子
  に掛けられている男の服をはぐる。投げ繩は首に捲きつけたままだが、呼吸が止まらないよう
  ゆるめてある。
   男のポケットから出てきた船員手帳によると、タイ国籍のポーン・サムラクという甲板員と
  いうことになっている。
   男が持っていた三千ドルほどの現ナマを頂戴した片山は、ショールダー・ホルスターを捨て
  てから、拳銃を上着の左ポケットに突っこんだ。男のその拳銃は、S・Wチーフス・スペッ
  シャルの銃身がひどく短いスナッブ・ノーズの輪胴式(リヴォルヴァー)であった。




IMFDB.org - Smith & Wesson Model 36 / 38
Smith & Wesson Model 36 "Chiefs Special"

http://www.imfdb.org/wiki/Smith_%26_Wesson_Model_36_/_38








ベッドのシーツを破り、それで男の口にゆるく猿グツワを噛ませた片山は、男が持っていた
  カルチェのライターで鼻の穴をあぶった。



The Relux.com - Collectibles -
Vintage MCM Cartier Gold Plated Lighter

https://www.therelux.com/collections/collectibles





鼻腔(びこう)が焼け焦げた時、男は猿グツワの隙間(すきま)から唸(うな)り声を漏らし
  た。意識を回復してもがく。
   熱くなったライターをタイルの床に置いた片山は、フランス語で、
  「名前は?」
  と、尋ねた。
  「だ、誰(だれ)だ、貴様は・・・・・・糞う・・・・・・痛い・・・・・・苦しい・・・・・・」
  男は呻いた。
  「名前は? ポーンというのは偽名だろう?」
  「どうして分かった?」
  「タイ人でフランス語がしゃべれる船員は少ないからな。もとはフランスの植民地だったヴェ
  トナム人と違って」
  「畜生・・・・・・グエン・チューというのが俺(おれ)の名だ。サイゴン出身だ。敗戦でタイに逃
  げ、ワイロを使って船員手帳を手に入れた・・・・・・俺に何の恨みがある?」
  「別に・・・・・・俺に尋ねることにまともな返事をしたら、あんたはこれ以上痛い思いをしないで
  済む」
  「畜生・・・・・・」
  「あんたは、ラ・パロマ号が日本の港を出た時から、あの船に乗っていたのか?」
  「ラ・パロマ号とは何のことだ?」
  「とぼけるなよ・・・・・・よし、分かった。貴様が二度と女を楽しめない体にしてやる」
   片山は壁掛けタオルを取り、それを左手に捲いて、グエンの縮みきった男根を引っぱりだし
  た。それに、ナイフの刃を当てる。
  「やめろ・・・・・・やめてくれ・・・・・・サンチョ・パンサ号がラ・パロマ号だったことを認める。俺
  があの船に乗りこんだのは、あの船がシンガポールに寄港した時だった」
  「あんたは拳銃(ハジキ)を持ち慣れているようだな。亡命する前は何をやってた?」
  「ヴェトナム共和国、いわゆる南ヴェトナム政府の海事秘密警察官だった。ワイロを出し渋る
  連中と射ちあったことはたびたびある」
  「タイの警察はそのことを知ってたのか?」
  「ああ、もとは連携プレーをやって、麻薬や米国流れの武器を扱う業者から吸いあげてたか
  ら」











  「シンガポールで乗りこんだのは何人だ? あんたの連れの小男もシンガポールで乗ったの
  か?」
  「二十人だ。俺の友達(ダチ)はアルバート・リーといって、マレー人と中国人の合の子だ。
  アルもシンガポールから乗った。カンフーの達人だ」
  「一緒に乗りこんだほかの連中も、一癖(ひとくせ)も二癖もある連中だろう? どうやって
  ラ・パロマ号は、そんな連中を集めた?」
  「ほかの連中のことは知らん。俺の場合は、バンコックの手配師が、ちょっとヤバいが日当百
  ドルになる仕事があるがどうか、と口を掛けてきた。ヤバいとはどの程度か、と尋いたら、高
  く売れる日本商品を積んだ船なので、海賊船と射ちあいになる可能性も無いこともない、とい
  うことだった。
   そのかわり、船のほうで武器を支給してくれ、射撃訓練もさせてくれる、という話だった。
  生命保険もたっぷり掛けてくれる、とも言った。だから、俺はシンガポールに飛んだんだ。シ
  ンガポールの指定されたモーテルに着いてみると、ヴェトナム時代やバンコックで顔見知りの
  命知らずが何人も来ていた。」











  「モーテルの名と場所は?」
  「モーテル・スタンレー。鉄道駅に近いニューブリッジ通りにある」
  「バンコックの手配師は?」
  「タノム・ピブンという名だが、どこに住んでいるのかは知らん。クロフォード桟橋近くの大
  衆食堂兼茶楼(ティー・ハウス)のサイミンが奴の溜り場だ」
  「よし、続けろ」
  「モーテル・スタンレーに集まったのは、百人ぐらいだった。東南アジアの色々な国からやっ
  てきた連中だ。宿代はタダだった。
   二日後、俺たちは射撃場にバスで連れていかれ、拳銃射撃の試合をやらされた。拳銃は俺た
  ちを呼んだ連中が用意してくれてあったんだ。試合の成績が悪かった三十人は、旅費と御苦労
  賃をもらって帰らされた。二日目のライフル射撃でまた三十人がはねられ、三日目の格闘技の
  勝抜き戦で、二十人が最後に残った。
   それからの四日間は、毎日三十ドルをもらって、骨休めしたり、女と遊んだりバクチをやっ
  て暮した。その間に、死んだ場合は十万ドル払ってもらえる生命保険の証書が、俺たちの見て
  る前で、シンガポール中央郵便局から家族に郵送された。そのあと、俺たちはラ・パロマ号に
  乗ったわけだ。乗り込むと、千ドルの前金が渡された」
  「あんたは、三千ドル以上持っていた」
  「ここに着いてから、ボーナス込みで五千ドルを払ってもらったんだ・・・・・・え、何い? 持っ
  てた、だと?」
  「素直にしゃべり続けてくれたら返してやるさ・・・・・・話を戻して、シンガポールであんたらを
  待っていた傭い主は、どんな奴だった?」
   片山は尋ね、噛〔か〕みタバコを口に放りこむ。

(つづく)





making a pancake holster for Smith & Wesson M10 snubnose by garyipip





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Last updated  2021年07月25日 03時53分09秒


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